-80度で運用可能な完全自律 シーイング測定装置の開発

Slides:



Advertisements
Similar presentations
3.8m 望遠鏡用面分光装置 2010/08/18 光赤天連シンポ 尾崎 忍夫、岩田 生、神戸 栄治、沖田 喜一(国立天文台) 吉田 道利(広島大学)、岩室 史英、菅井 肇、太田 耕司(京都 大学)
Advertisements

~ファーストスターを探 れ!~ 第 9 回きみっしょん A 班 相羽祇亮(高1) 栃木県立宇都宮高 校 飯田美幸(高2) 茨城県立竹園高校 栗原佑典(高2) 埼玉県立熊谷高校 小林千鶴(高2) 愛媛県立松山中央 高校 永井悠真(高2) 埼玉県立浦和北高 校 福本菜々美(高1) 私立済美高校.
極紫外撮像分光装置 (EIS) 国立天文台 渡 邊 鉄 哉
明野自動観測システムについて ありもとまこと.
A Daytime Infra-Red Sky Background at Dome F, Antarctica
榮樂 英樹 LilyVM と仮想化技術 榮樂 英樹
高速分光器観測マニュアル ○内容 1:各種マスクスリットの(CCD上での)位置 p.2
Astronomical Characterization at Dome Fuji in Antarctica
DOME-F関連の開発メモ 沖田博文 初稿2012年4月30日、改訂2012年8月2日
GLAO at Subaru Telescope
光赤天連シンポジウム (2011年9月6日, 於:京都大)
SWIMS Current Status of Development
南極からの新赤外線天文学の創成 南極内陸は、ブリザードがなく、非常に穏やかな、地球上で最も星空の美しい場所です。この場所で私たちは新しい赤外線天文学を展開します 宇宙初期の広域銀河地図を作って、私たちの銀河系の生い立ちを解明します 137億年前 100億年前 宇宙の果て 最初の星が生まれ、銀河が成長した時代.
USB2.0対応PICを用いたデータロガーの製作
2007 9/26-28 秋季年会 高速分光システムの開発 磯貝 瑞希(広島大)、嶺重 慎、野上 大作(京都大)、川端 弘治、植村 誠、大杉 節、山下 卓也、永江 修、新井 彰、保田 知則、宮本 久嗣、上原 岳士、笹田 真人、田中 祐行、松井 理紗子、深沢 泰司、かなた望遠鏡チーム(広島大)、杉保 圭(京都大)
2008 3/24-27 春季年会 高速分光システムの開発 II 1300秒 0.1等
3.8 m望遠鏡主鏡エッジセンサ 開発進捗 京都大学 理学研究科 M2 河端 洋人.
京大岡山3.8 m望遠鏡計画: 分割主鏡制御エッジセンサの開発
Dome Fuji Differential Image Motion Monitor
南極大陸内陸高原・ドームふじ基地の 接地境界層、自由大気、大気対流
ティコ第2星表を用いた限界等級の測定 目的 内容 宇宙粒子研究室 竹川涼太
2次元蛍光放射線測定器の開発 宇宙粒子研究室 氏名 美野 翔太.
JARE52でわかった ドームふじの天体観測条件 沖田博文 平成23年度 国立極地研究所 学生研究発表会 2012年2月22日
P01.埼玉大学55cm望遠鏡SaCRAの 制御システム開発 ~第5回 ~ ポスター説明
みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
Seeing Measurement by the Tohoku Univ. Antarctica DIMM
南極大陸内陸高原・ドームふじ基地で観測された 極めて薄い接地境界層:高さ 15.3m16m
Multi-Pixel Photon Counter(MPPC)の開発
JARE54 Dome Fuji Astronomy
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義6 特別編 観測装置の将来計画
①浮上(RTB準備)→ 圧力センサー(水深)
新星のz’ band Survey 清田誠一郎 (TAO、VSOLJ).
Photometric properties of Lyα emitters at z = 4
