Presentation is loading. Please wait.

Presentation is loading. Please wait.

胃癌におけるCOX-2遺伝子の異常メチル化と ヒストンの脱アセチル化

Similar presentations


Presentation on theme: "胃癌におけるCOX-2遺伝子の異常メチル化と ヒストンの脱アセチル化"— Presentation transcript:

1 胃癌におけるCOX-2遺伝子の異常メチル化と ヒストンの脱アセチル化
Aberrant methylation and histone deacetylation of cyclooxygenase 2 in gastric cancer. International Journal of Cancer 2002, 97: 胃癌におけるCOX-2遺伝子の異常メチル化とヒストンの脱アセチル化について検討を行いましたのでご報告させていただきます。 内科学第一講座 菊地 剛史

2 研究の背景 COX-2遺伝子は胃癌の約80%において発現上昇が報告されており、癌化に重要な役割を果たしていると考えられる
NSAIDsやCOX-2選択的阻害薬により、胃癌の発生が 40 % 減少する報告もあり、細胞株においてアポトーシスの誘導がおきることから、過剰発現が発癌に関与している可能性が示唆される まず、研究の背景といたしまして、COX-2遺伝子についてご説明させていただきます。 COX-2遺伝子は胃癌において発現上昇が報告されており、癌化に重要な役割を果たしていると考えられます。 その理由として下に図で示しましたように、COX-2の過剰発現により、アラキドン酸からプロスタグランディンE2産生が増加し、左側に示しましたように、COX-2自身、あるいはPGE2を介して増殖因子の発現、血管新生因子の発現など、細胞増殖に有利な環境へ働きかけるものと考えられています。また右側に示しましたように、細胞外マトリックスプロテアーゼの発現上昇や、E-cadherinに代表される細胞接着因子の発現低下により、腫瘍細胞の局所浸潤、転移に関与する可能性が示されています。一方、非ステロイド系抗炎症薬やCOX-2選択的阻害薬により、胃癌の発生頻度が40%減少する報告もあり、癌治療の観点からも重要な分子として考えられています。 COX-2 発現上昇 細胞 増殖 増殖因子 発現誘導 MMP-2 活性上昇 浸潤能 獲得 PGE2 上昇 血管新生因子 発現誘導 E-cadherin 発現低下

3 COX-2 遺伝子の発現制御機構 p53 COX-2 EGF -R RAS MAPK 転写活性化 転写抑制
ついてシェーマにしています。 EGFを代表とする細胞増殖因子により、COX-2遺伝子の発現が誘導されることが知られています。EGFによる発現はRASを介し、MAPキナーゼカスケードを介して発現誘導が起きることが知られています。一方抑制因子としては、p53に代表される腫瘍抑制因子により発現が低下する報告があります。p53による抑制はWild typeの場合に抑制され、p53がMutant タイプの場合にはCOX-2遺伝子の発現抑制作用は失われます。 COX-2 COX-2 の遺伝子発現はgrowth factor など oncogenic な signal により正に、p53 などの anti-oncogenic な signal により負に制御されている

4 研究の目的 COX-2遺伝子の発現制御は不明な部分が多く、その解明は発癌機序の解明につながるものとして期待される
COX-2遺伝子の上流領域に位置するCpG アイランドにおける、COX-2遺伝子の発現制御と異常CpGメチル化について検討を行った メチル化による遺伝子発現抑制において関連が指摘されているヒストンの脱アセチル化について検討を加え、胃癌におけるCOX-2遺伝子のエピジェネティックな発現制御機構について明らかにする 今回の研究の目的についてですが、 COX-2遺伝子の発現制御は不明な部分が多く、その解明は発癌機序の解明につながるものとして期待されています 本研究においては、COX-2遺伝子の上流領域に位置するCpG アイランドにおける、COX-2遺伝子の発現制御と異常CpGメチル化について検討を行いました。 また、メチル化による遺伝子発現制御において関連が指摘されているヒストンの脱アセチル化について検討を加え、胃癌におけるCOX-2遺伝子のエピジェネティックな発現制御機構について明らかにすることを目的といたしました。

