ネットワーク技術の普及による 費用配分の変化

Slides:



Advertisements
Similar presentations
いままでの環境のままかんたんに 防犯効率をアップするシステムとは・・・ KGUARD の防犯カメラセットのご案内 ケーガード.
Advertisements

日韓携帯電話市場の比較 日本大学D班 伊藤 洋平 井上 直也 河野 忠俊. 目次 1、はじめに 2、日本と韓国の携帯電話市場 3、韓国の携帯電話市場 4、日本の携帯電話市場 5、日韓の市場構造の違い 6、国内携帯電話市場における垂直統合のメリット 7、販売奨励金 8、 SIM ロック 9、国内携帯電話市場における垂直統合のデメリッ.
経済の仕組みと経済学. 経済学とは 「経世済民」経済 世の中を治め、民の苦しみを救うこと 人々が幸せに暮らすためのしくみでありその活動 = 経済学とは: 「希少な資源を競合する目的のために, 選択・配分 を考える学問」 2.
情報ネットワークと教育 通信と情報ネットワーク プロトコル LAN The Internet. 通信とその歴史 通信とは 電信 (1835 、モールス ) 電話 (1876 、ベル ) ラジオ (1895) 、テレビ (1925) 情報通信ネットワークへ.
サプライ・チェイン最適化 ー収益管理を中心としてー 東京海洋大学 久保 幹雄
Global Ring Technologies
分担 6-2-1 デジタル放送の歴史と意義  担当    福田 智 6-2-2 インターネットによる配信  担当    儘田 遼.
NORWAY ENGLAND AMERICA FRANCE
「ICT在宅医療・介護システム」プログラム 開発等役務費一般競争入札のご案内 ー総務省「地域ICT利活用連携事業」を受託ー
情報ネットワーク (明石高専 電気情報工学科 5年)
Flashプレイヤーを使った動画配信 情報工学科 宮本 崇也.
join NASS ~つながりあうネットワーク監視システム~
SaaS (Software as a Service)
不特定多数の発信者を考慮した ストリーミングシステムの実現
FREESPOTのご案内&ご提案について
安全・安心なネット生活を送るためのネットワークセキュリティ
インターネット技術の基礎と遠隔コミュニケーション
電子社会設計論 第11回 Electronic social design theory
☆これまでと、これからと☆ パソコンで携帯サイトをみる方法 誰でも利用できる環境の構築 Wiiリモコンを使った構内案内 ーー今回の発表ーー
IBMの歴史 発明 System 360 (1964) Hard Disk (1956) DRAM
小児病棟におけるビデオ会議システムを用いた子ども達への取り組み
消費者行動とサービスの変遷  2016/09/15  MR4215 USU.
「コンピュータと情報システム」 07章 インターネットとセキュリティ
#12 Grid Computing Yutaka Yasuda.
ネットワークの基礎技術.
REX-RAID製品 カテゴリガイド Removable RAID Case 高速USB3.0接続! ミラーリング対応
新しい環境行動のスタイル 環境市民「グリーンコンシューマーガイド」から
“所有”から“利用”へ 情報社会とコンピュータ 第12回.
コンピュータとネットワークのしくみ 情報通信ネットワークのしくみ.
モバイルエージェントの応用 概要 モーバイルエージェントの応用分野 AgentSpaceシステム エージェント移動 応用:ソフトウェアの配信
インターネット活用法 ~ブラウザ編~ 09016 上野喬.
情報処理の概念 #10 インターネットとIPv6 / 2002 (秋)
4大メディア+1の未来を予想する ~新聞はネットの勢力に対抗できるのか~
2,100,000 円 (税込、標準価格) 簡単リモートアクセス導入 セキュリティPC&DoMobileサーバセット 1 2 3
電力自由化の是非 肯定派.
心理学情報処理法Ⅰ コンピュータネットワーク概論.
Yutaka Yasuda, 2004 spring term
総合情報処理センター 利用ガイド(2017年度新入生版)
Yutaka Yasuda, 2004 spring term
5年 WAPM-1750D 「安定した無線LAN環境」を1台で構築 ICTを活用した授業で欠かせない 学校でのタブレット活用授業に最適
「コンピュータと情報システム」 06章 通信ネットワーク
第2章 第1節 情報通信の仕組み 1 ネットワークの仕組み 2 通信プロトコル 3 認証と情報の保護
GeoVision カメラシステム 導入事例集
システム名・タイトル 概要 仕様・特徴 使用上の注意点 災害用情報通信ネットワーク・アプリケーション調査票 システム開発・構築企業、機関名
Accessでできる 「サーバー・データベースシステム構築」のご紹介
MPIによる行列積計算 情報論理工学研究室 渡邉伊織 情報論理工学研究室 渡邉伊織です。
コンピュータリテラシー1              インターネット.
情報処理1 講義              インターネット.
●校内研修(自立型研修)での活用 自立型研修での活用について紹介します。 研修の中でも最も身近なものとして、校内研修があげられます。
コンピュータとネットワークの利用 国際経営学科 牧野ゼミ3年 足立龍哉.
九州大学キャンパスクラウド 利用法 情報ネットワーク特論 講義資料.
All IP Computer Architecture
#6 性能向上、ブレイクスルー、集中と分散 Yutaka Yasuda.
12/14 全体ミーティング 米澤研究室卒論生 山崎孝裕
私の立場 OSカーネルを手がけるエンジニア 大阪市立大学 創造都市研究科の学生
JAVAについて 高橋 雅哉.
情報通信ネットワークの 仕組み.
Step.12 仮想ネットワーク設計 スケジュール 201x/xx/xx 説明、ネットワーク設計 201x/xx/xx ネットワーク設計
データベース設計 第7回 実用データベースの運用例 クライアント=サーバシステム(1)
片方向通信路を含む ネットワークアーキテクチャに於ける 動的な仮想リンク制御機構の設計と実装
電話ロボット SUPER ■ 機能紹介 Auto Call システム 不在のときは一巡後、指定回数まで再コールします
社会と情報 社会における情報システム 理科領域専攻2回 161187 黒塚祐貴.
「モノ」を見失わずに回収できる! 温度・加速度管理付 追跡サービス
コンピュータリテラシー1              インターネット.
卒業研究 JCSPを用いたプログラム開発  池部理奈.
マルチホーム事例 ~AS番号をもつ組織のマルチホーム~
ISDNについて                                  鐘築 茂幸.
情報処理1 講義              インターネット.
情報処理の概念 #0 概説 / 2002 (秋) 一般教育研究センター 安田豊.
第8章 データベースシステムの発展 8.1 オブジェクトリレーショナルデータベース 8.2 分散データベース 8.3 インターネットとデータベース.
Presentation transcript:

