筑波大高エネルギー原子核実験グループ (PHENIXグループ) 11/29/07~12/6 FTBL実験報告 筑波大高エネルギー原子核実験グループ (PHENIXグループ) 11/29/07~12/6 参加者一覧 坂田洞察(MRPC) 横山広樹(TRD) 池田義雅 稲葉基 江角晋一 加藤純雄 梶谷緑 佐野正人 下村真弥 常鵬 田辺嶺 中條達也 浜田英太郎 益井宙 三明康郎 (50音順 敬称略)
Outline 研究目的 実験セットアップ MRPC ・MRPC ・設計&計画 ・結果 TRD ・TRD ・計画 今後の展望
実験目的 MRPC(Multi-gap Resistive Plate Chamber) TRD MRPCの汎用化及び、小型MRPCの動作性能確認の為 小型のMRPCを設計し、複数のTypeを製作し、 時間分解能・検出効率について以下の依存性を評価した ・HV依存性 ・入射角度依存性 TRD LHC-ALICE実験で使用するTRDのプロトタイプを用い、検出器の基本的特性の評価を行う 3
実験セットアップ ビームコンディション 床から120cmの位置で 5*5cmの領域に - 8Hz Scintillation Counter TRD MRPC PbGlass Trig for TOF http://utkhii.px.tsukuba.ac.jp/~sakata/FTBL/trigstat.xls
MRPC(Multi-gap Resistive Plate Chamber ) Gas を充填 荷電粒子 読み出しpad PCボード 電極 Outer glass Inner glass 10kV以上の高電圧をかける 異符号の信号 ギャップが十分薄く townsend領域に限定した放電 多数のギャップからの誘起電荷の重ね合わせ 良い時間分解能 検出効率の向上
2 Type of MRPC Single Stack Double Stack これらの実験のR&Dでは50~60ps の時間分解能を得ている。 Single stack 6gaps ~60ps Double stack 5gaps ~50ps (左図の青線) 左図:Double stack 3gap(赤)/5gap(青)の時間分解能vs電場 引用 ALICE TOF Technical Design Report
設計 設計方針 MRPCの汎用化及び小型MRPCの動作性能評価 に最適化し設計 2cm 1mm 10cm 6cm 10cm ボード ガラスエポキシ Pad 銅箔フィルム 2*6cm ×3 10cm Double stack 5gaps 電極:カーボンフィルム Outer Glass : 1mm Inner Glass : 550umm Gap 幅 : 250um
実験計画 ・印加電圧依存性 10-13[kV/mm] ・入射位置依存性 ・入射角度依存性 0-90[度] ・入射位置依存性 ・入射角依存性 本実験で行った評価 Single stack 4,6,8,10,12gap(5type) Double stack 3,4,5,6,7 *2 gap(5type) Gap 幅 235um Gas mixture C2H2F4(R134a) 90% C4H10(iso-butane) 5% SF6 5% ・印加電圧依存性 10-13[kV/mm] ・入射位置依存性 ・入射角度依存性 0-90[度] ・入射位置依存性 ・入射角依存性 回転軸
誘起電荷分布 上段:MRPCの電荷分布(10倍AMP後) 下段:MRPCのTOFvs電荷相関 E=9.9[kV/mm] A=0° ADC[ch] ADC[ch] ADC[ch] E=9.9[kV/mm] A=0° E=12.8[kV/mm] A=0° E=12.8[kV/mm] A=60° ・MRPCの電荷分布は その電場及び角度に応じて増加 ・本実験において、Slewing効果 は殆ど見られず 補正は行っていない ADC[ch] ADC[ch]
時間分解能&検出効率のType 依存性 固有時間分解能 Single stack 6gaps 87ps+-7 @ 12.1kV/mm Double stack 5gaps 74ps+-6 @ 11.3kV/mm Good Efficiency 12kV/mm~