5 COBRA (COmbined Bisulfite Restriction Analysis ) 法の概略
TCACAGAG CGG bisulfite& PCR Restriction& electrophoresis sodium bisulfite 5m GCA C TUAUAGAGCGG PCR GTAC 0% 50% 100% Methylation Afa I site 方法論について申し上げます。 メチル化の解析手法といたしまして、Combined Bisulfite Restriction Analysis (COBRA法)を用いて解析を行いました。 左側にSodium Bisulfiteによる塩基配列の変化を示しています。左側中段に示しましたように、Sodium Bisulfiteにより、メチル化していないシトシンはウラシルに変換されます。中段、左側に黄色の「ダッシュ」で囲んでいるウラシルがそうです。 メチル化シトシンはこの変化に抵抗性であり、この処理によってもウラシルへの変換はおきません。中段で赤い色で示しています。 Sodium Bisulfite処理したDNAを用いてPCRを行うことにより、最終的にメチル化しているシトシンはそのままに、それ以外のシトシンはチミンに 塩基配列の変化がおきます。 COBRA法の概略を右側に示していますが、このSodium Bisulfiteによる変化により、制限酵素認識塩基配列が生じることを利用し、制限酵素処理されたPCR productを電気泳動することにより、メチル化を検出します。一番右側に示したものが電気泳動の模式図ですが、白いバンドで示したPCR productが一番左のレーンがメチル化のない場合、制限酵素処理がされずに同じ長さで、一番右側のレーンは完全にメチル化している場合で処理前より短いバンドが検出されます。真中のレーンが50%メチル化されている場合、短いバンドと、制限酵素処理前のバンドが同じ濃さで検出することができます。 TTATAGAGCGG 今回の検討で用いた COBRA 法は、DNAをBisulfiteで処理することにより、メチル化しているシトシンはシトシンのまま、メチル化していないシトシンはウラシルに変換される。Bisulfite処理したDNAをPCR後、メチル化アレルのみを切断する制限酵素で切断することにより、メチル化を定量的に検出出来る。

6 胃癌細胞株における COX-2 遺伝子の異常メチル化
CpG Exon 1 100 bp AfaI bp COBRA TaiI bp MKN45 MKN74 MKN28 KatoIII AZ521 NUGC3 MKN7 RKO U M (%) <1 100 32 86 JRST U M MKN45 MKN74 MKN28 KatoIII AZ521 NUGC3 MKN7 RKO <1 100 34 86 (%) JRST AfaI TaiI それでは、結果について供覧申し上げます。 胃癌細胞株を用いてCOBRA法によりメチル化の検討を行った結果を示します。上段にCOBRAに用いたPCR領域について、示しています。一番上にCpGと示しているのは短い縦棒それぞれが、CpGサイトを示しています。増幅に用いた領域は緑色の箱で示したExon1にかかるように設計し、187bpありますが、制限酵素として用いたAfaIにて、164bpに、TaiI にて114bpへと切断されます。 下に電気泳動の写真でその結果を示していますが、メチル化アレルをMで、非メチル化アレルをUで示しています。制限酵素としてAfaIを用いた場合を左側に、TaiIを用いた場合を右側に示しています。RKOというcell lineはpositive controlとして用いていますが、いずれの結果においてもレーン右側のMKN28とKatoIIIにおいてメチル化あれるを検出し、これら検討を行った8種類の細胞株のうち2種類の細胞株において異常メチル化を認めました。 COBRA 法により検出されたメチル化アレルを M で、非メチル化アレルを U で示している。Afa I , Tai I いずれの制限酵素処理においても、MKN28、KatoIII についてメチル化を認め、胃癌細胞株 8 株中 2 株 ( 25% )において異常メチル化を検出した。RKO は Positive control として用いた。

