CTにおけるMTFとWS,そしてその測定法

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CTにおけるMTFとWS,そしてその測定法 金沢大学大学院医学系研究科 保健学専攻           市川 勝弘

画質評価は、目的ではない。 単なる手段である。 ただし、画質評価をすることで知らぬ間に 他の実力が上がることがある。

CTにおける MTF(modulation transfer function)測定

周波数スケールの見方 MTFのグラフ 0.5mm 1 cycles/mm 1mm MTF値は,1.0mmの繰り返し波形の レスポンス 1mm Spatial frequency (cycles/mm) 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Modulation transfer factor Standard Bone 1 cycles/mm  1mm MTF値は,1.0mmの繰り返し波形の レスポンス 1mm 0.5 cycles/mm  2mm 横軸は空間周波数 縦軸はレスポンス MTF値は,2mmの繰り返し波形の レスポンス

画像における空間周波数 約300mm 約50mm 0.25 cycles/mm 0.25 cycles/mm 0.5 cycles/mm X方向だけに成分を持つパターン

Input Output MTF MTF 0.25 cy/mm 0.5 cy/mm 0.75 cy/mm 1.0 cy/mm MTF 1.0 (cy/mm) MTF 1.0 1.0 (cy/mm) MTF 0.25 cy/mm 0.5 cy/mm 0.75 cy/mm 1.0 cy/mm 1.0 1.0 (cy/mm) MTF

高コンファントムは,MTFが10%となるところがわかる。 MTFと高コンファントム画像の関係 0.5mm 0.5mm 0.5mm 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 高コンファントムは,MTFが10%となるところがわかる。

ワイヤーファントムによるMTF測定 ワイヤーファントム Z方向 正確なMTF測定が可能 金属ワイヤ しかし、計算が複雑 0.1mmφ ワイヤーを空気中に固定する場合,機種によっては測定不可

シリンジワイヤーファントム 画像は必ずFOV50mm 程度に拡大再構成する 直径50mm程度の 樹脂製シリンジ 水 活栓

良い測定は,良い試料画像から 線量は,ある程度必要。  ・直径約50mmのファントムだが   50mA~100mA  ・SDが十分に低いこと スライス厚は,2~3mm アライメントは正確であるべき  ・しかし,薄層なのでかなり寛容

ワイヤー画像からのMTF測定 の実演 プログラムは,やっと更新された「ctpsf」 http://www.owari.ne.jp/~kitikawa/

まず,DICOM画像を取得する。 *装置から直接 *DICOMビュアーから *3次元WSから(エクスポート機能) のprofileをクリック Directionは,MTFを求める方向。 VANはデフォルトでOK プロファイルが表示されたらPreparation をクリック DicomまたはDicom2メニューから 画像を読み込んだら ワイヤー中心をクリック

画面をクリックするとクリックした 高さに赤いベースラインが移動する。 裾野のレベルと思われると位置に したら,MTFメニューのSet-Base MTFメニューのLpos-setをクリックして 左側の裾野の強制ゼロ化位置をクリック。 そこより左が強制ゼロ化される。 MTFメニューのRpos-setで右も同様に。

MTFメニューのMTFcalc.で,計算。 FOV,グラフのX軸のfull scaleを入力 Save-MTFで,保存。 Compare-MTFで,複数の比較が可。 MTFメニューのSave to Clipbdで, 結果がクリップボードに入るので, Excelに貼り付けられる。

ワイヤー法での注意点 ・FOVは50mm程度に拡大する ->その画像における解像ではなく,ローデータ と再構成関数による解像度をみるため.    ->その画像における解像ではなく,ローデータ       と再構成関数による解像度をみるため. ・極力SN比を高くして,精度を確保    ->オーバーフローに注意. ・完全な中心にはしない -> 20~30mm offsetする ・ディジタルだがエリアシング誤差は基本的にない.    ->回転しながらのデータ収集のため,検出器       にいろんなアライメントで投影される. (ディジタル画像だが,ディジタルを意識せずに評価可能)

MTF測定への影響因子 ・ノイズはほとんど関係しない。    (ファントムサイズに見合った線量(電流)) ・電圧は,ほぼ関係しない。 ・ビュー数も,ほとんど影響しない。 ・再構成関数は大きく影響する。 ・焦点サイズも影響する。 ・周辺部では,回転速度が影響する。 ・QQオフセットやフライングフォーカスも影響する。

解像度の評価対象 ・肺野条件(ウィンドウ条件)で見える対象:気管や結節など ・骨条件(ウィンドウ条件)で見える対象:骨や石灰化など

CTの解像度と検出器開口幅 X線管球 被写体 検出器 検出器開口幅が限界解像度をほぼ決める 約0.6mm (推測値) 焦点 回転中心 開口幅

CTの基本的な解像度 元画像 ・検出器の開口幅によって,必ずボケる。よって基本フィルタは、 ややボケた感じ(≒腹部用関数)。 高分解能フィルタ 関数 基本のフィルタ関数 元画像 軟部用フィルタ関数 ・検出器の開口幅によって,必ずボケる。よって基本フィルタは、  ややボケた感じ(≒腹部用関数)。 ・高分解能関数は、かなりの強調 -> やや真実と違う場合あり

