Interactive Session 症例から学ぶ HIV感染症診療のコツ 座長: 青木 眞 Rovert T. Schooley

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Interactive Session 症例から学ぶ HIV感染症診療のコツ 座長: 青木 眞 Rovert T. Schooley 第18回日本エイズ学会 Interactive Session 症例から学ぶ HIV感染症診療のコツ 座長: 青木 眞 Rovert T. Schooley Constance A . Benson 中村 哲也 桒原 健

問題が出題され、合図がありましたら該当する番号を選択ボタンの中から選んで押して下さい。 A question is displayed on main screen, after MC’s cue, then you can push the corresponding number from 10 keys. 押した番号は上の液晶パネルに表示されます。 The number you pushed will be displayed on liquid crystal panel. 間違えた場合は続けて該当する番号を押して ください。最後に押した番号が集計されます。 If you need to correct, please push corresponding number again. The final number you pushed will be counted.

練習:あなたのご職業は?

HIV-1感染症と 結核の合併例 症例1 #1

症例 1 29歳女性 静注薬物使用(IDU)歴あり 6週間にわたる発熱、寝汗、喀痰を伴う咳、体重減少(約9kg)、 胸背部痛を訴え、 2004年2月に近医を受診 X線像:上・中肺野に浸潤、RLL滲出液 身体所見:発熱(39℃)、頻呼吸、両肺野にラ音 喀痰スメア 抗酸菌陽性 脊椎X線で第10胸椎レベルの脊椎破壊を認めた。核医学スキャンで骨の感染/炎症を示すアップテイクの増加を認めた。 症例1 #2

症例 1 この女性は HIV陽性であることも判明 CD4:123 cells/μL、ウイルス量:207,802 copies/mL 症例 1 この女性は HIV陽性であることも判明 CD4:123 cells/μL、ウイルス量:207,802 copies/mL Hgb 9.0 g/dL, WBC 25,000 他の所見は正常であった 症例1 #3

この女性に対し、どのような治療を開始しますか? 症例 1 この女性に対し、どのような治療を開始しますか? 症例1 #4

症例 1 この女性に対し、どのような治療を開始しますか? ①即座に結核治療を開始し、抗ウイルス薬治療は2ヵ月遅らせる 症例 1 この女性に対し、どのような治療を開始しますか? ①即座に結核治療を開始し、抗ウイルス薬治療は2ヵ月遅らせる ②即座に結核治療を開始し、結核治療が完了するまで抗ウイルス薬治療は遅らせる ③すぐに結核治療、抗ウイルス薬治療を同時に開始する ④その他の治療法 症例1 #5

結核とHIV感染症の相互作用 HIV-1 M.tuberculosis 症例1 #6

結核とHIV感染症の相互作用 HIV-1 M.tuberculosis 細胞性免疫の低下 再活性化率の上昇 伝染力の強化 治療効果の減弱 症例1 #7

結核とHIV感染症の相互作用 HIV-1 M.tuberculosis Tリンパ球の活性化 複製能の強化 HIV病期進行の加速 伝染力の強化 抗ウイルス薬治療の複雑化 HIV-1 M.tuberculosis 細胞性免疫の低下 再活性化率の上昇 伝染力の強化 治療効果の減弱 症例1 #8

自然経過 HIVによって、潜在的結核感染者における結核菌を活性化させる生涯リスクは高くなる 症例1 #9

強力な抗ウイルス治療は 活動性結核発症のリスクを低下させる プロスペクティブ観察研究、 1995-1998 被験者1,360例; 結核18例(0.79/100 患者・年) ツベルクリン反応検査(TST)陽性及びCD4低値が、独立的に結核リスク増加に相関していた ツ反及びCD4数コントロール後: 未治療あるいは単剤療法の患者と比較したHAART施行患者の結核有病比率は0.09 (91% ) 2剤抗ウイルス療法施行患者と比べたHAART施行患者の結核有病比率は 0.18 (82% ) Girardi E, et al. AIDS 2000 症例1 #10

結核患者における 抗ウイルス薬治療開始時期の問題 結核及び抗ウイルス薬治療の同時開始: ベネフィット:結核治療成功の可能性を高める免疫を改善し、結核に関連する早期の罹患率及び死亡率を低下する リスク:薬剤相互作用、免疫再構築症候群 症例1 #11