7 胃癌細胞株における COX-2 遺伝子の異常メチル化
Bisulfite-Sequence Unmethylated CpG Methylated CpG A A/T A A/T CpG CpG A : Afa I 認識CpG T : Tai I 認識CpG MKN 7 MKN 28 より詳細なメチル化の検索として、Bisulfite処理PCRに引き続いてクローニングシーケンスを行い、メチル化の状態について検討を行いました。COBRA法にてメチル化を認めなかったMKN7,MKN45について左側に、メチル化を認めたMKN28,KatoIIIについて右側に示しています。 上に示しているCpGは先ほどと同じようにそれぞれ短い縦棒がCpGサイトを指しています。また、COBRA法の制限酵素認識CpGサイトをAまたはTにて示しています。 それぞれのCpGサイトにおけるメチル化の状態はオープンサークルがメチル化なし、クローズなサークルがメチル化ありを示しています。 左側に示した、COBRA法でメチル化を認めなかったMKN7, MKN45 においては、検討を行った領域ほぼ全体にメチル化は検出されませんでした。 一方、メチル化を認めたMKN28 Kato IIIにおいては、クローズなサークルがほとんどで、COBRA法による認識CpGサイトのみならず、周辺のCpGサイトに濃密にメチル化が認められていることがわかります。このように、一部の胃癌細胞株においてはCOX-2遺伝子のプロモーター領域にメチル化がみとめられ、メチル化はプロモーター領域全体にわたっていることがわかりました。 MKN 45 KATO III  Bisulfite – Sequenceの結果を示す。COBRA法、Bisulfite-SSCP法によりメチル化を検出したMKN28,KatoIIIにおいて、メチル化はプロモーター領域全体に密におこっていることが明らかとなった。

8 胃癌細胞株における COX-2 遺伝子の発現 RT-PCR MKN45 MKN74 NUGC3 MKN28 KatoIII MKN7 AZ521 COX-2 GAPDH 次に、異常メチル化と遺伝子発現抑制の関連を検討するために、COX-2遺伝子の発現をRT-PCR法を用いて検討を行いました。その結果を示しています。下にコントロールとして、 GAPDH を示しています。さきほど異常メチル化を認めたMKN28,Kato IIIにおいてCOX-2遺伝子の発現を認めず、異常メチル化と遺伝子発現抑制がよく相関することが明らかとなりました。 異常メチル化を呈した MKN28 , KatoIII においては遺伝子の発現を認めず、メチル化と発現低下が相関することが明らかとなった。

9 胃癌手術摘出標本におけるメチル化の検出 手術摘出標本 93例中 メチル化 11例(12%) 正常胃組織 18例中 メチル化 0例
COBRA N : Normal tissue T : Tumor tissue N T 37 46 40 (%) Y-1 Y-16 N112 N114 N115 N124 U M 手術摘出標本 93例中 メチル化 例(12%) 正常胃組織 18例中 メチル化 例 胃癌手術摘出標本を用いて、COX-2遺伝子のメチル化の頻度を検索いたしました。検討は93例について行いました。その一部を示しています。 電気泳動の写真は、先ほどと同じように、メチル化アレルをMで、非メチル化アレルをUで示しています。Tは腫瘍組織、Nは同一症例の正常胃組織を示しています。上に症例の番号を示していますが、N112,N114,Y-16の症例においてメチル化アレルが検出されました。またこれらの症例の正常組織ではメチル化が検出されませんでした。検討を行った胃癌手術摘出標本93例中11例約12%にメチル化を検出いたしました。また検討を行った正常胃組織18例についてはメチル化は全く認めませんでした。  93例中11例(12%)においてメチル化が認められる一方、正常胃組織についてはメチル化を認めなかった。

