小型JASMINE計画の現状       矢野太平(国立天文台).

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小型JASMINE計画の現状       矢野太平(国立天文台)

21世紀の位置天文観測 地上での観測からスペースでの観測へ 1989年Hipparcosよりスペースからの位置天文観測が幕を開ける。 ⇒100pcまでしか距離が高精度に求められない ⇒10マイクロ秒角の時代へ GAIA、 JMAPS

       JASMINE計画シリーズ 国立天文台JASMINE検討室で計画している 一連の位置天文観測衛星計画

Nano-JASMINE ・超小型衛星による位置天文観測 ・日本初の位置天文観測衛星 (Hipparcos 衛星に次いで世界でも2番目) ・2011年打ち上げ  (ウクライナのサイクロンー4ロケットを用いてブラジルアルカンタラ発射場からの打ち上げが決定された。)

Nano-JASMINE概要 衛星外形 50cm×50cm×50cm 質量 35kg 主鏡口径 5cm 観測波長    zw-band 中心波長0.8μm 検出器      完全空乏型CCD ミッション期間  2年

Nano-JASMINE観測手法 全天サーベイ観測 2方向同時観測(Hipparcos, GAIAと同じ手法) スピン周期100分(地球周りの公転周期と同期) スピン軸 太陽と45°(スピン軸回転周期2ヶ月)

Nano-JASMINE精度 全天サーベイ観測 観測等級 zw=7.5mag 位置決定精度 ~2.6mas 年周視差 ~3mas 固有運動精度  ~2.3mas/yr             ~0.1mas/yr (ヒッパルコスと結合した場合) z-band等級 星の数 位置決定精度 7.5 200,000 ~3mas 10 1,500,000 ~10mas 11 3,000,000 ~20mas -参考- V等級 星の数 位置決定精度 ヒッパルコス ~8 120,000 ~1mas ティコ 15 2,500,000 7mas (<7mag) 25mas (<10.5mag) 60mas (<11.5mag )

Nano-JASMINE望遠鏡部 ビーム混合鏡 主鏡 ミラーをフレームに取り付けて組み上げた望遠鏡。 特殊なアルミ合金にて製作し表面には クロムと金を蒸着させている。

Nano-JASMINEフライトモデル概観

Nano-JASMINE今後 22年度 FMの完成(製作はすでに完了、評価試験) 打上げ準備         打上げ準備         運用とデータ解析の準備(GAIAチームとの国際連携) 23年度  6月 射場に輸送         打上げ前最終試験         8月 打上げ         運用、データ解析 25年度 カタログ公開      

小型JASMINE 小型JASMINE ・ JASMINEシリーズ第2ステップの衛星

小型JASMINE 小型JASMINE ・ 可視光線では十分観測できないバルジ領域を中心波長1.4ミクロンの近赤外線(1.1μm<λ<1.7 μm)で数平方度にわたって星の位置、距離、固有運動の測定をHw=11.5magで10μas精度(位置7μas、年周視差10μas、固有運動~9μas/yr)でおこなう ・ バルジの構造や形成史をはじめ、系外惑星探査、重力レンズなど、 ・ 小型科学衛星(JAXA宇宙研を中心とし開発が進められている、標準バスを用いる小型科学衛星シリーズ)を想定した位置天文観測衛星 ・ 小型科学衛星3号機を目指す

観測装置(光学系) JASMINE光学系概観図 光学系 改良コルシュ(3枚鏡) 観測波長 中心波長1.4μm (1.1μm < λ < 1.7μm) 口径 30cm 焦点距離 3.9m 検出器 HgCdTe検出器(4K×4K) ピクセルサイズ 10μm 検出器個数 1 視野角  0.65度×0.65度 JASMINE光学系概観図

小型JASMINE仕様 主鏡口径30cm ミッション部重量400kg 観測波長1.1μm~1.7μm 運用温度(望遠鏡部180K~200K、検出器部170K~180K) 鏡材 合成石英  構体 CFRP 軌道 高度600km地球周回軌道(昇降点地方時6時太陽同期軌道)

観測精度 領域1 (~1平方度) 領域2(~8平方度) 位置決定精度 7μas 40 μas 年周視差 10μas 54μas 固有運動 9μas / yr 50μas / yr

観測手法 望遠鏡を観測方向へ向け撮像をおこなう。 (撮像フレーム内の星の位置を~100分の1ピクセルで求める。)   (撮像フレーム内の星の位置を~100分の1ピクセルで求める。) 観測領域を撮像フレームで埋め尽くし、大フレームを構築 ミッション期間中大フレームを作成し(数万枚)、そこから外部参照天体を利用しながら位置、固有運動、年周視差を求める(~10μas:数万分の1ピクセルレベル)。