Thickness of the Atmospheric Boundary Layer Above Dome A, Antarctica, during 2009 C.S. Bonner et al. PASP (2010) みさゼミ 論文紹介 沖田博文(D2.
トリガー用プラスチックシンチレータ、観測用シンチレータ、光学系、IITとCCDカメラからなる装置である。(図1) プラスチックシンチレータ
F. Lascaux, E. Masciadri, and S. Hagelin MNRAS, 411, 693 (2011)
南極から宇宙を見る 沖田博文 東北大学大学院理学研究科天文学専攻 市川隆研究室 南極2m望遠鏡プロジェクト
AIRT40+TONIC2 for JARE53/54 Winter-over Observation 新光学系の提案(最終案)
AIRTfinder関連の開発メモ 沖田博文 2012年5月1日
南極40cm赤外線望遠鏡に同架する望遠鏡(案)
南極ドームふじ基地での冬期無人赤外線天体観測
日中科学協力による高分散分光: Kodak blue-plus CCD の性能
南極サイト調査用DIMM (シーイング測定装置) の開発と試験観測
ガンマ線バースト観測用 面分光装置の紹介 岡山天体物理観測所 尾崎忍夫 共同研究者 吉田、岩田、神戸、沖田(岡山天体物理観測所)、
南極サイト調査に用いるシーイング測定装置(DIMM)の開発
Aristidi, E., Fossat, E., Agabi, A., et al. A&A, 499, 955 (2009)
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
CCDカメラST-9Eの      測光精密評価  和歌山大学 教育学部           自然環境教育課程 地球環境プログラム 天文学専攻 07543031   山口卓也  
レーザーシーロメーターによる 大気境界層エアロゾル及び 低層雲の動態に関する研究
miniTAO/ANIR Status Report
○沖田博文(東北大学)、市川隆(東北大学)、高遠徳尚(国立天文台)、栗田健太郎(東北大学)、小山拓也(東北大学)
CCDを用いた星像中心決定実験の結果 ○矢野太平(理研)、郷田直輝、小林行泰、辻本拓司(国立天文台)
F/3.5 R-spec H.Akitaya CCD Camera Video Camera F/3.5 F/1.3
坂口電熱「クリアヒーター」が天文用途に使用出来るか?実験レポート
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
南極40cm赤外線望遠鏡の改良と定量的性能評価
神山天文台における 2色同時撮像装置ADLERを用いた矮新星観測
京大岡山3.8m望遠鏡用高分散分光器 京大宇物 岩室史英 サイエンス 太陽型星のスーパーフレア現象の解明
1:Weak lensing 2:shear 3:高次展開 4:利点 5:問題点
Igor Petenko et al. Geophysical Research Abstracts Vol. 15, EGU , 2013
天文学における52次隊での 成果と将来計画 ○沖田博文1,3,4・市川隆1・高遠徳尚2・小山拓也1 第2回極域シンポジウム
○沖田博文(東北大学大学院理学研究科天文学専攻・国立極地研究所)
Telescope Array ~Searching for the origin of the highest energy cosmic ray 私たちの研究の目的 宇宙線って何? 最高エネルギー宇宙線の数が、 理論による予想を大きく上回っていた! 現代物理学の主要な謎の1つ 宇宙空間を光に近い速度で飛び回っている非常に小さな粒子のことです。
地上分光観測による金星下層大気におけるH2Oの半球分布の導出
AIRT40+TONIC2 for JARE53/54 Winter-over Observation 新光学系 備忘録
南極ドームふじのシーイング -雪面から高さ15mで0.2秒角-
教育学部 自然環境教育課程 天文ゼミ 菊池かおり
南極サイト調査用DIMM (シーイング測定装置) の開発と試験観測
シンチレーションファイバーを 用いた宇宙線の観測
Presentation transcript:

-80度で運用可能な完全自律 シーイング測定装置の開発 V215a 1/15 -80度で運用可能な完全自律 シーイング測定装置の開発 ○沖田博文(東北大学) 高遠徳尚(ハワイ観測所) 市川隆(東北大学) 日本天文学会2012年秋期年会 大分大学 2012年9月19日

Introduction 2/15 シーイング”Seeing”は観測効率を決定する重要なパラメーター ・高い空間分解能 ・深い検出限界   ・高い空間分解能   ・深い検出限界   →良シーイング観測地で天体観測することが本質的に重要 南極大陸内陸高原は地球上で最もシーイングが良い予想   ・特異な地形、気象   →自由大気シーイング~0.3秒角台 地表面付近には接地境界層と呼ばれる強い乱流層が存在 Syowa 観測地 標高 自由大気シーイング 接地境界層の厚さ South Pole 2,835m 0.37” 270m Dome A 4,093m ? 13.9m Dome C 3,250m 0.36” 30m Dome Fuji 3,810m ©SPIE Okita+2010 ドームふじの自由大気シーイングと接地境界層の厚さを測定したい

3/15 DIMM Differential Image Motion Monitor (DIMM)はシーイングを測定する方法として広く使用されている。原理としては地球大気の異なるpathを通ってきた天体からの光を観測し、検出器上に出来る複数の天体像の相対的な位置の分散をシーイングに焼き直すものである。(M. Sarazin & F. Roddier, 1990) θl,t   シーイング σ2l,t   2星の位置の分散 λ   観測波長 z   天頂角 D   開口直径 d   開口間距離 ちなみにσ2l,tを求めるためには有限の測定時間ΔtでN回する必要がある。これらも重要なDIMMパラメーターである。

4/15 JARE52 Activities 2010-2011年に実施された第52次日本南極地域観測隊によってドームふじ基地のシーイング測定を初めて実施。 太陽の沈まない夏期 4日間(実質丸1日分)のデータ 雪面から高さ約2m(接地境界層の影響大) about 2m Tohoku-DIMM put on the AIRT40. The entrance pupils were about 2m above snow surface. JARE51st and JARE52nd Dome Fuji team members at Dome Fuji

JARE52 Results (1) 5/15 JARE52の全シーイング観測結果 平均1.2秒角、Median 1.1秒角、25%tile 0.83秒角、75%tile 1.5秒角が得られた。 観測は雪面で実施しており、接地境界層の影響を強く受けていると考えられる。 Table.2 statistics of our seeing measurements Fig.5 DIMM seeing with the wavelength =0.55μm. All measurements were curried out during daytime (the Sun didn’t set). We chose the exposure times as 1/1,000 second, and the height of the entrance pupils of our DIMM were about 2m above snow surface.

6/15 JARE52 Results (2) 0.5 時間変化を調べたところシーイングは連続的に変化し18時頃に0.7秒角の極小を得る事が分かった(左図(i)。 16m気象タワーとの比較では温度とウインドシア(風速の差)がシーイングと良い相関があることが分かった。これらの相関からシーイングが雪面付近の乱流層によって悪化することが示唆される。 Wind shear (m/s) Fig.6 (i) the seeing values versus Dome Fuji local time. (iii) temperatures with some offsets. (blue is at 0.3m with -6◦C offset, magenta is at 6.5m & -3◦C, cyan is at 9,5m without offset, yellow is at 12m & +3◦C, and black is at 15.8m & +6◦C. (iv) wind speeds at the height of 6.1m (red) and 14.4m (green). Fig.7 (left) The scattergram between the seeing and the temperatures. (right) The scattergram between the seeing and the wind shear.

問題点 雪面から高さ約10mで冬期のシーイングをリモートで測定する事を計画 7/15 JARE52でのシーイング観測 夏期のみの4日間のデータ 雪面から高さ約2mで観測を実施 冬期のシーイング値が分からない 自由大気シーイング・接地境界層の厚みの情報が得られない 雪面から高さ約10mで冬期のシーイングをリモートで測定する事を計画 無人発電通信モジュールPLATO-F (52次隊で搬入) 天体観測ステージ(53次隊で搬入) 完全自立なシーイング測定望遠鏡(54次隊で設置予定) 天体観測ステージ Photo by 堀川さん PLATO-F

8/15 DF-DIMM Dome FUJI winter-over DIMM

DF-DIMM Hardware 9/15 望遠鏡 MEADE LX200AFC-8” (口径20cm、経緯台式の自動導入望遠鏡) 検出器  SBIG ST-i monochrome  (USBバスパワーで駆動するフルフレーム転送・   非冷却CCDカメラ) コントロールPC  CompuLab FitPC2 C1600 WiFi  (6Wで駆動する超小型ファンレスPC) Meade LX200ACF-8” ×3台 ×3台 SBIG ST-i  なぜ市販品を用いるのか? ・高い信頼性 ・部品調達が容易 ・相対的に安価 CompuLab FitPC2

DF-DIMM Hardware 10/15 3台のPCで得たデータから望遠鏡を制御しDIMM観測を実施 画像データから状況を判断、自律的に観測を実施 DIMM観測カメラ (視野0.08度) 中視野(0.5度)ファインダー (日中用) 高視野(4度)ファインダー (夜間用) コマンド 画像データ 観測結果だけを 日本へ転送 Iridium Open Port 導入精度の不足 ↓ 高視野ファインダー 厳密なアライメント不要、望遠鏡を置いて電源ONするだけでシーイング測定が可能