時間分解能と検出効率 Efficiency = MRPC START 40cm TOF = TOF分布(1ch=24ps) Double stack 5gaps E=12.8kV/mm Resolution of MRPC = Efficiency =
入射角度依存性① Double stack 5gap E field 11.3kV/mm ( ) ( ) 60度までは、通過距離に応じて 電荷平均値が推移している 角度に応じ、検出効率がよくなる。 より高い電場での評価も必要
入射角度依存性② Double stack 5gap E field 11.3kV/mm 回転軸 ( ) 0-40度まで角度に応じて 分解能の劣化が見られる。
MRPCまとめ Single stack 4,6,8gaps Double stack 5gaps の時間分解能・検出効率について、 印加電圧依存性・入射角依存性・位置依存性を評価した Single 6gap及びDouble 5gapでは12kV/mm以上で 100ps以下の分解能で99%以上の検出効率が得られた 課題 未だテストをしていないTypeの検出器の評価(宇宙線・ビーム) 角度依存性についてより高い印加電圧での評価 もう一方の軸に対しての角度を評価 精度のよい位置検出器を用いて位置依存性を評価 (TRD?他のDetector?) 14
1~100GeV/cの電子とそれより重い荷電粒子の識別にTRは効果的である 相対論的な荷電粒子が誘電率の異なる物質間を通過する際のX線放射 通過前後での荷電粒子の作る電場は不連続となるので、その電場を補うときに放射が発生する 全放射エネルギーはローレンツ因子γに比例する 大きいγでは放射光の干渉が起こるため強度の飽和が起こる 運動量1GeV/c以上の電子によって遷移放射が起こる 運動量 遷移放射強度 TR-photonの効果が顕著 TR強度 ローレンツ因子の違いにより 1~100GeV/cの電子とそれより重い荷電粒子の識別にTRは効果的である 15
シグナルの波高とパッドの位置、時間から飛跡を算出する TRD-prototype radiator部/drift chamber部 Radiator部でTR-photonが発生する。 Drift regionでTR-photonと一次荷電粒子が電離を起こし、電子が発生する。 電子がanodeに向かいドリフトし、anode wireに吸収される。 3のときcathode padsに誘起されたシグナルを検出する。 FADCによる読み出し シグナルの波高とパッドの位置、時間から飛跡を算出する 16 16
測定項目 アノード電圧依存性(シグナルの増幅率) ドリフト電圧依存性(シグナルの減衰,ドリフト速度) ガス依存性(Ar+CO2(85,15),Xe+CO2(85,15)の違い) TR-photonの吸収(absorption lengthの評価) 位置分解能の入射角度依存性 の評価を行った
各々の時間binでの波高を、最大の波高を持つpadとその両端のpadの波高の和とする パッド方向へのシグナルのシェア パッド方向の波高分布より重心を求める。 重心からの距離とそれぞれのパッドの波高の分布を計算した。 シグナルのパッド方向へのシェアは3パッドよりも小さいことがわかる。 各々の時間binでの波高を、最大の波高を持つpadとその両端のpadの波高の和とする 18
さまざまなパラメータを取りだすことが可能 シグナル すべてのイベントについてパルスの時間分布の平均を求め、 そのグラフから、各パラメータ(ドリフト時間、増幅領域での波高など)を決定する。 1イベントのパルスの時間分布 Xe+CO2(85,15)ガスの ラディエータあり/なしの平均波高 波高 青:without radiator 赤:with radiator 時間 すべてのイベントにおいて平均をとる TR-photon 増幅領域での波高 平均波高 ドリフト時間 Drift Region Amplification Region 19 さまざまなパラメータを取りだすことが可能 19 時間
電子雪崩による増幅率はアノード電圧の指数関数として表すことができる アノード電圧と増幅率 Arベースのガスによるグラフ Xeベースのガスによるグラフ ドリフト電圧 -2100V アノード電圧 黒:1500V 赤:1450V 緑:1400V 青:1350V 黄:1300V 平均波高 平均波高 時間 時間 アノード電圧vs増幅率 青:Ar+CO2(85,15) 赤:Xe+CO2(85,15) 増幅領域での波高 電子雪崩による増幅率はアノード電圧の指数関数として表すことができる 20 20 アノード電圧
