喜多 敏博 (熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻)

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喜多 敏博 (熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻) 熊本大学における 情報リテラシー教育 喜多 敏博 (熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻)

はじめに 熊本大学における全学向けの情報リテラ シー教育を事例として選び,紹介する。 事例として選んだ理由:紹介者自身が熊本 大学に所属し,実際に情報教育を担当し ている。また,実施規模が全学に及ぶ大 きなものである。

概要1 1年次生向けとして: 「情報基礎A」(前学 期), 「情報基礎B」(後学期) 2年次生向けとして: 「情報処理概論」 2002年4月より, 全学部の1年次生向けの必修科目(一 般教育科目)として実施。 全学的に統一的なリテラシー 教育を行っている。1800人程度の受講生を27クラスに分 け,1クラスあたり30名程度から100名程度で実施。

概要2 「情報基礎A」 「情報基礎B」 「情報処理概論」 ワープロ, 表計算, プレゼンテーション, ペイント, ド ロー, 電子メール, Webブラウザ, 情報倫理 「情報基礎B」 HTML(箇条書き, リンク, 画像, フレーム等), CSS, JavaScript入門, ftp, 電子メールのしくみ, 法的責任 「情報処理概論」 2年次生向けの必修の講義科目(全学部ではなく,1100人程 度を対象)で,「情報基礎」の次段階的位置付けとなる科 目。 初級システムアドミニストレータの試験程度を想定した内 容 : コンピュータの基礎,ハード,ソフト,ネットワーク, 情報システムの運用と整備。

特徴1 「情報基礎A」, 「情報基礎B」 1年次生向けで必修の演習科目(約1800人が履修) 1教室あたり2名から4名のTAを配置 総合情報基盤センターの9教官がすべてを担当 独自に作成したオンラインのテキストや資料を活用 情報倫理に関するコンテンツとして,実際の裁判例を用 い, その判決を予想するようなケーススタディ的なオ ンラインテストを実施 電子メールの操作習得や動作原理の理解には,総合情報 基盤センターで独自に開発したメールソフトSeemit を 利用

特徴2 「情報処理概論」 2年次生の約1100人が履修 eラーニング形式の講義(対面講義を伴わない) 第1週目には説明会を実施。 受講者を入れ換えなが ら30分の説明を3回おこなうことで,全員に対面で 説明。 書籍テキストを用いて毎週の学習範囲が決められて おり, 期限内に「理解度確認問題」を受ける。(多 数の問題からランダムに20問出題。何度でも受験 可。) 期末試験もオンラインで実施。ただし,時間と部屋 を指定し,試験監督者付き。理解度確認問題と同様 に, ランダムに出題(人によって問題が違う)さ れ,時間内ならば何度でも受験可能。

課題(資料では読み取れないので類推と内部情報) 今後さらに創意工夫: 既に習熟度の高い学生は操作方法や基礎知識だけで なく,情報技術の実践的な応用知識を実力に応じて 身につけるようにコンテンツを工夫する。または習 熟度別クラス制に。 情報倫理, セキュリティなどの「態度」の習得をい かに確実にするか 対面授業を伴わない「情報処理概論」では,学生へ のメンタリング制度の導入, 資格試験受験を促す工 夫。

おわりに 熊本大学の全学的情報リテラシー教育として行われている「情報基礎A」「情報基礎B」「情報処理概論」についての調査結果を報告した。 調査してみての感想:内輪のことながら,ここまで熱心に情報リテラシー教育を実施している大学はあまりないのではないかと思う。対外発表が多いことも特徴として挙げることができる。しかし,今後は入学生の情報リテラシーのレベルも上がることが予想され,大学で情報リテラシー教育を行うことの意義を問い直す場面が近いうちに出てくるだろう。

参考にした資料 NIME 「eラーニング等のITを活用した教育に関する調査報告書」 熊本大学におけるeラーニング等のITを活用した教育の取組状況 http://www.nime.ac.jp/reports/001/2005/ 第3回日本WebCTユーザカンファレンス http://www.webct.jp/c2005/program_detail.html 右田 雅裕 他「全学的規模の情報教育におけるe-Learning講義の実施」 http://www.webct.jp/c2005/proc/p1_migita_doc.pdf 入口 紀男 他「全学部の1年生1,800名全員に著作権侵害訴訟等の臨場感を教える」 http://www.webct.jp/c2005/proc/09_iriguchi_doc.pdf 中野 裕司 他「全学共通情報基礎教育におけるオンライン繰返しテストの学習効果」 http://www.webct.jp/c2005/proc/17_nakano_doc.pdf