4.フォローアップ体制の構築 4-1.フォローアップの必要性

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4.フォローアップ体制の構築 4-1.フォローアップの必要性 市民参加によって実現した政策や指標が、その後どのように事業に反映され、そして効果があったのか継続して観測する必要がある。 その際、どのような体制で進行管理することが望ましいのか。予算や事業との連携をどう図るべきか。 青森県 東海市 滝沢村 成果指標の評価 ■実施主体 政策マーケティング委員会 ■実施方法 アンケート調査(18歳以上2000人) まちづくり市民委員会&東海市 アンケート調査(16歳以上3500人) 予算・事業との連携 県政策への提言 県庁職員とのワークショップ まちづくり大会(評価・提案・確認)の開催 行政の組織運営の中で実施

4-2.成果指標のフォローアップ 青森県では、「政策マーケティング委員会」が当初の指標作りから毎年の現状値の測定及び評価まで、一貫した体制で取り組んでいる。 東海市では、「市民参画推進委員会」「まちづくり市民委員会」と市民組織の名称は変更されているが、実質的にメンバーの多くが継続して委員に就任している。(NPO化) 滝沢村では、フォローアップの実施は行政主体で行われている。 日野市では、計画策定(PLAN)、実施(DO)、評価(SEE)の各段階で、市民参加の仕組みが個別に組まれている。 総合計画策定時の市民組織が、継続して進行管理に当たることは、指標に対する愛着や検討経緯が引継がれ、有意義な評価が期待できるのではないか。 その際、SEE型市民参加であれば、共通言語(点検項目、めざそう値など)があるため、フォローアップ体制が組みやすいのではないか。 今後の検討課題

4-3.予算・事業との連携 東海市では、「評価の大会」、「提案の大会」、「確認の大会」の3つの大会を踏まえたまちづくり市民委員会の活動により、予算や事業との連携を図っている。 滝沢村では、行政経営という発想の中に成果指標が組み込まれ、行政の組織運営の中で予算や事業との連携が図られている。 青森県の政策マーケティングは、県の総合計画や行政評価とは独立した枠組みで実施されている※1。このため実態として県の予算や事業との連携が弱い。 はじめに総合計画の中に政策マーケティングを組み入れ、そこを基点として各主体の政策マーケティングへと展開を広げる手順が有効ではないか。 最終アウトカム(めいざそう値)を成果指標して設定している場合、予算や事業までのつながりをどう理論的(ロジック)に繋いでいくのか。 今後の検討課題 ※1 新しい総合計画の中には「めざそう値」の一部が組み込まれている

4-4.フォローアップ体制を考慮した市民参加の動向比較

5.指標づくりと評価 5-1.政策マーケティングにおける指標と評価 指標の設定は、暮らしやすさや生活課題の視点から導かれたアウトカム指標(成果指標)を採用 数値目標を測定し、時系列的に監視することで、地域社会の豊かさや進歩を評価する(ベンチマーク方式) これにより地域社会の社会・経済・環境などの状況改善策への示唆を得る また、関連する主体による説明責任と改善活動を引き出すことで、めざすべき目標へと前進していくことを想定

(1)青森県の指標づくり みえる化の推進 共有化の推進 住民の生活実感に基づく政策ニーズについて調査を実施して「みえる化」と「共有化」を図る。 綿密なマーケティングリサーチを実施し、一種の政策ニーズとしての27個の点検項目とその現状を評価するための66個の評価指標を設定 現状値(毎年の設定値) めざそう値(5年後に実現したい水準) 役割分担値(めざそう値実現の役割分担の配分) 評価指標の現状値調査(毎年) 点検項目の県民満足度調査(毎年) みえる化の推進 政策マーケティングブック 共有化の推進

