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東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学准教授 熊野 宏昭

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1 東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学准教授 熊野 宏昭
パニック障害の原因 東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学准教授 熊野 宏昭

2 パニック障害とは 特別なきっかけもなく、突然、動悸、呼吸困難、胸痛、めまい、吐き気など多彩な身体症状が出現し、激しい不安に襲われるといった発作を繰り返す病気。 発作は10分以内にピークに達し、通常数分~数十分程度で自然とおさまるため、救急で受診したとしても、病院に着く頃には症状が消失しており、そのまま帰されることが多い。 身体的な精査をしても、どこも異常なところは発見されず、自律神経失調症、心臓神経症、過呼吸症候群、上室性頻脈、狭心症、メニエ-ル症候群、過敏性腸症候群、などと診断されていることが多い。

3 パニック発作の症状  ● 心臓がドキドキする  ● 汗をかく  ● 身体や手足の震え  ● 呼吸が速くなる、息苦しい  ● 息が詰まる  ● 胸の痛みまたは不快感  ● 吐き気、腹部のいやな感じ  ● めまい、頭が軽くなる、ふらつき  ● 非現実感、自分が自分でない感じ  ● 常軌を逸する、狂うという心配  ● 死ぬのではないかと恐れる  ● しびれやうずき感  ● 寒気または、ほてり

4 診断基準 予期しないパニック発作が繰り返し起こる。 少なくともどれか1回の発作の後1ヶ月以上、以下のうちの1つ以上が続いていたこと。
また発作が起こるのではないかという心配。 発作やその結果が持つ意味についての心配(例:心臓病なのではないか、気が狂うのではないか)。 発作と関連した行動の大きな変化(例:仕事をやめる)。 薬物の影響や身体疾患では説明できない。 他の精神疾患では説明できない。

5 パニック障害の発症・維持要因 脳の機能障害に起因する内因性不安 少なくとも、認知や行動の病気という側面もある
1960年頃に、イミプラミン(代表的な抗うつ薬)が発作を抑えることが発見されたことが研究の出発点。 橋の青斑核(中枢神経系のノルアドレナリンの分泌核)の興奮性亢進、中脳の縫線核(中枢神経系のセロトニンの分泌核)の機能不全、GABAA-ベンゾジアゼピン受容体の結合低下。 少なくとも、認知や行動の病気という側面もある ストレスや過労が発症に先立つことが多い 不安と思考の悪循環による発作の習慣化 予期不安による日常的な不安・緊張の高まり 回避行動としての広場恐怖の進展と、日常の不安・緊張のさらなる高まり つまり、心の病気というよりも脳の病気という考え

6 心理・身体的ストレス 個人内要因 回避行動 不安に伴う身体症状 破局的思考 パニック発作 予期不安 扁桃体・海馬の興奮性亢進
不安・緊張の高さ 回避行動 不安に伴う身体症状 破局的思考 パニック発作 予期不安

7 パニック障害はどこまで脳の病気か?

8 パニック障害の神経解剖学的仮説 Gorman et al, 2000より改変引用
前頭前野・帯状回 海馬 扁桃体 感覚視床 孤束核 内臓性 求心性線維 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 下垂体 副腎皮質 交感神経系 呼吸数 防御反応 覚醒亢進

9 パニック障害の脳画像研究 パニック障害をどの程度「脳の病気」と見なせるかを調べるために、以下のような脳画像研究が行われている
非発作安静時の機能の異常を検討したもの ポジトロンCT(PET)、脳波のLORETTA解析 健常者との間で構造の異常を検討したもの MRI 課題遂行時の特徴を検討したもの 機能性MRI、赤外線スペクトロスコピー(NIRS)

10 非発作安静時の脳内糖代謝の検討 研究の目的 方法
脳のエネルギー消費量を知ることができる画像検査(ポジトロンCT=PET)を用いて、非発作安静時の脳機能の特徴を検討する。 方法 非発作安静時のパニック障害患者と健常者を対象に、18F-FDGを静脈内投与し、高解像度3次元PET装置にて脳内糖代謝を測定。 治療前パニック障害患者12例と、正常統制群22例の群間比較を施行。

