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第2回応用物理学科セミナー 日時: 6月 2日(月) 16:00 – 17:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室 日時: 6月 2日(月) 16:00 – 17:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室 Speaker:松浦弘泰氏  Affiliation: 東京大学理学研究科物理学専攻助教 Title:原子価スキッピング現象における電荷近藤効果の微視的理論 Abstract: 様々な元素が集まり化合物になった時、それぞれの元素のとりうる形式的なイオン価数は経験的に知られている。これらを系統的に整理することによって、周期表の第3~5周期の多くの元素は、”イオン価数を飛ばす”現象があることが明らかにされている[1]。例えば、Biは、Bi3+やBi5+を含んだ化合物は多いが、Bi4+を含んだ化合物はできにくい。PbやAsなどの元素もBiと同様に、“イオン価数を飛ばす”現象が知られている。この現象は、原子価スキッピング現象と呼ばれている。 最近、この現象と密接に関連した超伝導の存在を示唆する実験が、半導体PbTeに少量のTlをドープした系での超伝導で報告された[2]。Tlのイオン価数は、BiやPbと同様に、1価(6s2)と3価(6s0)に限られ、2価(6s1)はとらず、原子価スキッピング現象を起こす元素である。この現象は、6s軌道の電子間に強い引力が働いているため、6s1より6s2の方が安定化される現象と解釈することもできる。即ち、この引力(ネガティブUと呼ばれる)を起源とした超伝導体であることが示唆されている。 一方、多体効果により、6s0と6s2のエネルギー準位が縮退することが可能で、その場合、磁気的(スピン)自由度の代わりに、電荷の自由度を用いた電荷近藤効果が可能であることが知られていた。実際、PbTeに少量のTlをドープした系でも電荷近藤効果が観測されており、原子価スキッピング現象との関係が注目されていた。しかし、原子価スキッピングの起源と電荷近藤効果とを統一的に説明する微視的理論については、これまでほとんど議論されていなかった。 そこで本研究では、原子価スキッピング現象と電荷近藤効果の出現に関して統一的な理解を行うために、電子対を遷移させるクーロン相互作用(ペアホッピング相互作用を含んだ一般的な不純物アンダーソン模型を構築し、その電子状態を数値くりこみ群を用いて詳細に調べた[3,4]。 その結果、様々なクーロン相互作用が存在する模型においても、ペアホッピング相互作用が選択的に増大することがわかった。また、物理量の温度変化を計算した結果、温度を下げるにつれて、まず原子価スキッピング状態が出現し、さらに低温では電荷近藤効果が生じることを明らかにし、これらの現象を統一的に説明できることを示した。さらに、モデルパラメーターを変化させると、原子価スキッピング領域が低温まで生き残ることがわかった。  セミナーでは、原子価スキッピング現象と電荷近藤効果の統一的理解について講演し、時間があれば原子価スキッピング現象による超伝導についても議論する予定である。   [1] R.D. Shannon, Acta. Cryst. A 32 (1976) 751.  [2] Y. Matsushita et al, Phys. Rev. Lett. 94 (2005) 157002. [3] H. Matsuura and K. Miyake, J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 113705. [4] 松浦弘泰、三宅和正,『原子価スキッピング現象における近藤効果と超伝導』 固体物理8月号 (2013) 世話人:遠山貴巳(内線:1752)