標準関数 高解像度関数1 高解像度関数2

SOMATOM VZの測定結果 AB20 AB30 AB35 AB40 番号順になっているとは限らなかった。 よってMTF測定が有用であった。

AB30 AB35 Q:どちらが高解像度でしょうか? 10%ラインを引いて,交点の周波数が高い方が高解像度

AB30 AB35 AB30 AB35 AB35の方が高解像度で,低周波ノイズの少ない関数

それぞれの悪い方の特性に制限される。 CTの解像特性の構成 ・CTのスキャン機構や再構成による解像特性 ・画像表示のピクセルサイズの解像特性 の双方の影響を受け, それぞれの悪い方の特性に制限される。

ピクセルサイズと解像との関係 マトリクス数 512 X 512 ピクセルサイズ(FOVに依存)  FOV=350mm -> ピクセルサイズ=0.68mm  FOV=200mm -> ピクセルサイズ=0.4mm  FOV=120mm -> ピクセルサイズ=0.23mm 簡単には,   解像したいサイズ=ピクセルサイズでよい。

CT画像の元の情報量を満たすピクセルサイズ   0.5mmの解像が必要な場合、   0.5mmは1.0cycles/mmと考え、それの忠実再現には 2cycles/mmのサンプリングが必要。   (サンプリングの定理) 0.5mm 0.5mm 1/2=0.5mmであるので,ピクセルサイズは0.5mm 以下必要。

FOV=350mm,ピクセルサイズ=0.68mm 1/(0.68x2)=0.74 cycle/mmが限界の解像周波数

MTFのグラフ上で見ると,MTFにおける限界解像度 より低い周波数にピクセルサイズの限界がきている。 1.0 0.74cycles/mm MTF 1.0 空間周波数 MTFのグラフ上で見ると,MTFにおける限界解像度 より低い周波数にピクセルサイズの限界がきている。 このピクセルサイズは,装置(関数)の持つ解像を 制限している。

FOV=220mm,ピクセルサイズ=0.43mm 1/(0.43x2)=1.16cycle/mmが限界の解像周波数

このピクセルサイズは,装置(関数)の持つ解像を 制限していない。 (=これ以上の拡大は必要ない。) 1.0 1.16cycles/mm MTF 1.0 空間周波数 MTFにおける限界解像度にほぼ等しい。 このピクセルサイズは,装置(関数)の持つ解像を 制限していない。 (=これ以上の拡大は必要ない。)

FOV:350mm ピクセルサイズ:0.68mm FOV128mm ピクセルサイズ:0.25mm

CTにおける解像度の位置依存性 悪い 悪い 悪い 良い 悪い 悪い 悪い 悪い 悪い 周辺部は幾何学的条件などが厳しく解像度が低下する

胸部CT画像(中心と周辺の比較) center off-center 150mm

回転中心から距離によるスライス面MTFの変化 spatial frequency (cycles/mm) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 MTF 1.2 中心から150mm 高解像度関数 中心から100mm 中心から30mm 周辺部の解像度低下は著しい。 周辺部ほど,末梢となり,実は影響は大きい。

回転速度による周辺部MTFの変化 1.0 0.8 0.75sec 0.6 Modulation transfer factor 0.4 0.5sec 0.2 0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Spatial frequency (cycles/mm)

ウィナースペクトル測定

腹部CT画像における一般的なノイズレベル (スライス厚=5mm) SD(CT値の標準偏差) =7~10 検出する対象のCT値差 =10以上

ファントム(シミュレーション)による比較 CT値差 5 10 20 径 2 3 5 7 SD=3 SD=5 SD=8 SD=10 実用レベルのノイズでは,5mm以下の検出は難しい CT値差10以下の検出も難しい

SDはノイズレベルを的確に表している。しかし,ノイズの 質的なものを表していない。 SD=5の画像の比較(関数の違い) 腹部関数 高解像度関数 -50 -40 -30 -20 -10 10 20 30 40 50 1 16 31 46 61 76 91 106 121 136 151 166 181 196 211 226 241 256 -50 -40 -30 -20 -10 10 20 30 40 50 1 15 29 43 57 71 85 99 113 127 141 155 169 183 197 211 225 239 253 SDはノイズレベルを的確に表している。しかし,ノイズの 質的なものを表していない。

ノイズの評価法(ウィナースペクトルにる評価) ノイズプロファイルを得る トレンド除去 フーリエ変換 複数測定後、平均処理 ウィナースペクトル

Winer Spectrum の測定 仮想スリット(ピクセル値平均) 200mmφ水ファントム 走査 ノイズプロファイルを得る 中心の256X256内を 複数測定後、平均 ノイズは、約1cycles/mmまでに分布 ∴0.5mm以下のピクセルサイズが必要。0.5mmX512=256mm であるので、FOVは256mm以下にするのが望ましい。

仮想スリットのピクセル数の影響 1 5 10 20 20ピクセル程度あれば,収束するようである。

トレンド除去 ・緩やかな変化を,除去し,計算精度を高める。 ・ノイズプロファイルの近似曲線を作成し,それを 引くことにより行う。(4次の近似曲線)

CTWSの使い方 わからない所はデフォルトのままで OK DicomまたはDicom2メニューから 複数計算させたら,再描画をクリックして 画像を読み込んだら表示します。 FOVなどを入力。 仮想スリットのピクセル数 Clip for excelでエクセルにクリップ ボード経由でデータを渡せる。 複数計算させたら,再描画をクリックして 何番まで表示するか決めて複数比較 表示可。 わからない所はデフォルトのままで OK

心臓再構成のWS測定結果 心臓用 腹部 心電同期により限られたデータしか使わないために ノイズ特性は,悪い。

ご清聴ありがとうございました。