11 結果 患者群での代謝亢進領域 (Sakai, Kumano, et al, 2005)

12 考察 非発作安静時の治療前パニック障害群の 脳内糖代謝亢進領域
前頭前野・帯状回 海馬 感覚視床 孤束核 扁桃体 海馬 中脳水道 周囲灰白質 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

13 情動喚起語に対する血流増加も大きい (van den Heuvel et al, 2005)
右扁桃体・海馬で、パニック障害のみで有意な血流増加が認められた Co:コントロール、PD:パニック障害、OCD:強迫性障害、HC:心気症 (van den Heuvel et al, 2005)

14 ほかの脳部位の働きは?

15 左前頭葉にも容積減少がある (一卵性双生児不一致例のMRI) (岡崎ほか,2004) 関心領域 体積・容積 (mm3) 絶対差異
   兄(患者)        弟         (%) 全 脳 左大脳半球 右大脳半球 左前頭葉 右前頭葉 左側頭葉 右側頭葉 左海 馬 右海 馬 小 脳 左側脳室体部 右側脳室体部 第三脳室 左側脳室下角 右側脳室下角 関心領域    体積・容積 (mm3)      絶対差異    兄(患者)        弟         (%) 全 脳 左大脳半球 右大脳半球 左前頭葉 右前頭葉 左側頭葉 右側頭葉 左海 馬 右海 馬 小 脳 左側脳室体部 右側脳室体部 第三脳室 左側脳室下角 右側脳室下角 一卵性双生児不一致例1組のMRI ・兄が19歳で発症し、20歳の時に撮像した一卵性双生児のMRIの比較。 ・いくつかの脳部位に関心領域を設定して、体積・容積に差異があるかどうかを検討。 ・罹患児で非罹患児よりも右海馬の容積が20%以上、左海馬と左前頭葉の容積が10%以上小さく、右側脳室下角の容積が60%以上大きかった。 ・PET検査によって機能異常が示された「恐怖ネットワーク」と直接的な関連を持つ海馬や前頭前野に、構造的異常が認められる可能性を示唆。 (岡崎ほか,2004)

16 脳波発生源でも左前頭葉の機能は低下傾向 (未服薬・安静時の患者と健常者18名ずつ) Delta band Theta band
従来の方法であるパワー値の比較で有意差のあったDelta, Theta, Beta1帯域について、LORETA解析し2394ボクセルごとにT検定をおこなった結果、Delta帯域とTheta帯域で有意差を認める部位がありました。 スライドにDeltaおよびTheta帯域の有意差のあった部位をしめします。 まずDelta帯域についての結果ですが、右 Limbic Lobe のUncus周辺そして左前頭葉で電流密度がPD患者で有意に高値を示しました。この結果は、右側頭部および左前頭部における機能的な障害を示唆していると考えられます。 また、Theta powerについても、両側頭頂葉で有意差を認めました。 t value (長澤ほか,2006)

17 発作を繰り返すことで前頭葉機能が低下 (語流暢課題による前頭葉の血流増加) R L (岡崎ほか,2006)
カラーレンジ (mM・㎜) 計測までの1ヶ月間にパニック発作を経験しなかった群19名 (男性9名・女性10名) 計測までの1ヶ月間にパニック発作を1回以上経験した群13名 (男性5名・女性8名) R L (岡崎ほか,2006)

18 まとめ:非発作時に異常が示唆された部位 前頭前野・帯状回 海馬 前頭前野・帯状回 島 感覚視床 孤束核 扁桃体 海馬 中脳水道 周囲灰白質
左>右 発作により悪化 前頭前野・帯状回 感覚視床 孤束核 扁桃体 海馬 中脳水道 周囲灰白質 海馬 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 今回の結果で、亢進の認めた部位を赤く示します。脳幹部の神経核の同定までは困難ですが、亢進の認めた背側延髄に孤束核が含まれます。 扁桃体、及び、その入力系が亢進していることが分かります。 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