10 免疫染色による COX-2 遺伝子の発現の検討
正常胃粘膜 胃癌 異常メチル化(+) 胃癌 異常メチル化(ー) 胃癌 異常メチル化(ー) 手術摘出標本 27例中 発現陽性 例 (70%) 発現陰性 8例 (30%) 発現陰性 8例中 メチル化 例 胃癌におけるCOX-2遺伝子の発現の検討を抗COX-2モノクローナル抗体を用いて、免疫染色にて行いました。その染色例を示しています。一番左側に正常の胃組織を染色していますが、ほぼ染色を認めません。次に染色を認めなかった症例を示していますが、この症例においてはCOX-2遺伝子のメチル化を認めました。右側2例は染色陽性で、メチル化は認めませんでした。 免疫染色によるCOX-2遺伝子の発現検討は27例に対し行い、うち19例にてCOX-2の発現を認め、8例において発現を認めませんでした。発現を認めなかった8例中6例において、COX-2遺伝子の異常メチル化を認めました。 このように、発現低下と異常メチル化に相関を認めました。 抗COX-2モノクローナル抗体を用いて、発現の検討を免疫染色により行った。 検討では、27例に対し行い、19例においては発現を認め、8例において発現を認めなかった 。 発現を認めなかった8例中6例はDNAの異常メチル化を認め、異常メチル化と発現低下に相関を認めた。

11 Chromatin Immunoprecipitation ( ChIP )
クロマチン免疫沈降法の概略 Transcription factor Immunoprecipitation by Anti-Ac histone H3 Ac Purify DNA PCR Target gene DNA Acetylation + Ac Ac M M Ac Ac ヒストンの アセチル化状態 の変化 ヒストン アセチル化 HDAC MeCP2 以上、COX-2遺伝子におけるメチル化と発現抑制についてcell lineおよび胃癌手術摘出標本を用いた検討についてご説明申し上げました。 異常メチル化による遺伝子の発現抑制とヒストン脱アセチル化による構造変化の関連が近年報告されていますが、個々の遺伝子に関する報告は皆無です。 今回、COX-2遺伝子において、メチル化と発現抑制がよく関連することを示しましたが、もう一つのエピジェネティックな変化である、ヒストンの脱アセチル化について検討を行いました。左側にヒストンのアセチル化による遺伝子発現の模式図を示しました。通常の状態では上側に示したようにヒストンはアセチル化されており、転写因子がアクセスしやすいよう、開いた構造をとっています。白抜きの字Mでメチル化を示していますが、メチル化により、下側に示したように、ヒストンの脱アセチル化が起きると、いわゆるクロマチンリモデリングがおこり、転写因子がアクセスできなくなります。このヒストンのアセチル化を検討するためにChromatin Histone Immunoprecipitationを行いました。簡単な概略について右側に示しています。免疫沈降をアセチル化ヒストンH3に対する抗体を用いて行い、DNAを抽出し、定量化することによりアセチル化ヒストンに付着しているDNAを判定することができます。PCRにて、目的とする遺伝子の領域を増幅することにより、個々の遺伝子に関して、ヒストンのアセチル化、脱アセチル化の状態の検討を行うことができます。 M M M M ヒストン 脱アセチル化 M M M M DNAメチル化によるCOX-2遺伝子発現抑制の分子機構に関して、クロマチンレベルで解析する目的で、クロマチン免疫沈降法により、ヒストンのアセチル化の状態を解析した。抗アセチル化ヒストンH3抗体を用いて免疫沈降を行って得られたDNAを用いてPCRを行い、アセチル化の程度を定量した。

