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水ジェットキャビテーションの 有機物分解の応用に関する研究
2003年2月17日 システム創成学科 環境・エネルギーシステムコース 指導教官 山口 一教授 10776 中塚 史紀 中塚です。水ジェットキャビテーションの有機物分解の応用に関する研究、というテーマで卒業研究を行いました。
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水ジェットキャビテーションとは 水中のノズルから 高圧で水を噴出する ノズル 高圧水 界面の強いせん断 で渦が発生 水 簡単な装置
崩壊時に数千度、千数百気圧の高温・高圧 まず、水ジェットキャビテーションについて簡単に説明します。 水ジェットキャビテーションは、水中のノズルから高圧で水を噴出するという簡単な機構で作ることができます。 ノズルから出たジェットと周囲流体との間の強いせん断により渦が発生し、その渦の中心部の低圧で気泡が成長しキャビテーションが発生します。気泡は下流方向に成長し、崩壊してします。 この際に発生する数千度、千数百気圧とも言われる高温・高圧を有効に利用しようとする研究が進められています。 渦中心の低圧で 気泡が成長 気泡が崩壊 有効利用に向けた研究が近年盛ん
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水ジェットキャビテーションの利用 ・高い気泡崩壊圧が得られるので、様々な分野に応用されている。 ・金属材料の加工や表面改質、洗浄、バリ取り等
・有機物の分解や滅菌などにも応用できないか研究が進められている。 キャビテーションは、従来、流体機器に損傷を与えたり、騒音や振動などの問題を引き起こしたりするため、厄介もの扱いされてきましたが、近年は有効利用もされるようになってきました。特に水ジェットキャビテーションは単純な装置で実現可能であり、高い気泡崩壊圧が得られるので、様々な分野に利用されています。 例えば金属材料を切断したり、ピーニングを行って強度を上げたり、バリ取りに利用されています。 (バリ取りとは、紙を切ると切った面に細かい紙の切りカスが残るように、機械加工で削り落とした後に残る削りカスを、金属製のブラシですり落とす。) また、近年は有機物の分解や滅菌に応用するための研究がすすめられています。 水ジェットキャビテーションによる金属板の切断
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研究背景 ・ 過去の分解実験において、長時間の回流実験を行うと、分解速度が低下することがわかっている。 ・ 気泡核の減少がその原因か。
・ 過去の分解実験において、長時間の回流実験を行うと、分解速度が低下することがわかっている。 ・ 気泡核の減少がその原因か。 p-ジクロロベンゼンの分解実験 濃度 (%) これまでも水ジェットキャビテーションを利用して有機物を分解するための研究は行われてきました。その中で、この図に示したように回流時間が経つにしたがって、分解速度が低下することがわかっています。水中の気泡核の減少がその原因ではないかと考えられています。 回流時間(min.)
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気泡核 キャビテーションで崩壊する気泡の核となりうる水中の微小気泡
キャビテーションで崩壊する気泡の核となりうる水中の微小気泡 これまでの研究で長時間の有機物分解実験を行うと分解速度が低下することがわかっている。 気泡核とはキャビテーションで成長し、崩壊する気泡の各となりうる水中に存在する微小な気泡のことを指します。これまでの研究より、長時間キャビテーションにさらされた水は、脱気されてキャビテーションが起こりにくくなるということがわかっています。その事実は有機物の分解効率にも影響を与えている可能性が大きいので、本研究では、まず水中の溶存酸素量及び気泡核数を測定しました。 気泡核の減少によりキャビテーションが弱まることが原因ではないか。
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本研究の目的 ・これまでの研究によりキャビテーションによって有機物が分解されていることはわかっている。
・気泡核数の減少が分解効率低下の影響か 衝撃力、分解速度に対する気泡核数の影響を解明する。 これまでの研究から、キャビテーションによって有機物が分解可能であることはわかっていますが、詳細な分解のメカニズムや、分解効率に影響を与えるパラメータ等に関してはわかっていません。 そこで、本研究では気泡核がキャビテーションの特性に与える影響に注目し、水中の溶存酸素量及び気泡核数が、キャビテーションの気泡崩壊時に発生する衝撃力や、有機物の分解効率に与える影響を解明することを目的とします。 水中の溶存酸素量、気泡核数 気泡崩壊の衝撃力 分解率の測定
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水ジェットキャビテーション発生装置 これが本研究で使用した水ジェットキャビテーション発生装置の全体写真です。会議室用の机に乗る程度の比較的小型の試験装置です。