目標精度達成までの観測の流れ

目標精度達成までの観測の流れ 星像中心決定

目標精度達成までの観測の流れ 望遠鏡熱安定性

目標精度達成までの観測の流れ 望遠鏡志向安定性

重要課題 星像中心決定 ・望遠鏡の熱安定性 望遠鏡の指向安定性 TTMによる制御方式の検討 誤差分散が1/√N則で落ちるかの実証実験       ~10000枚オーダの画像データによる実験 ・望遠鏡の熱安定性     熱構造モデル構築と計算により画像歪量を計算      実証実験にむけた準備 望遠鏡の指向安定性     TTMによる制御方式の検討     実証実験にむけた準備

星像中心決定 本当に10μ秒角(10-4~10-5pix)の位置決めが出来るのか? アルゴリズム誤差、ディストーションなど、系統誤差を適切に取り除いた星の位置の誤差がランダム誤差として1/√N 則にしたがって落ちていくか。 手順 1回の撮像で ~100分の1ピクセルレベルの位置決めが出来るか 多数枚の撮像で想定通り1/√N則で誤差が落ちていくか

星像中心決定 セントロイド実験装置概観

星像中心決定 実証実験の結果 1回の撮像あたり~100分の1ピクセルレベルで位置決め 1セット画像数と誤差分散の関係。画像数に応じて誤差分散は小さくなる。

望遠鏡の熱安定性 40分の間、焦点面上の画像が0.1nm以下の変動に抑えるか、変動をモデル化する事が必要。(変動を抑えるためにはmKオーダーの管理が必要) そこで。。。 アルゴリズム ・望遠鏡部温度変動は~1K/40分以下に抑える。 ・画像1次変動、2次の変動は0.1nmを超えて変動する事を許す。 ・3次以上の変動0.1nm以下とする。 ・1次、2次の変動量は多数撮像した観測画像より解析的に求める。 以上アルゴリズムがうまく機能するかの検討を行った。

望遠鏡の熱安定性 構造モデルの作成 光学系まわり熱境界条件の計算 熱変動量の計算 ミラー支持構造熱変動⇒画像歪み ミラー自身の歪み⇒画像歪み 検出器歪み⇒画像歪み 以上、望遠鏡歪みに伴う画像の歪みを求めたが3次以上の歪みは0.1nm以下に抑えられている事が確認された。

望遠鏡の熱安定性 熱変動特性の実証実験 望遠鏡のクリティカルな部分を抜き出し3次以上の変動が0.1nm以下の変動であることを示す。 レーザー干渉型超精密熱変形センサーで測定(重力波グループの協力のもと) (1時間の周期の変位に対し20pmの制度測定可能)

冷却/熱入力システム 素材物性値測定、光学系の熱変動特性を調べるための冷却熱入力システム 熱パスのスイッチングが可能 最大8ch温度同時測定 アルミ板を用いたテストで80Kまで冷却可能であることを確認

望遠鏡の志向安定性 撮像時間(7s)中星像が1ピクセル程度以上ずれない事が必要。 190mas/7sの志向安定性を要求。 衛星の志向制御システムのみでは困難 TTM(ティップティルトミラー)による制御

望遠鏡の志向安定性 TTMの開発(ひのででの実績がある) ・制御信号検出の確認 ・低温におけるピエゾアクチュエータの動作実験 (複数の星を用いた誤差信号取得の確認←高周波に対応可能なため(RW)) ・低温におけるピエゾアクチュエータの動作実験  フィードフォワードによる制御  TTM制御システム実証実験用セットアップ

焦点面 焦点面開発(オーストラリア国立大学) オーストラリアスペースリサーチプログラムに焦点面開発の応募の合意

小型JASMINE今後 総合システムの成立性の確認 重要検討課題の検討完了 ミッション提案へ

まとめ 観測領域 バルジ数平方度 観測精度 位置7μas, 年周視差10μas, 固有運動9μas/yr 波長 観測の仕様 観測領域 バルジ数平方度 観測精度 位置7μas, 年周視差10μas, 固有運動9μas/yr 波長 中心波長1.4μm(1.1μm< λ< 1.7μm) 観測等級 Hw=11.5等   光学系 改良コルシュ(3枚鏡) 観測波長 中心波長1.4μm (1.1μm < λ < 1.7μm) 口径 30cm 焦点距離 3.9m 検出器 HgCdTe検出器(4K×4K) ピクセルサイズ 10μm 検出器個数 1 視野角  0.65度×0.65度 光学系パラメータ 仕様 鏡材、構体 合成石英 CFRP 熱環境 望遠鏡部180K ~ 200K 検出器部170K ~180K 軌道 600km地球周回軌道(太陽同期) 志向安定性 190mas / 7s 温度安定性 1K / 45分

終わり