12 半定量 PCR による胃癌細胞株における クロマチン免疫沈降法の結果
MKN45 MKN74 MKN28 AZ521 MKN7 3 JRST NUGC3 KatoIII 2.5 2 Input COX-2 COX-2/GAPDH 1.5 1 Anti Ac-H3 COX-2 0.5 GAPDH No Ab JRST COX-2 AZ521 MKN7 MKN45 MKN74 NUGC3 MKN28 KatoIII クロマチン免疫沈降法により、胃癌細胞株を用いてヒストンのアセチル化の状態について検討を行いました。左側にその結果を示しています。一番上のバンドは免疫沈降を行う前のサンプルよりPCRを行ったもので、GenomicDNAからのPCRということになります。また一番下のバンドは、免疫沈降に際し、抗体を使用せずに行ったサンプルからのPCRの結果で、バンドが出ていないということはNon Specificなものではないということを意味します。Anti-AcH3と書いた真中2段のバンドが免疫沈降後のサンプルからのPCRの結果です。上から2番目のバンドが目的とするCOX-2遺伝子のPCRの結果で上から3番目のGAPDHはコントロールとして用いました。デンシトメーターを用いて、それぞれのバンドを計測し、コントロールGAPDHとCOX-2遺伝子の比を右側の棒グラフにしています。それぞれのセルラインのメチル化の状態、また発現状態について、下に示しています。メチル化を検出し、発現低下を認めたMKN28,KatoIIIにおいて、上から2番目のバンドが薄いことがわかります。右側の棒グラフでにおいてこれら、2つのcell lineにおいて、COX-2遺伝子がコントロールに比べてすくないということから、メチル化を呈したこれら2つのcell lineではアセチル化ヒストンに付着しているDNAが少ない、すなわちヒストンの脱アセチル化が起きているということがわかりました。 Expression + + + + + + Methylation + + Input は免疫沈降を行う前のDNA、No Abは免疫沈降の際に抗体を使用しない場合のコントロールとして用いた.。メチル化を認め、発現の低下を認めた MKN28 , KATOIII においてアセチル化ヒストンに付着したDNAが認めないことから、ヒストンの脱アセチル化が起きていることが明らかとなった。

13 ヒストン脱アセチル化阻害剤による遺伝子再発現の検討
胃癌細胞株における脱メチル化剤、 ヒストン脱アセチル化阻害剤による遺伝子再発現の検討 脱メチル化剤(5-Aza-dC ) ヒストン脱アセチル化阻害剤(TSA) MKN28 MKN28 MKN45 MKN45 MKN28 Aza+TSA Aza-dC (-) 0.1 (mM ) TSA GAPDH COX-2 GAPDH COX-2 メチル化による遺伝子発現抑制は脱メチル化剤の投与により、再発現を呈することが知られています。 また、11ページで示しました、ヒストンの脱アセチル化は脱アセチル化阻害剤Trichostatin A (TSA)の投与でヒストンの再アセチル化を起こすことが知られています。メチル化を検出したMKN28細胞株を用いて、脱メチル化剤5-Aza-dCの投与でCOX-2遺伝子の再発現の検討を行った結果を左側に示しています。右側にヒストン脱アセチル化阻害剤TSAの投与による再発現の結果を示しています。MKN45はメチル化を検出しなかった細胞株ですが、Positive Controlとして示しています。左側に示した脱メチル化剤の投与では、レーンの上に脱メチル化剤の濃度を示しています。示しましたように、濃度依存的にCOX-2遺伝子の再発現を認めました。右側に示したヒストン脱アセチル化阻害剤の投与では、右側3つのレーンは左側から脱メチル化剤単独、ヒストン脱アセチル化剤単独、これら2剤の組み合わせ投与の順となっています。脱メチル化剤単独で若干のバンドが見られますが、ヒストン脱アセチル化阻害剤単独でバンドが認められません。これら組み合わせでは単独投与に比べてより強いバンドが認められます。これらの結果から、脱メチル化剤では濃度依存性にCOX-2遺伝子の再発現が誘導され、ヒストン脱アセチル化阻害材は単独では再発現を誘導することができず、脱メチル化剤の効果を増強するということがわかりました。 5-Aza-dC : 0.1mM   RT-PCR により脱メチル化剤 5-Aza-dC 並びに、ヒストン脱アセチル化阻害剤 TSA 投与時における COX-2 遺伝子の再発現の検討を 行った。 異常メチル化を呈した胃癌細胞株 MKN28 に対する 5-Aza-dC の投与は濃度依存的に遺伝子の再発現を認めた。一方、TSA のみの投与では再発現を認めなかった。5-Aza-dC との組み合わせのTSA の追加投与により 5-Aza-dC 単独投与より、発現の増強が認められた。