ネットワーク技術の普及による 費用配分の変化 京都産業大学 安田 豊

インターネットの考え方 インターネットとは何か? その分散型モデルに注目 理解するべきポイントは? 技術詳細よりシステムとしての全体構造 「通信を行なう両端のシステム(ホストコンピュータ)で出来るだけ多くの処理をし、それを結ぶネットワークはできるだけ簡素に(データを届けるだけ)」 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

従来的ネットワークシステム 例:電話システム バランスポイント 機能をシステム全体のどこで負担するか 黒電話=端末は極めて単純な製品 交換機=ネットワーク構成機器は非常に複雑 受話器をあげた時にどう反応するか?ダイアル、接続、話中処理など、すべてを制御 バランスポイント 端末装置=単純、ネットワークシステム=複雑 網の設計・運用を中央集中的な形態に 機能をシステム全体のどこで負担するか その配分が全体の構成や機器の構造と密接に関係 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

インターネット バランスポイント 機能の配分 非集中的な、分散した構造 末端ホスト=フルセットのコンピュータ ネットワーク=比較的シンプルな機器 (一般的コンピュータより構造的にはシンプル) 機能の配分 端末装置が多くの処理を負担 網はただデータを転送するだけ 非集中的な、分散した構造 構造だけでなく運用も非集中・分散 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

相互接続 中央集中の設計と運用管理 自律分散型の設計と運用 インターネットと相互接続 相互接続が困難になる傾向 NTTの交換機設計手法を見よ 情報も中央管理されることが原因か? 自律分散型の設計と運用 相互接続姓が全て プロトコル、標準化が極めて重要に インターネットと相互接続 相互接続が容易で多くの事業者が参入 地球規模で一体となった運営に成功した主要因 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