青森県の指標作成 作成プロセス 県民意識調査により生活場面における満足度と重要度を調査しニーズ度を抽出し9つのテーマを設定する。 グループインタビューから4つの政策目標を設定する。 個別アンケート調査から87項目の点検項目から重要度の高い27項目を選定する。 指標づくりの視点 4つの暮らしやすさ条件 (安心・つながり・自己実現・適正負担) 指標数・めざそう値 66の指標、27項目の点検項目 暮らしやすさの条件(政策目標)と政策分野のマトリクス構造 指標の有効性 ロジックモデルの採用(最終、中間、初期アウトカムによる連鎖構造) めざそう値は、各分野の実務家、有識者を対象としたアンケート調査による。

(2)東海市の指標づくり 「まちづくり指標」 の設定を踏まえ 第5次総合計画 (04年から10年間) 53施策で地域の アウトカムの実現 公募市民が中心となって、指標の調査・設定・測定を実施し、地域のアウトカムの「見える化」と「共有化」を推進 よりよい生活を実現するための生活課題(38個)を調査し、その改善度合いを測るために評価指標(99個)とそのめざそう値、役割分担値を設定 「まちづくり指標」 の設定を踏まえ まちづくり基本条例(自治基本条例) 住民参画条例 生活課題やまちづくり指標が柱になっている。 まちづくり指標を管理・分析する際に調査設定されたキーワードが総合計画の基本理念に採用された。 第5次総合計画 (04年から10年間) 53施策で地域の アウトカムの実現 生活課題38個に対応する39の施策 市長の責任で加えた14の施策

東海市の指標作成 作成プロセス 市民参画委員会、小・中・高校正、20代などから約100の生活課題を抽出し、さらにそれらを方向性ごとに7つのグループに分類。次に満16歳以上の無作為抽出した3,500人を対象にアンケート調査を実施した。その結果を踏まえ、上位5つのキーワードと38の生活課題を抽出する。生活場面を想定して指標化し、客観的な統計的数値がある指標と市民満足度などの主観をアンケート調査によって調査する指標を99選定した。さらに、43の市からの追加指標で合計142の成果指標を選定した。 指標づくりの視点 5つの理念 (安心・快適・いきいき・ふれあい・活力) 指標数・めざそう値 142の指標 指標の有効性 ロジックモデルを導入中

(3)滝沢村の指標づくり みえる化の推進 共有化の推進 第5次滝沢村総合計画の策定に際し、7つの理念と47の最適化条件を設定 めざそう値は「滝沢村地域社会が目標とする値」であって、滝沢村役場の目標値ではない。最適化条件達成のために地域活動の主体が目標を共有しながらみんなで努力していくためのもの。 現状値(毎年の設定値) めざそう値(5年後に実現したい水準) 役割分担値(めざそう値実現の役割分担の配分) 評価指標の現状値調査(毎年) 県民満足度調査(毎年) みえる化の推進 たきざわ地域社会報告書 共有化の推進

滝沢村の指標作成 作成プロセス 滝沢村と基本構想策定パートナーは、パートナー協定を締結し、協働で一般村民の政策ニーズを調査・分析。その結果と村民アンケート調査を基に、47の最適化条件と44の指標(めざそう値 )を抽出し、総合計画の政策目標や成果指標として設定。 指標づくりの視点 7つの理念 (輝く・交わる・支えあう・育む・働く・住む・創る) 指標数・めざそう値 44の指標、47の最適化条件 指標の有効性 めざそう値は、職員とパートナーが意見交換を重ね、意見を収斂させて決定。 めざそう値の目的は、可視化による地域の状態と目標の共有、将来像と現状の比較、行政の戦略立案、住民との協働のプラットホームである。

5-2.指標づくりの留意点 アウトカム指標を志向する場合、既存の統計データは期待できない。生活者視点に基づいた独自の調査が必要となる。 総合計画の政策、施策、事務事業のそれぞれの間に目的-手段の関係が構築されていなと、アウトカム指標は形骸化する。 政策や施策の定義づけが曖昧であると、ロジックモデルの適用は難しい。 資源・インプット 活動 アウトプット アウトカム