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水ジェットキャビテーション発生装置 これは先ほど写真で見せた装置の模式図です。プランジャポンプは20cm四方のスペースにおける程度ですし、中央部のジェットを噴出する試験部水槽も縦10cm、横8cm、容量が約50mlなので比較的小型の装置であるといえます。プランジャポンプによって間欠的にジェットが噴射される仕組みになっています。 ポンプから押し出された水は、この管路を通って、この部分にあるノズルから試験部水槽内に噴射されるような仕組みになっています。管路の途中、ポンプとノズルの間に取り付けられた圧力計で、ジェットの吐出し圧力を測るようになっています。次にこの、ジェットを噴き出す試験部水槽の説明をします。
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閉鎖型試験部 これは密閉することにより試料水が外気と直接触れることのない形の試験部水槽です。この水槽は、従来より当研究室で使用されてきました。矢印の方向にジェットが噴出されます。
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自由表面有り試験部 これはウォータージェットが自由表面を巻き込むことにより水中に気泡が供給されることを目的とした試験部です。本研究のために作成されました。この濃い青の部分までが水が入っていて、この部分は空気になります。ジェットを噴射すると激しく自由表面を巻き込むことで試料水中に気泡が供給されます。ただ、この排出用パイプに大きな気泡が入り込み、ジェットの吐出し圧を下げてしまうという欠点があります。
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ノズル形状 ・0.114mm径のものを小径ノズル、0.22mm径のものを大径ノズルと呼ぶ。
これが本研究で用いたノズルです。図に示したものはスロート部直径が0.114mmのもので、最大で48MPaの吐出し圧を出します。この他にスロート部直径が0.22mmのものも使用しました。このノズルは最大で約30MPaの吐出し圧を出します。以降前者の細いほうを小径ノズル、太い0.22mmのものを大径ノズルと呼びます。
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キャビテーションの様子 噴出方向 これはジェット噴き出しの様子をビデオにおさめたものです。間欠的にジェットが噴き出されているのがわかります。一回の噴射は約0.7秒間、流量は2.7mlで一定となっています。右側に写っているものは後で説明しますが、衝撃力センサです。
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水中の溶存酸素量及び 気泡核数の測定 では行った実験の説明に入ります。 まず水中の溶存酸素量および気泡核数の測定をおこないました。
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溶存酸素量の経時変化 自由表面有り 閉鎖型 まず、溶存酸素量の経時変化です。このグラフの縦軸はその温度の飽和溶解度に対する溶解している酸素の割合を示します。用意した試料水の溶存酸素量94~95%に対して、閉鎖型では回流時間を追うごとに下がりつづける傾向がありました。一方自由表面ありの試験部を用いた場合、回流後30分ほどは溶存酸素量の低下が見られましたが、それ以降一定のレベルを保つことがわかりました。
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コールタカウンタの原理 ・電気伝導度を利用して粒子の大きさ、数を測定 ・測定可能な粒子の大きさは5μm~ サンプル粒子 外部電極(-)
内部電極(+) サンプル粒子 この図は気泡核の測定に使用したコールタカウンタの原理を示すものです。粒子がチューブに入る際の電気伝導度の変化から、粒子の大きさ、数を測定します。本研究で使用したコールタカウンタで測定可能な粒子の大きさは5μm~となっています。
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気泡核数密度の変化(小径ノズル) 自由表面有り 閉鎖型
気泡核数の測定結果を示します。いずれの試験部を用いても回流開始後30分の所にピークがあることがわかります。自由表面有りの試験部を用いた場合、ピークの高さは上昇しますが、120分後以降は閉鎖型とあまり変わらないレベルになります。 閉鎖型
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衝撃力の測定 次に衝撃力の測定を行いました。気泡の崩壊が激しければ激しいほど大きな衝撃力が発生します。有機物の分解がキャビテーションによって行われているのであれば、キャビテーションの激しさを表す衝撃力を計測する必要があると考えました。
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衝撃力センサ ・圧電性を持つPVDF膜を利用 ・時間分解能がnsec.のオーダー(衝撃力の発生はμsec.のオーダー)
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衝撃力の発生 (小径ノズル/閉鎖型 30分回流後)
衝撃力の発生 (小径ノズル/閉鎖型 30分回流後) 衝撃力(N) 衝撃力センサの出力波形をしめします。サンプリングタイムを300nsec.として、一度の計測で32000点の記録が可能なので、ここからここまでで9.6msec.となります。一回の噴流の持続時間が0.7秒であることを考えると、その計測時間においては連続噴流とみなせますが、衝撃力は断続的、周期的に発生しているのがわかります。 ・周期的な衝撃力の発生 時間(msec.)
