ガンマ線バースト将来計画に向けたワークショップ @京大 平成22年8月27日 川村静児(国立天文台) GRBと重力波観測 ガンマ線バースト将来計画に向けたワークショップ @京大 平成22年8月27日 川村静児(国立天文台) Illustration:Sora
話の内容 GRBと重力波 重力波検出のレビューと現状 LIGOとGRB LCGTとGRB DECIGOとGRB まとめ
GRBと重力波 Long GRB Shot GRB(SGR以外) SGR ある種の超新星、ジェット? NS-NS、NS-BHの合体? 重力波源、軸対象からのずれに依存 地上重力波検出器:銀河近傍 Shot GRB(SGR以外) NS-NS、NS-BHの合体? 強力な重力波源 地上検出器:200 Mpc、DECIGO:ほぼ全宇宙 SGR マグネタ―? 重力波源?
重力波とは? アインシュタインの一般相対性理論により予言 潮汐的な空間のひずみが伝わっていく波 空間のひずみ~10-23程度 ⇒まだ見つかっていない!
重力波を出す天体現象 中性子星やブラックホールの連星運動とその合体 超新星爆発 パルサー 宇宙初期 未知なる天体 重力波天文学
重力波天文学の創成
レーザー干渉計による 重力波検出 重力波 ミラー ミラー レンズ 干渉光 ビームスプリッター スクリーン レーザー
アーム長が長いほど 感度が高い 鏡 鏡 鏡 レーザー 光検出器 鏡 レーザー 光検出器
感度を高める基本技術 ファブリ・ペロー共振器 リサイクリングミラー: 光のリサイクルにより ファブリ・ペロー共振器: 実効的パワーを上げ ショットノイズを低減 ファブリ・ペロー共振器: 多重反射により重力波信号を増幅
連星の合体からの重力波 中性子星や ブラックホール 20 10 -10 x10 18.00 17.98 17.96 17.94 17.92 -10 x10 -18 18.00 17.98 17.96 17.94 17.92 s
マッチドフィルター 信号(重力波信号+雑音)とテンプレートとの相関を取る テンプレートのパラメタをスキャン
現在の世界の大型干渉計 GEO (600 m) LIGO (4 km) TAMA (300 m) CLIO (100 m) VIRGO (3 km)
各検出器の状況 検出器 サイズ 予算規模 (億円) 最高変位感度 @ 1 kHz (m Hz-1/2) コメント LIGO 4 km 1,000 7×10-20 GRB、かにパルサー、背景重力波の上限値 Virgo 3 km 150 15×10-20 超高防振システムで低周波を狙う GEO 300 m 20 13×10-20 シグナルリサイクリングで狭帯域動作可能 TAMA 30 40×10-20 2000年~2002年世界最高感度、最長観測 CLIO 100 m 5 25×10-20 熱雑音で制限、 冷却効果の実証間近
LIGO (Laser Interferometer Gravitational-wave Observatory) One interferometer with 4 km Arms, One with 2 km Arms One interferometer with 4 km Arms
LIGO Sensitivity 現在は19 Mpc遠方で起こる中性子連星合体からの重力波が検出できる
GRB 070201 GRB 070201 重力波検出されず M31におけるNS-NS、NS-BHの合体ではない Short GRB M31の腕を含む方向から到来 重力波検出されず LIGO H1のデータ解析(180 s) M31におけるNS-NS、NS-BHの合体ではない m1:1Ms-3Ms, m2:1Ms-40Ms 99% CL 重力波エネルギー:7.9×1050 erg以下(if M31) SGR(in M31)の可能性は排除しない Abbott et al., Astrophys. J. 681 (2008) p.1419-1430
その他のGRB 22個のGRB (051114 – 070923) LIGO(S5)-Virgoのデータ解析 重力波検出されず NS-NS, NS-BHの合体はなかった 6.7 Mpc 90% CL Abadie et al., Astrophys. J. 715 (2010) p.1453-1461
SGRからの重力波 SGR 1806-20, SGR 1806-20, SGR 1900+14 ジャイアントフレア、バーストに伴う重力波の探査 LIGOデータの解析 重力波検出されず 重力波エネルギーの上限値: 3×1045 – 9×1052 erg (assuming 10 kpc) Abbott et al., PRL 101 (2008) 211102
将来の地上干渉計の計画 第2世代検出器により重力波の初検出が期待される GEO-HF Advanced LIGO LCGT (3 km) LIGO (4 km) GEO (600 m) TAMA (300 m) CLIO (100 m) LCGT (3 km) Advanced Virgo LIGO (4 km) VIRGO (3 km) Einstein Telescope (第3世代)
LCGT アーム長:3 km スケジュール: 低温鏡:熱雑音を下げる 2010年度開始 地下:地面震動が小さい 98億円(3年)獲得 2017年目標感度到達
国際競争と緊急性 現存する欧米の検出器の 到達点 LCGTの 到達点 日本における 実証ヒナ型検出器 予想される 観測数の範囲 発見ライン 年に1個以上観測 連星中性子星合体事象数(期待値) 一年間で検出できる 米国の計画 2008年度から着手 ~2015年完成予定 21 21
重力波検出器ネットワーク LIGO(H)+LIGO(L)+Virgo LIGO(H)+LIGO(L)+Virgo+LCGT 1/2最大感度の範囲:72% 3台稼働率: 51% LIGO(H)+LIGO(L)+Virgo+LCGT 最高感度:+13% 1/2最大感度の範囲: 100% 3台稼働率: 82% L/H+L/L+V 50% L/H+L/L+V+LCGT 50% B. F. Schutz
第2世代地上重力波検出器(LCGTなど)とGRB 中性子星連星の合体の観測 Shot GRBとの同時観測によりメカニズムの解明 GRBの検出をトリガーにしてより詳しいデータ解析 中性子連星の合体の予測 GRBの方向を予測?