14 胃癌細胞株における脱メチル化剤、ヒストン脱アセチル化
阻害剤によるヒストンのアセチル化の検討 MKN28 1.2 Aza+TSA 1 MKN45 MKN28 Aza-dC TSA 0.8 COX-2/GAPDH 0.6 Input COX-2 0.4 Anti Ac-H3 COX-2 0.2 GAPDH No Ab COX-2 MKN45 MKN28 Aza-dC TSA 以上、示しましたように、脱メチル化剤により、COX-2遺伝子の再発現が誘導されますが、そのときのヒストンの状態について、クロマチン免疫沈降法により検討をおこないました。左側にその結果を示し、先ほどと同様に、コントロールであるGAPDHとCOX-2のバンドの比を右側に棒グラフとして示しています。MKN45はメチル化を認めず、ヒストンの脱アセチル化も認めない細胞株でコントロールとして用いました。右側3つのレーンがそれぞれ、脱メチル化剤単独、ヒストン脱アセチル化阻害剤単独、これらの組みあわせの投与となっています。レーンの下側にそれぞれのメチル化の状態、遺伝子の発現の状態を示しています。右から3つ目のレーンの脱メチル化剤単独では遺伝子の再発現が誘導されるものの、右側に示した棒グラフでは比は低いままとなっており、ヒストンの脱アセチル化の状態に変化があまりないということがわかります。一方ヒストン脱アセチル化阻害剤単独では、右の棒グラフでヒストンの再アセチル化が誘導されているものの、先ほど示しましたように、遺伝子の再発現の誘導できていないという結果です。これらヒストンのアセチル化の状態の解析から、COX-2遺伝子の再発現の誘導には, ヒストンの再アセチル化よりも脱メチル化の方が主要な役割を果たしていることがわかりました。 *** Aza+TSA Expression + + + Methylation + + MKN28 TSAの投与でヒストンの再アセチル化が確認されたが、5-Aza-dC投与のみでは遺伝子の再発現を認めるもののヒストンの再アセチル化は弱く、遺伝子の発現にはDNAの異常メチル化が優位に関与するものと考えられた。

15 ま と め 胃癌細胞株 8例中2例(25%)、胃癌症例93例中11例(12%)にCOX-2遺伝子の異常メチル化を認めた。
相関していた。 クロマチン免疫沈降法により、 COX-2の遺伝子のプロモーターがメチル化している例では、ヒストンの脱アセチル化を認めた。 以上、結果のまとめを示しました。 以上の結果から、 COX-2遺伝子の発現調節において、 プロモーターのメチル化とヒストンアセチル化が重要であると考えられた。

16 異常メチル化とヒストン構造の変化による遺伝子発現抑制
Transcription factor Spreading of methylation Ac Ac 異常な遺伝子のメチル化 M M Ac Ac M MeCP2 : CH3 遺伝子が発現している状態 脱メチル化 ヒストンのアセチル化 MeCP2 ヒストンの脱アセチル化 クロマチンの凝縮 M M M M 異常メチル化とヒストン構造の変化による遺伝子発現抑制についてシェーマとして示しました。 上段に示しましたように、通常遺伝子のプロモーター領域はメチル化されておらず、転写因子がアクセスしやすいようにクロマチンは開いた構造になっています。メチル化が起きると、MeCP2などのメチルCpG結合タンパクがDNAに結合し(中段右側)、ヒストン脱アセチル化酵素をリクルートします。その結果クロマチンは閉じた状態になり、遺伝子の発現は抑制されます。(下段)今回の実験結果から、メチル化している例では、ヒストンの脱アセチル化が起きており、下の段に示したような状態であることがわかりましたが、脱メチル化剤、ヒストン脱アセチル化阻害剤の投与において遺伝子再発現には、ヒストンの再アセチル化は必ずしも必要ではないという新しい知見が得られました。つまり、この図で示すところの、上段のような状態ではなくとも、遺伝子の転写は起こすことができるという点が新しい知見です。 遺伝子の発現抑制 M M M M 通常遺伝子のプロモーター領域はメチル化されておらず、転写因子がアクセスしやすいようにクロマチンは開いた構造になっている。(上段)メチル化が起きると、MeCP2などのメチルCpG結合タンパクがDNAに結合し(中段右側)、ヒストン脱アセチル化酵素をリクルートする。その結果クロマチンは閉じた状態になり、遺伝子の発現は抑制される。(下段)