結核患者における 抗ウイルス薬治療開始時期の問題 時間差治療:まず結核治療を開始し、その後抗ウイルス薬治療を開始する ベネフィット:薬物相互作用の回避 リスク:HIV合併患者はHIV非合併患者よりも治療開始3カ月 における結核関連の死亡率が高い。特に免疫抑制が深刻な 場合にこの傾向が著明になる。 症例1 #12

結核患者における 抗ウイルス薬治療開始時期の問題 WHOの推奨: CD4 <50 cells/μL:抗ウイルス薬治療及び結核治療を同時に開始 (結核治療継続が可能となったらすぐに) CD4が50-200 cells/μL:結核治療開始後2ヵ月は抗ウイルス薬治療を遅らせる CD4+T >200 cells/μL:結核治療完了まで抗ウイルス薬治療は開始しない ATS/CDC/IDSA: CD4 <350 cells/μL:抗ウイルス薬治療開始は症例ごとに判断する;まず結核治療を開始し、可能であればその後4-8週間は抗ウイルス薬治療を開始しないことが望ましい 症例1 #13

強力な抗ウイルス薬治療下における急性日和見感染症の管理-CDC/NIH/IDSAガイドライン クリプトスポリジウム症、マイクロスポリジウム症、進行性多病巣性白質脳症(PML)、カポジ肉腫 即座に抗ウイルス薬治療を開始する-有効な治療法はないに等しい;抗ウイルス薬治療の毒性リスクよりも治療の利益を優先する 結核、MAC、CMV、クリプトコックス髄膜炎 日和見感染症治療に対する臨床効果が得られるまで 抗ウイルス薬治療を遅らせる 症例1 #14

症例 1 結核治療と抗ウイルス薬治療の同時開始が決定された。なぜなら… 症例 1 結核治療と抗ウイルス薬治療の同時開始が決定された。なぜなら… 症状及び検査所見により播種性結核が示唆された CD4 123 cells/μLであり、ウイルス量が非常に高かった 当該患者に対するイソニアジド、リファブチン* 、 エタンブトール、ピラジナミドの投与が開始された *国内未承認 症例1 #16

症例 1 この女性患者に対し、あなたならどのような抗ウイルス 薬治療を選択しますか? 症例1 #17

症例 1 この女性患者に対し、あなたならどのような抗ウイルス 薬治療を選択しますか? ①NVP+ZDV+3TC 症例 1 この女性患者に対し、あなたならどのような抗ウイルス 薬治療を選択しますか? ①NVP+ZDV+3TC ②LPV/RTV(カレトラ)+ZDV+3TC ③EFV+ZDV+3TC ④RTV/SQV+ZDV+3TC 症例1 #18

抗結核治療中の患者に対する 適切な抗ウイルス薬の組み合わせ リファマイシン系が結核治療成功のキーとなるため、リファマイシン系の継続投与が可能な抗ウイルス薬の組み合わせが望ましい 選択肢: 抗結核薬     抗ウイルス薬 リファンピシンを含む EFV 800 mg/d + NRTI2剤 リファブチンを含む* EFV 600 mg/d + NRTI2剤 PIs* + NRTI2剤 *リファブチン及びPIの用量は調整すること 症例1 #19

EFVベースの組み合わせ+ 結核治療におけるリファンピシン HIV/結核合併患者24例を対象とした薬物動態試験 ( Lopez-Cortez LF, et al. Clin Pharmacokinetics 2004) A群:1-7日目にRFPを除く抗結核薬処方 及び EFV 600または800 mg/d + 2NRTIを開始し、 8-14日目にRFPを追加投与 B群:1-7日目にRFPを含む抗結核薬処方を開始し、8-14日目にEFV 800 mg/d + 2 NRTIs を追加投与 最高値 最低値 AUC EFV* (平均) -24% -25% -22% *変化はEFV600mg、800mgで同等であった 症例1 #20

リファンピシンによる結核治療+ EFVベースの組み合わせ パイロットスタディ( Jack C, et al., JAIDS 2004)   対象:ddI+3TC+EFV 600mg/dとリファンピシンによる標準的結 核治療を同時に行った肺結核患者20例 20例中17例が標準的結核治療及び抗ウイルス薬治療を完遂 薬剤感受性のある結核患者19例中17例(89%)の結核が治癒し、 スタディに入れられた20例中17例 (85%) が治癒。 結核治療及び抗ウイルス薬治療を完遂した17例中15例(88%)が VL < 50 copies/mLに達し、CD4が148 cells/μL増加した 症例1 #21

