画像情報特論 (7) - アダプテーション (1) 同期再生 電子情報通信学科 甲藤二郎 2001.05.29.

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プロトコル番号 長野 英彦.
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画像情報特論 (7) - アダプテーション (1) 同期再生 電子情報通信学科 甲藤二郎

アダプテーション全般

サーバクライアント サーバクライアント ファイル パケット ダウンロード ストリーミング ダウンロードしてから同期再生 ( 待ち時間が我慢できない ) 受信しながら同期再生 ( 待ち時間がほとんどない ) ダウンロードとストリーミング TCP UDP or TCP

ストリーミングの問題点 1. なめらかな同期再生 2. パケット廃棄の問題 3. ふくそうと品質 到着時間がばらばらのパケットからどのように同期再生するか。 廃棄されたパケットの影響をどのように抑えるか。 レートを上げすぎるとふくそうが起こり、下げると品質が劣化する。 インターネット: もともとリアルタイムメディア用のネットワークではない

UDP or TCP IP 各種ネットワーク ビデオオーディオ アプリケーション層 トランスポート層 ネットワーク層 リンク・物理層 同期、廃棄対策、ふくそう制御の実現 アダプテーション アダプテーション リアルタイムメディア 特有の機能

具体的な対策 同期再生: 十分なバッファリング ( ジッタの吸収 ) タイムスタンプ - 三階層同期 ( メディア内同期、メディア間同期、システム間同期 ) パケット廃棄対策 (TCP の場合は不要 ) : (1) エラーコンシールメント (2) 誤りパケットの再送 ふくそう制御: (1) TCP フレンドリ (TCP フローとの公平な共存 ) (2) サービス階層化 (Differentiated Services)

同期再生メカニズム

(1) 共通クロック ( 狭帯域回線交換 ) (2) 搬送クロック ( 広帯域回線交換 ) (3) 自走クロック ( インターネット ) 端末 A 端末 B 網クロック (8kHz) 端末 A 端末 B 端末 A 端末 B PLL ネットワーク、あるいは外部から、「信頼できる 共通クロック」を提供する → 狭帯域ネットワーク ( 例 ) 電話網、 ISDN 、モバイル クロックを相手端末に搬送する。受信側は、 PLL でクロックを生成 → 広帯域ネットワーク ( 例 ) ATM 、ディジタル放送 まず、端末自身の自走クロックを信頼する。 端末間同期は NTP を利用 → 精度に問題 ( 例 ) インターネット NTP 三種類の同期メカニズム

固定遅延モデル (1) ネットワーク エンコードバッファ デコードキャプチャ再生 固定遅延 固定遅延モデル (constant delay model) (1) 共通クロック方式 ( 回線交換 ) 固定 すべてが網クロックに従って動作 (2) タイムスタンプ方式 ( パケット交換 ) 可変固定 タイムスタンプ 固定 可変 固定

固定遅延モデル (2) キャプチャから再生までの遅延時間が一定 (1) 共通クロック方式 ( 電話網、ディジタル放送 ) (2) 自走クロック方式 ( インターネット ) エンコード、デコード、ネットワークの処理時間 ( 遅延 ) が一定 → キャプチャから再生まで固定遅延 エンコード、デコード、ネットワークの処理時間 ( 遅延 ) が可変 → タイムスタンプ ( キャプチャ時刻 ) で再生時刻を決定 → 遅延のばらつきを吸収 → キャプチャから再生まで固定遅延

インターネット放送 ( 片方向 ) インターネット電話 ( 双方向 ) バッファリング (1) サーバクライアント サーバクライアント パケット 大容量バッファ ( ~数十秒 ) 小容量バッファ ( ~数百 ms)

バッファリング (2) ジッタ ( 遅延のばらつき ) の吸収 (1) インターネット放送 (2) インターネット電話 片方向なので、数十秒間のバッファリングを行ってもユーザは気にならない → ユニキャスト時はTCPが利用可能 ( パケット廃棄対策が不要 ) ( 注 ) マルチキャスト時はUDPを使用 ( パケット廃棄対策が必要 ) 双方向なので、あまり長時間のバッファリングを行うと会話にならない → TCP は利用困難 → UDPを使用 ( パケット廃棄対策が必要 )

(1) メディア内同期 (2) メディア間同期 (3) システム間同期 一つのメディア ( ビデオ、あるいはオーディオ ) の同期再生の実現 ( 手段 ) タイムスタンプ ( 固定遅延モデル ) 複数のメディア ( ビデオとオーディオ ) の同期 再生の実現 ( リップシンク ) ( 手段 ) タイムスタンプ間の関連付け 端末毎のシステム時刻の調整 ( 手段 ) ネットワーク・タイム・プロトコル 三階層のメディア同期 メディア内同期 メディア間同期 システム間同期 田坂: 信学会学会誌 ( )