19 脳の病気ならば薬が効くはず (SSRIの作用メカニズムの仮説)
前頭前野・帯状回 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 扁桃体 海馬 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 縫線核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

20 糖代謝亢進領域の薬物療法による変化 (患者5名、健常者16名の比較)
投与前 投与後 扁桃体 (5例中2~3例がプラセボであるため予備的結果である) (佐藤・西川ほか,2006)

21 脳の病気と「心」との関わり

22 実は、認知行動療法のみでもよくなる (認知行動療法の作用メカニズムの仮説)
前頭前野・帯状回 海馬 前頭前野・帯状回 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 傍小脳脚核 扁桃体 海馬 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

23 認知行動療法前後での脳内糖代謝の変化を検討
対象と方法 非発作安静時の研究と同じ14人のパニック障害患者。 約6か月のCBT前後の非発作安静時に18F-FDGを静脈内投与し、高解像度3次元PET装置にて脳内糖代謝を測定。 CBT前後の群内比較をSPM99を用いて施行。 脳内各部位の糖代謝とPDSS及びパニック発作の頻度との間で、治療前後の変化率同士の順位相関を求めた。 治療前後別に、脳内各部位の糖代謝同士の相関が高い部位を検出。

24 CBT治療の概略 病気についての知識を持つ(心理教育) エクスポージャーを繰り返す ・恐怖場面(回避している場面)に直面する 認知の修正
・パニック障害とは ・不安時の症状 ・不安の経過 ・エクスポージャーの原理 など エクスポージャーを繰り返す ・恐怖場面(回避している場面)に直面する ・その際の不安レベルを断続的にモニター ・パニック発作に対しても同じ方法で対処 認知の修正 広場恐怖、予期不安の改善 パニック発作の改善

25 The Panic Disorder Severity Scale (n = 12)
CBT治療の効果 The Panic Disorder Severity Scale (n = 12) 2 4 6 8 10 12 14 16 18 PDSS CBT前 CBT後

26 結果 治療後に代謝低下したのみならず増加した部位も
結果  治療後に代謝低下したのみならず増加した部位も (Sakai, Kumano, et al, 2006)

27 左BA9との正相関部位の、治療前後での変化
(Sakai, Kumano, et al, 2006)

28 右BA10との正相関部位の、治療前後での変化
(Sakai, Kumano, et al, 2006)

29 考察 心が変われば脳も変わる 海馬 帯状回 前頭前野 前頭前野・帯状回 島 室傍核 外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 傍小脳脚核 扁桃体
縫線核 前頭前野・帯状回 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 傍小脳脚核 扁桃体 海馬 扁桃体 感覚視床 傍小脳脚核 視床下部 室傍核   外側核 青斑核 中脳水道 周囲灰白質 孤束核 呼吸数 下垂体 自律神経系 覚醒亢進 防御反応 内臓性 求心性線維 副腎皮質

30 前頭前野背内側の役割

31 パニック障害以外の画像研究 マインドフルネス瞑想の場合
1: 島、2: BA9/10、3: 体性感覚野、4: 聴覚野の皮質厚みが増加 瞑想群と対照群で、BA9/10の厚みと 年齢との関連に有意差あり (Lazar, 2005)

32 エクスポージャ治療は何を実現しているのか エクスポージャ実施時の留意点
避けない(心を閉じない)だけでなく、呑み込まれない(同一化しない)ようにすることが重要。 感情(不安・落込み・怒り・欲・混乱など)を、定期的に(3~5分おきに)点数化して記録する。 身体感覚(呼吸に伴う身体の動き、足の裏の感覚など)に注意を向ける。 目に見える風景、聞こえてくる音、風がそよぐ感じなどに注意を向ける。 始まりがあり、ピークがあって、いずれは消えていくことが分かれば、手放すことができる。 つまり、私的出来事(思考、感情、身体感覚、記憶など)を、ありのままに観察する力を養っている。

33 エクスポージャ中の不安感の推移

34 ご清聴ありがとうございました


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