ARV薬剤とリファブチン同時投与時の 用量調整 薬剤 ARV 用量調整 RBT用量調整* Indinavir 1000 mg Q8h 150 mg QD Nelfinavir 1250 mg BID 150 mg QD Amprenavir 1200 mg BID 150 mg QD Ritonavir (full dose) 400-600 mg BID 150 mg 2回/wk Ritonavir (low dose) 100-200 mg BID 150 mg 2回/wk Lopinavir/r 調整不要    150 mg 2回/wk Saquinavir sgc 調整不要      300 mg QD Efavirenz 調整不要   450-600 mg/d Nevirapine 調整不要   300 mg QD *DLV, SQV hgcと併用しないこと 症例1 #22

症例 1 抗結核薬4剤投与2ヵ月後、当該患者の発熱、浸潤、胸膜滲出液は消失し、背部痛も改善した 症例 1 抗結核薬4剤投与2ヵ月後、当該患者の発熱、浸潤、胸膜滲出液は消失し、背部痛も改善した 繰り返し施行した喀痰検査はAFB スメア陰性であった。 あなたなら次にどのような処置をしますか? 症例1 #23

次の処置としてあなたならどの方法を推奨しますか? 症例 1 次の処置としてあなたならどの方法を推奨しますか? 症例1 #24

症例 1 次の処置としてあなたならどの方法を推奨しますか? ①イソニアジド+リファブチン 週2回DOTに切り替え、9ヵ月間継続 症例 1 次の処置としてあなたならどの方法を推奨しますか? ①イソニアジド+リファブチン 週2回DOTに切り替え、9ヵ月間継続 ②イソニアジド+リファブチン 週2回DOTに切り替え、6ヵ月間継続 ③イソニアジド+リファブチン毎日DOTに切り替え、9ヵ月間継続する ④抗結核薬全4剤投与を6ヵ月継続 症例1 #25

活動性肺結核を合併した HIV-1感染患者の治療 薬剤感受性結核に対する初回推奨の組み合わせ  (合併症のない肺結核): INH EB PZA RFP INH RFP 2ヵ月 4ヵ月 症例1 #26

疾病の特徴に基づいた抗結核治療のバリエーション 骨または関節の疾病 INH EB PZA RFP INH RFP 2ヵ月 4ヵ月 症例1 #27

疾病の特徴に基づいた抗結核治療のバリエーション 骨または関節の疾病 INH EB PZA RFP INH RFP 2ヵ月 4ヵ月 3ヵ月間延長 症例1 #28

HIV-1感染者特有の治療上の問題点 CD4<100の場合 そのため… INH‐リファペンチン*の週1回投与は行うべきではない CD4<100/μLの患者にはINH-リファンピシンあるいはINH-リファブチンの週2回投与を行うべきではない *国内未承認 症例1 #29

結論 当該患者はEFV+AZT+3TC投与を開始した 結核治療は成功し、9ヵ月後治療を中止した 当該患者の最近のCD4は400 cells/μL、ウイルス量は50 copies/mL未満でる 症例1 #30

治療開始のタイミングと 初回療法 症例2 #1

症例 2 35歳女性、1週間にわたる39℃の発熱、頭痛、咳、咽頭痛、筋肉痛、全身性の丘疹性斑及び重度の疲労感を訴え、近医を受診 最近の既往歴 症例 2 35歳女性、1週間にわたる39℃の発熱、頭痛、咳、咽頭痛、筋肉痛、全身性の丘疹性斑及び重度の疲労感を訴え、近医を受診 咽頭培養及びmonospot(EBV)は陰性 アジスロマイシン5日処方  無効 最近の既往歴 夫がHIV陽性(10年) 100%コンドーム使用/失敗なしとの自己申告 1年前の検査でHIV抗体陰性 症例2 #2

