LHC-ALICE実験MPGDを用いたTPC 検出器開発の現状

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LHC-ALICE実験MPGDを用いたTPC 検出器開発の現状 郡司 卓 東京大学原子核科学研究センター For the ALICE TPC Team

LHC-ALICE実験 高エネルギー重イオン衝突に特化した実験 高温高密度のクォークグルーオンプラズマの物性研究 多くの測定量(ソフト、ハード、重クォーク、レプトン、 光子)を同時に測定する検出器群

ALICE-TPC検出器 ALICE実験における最重要、飛跡•粒子同定検出器 磁場=0.5T (Central barrel) 体積= ~90m3 (世界で一番大きい) ガス= Ne/CO2/N2 (90/10/5)、N2を加えて安定化 ドリフト電場 = 0.4kV/cm, 94msec drift time ゲーティンググリッド(100msec + 180msec)  最大のレート = 3.5kHz 72 個のMWPCs から構成。 557768 の読み出しパッド (大きさ~4×7.5 mm2)

ALICE実験アップグレード計画 2019年以降のLHCビームの高輝度化 ALICE実験高度化計画 (TDRを2013年に提出) 50kHzのMBでのデータ取得を目指す(今の100倍) 今では測定不可能な物理量、稀事象を高精度に測定する ALICE実験高度化計画 (TDRを2013年に提出) 最内層のシリコン検出器群 3層MAPS+4層Pixel 前方シリコン検出器 TPCの高度化 連続運転をめざす 高速読み出し回路系 主にバックエンド Online-offline DAQ高度化

GEMを使ったTPCの高度化 50kHzの鉛衝突。内側のTPCでは~100kHz/cm2。 MWPCでGating Gridなしの連続運転では電場の歪みが大 きくなる(~mのオーダー) イオンバックフローと高レート耐性に優れたGEMを使うこ とで連続運転が可能になるのではないか? 要求仕様 イオンバックフロー(IBF) < 1% at Gain =2000 飛跡分解能、運動量分解能に重要 エネルギー分解能< 12% for 55Fe dE/dxを通じたPIDに重要 LHCの環境下でも安定した動作 放電率~10-11 だと1ヶ月に一度の放電

空間電荷による歪み 50kHzの鉛衝突では、イオンがドリフトカソードに到 達するまでに、8000事象のパイルアップがある 1%のIBFを仮定@Gain = 2000 (e=20), Ne-CO2-N2 dr=20cm & drf = 8cm, 殆どの領域でdr<10cm 後はオンライン&オフラインでの処理で対応可能。(最 終目標drf=200um)

GEM-TPC R&D 2012年からR&Dを開始(CERN, GSI, CNS, TUM, FRA, Yale) 要求仕様を満たす解の策定 標準ピッチのGEMと広ピッチGEMの組み合わせ COBRA-GEM 2 GEM+マイクロメガス プロトタイプによる評価 Ion backflow Gain stability Discharge probability 大規模化に向けたR&D Single mask technology 読み出し系の開発(ASIC、バックエンド) Garfield simulations Physics and Performance simulations CERN-RD51と共同研究 2013年にTDRをLHCCに提出 280um http://cds.cern.ch/record/1622286

IBF の測定 3層GEMでの測定開始(2012) 3層GEM ~ 2-4%のIBF (Ipad=0.2uA@50kHzの鉛衝突) X線のレート依存性が見られた  空間電化による効果 3層GEM ~ 2-4%のIBF (Ipad=0.2uA@50kHzの鉛衝突) 大きなピッチのGEMを使う(ionの透過率を下げる)。4層 GEMにする。

IBF とエネルギー分解能 4層のGEM S-LP-LP-Sの測定 (LP:70/280um GEM) 1%以下のIBF (Et1=4kV/cm, Et2=4kV/cm, Et3=0.1kV/cm) 分解能と負の相関 IBFを抑えるにはGEM1, GEM2の電圧を小さくしたい。しかし、 種電子を引き込めないので分解能が出ない S-LP-LP-S

Garfield Simulationとの比較 Garfield++ simulations ANSYSによる電場計算 GEM間のミスアライメント 様々なセットアップに対する 再現性はいい。

どのGEMからイオンが来るのか? GEMの電圧を1枚づつ加える カソード面での電流の増加量から推測 GEM1とGEM2が60-70%の寄与 Ne-CO2-N2=90-10-5 VGEM1=225 VGEM2=235 VGEM3=280 VGEM4=348 Ed= 400 V/cm ET1= 4000 V/cm ET2= 2000 V/cm ET3= 100 V/cm Eind=4000 V/cm