17 CpG island methylator phenotype
胃癌における異常メチル化の発癌への関与 Methylation profile in gastric cancer CIMP in gastric cancer cell lines Gene CIMP(+) CIMP(-) CIMP: CpG island methylator phenotype MKN28 KatoIII MKN45 MKN7 U M U M COX-2 methylated U M U M E-cad unmethylated 我々の教室では一貫して、胃癌における異常メチル化の研究を行ってきました。現在までに、胃癌におけるp16遺伝子、細胞周期調節にかかわる14-3-3sigma遺伝子などついて異常メチル化の報告をしてきました。左側に示したものは、胃癌手術摘出標本における、メチル化の状態をテーブルにしたものです。横に見たときにそれぞれの症例における遺伝子のメチル化の状態を示し、縦に見たときには遺伝子における、メチル化の程度を示しています。胃癌の中には、テーブル上側に示しましたように、多くの遺伝子において、異常メチル化を呈する腫瘍群が存在することを示してきました。つまり、このような腫瘍群ではメチル化を調節する機能の異常により、異常メチル化が起き、癌抑制遺伝子の発現抑制などにより、悪性形質を獲得する可能性が示唆されます。このような腫瘍群をCpG island methylator phenotypeと呼んでいます。右側にcell lineで同様の知見が得られるものを示しました。左側に我々がCIMP陽性と考える、MKN28 Kato IIIについて右側にCIMP陰性と考えるMKN7 MKN 45についてCOX-2、E-cadherin, p57遺伝子についてのCOBRA法によるメチル化の検討結果を示しています。このようにCIMP陽性と考えられる腫瘍群においては、脱メチル化剤投与による遺伝子再発現ががん治療への有効なストラテジーと考えられるとともに、腫瘍の性格に応じた、癌の診断法の必要性を示唆する重要な所見と考えています。 Case U M U M Distinct methylation pattern and microsatellite instability in sporadic gastric cancer. Int J Cancer. 1999 p57 左図に示したように、胃癌の一部はゲノムワイドなメチル化の異常が癌化に関与すると考えられる。そのような腫瘍においては、p16INK4A、E-cadherin、hMLH1 のメチル化が高頻度で認められる ( Suzuki et al, Int. J. Cancer, 1999)。右側に CIMP+ 細胞株、MKN28、Kato III およびCIMP - 細胞株 MKN7、MKN45 における各種遺伝子のメチル化検出例を示す。

18 COX-2 の発現と癌関連遺伝子異常の関連 K-ras p53 ? COX-2阻害剤 COX-2 CIMP - APC E-CAD p16
Pro-apototic gene? Methylation メチル化阻害剤 COX-2 CIMP + 以上、今回の研究結果から胃癌の発癌にはCOX-2の発現を伴う腫瘍群、上側に示していますが、の他にCOX-2遺伝子がメチル化により発現抑制されている腫瘍群が存在することを明らかにいたしました。このような腫瘍ではCOX-2阻害剤の効果は期待することができないと考えられました。 一部のCIMP+ 腫瘍では、COX-2 は異常メチル化により発現ぜず、 COX-2 非依存性の発癌経路をたどる。このような腫瘍にはメチル化 阻害剤が有効と考えられる.


Download ppt "胃癌におけるCOX-2遺伝子の異常メチル化と ヒストンの脱アセチル化"

Similar presentations


Ads by Google