症例 2 喫煙歴なし、アルコールあるいは静注薬物常用者ではない、その他特記すべきことなく健康 症例 2 喫煙歴なし、アルコールあるいは静注薬物常用者ではない、その他特記すべきことなく健康 PPD(-)、 CXR正常、 白血球 3.7、 好中球 1.2;   肝機能検査値正常 夫は2年間、カレトラ +コンビビルを服用中 夫はNFV、NVP、d4T、ddIの治療歴があり、アドヒアランス不良によるウイルス学的治療失敗の経験あり 夫の最近のウイルス量は4,950 copies/mL、CD4は 357 cells/L 2001年11月に急性淋菌感染症の治療歴あり HIV EIAは陽性、 ウエスタンブロットは判定保留 症例2 #3

症例 2 CD4 : 525 cells/L ウイルス量 : 136,000 copies/mL 臨床症状は14日間で徐々に改善 症例 2 CD4 : 525 cells/L ウイルス量 : 136,000 copies/mL 臨床症状は14日間で徐々に改善 急性HIV感染症治療の臨床試験への参加を希望 症例2 #4

症例 2 あなたは彼女に何を推奨しますか? 症例2 #5

症例 2 あなたは彼女に何を推奨しますか? ①無作為臨床試験を勧める ②臨床試験以外で、抗ウイルス療法をすぐに開始する ③耐性検査を実施する 症例 2 あなたは彼女に何を推奨しますか? ①無作為臨床試験を勧める ②臨床試験以外で、抗ウイルス療法をすぐに開始する ③耐性検査を実施する ④治療は延期し、経過観察する 症例2 #6

症例 2 ジェノタイプ耐性検査の結果: NRTI関連変異 M184V、R211K、K219N NNRTI関連変異 K103N、Y181C 症例 2 ジェノタイプ耐性検査の結果: NRTI関連変異 M184V、R211K、K219N NNRTI関連変異  K103N、Y181C PI関連変異     L10I、L63P、V77I、L90M 症例2 #7

症例 2 これらの結果に基づき、臨床試験に登録し「非治療」群に組み入れられた DATE CD4 HIV-1 RNA 症例 2 これらの結果に基づき、臨床試験に登録し「非治療」群に組み入れられた DATE    CD4 HIV-1 RNA May 2003 525 (25%) 136,000 c/mL July 2003 483 (29%) 26,487 c/mL Sept 2003 410 (28%) 197,210 c/mL Nov 2003 378 (26%) 112,400 c/mL Jan 2004 330 (20%) 55,299 c/mL 症例2 #8

症例 2 この状況で、あなたは何を勧めますか? 症例2 #9

いつ抗ウイルス療法を開始すべきか 現状のジレンマ – 抗ウイルス療法のベネフィットとリスクを比べなければならない CD4が200 - 500 cells/µL の無症状の症例では 病期進行の軽度~中等度のリスク 治療の合併症の軽度~中等度のリスク 症例2 #10

治療開始時のCD4数及びウイルス量と 3年間のAIDS進展リスクの関係   As you are aware, the Department of Health and Human Services released revised antiretroviral treatment guidelines in February of this year coincident with the 8th Retrovirus Conference in Chicago. The support for this HIV RNA threshold, and indeed, the revisions to the guidelines, continues to derive from this landmark work from the Multicenter AIDS Cohort Study. For this patient, having a CD4+ count of 422 coupled with a viral load of > 55,000 copies/ml using the Roche Amplicor assay places her at a nearly 40% risk of progression to AIDS within 3 years, using these data. Mellors et al, Science 1996;272:1167 症例2 #11

早期治療開始のベネフィットと潜在的リスク (DHHSガイドライン 2004) ウイルス量のコントロールがより容易 免疫不全の遅延又は予防 耐性リスクがより低い 他人へのHIV伝播の危険性が低下 リスク 薬剤によるQOL低下 薬剤による累積的副作用が増大 アドヒアランス不良例では薬剤耐性が発現 将来の治療オプションが制限される Taken from the revised guidelines is this table outlining the potential benefits and risks of earlier initiation of antiretroviral therapy. The major benefits include easier control of viral replication, delay or prevention of immunodeficiency, a lower risk of drug resistance related to the first two concepts, and decreased HIV transmission from infected to uninfected partners. The potential risks of earlier initiation of therapy include those points I already touched on, adverse effects of the drugs and their effect on quality of life, development of drug resistance for those unable to adhere to complex or toxic regimens, leading to limitation of future treatment options. 症例2 #12

