生物学 第4回 多様な細胞の形と働きは タンパク質のおかげ 和田 勝
次へ移る前に 小テストをしましょう。教科書とノートを閉じてください。教科書とノートを見ないで、次のスライドの問いに答えて、該当する番号のマークを塗りつぶしてください。15問あります。
小テスト(図の番号に該当する名称を語群から選んで 番号で答えなさい) 1)アクチン繊維 2)ゴルジ装置(体) 3)ミトコンドリア 4)リボソーム 5)核 6)核小体 7)核膜 8)細胞膜 9)粗面小胞体 10)微小管
11)正しいのはどれ? マークシートの11番以降に、正しいと思う答えの番号を塗りつぶしてください。 1. これは葉緑体で矢印はチラコイド 2. これはミトコンドリアで矢印はクリステ 3. これはゴルジ装置で矢印は中間槽 4. これは小胞体で矢印は粗面小胞体 5. これは核で矢印は核膜
12)次の構造の内で細胞内の運動に関係ある構造は どれ? どれ? 1. ゴルジ装置 2. 小胞体 3. ミトコンドリア 4. 中間徑繊維 5. 微小管 13)動物細胞の細胞表面にある膜タンパク質には糖 鎖が付加されているが、これらのタンパク質は_______ で合成され、_______内で糖鎖が付加される。 1. ミトコンドリアのリボソーム;滑面小胞体 2. サイトゾールのリボソーム;細胞膜 3. サイトゾールのリボソーム;滑面小胞体 4. ゴルジ装置;粗面小胞体 5. 粗面小胞体;ゴルジ装置
14)次の細胞小器官のうちでエネルギー変換に関係 あるものは? あるものは? 1. リソソーム 2. 液胞 3. 葉緑体 4. ミトコンドリア 5. 3と4 15)9:3:3:1 の比が得られるのは、 1. 二遺伝子の交配で遺伝子は連鎖している場合 2. 二遺伝子の交配で遺伝子は別の染色体に載っている場合3. 一遺伝子の交配で優性と劣性が明確でない場合 4. 上のいずれの場合でも起こる 5. 上のいずれの場合も起こらない
小テストは これでおしまいです。
細胞の形 たとえば膵臓で、膵液中の酵素をつくる細胞はこんな形をしていました。
電子顕微鏡像
細胞の形 網膜にある光感受細胞は、右図のような構造をしています。
細胞の形と働きは タンパク質によって決まります。 膵臓の細胞は、消化酵素タンパク質をつくるように特化しています。 一方の網膜の光受容細胞は、光を感じるタンパク質、ロドプシンをつくって光を感じるように特化しています。
細胞の形と働きを 理解するためには、細胞でどのようにして特定のタンパク質が作られているかを理解する必要があります。 まず最初におさえておく点は、一般的な細胞の形と働き。これは前回お話しましたね。
サイトゾール 細胞小器官が浮かんでいる液体部分をサイトゾール(cytosol)と言います。 13
特に重要な細胞小器官は これからのお話に特に関係する細胞小器官は、核、リボソームと粗面小胞体、ゴルジ装置です。 14
細胞膜 タンパク質 脂質の二重膜(lipid bilayer)である。
生体を構成する主な元素 生体を構成する主な元素*は、 炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)、リン(P)、イオウ(S) です。これらの原子から生体を構成する分子ができています。 *原子とほぼ同じ意味ですが、原子というのは実体のある粒子を意味し、元素は種類を区別するために使う名称です
生体を構成する主な分子 生体を構成する主な分子は、 1)タンパク質 2)脂質 3)炭水化物 4)核酸 1)タンパク質 2)脂質 3)炭水化物 4)核酸 です。すべて(生体)高分子で、基本的な単位(単量体、モノマー)がつなぎ合わさってできています。
生体を構成する主な分子 脂質を除いて、生体高分子はそれぞれ単位となるモノマーが重合してできています。 1)タンパク質 ←アミノ酸 2)脂質 1)タンパク質 2)脂質 3)炭水化物 4)核酸 ←アミノ酸 ←脂肪酸と グリセロール ←単糖類 ←ヌクレオチド
生体を構成する主な分子
生体を構成する主な分子
原子間の結合 化学の復習です。原子間の結合には次の2つがあることをこれまで学びましたよね。 共有結合(covalent bonds) イオン結合(ionic bonds) 次に述べる水分子は、酸素原子と水素原子が共有結合した分子です。
