生物学基礎 第4回 細胞の構造と機能と      細胞を構成する分子  和田 勝 東京医科歯科大学教養部.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
日本バイオインフォマティクス学会 バイオインフォマティクス カリキュラム中間報告
Advertisements

生物学 第4回 多様な細胞の形と働きは      タンパク質のおかげ 和田 勝.
微粒子合成化学・講義 村松淳司 村松淳司.
環境表面科学講義 村松淳司 村松淳司.
植物系統分類学・第13回 分子系統学の基礎と実践
遺伝子の解析 第2弾 DNAシークエンス法.
生物学 第6回 転写と翻訳 和田 勝.
細胞と多様性の 生物学 第2回 細胞の構造、細胞小器官など 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
特論B 細胞の生物学 第2回 転写 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
タンパク質(Protein) ~基本的なことについて~.
活性化エネルギー.
特論B 細胞の生物学 第3回 タンパク質の形と働き 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
MRテキストⅡ 疾病と治療(基礎) 2012年度版 第1章 人体の構造と機能 第2章 脳・神経系 第3章 循環器系 第4章 呼吸器系
細胞と多様性の 生物学 第3回 転写と翻訳 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
1. 生命界 エネルギー流概観 2. 水と生体分子 3. 細胞 生命の基本単位 4. 生体エネルギーと酵素 5. 蛋白質と生体膜(1) 6
5/21~6/11 担当講師 柘植謙爾(つげ けんじ) (6)第4章 ゲノム配列の解析
奈良女子大集中講義 バイオインフォマティクス (1) 分子生物学概観
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 水素伝達系.
代謝経路の有機化学 細胞内で行われている反応→代謝 大きな分子を小さな分子に分解→異化作用 第一段階 消化→加水分解
緩衝作用.
3)たんぱく質中に存在するアミノ酸のほとんどが(L-α-アミノ酸)である。
生体構成物質化学 早稲田大学理工学部化学科 担当 林 利彦.
セントラルドグマ 遺伝情報の流れ DNA→RNA→蛋白質→代謝などの生命活動 DNA→遺伝情報を記録した「設計図」 全部の「設計図」→ゲノム
生命科学基礎C 第3回 神経による筋収縮の指令 -ニューロン 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生体分子を構成している元素 有機分子   C, H, O, N, P, S(C, H, O, N で99%) 単原子イオン 
生物科学科(高分子機能学) 生体高分子解析学講座(第3) スタッフ 教授 新田勝利 助教授 出村誠 助手 相沢智康
生物科学科(高分子機能学) 生体高分子解析学講座(第3) スタッフ 教授 新田勝利 助教授 出村誠 助手 相沢智康
生命科学基礎C 第4回 神経による筋収縮の指令 -伝達 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
個体と多様性の 生物学 第6回 体を守る免疫機構Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
微粒子合成化学・講義 村松淳司
哺乳動物卵子における染色体分配に関わる  細胞骨格再編成の制御機構の解明 弘前大学特別研究員 椛嶋(かばしま)克哉 農学生命科学部畜産学研究室.
コレステロール その生合成の調節について 家政学部 通信教育課程 食物学科 4年 大橋 万里子 佐藤 由美子 鷲見 由紀子 堀田 晴 子
高脂血症の恐怖 胃 基礎細胞生物学 第14回(1/22) 2. 胃酸の分泌 1. 胃 3. 消化管(小腸)上皮細胞の更新
メンデルの分離の法則 雑種第1世代どうしを交配すると草丈の高いものが787個体、草丈の低いものが277個体であった。
一分子で出来た回転モーター、F1-ATPaseの動作機構 ーたんぱく質の物理ー
「生体小宇宙のなぞにせまる 」 ー生物物理学は生命と物理の架け橋-  物理学専攻 樋口秀男.
特論B 細胞の生物学 第5回 エネルギー代謝 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
原子で書いた文字「PEACE ’91 HCRL」.白い丸はMoS2結晶上の硫黄原子.走査型トンネル顕微鏡写真.
生命科学基礎C 第8回 免疫Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
Chemistry and Biotechnology
生物学 第6回 遺伝子はDNAという分子だった 和田 勝.
遺伝子の解析 第1弾 DNAについて&PCR法
Central Dogma Epigenetics
生命科学基礎C 第1回 ホルモンと受容体 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
膜タンパク質のインフォマテイクス 必要とされている課題.
カルビンーベンソン回路 CO23分子が回路を一回りすると 1分子のC3ができ、9分子のATPと 6分子の(NADH+H+)消費される.
Keirin 生物 第1部 体細胞分裂の過程 第1部 実験4 <体細胞分裂の過程>.
学年   名列    名前 物理化学  第2章 1 Ver. 2.1 福井工業大学 原 道寛 HARA2005.
生物学基礎 第1回 この科目で学ぶこととゴール      生物学とその方法 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
個体と多様性の 生物学 第6回 体を守る免疫機構Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
アミノ酸の分解とアンモニアの代謝 タンパク質やアミノ酸はどこにでもあるありふれた食材ですが、実は分解されるとアンモニアという、体に非常に有害な物質を産生します。これは、普段われわれが何も気にせずに飲んでいる水が、実はH+(酸)とOH-(アルカリ)で出来ているのと似ているように感じます。今回、アミノ酸の分解に伴って産生されるアンモニアを、生体はどのようにして無毒化しているかを考えましょう。
遺伝性疾患・先天性疾患  染色体・遺伝子の異常とその分類  遺伝性疾患  先天性疾患.
生物学 第7回 エネルギー代謝 和田 勝.
細胞の膜構造について.
1.細胞の構造と機能の理解 2.核,細胞膜,細胞内小器官の構造と機能の理解 3.細胞の機能,物質輸送の理解 4.細胞分裂過程の理解
ギャップ結合の機能評価 H27.8.1 体験学習.
タンパク質.
孤立状態における生体分子の集合体の構造と反応
化学1 第12回講義        玉置信之 反応速度、酸・塩基、酸化還元.
●食物の消化と吸収 デンプン ブドウ糖 (だ液中の消化酵素…アミラーゼ) (すい液中の消化酵素) (小腸の壁の消化酵素)
生物学 第3回 すべての生物は細胞から 和田 勝.
物質とエネルギーの変換 代謝 生物体を中心とした物質の変化      物質の合成、物質の分解 同化  複雑な物質を合成する反応 異化  物質を分解する反応 
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
特論B 細胞の生物学 第6回 エネルギーはどこから 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
細胞の構造と機能.
⑥ ⑤ ① ③ ② ④ 小胞の出芽と融合 11/20 ATPの使い途2 出芽 核 細胞質 供与膜 融合 標的膜 リソソーム
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
分子生物情報学(0) バイオインフォマティクス
学年   名列    名前 物理化学  第2章 1 Ver. 2.0 福井工業大学 原 道寛 HARA2005.
Presentation transcript:

生物学基礎 第4回 細胞の構造と機能と      細胞を構成する分子  和田 勝 東京医科歯科大学教養部

細胞の構造 すべての生物は細胞から構成されていることがわかったので、すこし動物の細胞の構造を見ていこう。 基本的な構造を知らないと、これからの話が理解できないので、正確に覚えて欲しい。

細胞像の変遷 フックの細胞(実際は抜け殻)から、光学顕微鏡を経て電子顕微鏡まで。

動物細胞の構造 これらの構造を細胞小器官という。

原核細胞と真核細胞 例にあげたのは、真核生物の細胞 原核生物の細胞は、これとは異なり核膜がない、細胞小器官が発達していない。

核と細胞質 核 細胞質 細胞小器官 サイトゾール(液体部分)

サイトゾールと細胞小器官 上の図は模式図であり、実際はサイトゾールは細胞小器官で満たされている。

核 核の構造 核膜(nuclear envelope) 染色質(chromatin) 核小体(nucleolus) 核膜には、核膜孔(nuclear pore)がたくさん開いている。

核 核 核小体 染色質 核膜

染色質(クロマチン) ふだんの核の染色質は無定形に見える(実際は遺伝情報の読み出しがおこなわれている)。 細胞分裂の時には、染色体という構造をとる。

ヌクレオソーム クロマチンの構造は、ヒストン八量体にDNA鎖が巻きついたヌクレオソームが基本構造。

ヌクレオソーム ヌクレオソームが下のような繊維構造を取る。これがクロマチン。

染色体

DNAと染色体 染色体の数は種によって決まっている。ヒトの染色体の数は46本(23対)で、半数は父親、半数は母親から。 1本の染色体は一続きのDNA分子なので、46本のDNA分子が、ふだんはクロマチン繊維の形で核の中に分散して。