治療開始を遅らせる根拠 抗ウイルス治療に伴う副作用は将来の健康状態に 短期的及び長期的に影響を与える 膵炎 抗ウイルス治療に伴う副作用は将来の健康状態に 短期的及び長期的に影響を与える 膵炎 乳酸アシドーシス/ミトコンドリア障害 肝毒性 高脂血症 心血管疾患のリスクの上昇 体脂肪分布異常/リポアトロフィー 高血糖 末梢神経障害 骨減少/骨粗しょう症 Lastly, emerging complications of antiretroviral therapy that may have both short and an ever-increasing array of long-term effects on future health must be balanced with the weight of data supporting earlier treatment. Dr. Grinspoon will address these for you this afternoon. There has not been a systematic effort to evaluate the occurrence or severity of these as clinical events in a prospective study weighing the benefits of earlier therapy with the risks of these complications, in part, because the true rate of these events and the factors that contribute to the risk of their development have not yet been fully elucidated. 症例2 #13

治療開始時期決定に際しては ウイルス量よりCD4数がより重要である レトロスペクティブ・レビュー – 新たな日和見感染症もしくは死亡のリスク (N=1,173) 抗ウイルス療法29ヵ月(中央値)及び経過観察期間36ヵ月(中央値) 持続的なウイルス抑制が得られた患者のうち、治療開始時CD4数が201-350 cells/Lの患者は、 CD4+ < 200 cells/µLでの開始例と比し、 病期進行が有意に遅延(P<0.0001; 0.09) CD4+ > 350 cells/µLでの開始例と比し、 病期進行に有意差なし(P=0.38; 0.40) しかし、抗ウイルス治療開始時のCD4数が少ないほど、持続的なウイルス抑制への達成率が有意に低い Time prevents me from enumerating all of the studies that show similar surrogate marker data supporting earlier initiation of therapy. However, the debate has been further focused on whether or not these surrogate marker benefits, if you will, confer clinical benefit, ie in decreasing the risk and rate of opportunistic complications and death and if so, whether the benefit derived at a given CD4+ count and viral load outweighs the potential risk of complications of therapy and development of drug resistance. There to date have been no prospective randomized controlled clinical trials comparing earlier vs later therapy for those with lower to moderate risk of disease progression. After spending the last 2 years working on the design of such a study and evaluating feasibility and logistics, it seems unlikely at this point that such a study will be done or that if it is attempted, that it will provide us with meaningful data in the future when drug therapies and decisions may be quite different than now. The following three studies are part of an ongoing effort to address this question in the absence of a randomized clinical trial. This study from the Johns Hopkins cohort provides a retrospective analysis of the risk of a new OI or death based on the CD4+ count and VL at the time therapy was started. As you can see, only the CD4+ count was associated with immediate risk of disease progression and the risk of death was statistically increased only for those who started therapy with a CD4+ count < 200. However, the trend was there for those with CD4+ counts between 200 and 350 and one important caveat was that these were not all patients treated with current potent regimens. T Sterling et al, JID 2003; 188:1659-65 症例2 #14

抗ウイルス治療開始の遅延は 死亡リスクを増加させる CDC Adult Spectrum of Disease Project; 1996-2002年に抗ウイルス治療開始時にCD4数を評価した 2,729 症例について解析 日和見 CD4+ 感染症数 死亡 HR (95% CI) 0 – 49 77  19 6.3 (4.0, 10.0) 50 – 199 76  33 3.5 (2.2, 5.4) 200 – 349 34  23 1.7 (1.1, 2.7) 350 – 499 24  11 1.5 (0.9, 2.5) > 500 17  10 1.0 全体 228  96 ------------------ 結論:抗ウイルス治療は、CD4< 200 cells/Lとなるまで待つべきではない Perhaps more informative relating to the continuum of risk was this study from the CDC’s Adult Spectrum of Disease Project, again a retrospective record review of data collected every 6 months from 5,110 subjects. As you can see, the hazard ratio for risk of death was highest for those starting therapy in the lowest CD4+ strata with the hazard ratio no longer statistically significant as the CD4+ count stratum at the time of treatment initiation rose higher than 200. Again, however, my interpretation of these data focuses on the fact that the trends continue to suggest survival benefit, albeit not statistically significant at all strata up to 350 to 400 CD4+ cells. Follow-up in this study was only 18 months, and many subjects started therapy with less potent 2 drug regimens early on, diluting the ability to detect differences later. JE Kaplan et al, CID 2003; 37 症例2 #15