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衝撃力分布の変化(小径ノズル/閉鎖型) ・回流時間が増えると分布が小衝撃力側に移動する。 ・レイリー分布 240分後 30分後
先ほどのような出力波形から、小径ノズル/閉鎖型試験部を使用した際の衝撃力のピークの大きさだけを抜き出し、衝撃力ごとにプロットしました。図中の赤い点は30分回流後の衝撃力分布、青い点は240分回流後の衝撃力分布です。回流時間が経るに従い、分布が小衝撃圧側に移動することがわかります。またこの分布はレイリー分布で近似できることがわかりました。図中の線は、レイリー分布で近似した様子を表します。(レイリー分布は最大波高の分布として知られる。ランダムに発生する正弦波の重ね合わせのピークの分布)
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衝撃力分布の変化 (小径ノズル/自由表面有り)
・自由表面有りの試験部では衝撃力分布は回流時間によらない 240分後 次に自由表面ありの試験部を使用した際の衝撃力分布を示します。先ほどのような回流時間による衝撃力分布の変化は見られないことがわかります。 30分後
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衝撃力の発生周期 (小径ノズル 閉鎖型試験部)
衝撃力の発生周期 (小径ノズル 閉鎖型試験部) 30分回流後 次に出力波形に高速フーリエ変換によるパワースペクトル解析を行いました。二つのピークがあることがわかります。一つ目のピークは衝撃力の発生周期を示します。二つ目のピークはセンサ内で衝撃力が反響するときの固有振動数です。回流後30分では衝撃力の発生周期は6kHz、240分後は4.5kHzです。回流時間を追うごとに衝撃力分布が小衝撃力側に移動するだけではなく、その発生周波数も低くなることがわかります。キャビテーションによる衝撃力は成長した気泡が崩壊する瞬間に発生します。気泡核の減少によりそれが起きにくくなっていることが、発生周波数の低下の原因であると考えられます。 240分回流後
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ビフェニルの分解実験 最後に2種類の試験部、2種類のノズルを用いて、4通りの試験装置でビフェニルの分解実験を行いました。
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ビフェニル ベンゼン環が2つ結合したもの。 ダイオキシン類の一種であるコプラナー(平面構造を取れる)PCBの母核である。
飽和蒸気圧が8.93×10-3 mmHgである半揮発性物質。 ビフェニルの構造式 ビフェニルとは図に示すようなベンゼン環が二つ結合した構造を持ち、ダイオキシン類の一種であるコプラナーPCBの母核となります。PCBは非常に安定な物質で、高温分解法、光触媒を用いた光分解法、超臨界水を用いた分解方法、などで処理されますが、どの方法をとっても非常にコストがかかります。また、ビフェニルは飽和蒸気圧が・・・であり、半揮発性物質に分類されます。
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分解実験 ・20MPa/自由表面有りの組み合わせのみ極端に分解率が低い。 ・回流時間を追うごとに分解率は低下の傾向
・吐出圧が高いほど分解率も高い傾向 20MPa/自由表面 30MPa/閉鎖 26MPa/自由表面 分解実験の結果をここに示します。 回流開始後60~120分は分解率は吐出圧に大きく依存します。 閉鎖型試験部を用いた場合はいずれのノズルを用いても回流開始後60~120分以降に急激に分解効率が低下することがグラフから見て取れます。 46MPa/閉鎖