メディア内同期 送信受信 パケット TS =100 TS =150 TS =200 TS =250 TS =300 TS =350 キャプチャ再生 エンコードデコード TS =100 TS =150 TS =200 TS =250 TS =300 TS =350 TS =100 TS =150 TS =200 TS =250 TS =300 TS =350 タイムスタンプに従う 再生時刻の復元 ジッタ 到着時間の 揺らぎ 固定遅延モデル、RTP バッファリング遅延

メディア間同期 補正後 ( メディア間同期 ) 補正前 ( メディア内同期 ) オーディオ ビデオ リップシンクのずれ 音声時間軸 ビデオ時間軸 補正 共通時間軸 個々のメディア用タイムスタンプ + 共通時間軸のタイムスタンプ 補助パケット RTP、RTCP ひとつの共通時間軸に従ったメディア時間軸の整列

システム間同期 NTP 10:40:41 10:40:2510:41:34 A B C メディア間同期 複数人による実時間会議の問題点 Bから来るメディアとCから来るメディアの時間軸を整列することができない → 複数人が同時に話しても、それを同時に再生できない → 結局、すべての端末の時刻をそろえるしかない

NTP (Network Time Protocol) ネットワーク上の端末の時刻を合わせるためのプロトコル ( 例 ) UNIX : xntpd 、 Windows: 桜時計、など... stratum 1 サーバ 原子時計、 GPS 、... stratum 2 サーバ stratum 3 クライアント 数ミリ~数十ミリ秒の誤差、と言われて いるが、リアルタイム系の精度の問題 も指摘されている。 サーバ・クライアント型パケット情報交換、 ラウンドトリップ時間計測、時刻の推定

メディア同期の実際 (1. 送信側 ) キャプチャ カード タイムスタンプ 付与 ネットワーク キャプチャ バッファ エンコード バッファ アクセラ レーション ネットワーク カード バッファ: 冗長構成 ( ダブルバッファ、数十ミリ~数百ミリ秒のバッファリング ) ( 専用カード ) バッファの活用 ( 実体はメモリ )

メディア同期の実際 (2. 受信側 ) 再生 ネットワーク カード ネットワーク バッファ タイムスタンプ 処理 バッファ アクセラ レーション デコード バッファ サウンド・ ビデオカード バッファの活用 ( 専用カード ) バッファ: 冗長構成 ( ダブルバッファ、数十ミリ~数秒のバッファリング )

メディア同期の実際 (3) オーディオのストリーミング再生 リングバッファ 読出し カーソル 書込み カーソル 復号データ オーディオ 出力 サウンドカード デコード バッファ サウンドカードに起因する遅延要因 - デコード、サウンドカード書込みの タイムイベント管理 - サウンドカードにおける読出し位置、 書込み位置のオフセットによる遅延

メディア同期の実際 (4) ビデオのストリーミング再生 復号データ ビデオ 出力 ビデオカード デコード バッファ - デコード、ビデオカード書込みのタイム イベント管理 - ビデオデータ読出し、書込みのダブル バッファ構成 ビデオメモリ 読出し 書込み

RTP/RTCP RTP: Real-time Transport Protocol RTCP: Real-time Transport Control Protocol

ネットワーク UDP IP アプリケーション 送信側受信側 RTP パケット RTCP-RR RTCP-SR RTP / RTCP RTP : メディア情報の転送 RTCP : RTP の制御 RTP と RTCP (1)

RTP : メディア情報の転送 RTCP : RTP の制御 RTP と RTCP (2) メディア内同期: RTP タイムスタンプ パケット廃棄対策: シーケンスナンバと RTP ペイロードフォーマット メディア間同期: NTP タイムスタンプ フロー制御:各種統計情報の交換

シーケンスナンバ タイムスタンプ SSRC 識別子 v=2PX CSRC カウント M パケットタイプ CSRC 識別子 (list) ( 拡張フィールド ) パケットタイプ:転送メディアの符号化アルゴリズム シーケンスナンバ:パケットの順序逆転、廃棄の検出 タイムスタンプ:同期再生 ( メディア内同期 ) M ビット:フレーム境界の通知 SSRC :送信者の識別 データ RTP ヘッダ

パケット長 送信元 SSRC 識別子 NTP タイムスタンプ (MSB) v=2P RC PT=SR=200 NTP タイムスタンプ (LSB) RTP タイムスタンプ 送出パケット数 送出バイト数 SSRC 識別子 #n 廃棄パケット数 シーケンスナンバの最大値 ジッタ遅延 SSRC #n の最新の SR 受信時の NTP タイムスタンプ (LSR) LSR から現在までの遅延 (DLSR) report block * n sender report RTCP (Sender Report)

パケット長 送信元 SSRC 識別子 v=2P RC PT=SR=201 SSRC 識別子 #n 累積廃棄パケット数 シーケンスナンバの最大値 ジッタ遅延 SSRC #n の最新の SR 受信時の NTP タイムスタンプ (LSR) LSR から現在までの遅延 (DLSR) report block * n RTCP (Receiver Report)