抗ウイルス治療開始の指標 - DHHSガイドライン 2004 臨床症状 CD4数 HIV RNA 推奨事項 症状あり いくつでも いくつでも 治療開始 症状なし < 200 いくつでも 治療開始 症状ない 200-350 いくつでも 治療を勧める 症状なし > 350 > 55,000 治療を勧める もしくは 経過観察 症状なし > 350 < 55,000 一般に経過観察 All of these factors in mind, the DHHS chose to revise their guidelines for the initiation of antiretroviral therapy. The only substantive change in my interpretation, is that for asymptomatic individuals with > 350 CD4+ cells and a viral load of < 55,000 copies/ml, for whom it is felt more appropriate to generally observe rather than treat. It should be said again, however, that this change was prompted not by any new study identifying these as more appropriate thresholds for initiation of therapy but on the accumulating concerns related to adverse effects of therapy. 症例2 #16

症例 2 この状況で、あなたは何を勧めますか? 症例2 #17

症例 2 あなたはどの組み合わせを開始しますか? 症例 2 あなたはどの組み合わせを開始しますか? (NRTI耐性変異:M184V、R211K、K219N; NNRTI耐性変異:K103N、Y181C; PI耐性変異:L10I、L63P、V77I、L90M)      症例2 #18

感染した耐性株は末血中に残る 抗ウイルス治療を延期したHIV-1一次感染の11例 (Little S, et al., 11th CROI, 2004; Abstr. 36LB) 感染からの期間中央値:65 日 感染から中央値225日間(82-1,346日)に縦断的にサンプル採取 NNRTI耐性変異:7例、NRTI + PI耐性変異:7例、NNRTI + PI耐性:1例、3クラス耐性変異:1例 末梢血での完全な野生型へのシフトは、1例でのみ1,019日後に 認められた PI変異を有する症例において、感染後342日までに野生型への シフトは認められなかった 症例2 #19

症例 2 あなたはどの組み合わせを開始しますか? 症例 2 あなたはどの組み合わせを開始しますか? (NRTI耐性変異:M184V、R211K、K219N; NNRTI耐性変異:K103N、Y181C; PI耐性変異:L10I、L63P、V77I、L90M)      症例2 #20

未治療患者に推奨される抗ウイルス療法 好ましい組合せ EFV* + 3TC + (ZDV or TDF or d4T) LPV/r + 3TC + (ZDV or d4T)  *EFVは妊婦には避けるべきである **他の代替の組み合わせが使用できない場合   のみ 代替の組合せ NNRTIベース EFV* + FTC + (ZDV or TDF or d4T) EFV* + (3TC or FTC) + (ddI or ABC) NVP + (3TC or FTC) + (ZDV or d4T or ddI or ABC) NRTI3剤併用療法 ABC + 3TC + (ZDV or d4T)** DHHS Guidelines, March 23, 2004; www.aidsinfo.nih.gov 症例2 #21

未治療患者に推奨される抗ウイルス療法 代替の組合せ (続き) PIベース ATV + (3TC or FTC) + (ZDV or d4T or ABC) FPV + (3TC or FTC) + (ZDV or d4T or ABC) FPV/RTV + (3TC or FTC) + (ZDV or d4T or ABC) IDV/RTV + (3TC or FTC) + (ZDV or d4T or ABC) LPV/RTV + FTC + (ZDV or d4T or ABC) LPV/RTV + 3TC + ABC NFV + (3TC or FTC) + (ZDV or d4T or ABC) SQV/RTV + (3TC or FTC) + (ZDV or d4T or ABC) DHHS Guidelines, March 23, 2004; www.aidsinfo.nih.gov 症例2 #22

いつ、どの組合せで始めるべきか? 全症例に当てはまる単一の回答はなし 考慮すべき要因: 柔軟性と個別化 生物学的要因 CD4数 ウイルス量 毒性及び毒性出現のリスクファクター 薬剤耐性 治療に対するコミットメント 社会的・年令・性別・人種などの要因、服薬能力 柔軟性と個別化 So, my interpretation of the state of the art is that no single answer to when to start therapy is valid for every patient. Multiple factors must be considered in making this decision and the need for flexibility and individualization is more compelling than ever. 症例2 #23