DF-DIMM Telescope Meade LX200ACF-20 (D=203mm, f=2000mm) with TeleVue Everbrite Diagonal Mount Meade LX200ACF-8” (Alt-Az mode) Weight Focuser JMI MotoFocus with hand-made speed reduce circuit Wedge prism Apex=30”, φ80mm d 140mm D 60mm Filter Edmund #67013-L Wavelength 472nm, Δ=35nm Diffraction Limit 1.98” (=2.59pixel) Main_CCD SBIG ST-i Pixel size 7.4μm x 7.4μm Pixel number 648 x 486 Pixel scale 0.763”/pix FOV 8.2’ x 6.2’ DayGuideCCD DF-DIMM DayGuide lens Pencial BORG 25 #6025 With 2.5x TeleVue Powermate f=438mm F/17.5 Filter Edmund #86347-L Wavelength 655nm, Δ=24nm Diffraction Limit 6.59” DayGuide Pixel scale 3.49”/pix DayGuide FOV 0.62d x 0.47d NightGuideCCD SBIG ST-i NightGuide lens FUJIFILM HF50HA-1B f=50mm, F/2.3 Edmund #67013-L 472nm, Δ=35nm 5.46” NightGuide Pixel scale 30.5”/pix NightGuide FOV 5.5d x 4.1d Control 3x FitPC2 nightview for ST-i sextractor for detection and other original softs Heater 35W (+ AC 8W) Total Power 36W (Max. 43W)

市販望遠鏡を改造、南極仕様にする技術・技能をほぼ確立 12/15 DF-DIMM Hardware -80度のドームふじで使用するために改造を実施 完全な分解と洗浄   完全に脱脂洗浄し-80度で使用可能なグリスに交換 最低限の加熱   電子回路やモーターをヒーターでピンポイント加熱 結露対策   光学窓にヒーターを追加   できるだけ隙間を無くす 完全に分解 FOMBLIN ZLHT ソルベイソレクシス(株)HPより 冷却実験  -80度で動作を確認 市販望遠鏡を改造、南極仕様にする技術・技能をほぼ確立 水平モーター DIMMマスク(ウェッジプリズム)

13/15 DF-DIMM Software LX200と3台のST-iを制御するために3台のFitPC2を用いる。OSはUbuntu 11.04を用い、C言語、awk、 bashスクリプトで以下のようなソフトを作成した。 望遠鏡の操作は自作ソフトを用いた。ST-iのコントロールはNightViewを用いた。得られた画像の解析はcfitsioを用いた自作ソフトでホットピクセルを除去しSextractorで天体検出を行った。 さらにこれらを組み合わせたスクリプトをinitプロセスやcrontabに実行させることで電源ONで自動的に観測を開始、状況に応じて終了・再観測するようにした。 望遠鏡は完全に自立して観測を行い、最低限の情報のみを日本に送信する。 天体の自動導入 露出時間の決定 視野中心への天体導入 ピント位置検出・移動 焦点距離の測定・決定 本体とファインダーの原点を同期 視野内に天体が導入できない場合に周辺を探す DIMM観測 DIMMパラメーター  Δt = 0.001 sec  N = 30

14/15 東広島天文台での比較観測 開発・試験観測の他に、DF-DIMMで正しい値が得られているかどうかを評価するため7月23日からの1週間、東広島天文台において教育学部DIMMとの同時観測を実施した。観測の結果2台のDIMMの測定値は時系列・統計的に良い一致が見られた。 Fig.15 Hiroshima-DIMM (left, dark blue one) and DF-DIMM (right, white one) FIg.16 Time series seeing values. Red: Hiroshima- DIMM Blue: New Tohoku DIMM (with offset +1”) Hiroshima-DIMM DF-DIMM Fig.17 (left) The histgram of two DIMMs. Red line means Hiroshima-DIMM and blue one means DF-DIMM. (right) Correlation map of DF-DIMM and Hiroshima-DIMM. The correlation coefficient is 0.63.

Conclusion 15/15 良シーイングは天文学にとって極めて重要である 南極大陸内陸高原は地球上で最もシーイングが良いと予想されている 2010-2011年に初めてドームふじ基地でシーイング観測が行われたが、夏期のみの4日間の観測でかつ雪面から2mで行われた結果であって冬期の自由大気シーイングや接地境界層についてはまだ分かっていない 完全自律リモート望遠鏡で冬期のシーイング測定を計画し望遠鏡を開発 高さ10mの天体観測ステージ、無人発電通信モジュールPLATO-Fを使用 ハードウェアは市販品(LX200、ST-i、FitPC2)を組み合わせ低温改造 完全自律観測が可能なソフトウェア・手法を開発 厳密なアライメント不要、望遠鏡を置いて電源ONするだけでシーイング測定が可能 2012年11月に南極へ輸送、2013年1月からドームふじで観測開始、随時観測結果を日本に送信予定