別なコンビネーション 小さいピッチのGEM (SP: 60/90um GEM) S-S-LP-SPがベスト 2GEM- MMG(400LPI, 128um, non-resistive) の測定結 果 (再現性をCERNで確認中)

COBRA-GEMのR&D COBRA-GEM 1%以下のIBFを達成。電極間のcharge-up、分解能が課題 両面に2つの独立な電極。電位差を与えてイオンを吸収 SciEnergyで制作, 400um pitch 1%以下のIBFを達成。電極間のcharge-up、分解能が課題

放電率の測定 1%のIBFを得るため、VGEM1<<VGEM2<<VGEM3<<VGEM4 この元で安定した動作が必要 Probability is <10-10 (limited by spark statistics)

IROCプロトタイプのテスト 4 GEM (S-LP-LP-S)と2GEM-MMの実機タイプのテスト 大型GEMとMMGともにCERNで制作 (~50cm x 50cm) CERN-PSでテスト実験 (2014年11月) 読み出しは、ILC用のPCA16+ALTROを使用 pion, electronに対するdE/dxの分解能を評価 Cherenkov 4GEM 2GEM-MMG

dE/dxの分解能 4 GEM (S-LP-LP-S)と2GEM-MM 3つのIBF settingに対するdE/dx (5%-80% truncation) 4 GEM (S-LP-LP-S)と2GEM-MM 3つのIBF settingに対するdE/dx Very preliminary. (no P/T correction etc) 2GEM-MMは解析中

SPSでのテスト 4GEMと2GEM-MMGの放電率の調査 高強度パイオンビーム(6x106/spill)+iron brick (1.5-2l0) パッドからの電流のsumを電流計&オシロに記録 HV trip (limit ~ 30-300uA)数、大きな信号を探す 4GEM 6 sparks  1.3x10-11 2GEM-MM VMM=460 (good IBF)  3x10-9 VMM=420 (bad IBF)  1.5x10-11

読み出しチップの開発 “SAMPA”チップの新規開発 既存のPASA (tpeak=160nsec) + ALTRO ADC + DSPの一体化 両極性, 連続読み出し/トリガー読み出し、レンジ<20MIP SAR ADC (10M or 20MSPS) 32 channel/chip. 後段はGBT(3.2Gbps)と接続

SAMPA試作機 最初のプロトタイプ(3タイプ) 線形性Residual<0.2% 検出器との試験が継続中 Analogのみ、Digitalのみ CSA-Shaper-ADC-DSP 3ch 線形性Residual<0.2% 検出器との試験が継続中 S-LP-LP-Sセットアップ. Fe線源

今後の計画 GEMの制作、組み立て(2015年〜2018年) 読み出し系の開発 その他 2018-2019のLS2に建設する IROC GEM (S-LP-LP-S、必要枚数144枚)の制作 (CERN) OROC GEM (S-LP-LP-S、必要枚数532枚)の制作(CERN) GEMのQA、GEMの選定、組み立て(欧米) 読み出し系の開発 MPW v2、v3(2015-2016) チップ量産、FECの制作(2016-2018) バックエンドの開発、制作 その他 HV divider、電流計(<5kV, 100pA)の制作 2018-2019のLS2に建設する

フォイルのQA 光学システムによる穴やピッチの一様性 (ヘルシンキ) 増幅度との相関、simulationとの再現性 光学システム (1.75um2, 9M pixels) 増幅度との相関、simulationとの再現性

バックエンド FEC (160 pads/FEC, 5 SAMPA/FEC) 6枚のFECを集約するCRU 50kHzの鉛衝突では~6Gb/s/FEC. 2つのGBTリンク 6枚のFECを集約するCRU 10-40Gb/sでALICE DAQに送る FECへのslow control LHCbのAMC40がベース

Summary and Outlook LHCでの重イオン衝突に特化したALICE実験の高度化 50kHzの重イオン衝突に追従するTPC検出器の高度化 ゲーティンググリッドなしで、かつ、イオンバックフローを抑え ることで連続運転を可能にする 4段GEMや2GEM-MMGのR&Dが行なわれている 12%のエネルギー分解能で、IBF<1%が達成可能 IROCプロトタイプのテスト実験 IBFの電圧設定でも、十分なdE/dx分解能を達成 放電率は10-11(4GEM), 10-9-10 (2GEM-MM) これまでの経験、先行研究より、4GEM(S-LP-LP-S)が基本解 並行して、新しい読み出し系の開発が進められている SAMPAチップ(FE)、AMC40(BE) 来年から大型GEMの制作、QA,、チェンバー制作に入る。