HIVとB型肝炎ウイルスの 重複感染例 症例3 #1

症例 3 43歳 注射薬物常用者 1995年 HIV-1陽性と診断される その後、通院中断 症例 3 43歳 注射薬物常用者  1995年 HIV-1陽性と診断される  その後、通院中断 2003年 倦怠感及び体重減少を訴え来院 -それまでは臨床症状は良好 CD4数:86 cells/mm3 症例3 #2

初回診断 PPD(-) CXR 正常 HCV Ab(-) HBsAg(+) HBV DNA level: 730,000 copies/mL 肝機能: ALT, AST は正常値上限(ULN)の1.5倍 症例3 #3

臨床経過 AZT/3TC + EFV投与開始 8週間後: 発熱、悪心、倦怠感、黄疸 診断: 体温: 38.7℃; その他のバイタルサインは正常 中等度の黄疸あり 右季肋部4cm下方に肝辺縁触知 CD4数: 220 cells/mm3 肝機能: 正常値上限(ULN)の6倍 症例3 #4

あなたならどのような処置をしますか? 症例3 #5

その後の臨床経過 抗ウイルス療法の継続 肝機能は正常値上限の1.5倍に戻る HBV DNA 12,000 copies/mL 10ヵ月後: HIV-1ウイルス量 検出限界以下 CD4数 350 cells/mm3 肝機能 正常値上限の6倍に再上昇 HBV DNA level 220,000 copies/mL 症例3 #6

あなたならどのような処置をしますか? 症例3 #7

3TC投与患者における 肝機能悪化のメカニズム 1). 免疫再構築 2). HBV複製能の回復 a). 3TC 投与中止 b). YMDD 変異の出現 症例3 #8

3TC服用患者における肝機能検査値上昇 Bessesen, et. al., CID 1999 症例3 #9

重複感染患者における肝機能急性増悪 の管理に対するアプローチ 1). 免疫再構築 経過観察または短期間ステロイド投与 2). HBV再発     HBV増殖のコンロトール a). 3TC 再開 b). YMDD変異の発現:他の薬剤を開始 症例3 #10

重複患者のHBVに対するTDFの効果 Cooper, et.al., JID 2004 症例3 #11

HBV感染におけるTDF vs. Adefovir 48週における HBV <105c/mL の割合 TDF 300 mg/day 100% n=35 HBV DNA>106c/mL YMDD 変異 n=53 p<0.001 Adefovir 10 mg/day 44% n=18 van Bommel et. al., Hepatology 2004 症例3 #12

HBVに対するTDFまたはAdefovirの効果 Tenofovir 症例3 #13

HIVとC型肝炎ウイルスの 重複感染例 症例4 #1

症例 4 47歳 血友病/HIV合併患者 1995年 AZT/3TC/IDVによる初回治療 治療開始時のCD4数 190 cells/mm3 症例 4 47歳 血友病/HIV合併患者 1995年  AZT/3TC/IDVによる初回治療   治療開始時のCD4数 190 cells/mm3 症例4 #2

臨床経過 初回検査時にHCV Ab(+)が判明 肝疾患の徴候: なし 肝機能: 正常値上限(ULN)の1.3倍 症例4 #3

臨床経過 2004年: 倦怠感、疲労感が発現 身体所見:正常 検査所見: 腹部所見; 肝疾患の徴候なし CD4:408/mm3 2004年: 倦怠感、疲労感が発現 身体所見:正常 腹部所見; 肝疾患の徴候なし 検査所見: CD4:408/mm3 肝機能;正常値上限(ULN)の3倍 HCV RNA level; 1,000,000 copies/mL HCV; Genotype 2 症例4 #4

あなたならどのような処置をしますか? 症例4 #5

PEG-IFN/RibavirinによるHCV治療: ACTG 5071 Chung, et. al., NEJM, 2004 症例4 #6

PEG-IFN/RibavirinによるHCV治療: ACTG 5071 Chung, et. al., NEJM, 2004 症例4 #7

重複患者におけるHCVの治療 1). HCV単独感染患者と比べ、重複感染患者では ウイルス学的効果の持続が短い。 2). ジェノタイプ2及び3感染患者と比べ、ジェノタイプ1   感染患者では効果が低い。 3). HCV及びHIVの治療開始の最適な順番は決まっ    ていない。 症例4 #8

本日の講義および症例検討のスライドデータは、年内にホームページでフィードバック予定です Visit Our Website