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実験誤差の要因 ビフェニルは半揮発性物質 ノズル以外でのキャビテーション 自由表面有り試験部を使用した際の主な誤差要因
回流中に揮発で失われる部分もある。 2時間で最大20% ノズル以外でのキャビテーション 分解実験で示された分解率が純粋にノズルから噴射されたキャビテーションのみで分解されているのか、キャビテーションを起こさないような直径6mmの大口径ノズルを用いて回流試験を行いました。 自由表面ありの試験部では2時間で約20%、閉鎖型では2時間で約35%のビフェニルの減少が見られました。原因として、ビフェニルが半揮発性物質であることから、揮発で失われたこと、もう一つは管路の逆止弁の部分でキャビテーションが起こっていることから、そこで分解が起きていることが考えられます。逆支弁でキャビテーションが起きていることは、逆支弁に加速度計を取り付けて振動を測定したところ、6~9kHzのキャビテーションと思われる振動が確認できたことと、ビフェニルが分解されたことを示す炭酸イオンが検出されたことから確認しました。 閉鎖型試験部での主な誤差要因 逆止弁でキャビテーションが発生。 イオンクロマトグラフにより炭酸イオンの発生を確認。 2時間で最大35%
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気泡核供給の効果 ・吐出圧 大径/閉鎖:約30MPa 小径/自由:約26MPa ・分解率 小径/自由>大径/閉鎖
逆止弁でのキャビによる35% 濃度 揮発による20% (%) 30MPa/閉鎖型 26MPa/自由表面有り 先ほど示したノズルのキャビテーション以外で失われたビフェニルの影響を考慮して、もう一度分解実験のデータを見てみます。この図に示したものは小径ノズル/自由表面有りの組み合わせと、大径ノズル/閉鎖型試験部の組み合わせを使用して分解実験を行った際の120分回流後のデータです。エラーバーは揮発、もしくは逆止弁でのキャビテーションによって失われた量を考慮したものです。つまり、自由表面有り試験部では最大で20%、閉鎖型試験部では最大で35%がノズルでのキャビテーション以外で失われるとしています。この二つを比べると、吐出圧では大径ノズル/閉鎖型試験部の方が高いにも関わらず、分解量は小径ノズル/自由表面ありの方が上回っています。これは自由表面ありの試験部をもちいたことによる、試料水中への気泡核の供給の効果が分解率の上昇として現れたものです。 気泡核供給の効果有り 120分回流後
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本研究の成果 気泡核数および溶存酸素の低下に伴ない、衝撃力は小さく、その発生頻度は低くなる。
気泡核数が多いと分解効率は向上。分解効率が低下する理由が気泡核数の低下であることが明らかになった。 これまで行われてきた分解実験では揮発の影響は考えられていなかったが、本実験で定量化できた。 本研究のをまとめるとこのようになります。
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今後の課題 ジェットの吐出圧を下げずに試料水中に気泡を供給できるような実験装置の開発。
揮発の影響を排除、もしくは正しく評価し、補正が可能な実験装置、実験方法の確立。 今回の実験では自由表面有りの試験部を使用すると、管路に空気が入り込んで吐出圧を下げてしまう現象が起きた。気泡核を供給した際の影響を純粋な形で抽出するために、ジェットの吐出圧を下げずに試料水中に気泡を供給できるような実験装置の開発が課題です。 これまで行われてきた分解実験では揮発の影響を考慮しているものはありませんでした。しかし本研究でその量が無視できないものであることがわかったので、揮発の影響を正しく評価できるような実験装置、もしくは実験方法が必要とされているといえます。
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