水分子 高分子のお話をする前に、まずサイトゾールの主成分である「水」についてよく理解しておくことが必要です。 「水」は溶媒として非常に特異的で、優れた性質を有しています。これは水分子の形によって決まるのです。
水分子 分子にも形があります。水分子は次のような構造をしています。
水の性質 水はH2O 電荷の偏りがある
水の性質 そのため2個の水分子が近づくと このような結合を水素結合といいます。 H+-O----H+-O--H+ 水分子同士の水素結合のために、分子量が小さいにもかかわらず水はきわめて粘性が高く、また沸点も氷点も高いという性質がうまれます。
水 液体の水は、この水分子の集まりです。ものすごくたくさんの数です。1リットルの水は、およそ3.4x1025個の分子の集まりです。
水の三態 固体 (氷) 気体 (水蒸気) 液体
水は たいていの場合、下のように書くのは煩雑なので、省略されています。前回に出てきたサイトゾールは本当はこん な感じなの です。
水の性質 タンパク質のような大きな分子も水が周りを包んで(水和という)、溶かすことがます。
生体を構成する主な分子 1)タンパク質=アミノ酸 X n個 4)核 酸=ヌクレオチド X n個 アミノ酸は20種類あります。 R 4)核 酸=ヌクレオチド X n個 アミノ酸は20種類あります。 R NH2-C-COOH H R(側鎖)が20種類あるということで、赤い部分はすべてのアミノ酸で同じです。
アミノ酸は20種類 R O NH2-C-C H OH 一番、単純なアミノ酸はグリシンで、RはHです。 H O NH2-C-C H OH
アミノ酸は20種類 ロイシンは、次のような形をしています。Rは-CH2-CH(CH3)2です。 CH3 CH3 CH HCH O NH2-C-C H OH
アミノ酸は20種類 アルギニンは、次のような形をしています。Rは-CH2-CH2-CH2-NH-C-(NH) -(NH2)です。 H2N NH C NH HCH HCH O NH2-C-C H OH
アミノ酸は20種類 Rの部分は、大きさと、水となじみがあるか(水素結合を作れるか、親水性といいます)、水とはなじみが悪いか(なるべく水から遠ざかろうとする、疎水性)の性質の組み合わさったものが20種類あるということです。 20種類あるたくさんのビーズに糸を通したものがタンパク質だと考えてみてもいいでしょう。
アミノ酸は20種類 これが20種類のビーズ 四角で囲んだ部分は共通
タンパク質 タンパク質はたくさんのアミノ酸がつながったもの(ポリマー) アミノ酸は脱水縮合で鎖のようにつながる。まずは2つを例に。 H2O アミノ酸は脱水縮合で鎖のようにつながる。まずは2つを例に。 ペプチド結合といいます。 アミノ酸2つなので、これをジペプチドと呼びます。
タンパク質(アミノ酸4つ) N末端 C末端 これはテトラペプチドの場合。タンパク質(ポリペプチド)はたくさんのアミノ酸。
タンパク質(アミノ酸たくさん) NH2- -COOH N末端 C末端 水色系=親水性 緑 系=疎水性
タンパク質 アミノ酸の並び方(配列、sequence)をタンパク質の一次構造といいます。 それでは二次構造は? ペプチド結合を作っている>C=Oと>NHの間に水素結合ができ、部分的に規則的な繰り返し構造が生じます。これを二次構造といいます。
タンパク質の二次構造 αヘリックス構造
タンパク質の二次構造 βシート構造
タンパク質の高次構造 タンパク質は、この2つの二次構造の組み合わせで構成されています。 たとえば、酵素タンパク質であるリゾチームは、次のような構造をしています。
タンパク質の高次構造 Ball and stick模型 空間充填模型 卵白リゾチーム α-helix and β-sheet模型
タンパク質のはたらき タンパク質の表面にある、このような凹凸が、様々な機能を生み出すのです。 生体の機能は、基本的にすべて、タンパク質分子が担っています。
タンパク質を描く David S. Goodsellのサイトを見ると
サイズの感覚
サイズの感覚 20 mm 2 mm 0.2 mm 20 mm 2 mm 0.2 mm 20 nm 2 nm 0.2 nm
サイズの感覚
DNAからタンパク質へ DNAの遺伝情報をもとに、タンパク質がどのように作られるか、もう少し詳しいお話は、次週に続きます。