干渉計を宇宙に持っていくと もっと長くできる 信号が増える -重力波と光の相互作用の時間が長くなるため -ただし高周波では信号のキャンセルが起こる ノイズが減る -地面振動や重力場の揺らぎノイズが小さい 低周波で感度がよくなる
将来の宇宙干渉計の計画 LISA DECIGO 宇宙干渉計により、さまざまな貴重なサイエンスが期待される 目的:巨大ブラックホールの合体 銀河内白色矮星連星 推進母体:ESA・NASA 目的:インフレーションの直接観測 ダークエネルギーの解明 ダークマターの探査 巨大ブラックホール形成のメカニズム 推進母体:日本(国際協力)
DECIGOとは? Deci-hertz Interferometer Gravitational Wave Observatory LISAと地上検出器の帯域のギャップを狙う 超高感度の実現が可能! 10-18 10-24 10-22 10-20 LISA 地上検出器(e.g. LCGT) Strain [Hz-1/2] DECIGO 白色矮星連星からの重力波雑音 10-4 10-2 100 102 104 Frequency [Hz]
日本の将来計画 (LCGTとDECIGOの関係) 時間 LCGTとDECIGOの違い: 目的 タイムスケール 狙う重力波源 重力波の周波数 LCGT 高い 重力波天文学の創成 DECIGO 低い (準備期間) 重力波天文学の発展
DECIGOの目的 インフレーションからの重力波の直接検出 宇宙膨張加速度の計測 巨大ブラックホール形成のメカニズムの解明 Seto, Kawamura, Nakamura 2004 巨大ブラックホール形成のメカニズムの解明 ダークマターの探索 Saito, Yokoyama 2009 ブランスディッケパラメタの制限 Yagi, Tanaka 2009 10万個の中性子星の質量分布→高密度での状態方程式
予備概念設計 光共振器を使う アーム長:1000 km ミラー直径:1 m レーザー波長:532 nm フィネス:10 レーザーパワー:10 W ミラー質量:100 kg 干渉計3台で 1クラスター 光共振器 光検出器 光共振器 レーザー 光検出器 ドラッグフリー衛星
軌道とコンステレーション(案) 地球 背景重力波検出のため相関を取る レコード盤軌道 太陽 角度分解能を上げる
DECIGOの目標感度と 中性子星連星からの重力波信号 10-19 10-20 10-21 10-22 10-23 10-24 10-25 10-26 (10 M◎ z=1) BH-NS 5年前 Strain [Hz-1/2] 3ヶ月前 NS-NS (z=1) NS-NS z<5, 50,000個 (S/N=10) 合体 10-3 10-2 10-1 1 10 102 103 Frequency [Hz]
DECIGOとGRB 中性子星連星の合体の予言 z<5 合体5年前 10,000個/年~30個/日 方向精度:1秒角
ロードマップ ミッション 要素技術の実証試験 最小限のスペックで 重力波検出 衛星間共振器の実現 重力波天文学の発展 スコープ 衛星1台 2009 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 ミッション 目的 要素技術の実証試験 最小限のスペックで 重力波検出 衛星間共振器の実現 重力波天文学の発展 スコープ 衛星1台 アーム1本 衛星3台 干渉計1台 干渉計3台 ×4クラスター R&D 製作 R&D 製作 R&D 製作 DICIGOパスファインダー (DPF) Pre-DECIGO SWIM DECIGO
DECIGO暫定組織 代表: 川村 (国立天文台) 副代表: 安東 (京大理) デザインフェーズ DECIGO パスファインダー 運営委員会 川村 (国立天文台),安東 (京大理),瀬戸 (京大理),中村 (京大理),坪野 (東大理),佐藤 (法政大工),田中 (京大基研),船木 (JAXA/ISAS),沼田 (Maryland),神田 (阪市大理),井岡 (KEK),高島 (JAXA/ISAS),横山(東大理) Pre-DECIGO L:佐藤(法政大工) 検出器 L:阿久津 (国立天文台) D:沼田(Maryland) サイエンス・データ L:田中 (京大基研) D:瀬戸 (京大理) D:神田 (阪市大理) 衛星 L:船木 (JAXA/ISAS) デザインフェーズ DECIGO パスファインダー 代表: 安東 (京大理) ミッションフェーズ 干渉計 L:佐藤 (法政大工) D:上田 (国立天文台) D:麻生 (東大理) レーザー L:武者 (電通大) D:植田 (電通大) ドラッグフリー L:森脇 (東大新領域) D:坂井 (JAXA/ISAS) スラスター L:船木 (JAXA/ISAS) 信号処理 L:阿久津 (国立天文台) バス L:高島 (JAXA/ISAS) データ解析 L:神田 (阪市大理) L:リーダー,D:副リーダー
まとめ NS-NS/NS-BH連星の合体はshort GRB(SGR以外)の有力候補であり、強力な重力波源である。 LIGOの観測によりGRBに関する情報が得られ始めた LCGTなど第2世代検出器によりshort GRBの正体が分かることが期待される DECIGOによりさらに多くのさらに遠くのGRBの検出が可能になることが期待される
お願い DECIGOでGRB関連でどんなことが分かるか考えて論文書いて下さい! ついでにDECIGO-WGに参加してください!
重力波とGRBの風が気持ちええぜよ! Illustration: Sora