インターネット・モデルの影響 インターネットの全体構造 保険業務システム 古典的業務システムの構造にも影響 システム構築費用の分担構造の変化につながる 保険業務システム いわゆるオンラインシステム MARS-みどりの窓口- に起源 (1965 国鉄) 世界再初期の大規模オンラインシステム 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

古典的費用負担構造 サービス提供者(主体は国鉄)がすべてを負担 1995, インターネットのインパクト 各駅の専用端末の開発・製造・設置・保守 回線設備すら単純な買い物では済まない時代 1995, インターネットのインパクト 汎用デジタル通信網が国内、世界を覆う 各家庭ですら手元に汎用デジタル端末機がある ということが突然に現実として登場 技術者には線形の進歩としても一般には衝撃的登場 Web の登場が Break Point だった 回線と端末を意味あるものとして結び付けた 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

インタフェイスとしてのWeb Webの意義 (利用価値) Dell case このWeb直販の端末設備費用は誰が? HTMLブラウザとして、から、 アプリケーションインターフェイスへ Dell case 1996 から Web 直販開始 翌年に 1 千万台を売り上げる このWeb直販の端末設備費用は誰が? 購入に必要なパソコンと回線の費用を誰が? 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

末端での費用の自己負担 オンラインシステム インターネット向けシステム これは新しい費用分配モデルである 設備、回線、設置導入、教育などほとんどをサービス提供者が負担 1990 年台にパソコン+専用端末ソフト:大差なし インターネット向けシステム クライアント費用のすべてがエンド負担 末端が顧客なら顧客が負担 トラブル対応も教育もなにもかも負担 嬉々として負担 提供側はシステムの片側だけを負担すればよい これは新しい費用分配モデルである 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

変化を支えるシナリオ 誰が描いたシナリオか? 日本の場合 1995 年以後のインターネットブーム こうした費用分配構造が世界的に自然と完成 1996 年にパソコンは 1 千万台販売された 家庭用テレビとほぼ同じ台数 ターゲットアプリはソフトではなくネット ネットとパソコンは歩調を合わせて普及 これを前提として費用分配構造が許容された 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

新しい費用分配モデルで何が起きるのか 企業では 大学の教育情報システムでは どちらが負担すべきかを既に通り過ぎ 企業の情報システムの一部であるPCを社員が用意 大学の教育情報システムでは 学内端末設備は大学が揃える 学生の自宅設備は学生自身が勝手に準備 学内設備だけで教育システムを設計・運用するのと、学生の投資を活かすのと、どちらが全体の投資を活かせているだろう? どちらが負担すべきかを既に通り過ぎ 既成事実としての投資をどう活かすかが重要 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

活かすべき資源 代理店の資源 顧客の資源 「サービス」の転換 職場にある汎用の設備(パソコン) 現場のスタッフのパソコンに対するスキル 自宅にある汎用の設備(パソコン) 顧客のパソコンに対するスキル 「サービス」の転換 顧客情報(例えば住所)の更新は誰が行うべきか? 更新する労力は誰にも感謝されない 喜んで自分で作業する顧客と「自由」 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

保険会社 代理店側の設備の費用負担 代理店にある活かすべき資源 直販モデル(いわゆる中抜きモデル) どの程度保険会社が負うべきだろう? 対象:回線、端末、導入、教育、トラブル対応 代理店にある活かすべき資源 汎用の設備(パソコン) 現場のスタッフのパソコンに対するスキル 書店で売られているパソコン教本 直販モデル(いわゆる中抜きモデル) 旅行業界では既に日常的 末端顧客の投資を活用しはじめたと考えられる 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University

新しい社会モデル インターネットを間にはさんで多数のサービス提供者がクライアントを共有 クライアント設備の構築費用は国民の投資 もはや個人投資の問題ではない 社会的な費用分配の問題 標準化技術を中心に据えたシステム 設備費用投資をサービス提供者と利用者側で分担するモデルが広がっていくのであれば、いずれこの問題が大きく表面に現れてくるだろう。 26 Oct. 2002 Yutaka Yasuda, Kyoto Sangyo University