DNAと染色体 細胞分裂の時には凝集して染色体という形をとる。 なお真核生物では、必ずしもDNA=遺伝子ではない。

小胞体とリボソーム 小胞体(ER)の構造 細胞内に発達した膜系 粗面小胞体(rER) 滑面小胞体(sER) があり、連続している。 粗面小胞体にはリボソームが付着しているので、この名がある。

小胞体とリボソーム 粗面小胞体は、袋状の膜が積み重なっていて中に腔所がある。 滑面小胞体は管状の構造。

リボソームの構造 リボソームは大顆粒と小顆粒がダルマ状になったもの。

リボソームの機能 リボソームはタンパク合成の場 リボソームの表面で、遺伝情報をもとにタンパク質が合成される。 小胞体は、付着したリボソームで作られたタンパク質を修飾してゴルジ体へ送るはたらき。

ゴルジ装置 平たい袋状の構造が積み重なったような構造。 ゴルジ装置は、小胞体から送られてきたタンパク質をパックして、分泌顆粒を作るはたらき。

ゴルジ装置 したがって、粗面小胞体とゴルジ装置は、分泌活動のさかんな細胞ではよく発達している。

ミトコンドリア 内外、二枚の膜からなる棒状の小器官。

ミトコンドリア 細胞の活動に必要なエネルギーを供給するパワープラント。ATP を生産する。 ミトコンドリアの基質には、独自のDNAとリボソームが含まれている。 自立的に分裂して数を増やす。

細胞骨格 3種類ある。左からアクチンフィラメント、微小管、中間径フィラメント。

細胞骨格 中空の管、13個のチューブリンで管壁を構成 2本のアクチン繊維が縒り合わさっている 繊維状タンパク質が縒り合わさった繊維   微小管 アクチンフィラメント 中間径フィラメント 構造 中空の管、13個のチューブリンで管壁を構成 2本のアクチン繊維が縒り合わさっている 繊維状タンパク質が縒り合わさった繊維 直径 25nm(管腔は15nm) 7nm 8-12nm 単位 αとβチューブリン アクチン ケラチンなど

細胞骨格 細胞が一定の形を保つ、分泌顆粒を分泌する、細胞小器官を動かせるのは細胞骨格のはたらき。

細胞膜 細胞の外側を区切る一枚の膜。     下の図は、2個の細胞が隣り合っている部分の電子顕微鏡写真。

細胞膜

細胞膜 細胞膜は外界とのインターフェイス。 細胞膜に埋め込まれた膜タンパク質がさまざまな機能を発揮する。     次の図は、物質の輸送に関するタンパク質。

動物細胞の構造 ちゃんと覚えておくように

サイズの感覚

化学の基礎知識 生物学を理解するためには、化学や物理の知識が必要。ここではこれから先、学ぶために最低限の化学の知識について話しておこう。 3つある。 1)水の性質、 2)タンパク質、 3)核酸 である。

水の性質 水はH2O 電荷の偏りがある

水の性質 そのため2個の水分子が近づくと H+-O----H+-O--H+ 水分子のこのような性質のために、分子量が小さいにもかかわらず水分子はきわめて粘性が高く、また沸点も氷点も高い。

水の性質 タンパク質のような大きな分子も水和して溶けることができる

タンパク質 タンパク質はアミノ酸のポリマー H2O アミノ酸は脱水縮合で鎖上につながる これをペプチド結合という これはジペプチドの場合

タンパク質 これはテトラペプチドの場合

タンパク質 アミノ酸の配列をタンパク質の一次構造という それでは二次構造は? ペプチド結合を作っている>C=Oと>NHの間で、水素結合によって形成される部分的な規則的繰り返し構造を二次構造という

タンパク質の二次構造 αヘリックス構造

タンパク質の二次構造 βシート構造

タンパク質の高次構造 卵白リゾチーム

タンパク質のはたらき タンパク質のこの形がさまざまな機能を生み出す 生体の機能はタンパク質分子が作り出す

核酸 塩基ATGCが直線状に配列している

核酸 塩基の配列が遺伝情報となっている

核酸とタンパク質 塩基の配列とアミノ酸の配列が対応している 遺伝情報がタンパク質を通して機能を実現している