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第19課 人の寿命と病気 本文の説明
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第一段落 いかなる生物にも生命の始まりと終りがある。生命の誕生は素晴らしいドラマだが、その命には限りがある。生物であるからには、死を避けることはできないのである。生命の長さは、生命の種類によって大体決まっている。我々人間、ホモ·サピエンスはどうかというと、哺乳類の中では長生きの部類に属する。記録によれば、最も長く生きた年数は、ハツカネズミが約三年、ウサギ十三年、猫、犬、ライオン三十年、馬六十年、鯨九十年、ヒト百十年余となっている。
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第二段落 総じて野生動物は、日照り、食糧不足、気温変化、天敵の攻撃といったような厳し自然の状況にさらされているので、天寿を全うするのは困難である。したがって、最長寿記録も、あくまでも記録の上のことで、動物園や実験室など、動物を飼う条件の整った所で出されたものが多い。
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第三段落 ヒトは、猿の仲間から枝分かれした後、寒さや外敵から身を守ろうとして、衣服や住居を考案し、調理や暖房に火を利用するになった。自らの(飼育条件)を整えることで、五万年の昔に長寿の(資格)を手に入れたのである。
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第四段落 それと同時に、ヒトには長生きの遺伝素質も本来備わっていると考えられる。昔から大型の動物ほど長生きの傾向があったことはよく知られてる。哺乳類のように体内の発熱反応で体温を一定に保っている場合は、大きい方が体重あたりの表面積が小さく、エネルギーの消耗度が低くて済むためられしい。
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第五段落 また、ヒトは、SOD即ちスーパーキシドスムーゼという酵素の働きが抜きんでている。陸上の動物は、呼吸で空気中の酸素を取り入れて生きているが、実は、この酸素から生じる過激な活性酸素が細胞を痛めつけ、老化を促進している。この活性酸素を無毒化するのが、ほかならぬSODというわけなのである。
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第六段落 霊長類の最長寿命は、体が成熟する年数のおよそ六倍に当たるとされている。ヒトの成熟年齢を十七歳から二十歳あたりとすれば、理論上は、百二十歳前後まで生き延びられる計算になる。ヒトという動物には、このように長生きの条件がそろっていると見てよいであろう。
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第七段落 近くごろは、若々しいお年寄りをあちこちで見かけるようになった。七十歳などといっても、肌の張りや、つや、背筋の伸び具合などからは想像もできないほどである。目下、肉体年齢の若返りが進行中なのであろう。
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第八段落 昭和初期、日本は短命国の代表であった。当時トップのスウェーデンやニュージーランドとは平均寿命の差が二十歳以上も開いている。しかし、昭和六十年、男性は七十五歳,女性は八十歳を超えるようになった。ついに世界の長寿国グループの仲間入りを果たしたのである。かつては乳児千人のうち、一歳未満で百六十人以上も死んでいた。その数が三桁から一桁台へと減り、今では五人以下にまで激減した。戦後、急に平均寿命が延びたのは何といっても栄養改善と、医療や医薬品の進歩で乳幼児の死亡と結核患者が大幅に減少たためである。しかし、ここ数年の延びは、特に中高年の若返り現象、脳卒中の急減に負うところが少なくない。
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第九段落 脳卒中は、長い間、高齢者を象徴する病として死因のトップを占めておた。しかしながら、一九八十年代に、がん、心臓病と入れ替わって、三位に落ちてしまった。其の主たる原因は、高血圧の早期発見と治療の普及と考えられている。また、栄養改善、殊に動物性蛋白質をとるようになったことも関係があるであろう。脳卒中というのは、頭が中の細い血管が詰まったり、破れたりして起こる。蛋白質を十分に取らないと、栄養不足から血管の老化が進んで、もろくなり、血圧が高くなった時など故障を起こす恐れがある。豊かになった食生活も脳卒中の発生を抑えてきたと見てよいのではないだろうか。
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第十段落 人は三十歳を過ぎたころ、何となく体力の衰えを感じ始める。駅の階段を駆けあがった時、息が切れたり、夜ふかしの疲れが翌朝まで取れなかったりと言うように調子の悪いことが起こってくる。こんな時、単なる運動不足だろうと軽く考えて、老化の坂を転がり始めたことにはなかなか気付かないものである。老化とは臓器の予備力が弱っていくことであるが、人によって差がある。いつまでも若いつもりで、無理や不摂生を重ねていると、とんでもない結果になりかねない。
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第十一段落 成人病というのは、病状が出た時は、もうどうにもならないといったケースが多い。手遅れになるのが怖ければ、定期的に健康診断を受け、早期発見に努めるほかない。いわゆる(三大成人病)とされるがんも、心臓病も、脳卒中も、二十年から三十年という長い潜伏期間がある。病気が静かに進行していって、本人は全然自覚症状がないということも多いのである。
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第十二段落 がんが例にとって考えてみよう。実は、我々の人体を構成している六十兆個の細胞すべてには、(がん遺伝子)が潜んでいるらしい。正常な状態では、細胞同士の結合や分裂の調整をしているのだが、発がん物質の刺激を受けると、その機能が眼を醒ます。徐々に勢力を持ち始めてあばれ出し、ついにはがん細胞に変わってしまうこともあるという。しかし、大豆粒ほどの大きさに成長するまで二十年はかかると見られる。
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第十三段落 このような恐ろし働きをする発がん物質とはどんなものか。その種類は数千にのぼると言われている。しかも、その数は、減少するどころか、帰って増加する一方である。天然の食品、車の排気ガス、農薬などのも含まれているので、どんなに注意を払ったところで、体内に侵入してくる。現在のような生活をしている限り、発がん物質と無関係ではいられない。特に最近は煙草の害がたかましく言われるようになったが、その中のタールというには、血液にのって膀胱にまでいき、がんを発生させるのである。
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第十四段落 一方、幸いにも、発がん作用を抑える有益な成分も、ちゃんと存在している。検査によってそれらは野菜の中に含まれていることがわかっいる。ホウレン草、ピーマン、人参、カボチャなどの色の濃い野菜(緑黄色野菜)に含まれているビタミンAやカロチン、淡色の野菜にも含まれているビタミンCなどがそれである。更に、野菜繊維は、便通を良くし、腸の中の悪いものを吸収して、体外に排出してくれる。長期にわたって追跡調査を実施してきた国立がんセンターの報告によると、緑黄色野菜を欠かさず取っている人々の死亡率は低いということである。
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第十五段落 近年、がんに関する研究は急速な進歩を遂げた。がんの原因を統計で探ってきた学者たちの貴重な研究が実りつつあると言えよう。要は、便食をせず、いろいろな食品をバランスよくとり、十分な休養をとることである。強力な免疫力の保持に努めることも重要であろう。
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第十六段落 とにかく、むやみに病気を恐れることはない。これから先は、予防次第で、だれもが百二十年近い幸福な人生を生きることも夢でなくなる時代が来るかもしれないのである。
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