5-3.評価の留意点 地域経営の視点から成果(アウトカム)を実現するためには、多元的な主体による活動が必要となる。しかも、それぞれの活動を評価し改善していくためのマネジメントサイクルが重要となる。 地域マネジメント 行政 企業 インプット (投入) アウトプット (産出) アウトカム (成果) 市民 ・ 逆算の仕組み (出典)佐藤徹ら『新説市民参加』(2005、205頁)重複引用

6.役割分担と市民活動 政策マーケティング導入自治体では、地域づくりに係る各主体の役割を明確にするため役割分担値を設定している。 青森県 (出典)政策マーケティング委員会『政策マーケティングブック』(2005-2006、16頁) 滝沢村 東海市 (出典)滝沢村『たきざわ地域社会報告書2006(創刊号)』(2006、17頁) (出典)東海市まちづく市民委員会『まちづくりガイドブック2006年度版』(2006,3頁)

青森県の事例 東海市の事例 滝沢村の事例 5段階評価による8つの主体(個人、NPO、企業、学校、市町村、県、国、その他)の分担値を設定    各分野の実務家グループ(390人)および委員会グループ(50人)に対する調査   5段階評価による8つの主体(個人、NPO、企業、学校、市町村、県、国、その他)の分担値を設定    66指標のうち行政(国・県・市町村)の分担値が50%を超える指標は1/3に満たない 東海市の事例   市民参画推進委員会により選出された関係者・当事者20人に対する調査   8つの役割主体(個人・家庭、NPO・市民団体、コミュニティ・町内会、企業・農協・商工会議所、学校、市、県・国、その他)に対する分担値の設定 滝沢村の事例   総合計画策定パートナーとプロジェクト職員による調査 行政主体・主導、双方協力、住民主体、主導の5段階評価

地域経営の第一歩 6-1.役割分担の意義と必要性 「見える化」と「共有化」 役割分担の存在の周知とそれが設定されていることの意義を住民に考えてもらうことを狙いとする。 行政だけでなく多様な主体の参加が必要となっている時代背景 「地域ぐるみ」意識の醸成 目標値を達成するため各主体が何をすればいいのか、その割合を数値で明示 「見える化」と「共有化」 地域経営の第一歩

6-2.市民活動の支援 役割分担でも明らかとなったように、行政が担うべき役割やウエイトは以外に少ない。 ● 役割分担でも明らかとなったように、行政が担うべき役割やウエイトは以外に少ない。 市民の主体的な活動なしには、将来ビジョンの実現、成果指標の達成は困難である。 市民活動の支援や市民主体の政策づくりを進める仕組みをどう構築していくべきか。 日野市では、総合計画の基本計画を「市民行動計画指針」の性格も併せ持つものとし、これをもとに行政と市民との行動計画(実施計画、市民行動計画)をそれぞれ策定(予定) (出典)日野市HPより

政策マーケティング導入自治体の取り組み 青森県の事例 「私たちのマーケティングシート」の作成 地域での政策づくりを進めるエントリー活動 地域密着型ファンドを設立、市民活動に助成 東海市の事例 まちづくりに貢献する事業を行う市民活動への補助 まちづくり市民委員会による市民活動の推進・啓発 滝沢村の事例  市民の自発的な地域活動への補助

6-3.役割分担と市民活動の展望 課 題 展 望 分担値を今後どう捉えて行くべきか。 課 題 展 望 制度変革・社会情勢の変化によって役割分担は変化しうる。分担値の変化を経年でみるとともに、共有化を一層進めることが重要 分担値を今後どう捉えて行くべきか。 分担値を単なる可視化の域で止めるのか、もう少し踏み込むのか。 より具体的にするため施策や事業ごとに各主体の役割を文章で明示する。 市民活動を市民が評価するための仕組みづくりを進める。 行政活動には指揮命令系統があるが、市民側にはそれがない。分担値に合わせた市民活動をどうフォローすべきか。 マーケティングブックの策定過程等を通じて、市民と話合う場が必要である。 本質的には、多様な主体が「まちづくり」のイメージを共有し、協働する意識を持つことである。