ドリフト電圧とドリフト速度 Arベースのガスによるグラフ Xeベースのガスによるグラフ アノード電圧 1500V ドリフト電圧 平均波高 平均波高 時間 時間 電場vsドリフト速度 青:Ar+CO2(85,15) 赤:Xe+CO2(85,15) ドリフト速度 ドリフト速度とドリフト領域での電場との線形性が見える。 Arガス中のほうがXeガス中に比べ、電子のドリフトが約3倍速い 21 21 ドリフト領域の電場
電離電子のチェンバー内に滞在する時間に指数関数的に依存する ドリフト時間と電子のアタッチメント 電子のアタッチメントによる シグナルの減衰 a/bをattachmentの指標とした b a 電離電子がドリフトするとき、ガス中の水素や酸素による吸着が起こり、シグナルが減衰してしまう。 それが、ドリフト時間にどのように影響するのか調べた。 a/b 青:Ar+CO2(85,15) 赤:Xe+CO2(85,15) 電子の滞在時間 水素や酸素によるシグナルの減衰は 電離電子のチェンバー内に滞在する時間に指数関数的に依存する 22
ラジエーターの有無による遷移放射(1) TR-photonの吸収量を評価するためにラジエーター無しのグラフがフラットになるように補正を加えた。 Xeベースのガスによるグラフ 補正前 補正後 アノード電圧 1500V ドリフト電圧 -2100V 赤:ラディエータあり 青:ラディエータ無 平均波高 平均波高 時間 時間 Arベースのガスによるグラフ 平均波高 時間 補正前 補正後 23 23
吸収長(absoption length)は ラディエーターの有無による遷移放射(2) ラディエーターありのグラフとなしのグラフの差を取り、横軸をDetectorの厚みに変換した(TR-photonによる波形) 指数関数によるfitのSlopeからそれぞれのガスでのabsorption lengthを計算した TR-photonの吸収 検出器の厚み(mm) 青:Ar+CO2(85,15) 赤:Xe+CO2(85,15) 吸収長(absoption length)は 今回使用したTRDの厚さは30mmなので、TR-photonの吸収はXeでは95%,Arでは28%である。 TRDはより多くのTR-photonを吸収する必要があるのでガスの選択としてはXeのほうが適当である。 24 24
飛跡検出器としてのTRDの性能 この点で飛跡を引く この点と飛跡の差のばらつきを見る 位置分解能は入射角度0度で 400μmとなった。 重心計算によって位置を求める パッド番号 パッド番号 時間 時間 この点で飛跡を引く 入射角度20° この点と飛跡の差のばらつきを見る 入射角度 分解能 0° 391.0±10.7μm 10° 604.5±28.4μm 20° 1071±22μm 30° 1614±45μm 位置分解能は入射角度0度で 400μmとなった。 25 25 1pad(=8mm)
TRDまとめ まとめ ALICE実験のためのTRD prototypeの性能を調べた シグナルの増幅率はアノード電圧の指数関数として表すこ とができる。 ドリフト速度は、電場・ガスに依存し、電子のアタッチメントは ドリフト時間に依存する。 TR-photonの吸収長はXeで10mm、Arで89mmであった。 PIDの要求からガスはXeベースのガスが適当である。 位置分解能は入射角度0度で391μmとなった。 26
今後の展望 MRPC 宇宙線テストベンチで実験を行い、ノイズ対策や 動作を確認できていないMRPCについても評価をし 宇宙線テストベンチで実験を行い、ノイズ対策や 動作を確認できていないMRPCについても評価をし 再度テストビームに望みたい TRD 卒業論文として提出及び発表 ガス中の水素や酸素による吸収が大きかったため それを除去したうえでより良い実験を行いたい 外部検出器による位置分解能の測定を行うため、精度のよい位置検出器を用いた再実験を行いたい 27
最後に 川崎先生、幅先生をはじめ 多くの皆様にお世話になりました。 本当にありがとうございました! (筑波グループ一同)