制限酵素 restriction enzyme 制限酵素: EcoRV が DNA 鎖を切断している 様子を DNA 鎖の真上方 向からから見た図。 GAT ATC CTA TAG EcoRV が切断する場所.

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制限酵素 restriction enzyme 制限酵素: EcoRV が DNA 鎖を切断している 様子を DNA 鎖の真上方 向からから見た図。 GAT ATC CTA TAG EcoRV が切断する場所

制限酵素は、 1968 年に、スイスのウェルナー・アーバー (Werner Arber) やアメリカのハミルトン・スミス (Hamilton Othanel Smith) によって発見された。制限酵素の名前の由来 としては、大腸菌のある種の株でファージの増殖が制限さ れるという現象が確認されていたことによるもので、その ような菌からファージのような外来 DNA を切断する制限酵 素が発見された。 ( ホスト側のゲノムは、メチル化などの修 飾によって保護されているため切断されない ) (Werner Arber)(Hamilton O. Smith)

制限酵素はどんなことを可能にしたのか?

メチル化すると、 切れなくな る! 大腸菌は2つのメチル化酵素を持っている。 メチル化酵素 Dam:GATC 2 番目の A (と 3 番目の T の対鎖の A )がメチル A となる。 メチル化酵素 Dcm:CC ( A/T ) GG 2 番目の C (と 4 番目の G の対鎖の A )がメチル C となる。 かなりの制限酵素はメチル A やメチル C を A や C と認識でき ないので、 GATC や CC ( A/T ) GG と二塩基以上重なる場 合は切断できないことが起きる。 大腸菌によって増やされる、プラスミド DNA の全ての Dam ・ Dcm 部位はメチル化されているので重なった部位は切 れない。

I 型制限酵素 特異的な認識部位で DNA に結合し、認識部位から様々な距離 ( 400 ~ 7000bp )で二本鎖 DNA を切断する。活性には、 Mg2+, ATP, S- アデノシルメチオニンが必要で、 ATP( アデノシン三リ ン酸 ) の加水分解に伴って切断が起こる。メチラーゼ活性を併 せもつ。 切断個所には再現性が乏しく、また、 DNA のメチル 化を引き起こすため、遺伝子工学には使えない。 II 型制限酵素 II 型の酵素は 4 ~ 8 塩基対の回文構造を認識するものが多い。 400 種以上知られているが、遺伝子工学の実験に広く利用でき ることから、その内 100 種ほどが市販されている。 I 型や III 型と 異なり、 DNA のメチル化は起こさない。同じ配列を認識する ものでも切断個所を異にする酵素もあり、アイソシゾマー (isoschizomer) と呼ばれる。酵素反応には、 Mg 2+ が必須。

III 型制限酵素 特異的な認識部位に結合し、それから約 25bp 離れた位置を切 断する。 活性には、 ATP と S- アデノシルメチオニンが必要で あるが、 ATP の加水分解は伴わない。 I 型と同様、メチラー ゼ活性を併せもつ。 メチル化活性は、自身の制限酵素で自 分の DNA を分解しないために、制限酵素部位をメチル化に よってマスクするためにある。 制限酵素は DNA 中にあるそのパターンを認識し、そ の付近あるいはその配列の内部で切断する。切断さ れた切り口には 2 種類あり、その形状により平滑末 端と突出(粘着)末端と呼ばれる。 制限酵素の認識する多様な塩基配列のパター ン

回文(かいぶん)とは上から読んでも、下から読んでも同じ文と なる文のことで言葉遊びの一種である。 竹薮焼けた ( たけやぶやけた ) 肉の多い大乃国 ( にくのおおいおおのくに ) 例) また、 II 型制限酵素によって認識される塩基配列のパ ターンの多くは回文になっており、 5' 端側から読んで も、その相補鎖の 5' 端から読んでも同じ配列になって いる。 Bal1 Hind Ⅲ TGGCCA ACCGGT AAGCTT TTCGAA ACC GGT TGG CCA A AGCTT TTCGA A 平滑末端 突出末端

一般的な制限酵素切断 定義では、 1Unit の制限酵素は 50μL の反応液中において 60 分で 1μg の基質 DNA (多くは λ ファージ DNA )を完全 切断します。 一般的には、 1μL の酵素を 1μ gの精製 DNA に50 μL 反応容量で終濃度 1 倍の至適 Buffer をまぜて推 奨温度で 1 時間の反応ですみます。 酵素量を過剰にすると反応時間は短縮されますし、 酵素量を少量にして反応時間を延ばして切断する ことも可能です。

間違えてとんでもないとこ ろを切ってしまう時もあり ます。 制限酵素は切る場所を 間違えることはないのか?

制限酵素の Star 活性について 制限酵素を利用するときに注意すべき点は,反応液の組成 です。酵素の種類によって反応に最適な塩濃度や pH など が違います。塩濃度が高すぎたり低すぎたり,また pH が 大きくずれていたり酵素の濃度が高すぎたりすると,本来 なら切らないはずの(認識配列と似ているけれども同一で はない)配列を切ってしまうことがあります。これを制限 酵素の Star 活性といいます。 Star 活性を誘導する条件 1、グリセロール濃度が高い「> 5%v/v 」 2、1 μ g DNA に対しての酵素の Unit 数が高い(酵素によって異な るが、一般に> 100 Unit/μ g) 3、イオン強度が低い(< 25mM ) 4、 pH が高い(> pH8.0 ) 5、有機溶媒が残存している。 6、 Mg2+ の代わりに別の2価イオンに置き換えられてる。 ( Mn2+,Cu2+,Co2+,Zn2+ )

Star 活性を阻害する条件 1、切断が可能な範囲で、できるだけ少量の酵素を使用する。これによ り過剰な切断条件をさけるとともに反応時の最終グリセロール濃度を減 らすことができる。 2、 DNA 調製の際に使用した有機溶媒が除去されていることを確認する。 3、反応バッファーのイオン強度を mM まで上げる。(酵素活性 が塩で阻害されない場合) 4、反応バッファーの pH を 7.0 まで下げる。 5、2価の陽イオンとして Mg2+ を使用する。 参考 URL, 文献など 制限酵素の基礎知識2003