信頼性の高いIP over WDM ネットワークの構築手法 大阪大学サイバーメディアセンター 先端ネットワーク環境研究部門 村田正幸 e-mail: murata@cmc.osaka-u.ac.jp http://www.anarg.jp/
電気通信網における ネットワーク設計 過去の統計量に対する蓄積 (古くは)単一キャリア、単一ネットワーク アーラン呼損式 トラヒック特性 (古くは)単一キャリア、単一ネットワーク アーラン呼損式 ローバスト(ポアソン到着、一般サービス時間分布) QoS測定 = 呼損率 キャリアが測定可能 実時間転送;音声、動画像 帯域保証のみで十分 エンド間保証が前提 ネットワークが 予測可能なQoS ユーザレベル QoS 呼損率 M. Murata
ネットワークQoSのための要素 例 適用対象: パケット、フロー、クラス、、、 QoS目標: 保証、差別化、無保証 時間粒度: コネクション、 プロビジョニングレベル QoSパラメータ: パケット遅延、棄却率、スループット、、、 対象トラヒック: 実時間系、データ系、VPN 例 これまでのインターネット:全トラヒックを対象、無保証 IntServ:フローを単位とした遅延保証(実体はスループット保証) DiffServ:クラスを単位とした遅延・スループットの差別化 M. Murata
データ系アプリケーションに おけるQoSとは? データ系は帯域を食い尽くすアプリケーション アクセス回線、エンドホストの高速化 TCP(=エンドホスト)が輻輳制御を行う バックボーンの高速化は解決策にならない これまではアクセス回線がボトルネックになっていただけ データ系に適したQoS機構? IntServによるQoS保証 パケット棄却率、パケット遅延を「保証」できるか? トラヒック契約の考え方(QoSパラメータ、トラヒック特性を事前に申告)とマッチしない RSVPのスケーラビリティに対する限界 DiffServによるクラスに対するQoS差別化 実現はHOL優先権制御で十分(AFクラス) 相対的なQoSはユーザのQoS要求とマッチするか? QoS「保証」「差別化」なし ただし、ネットワークプロビジョニングレベルでのQoS監視は重要 帯域切り出し(VPN)は意味がある M. Murata
データ系アプリケーションQoSの3原則 Data applications try to use the bandwidth as much as possible. Neither bandwidth nor delay guarantees should be expected. Only network provisioning can satisfy user’s QoS requests. Competed bandwidth should be fairly shared among active users. M. Murata
Webドキュメントダウンロードに おける遅延配分 回線容量を増やすだけでは性能向上に限界がある エンドシステムの重要性 バランスのとれた資源配分が重要 Network Transmission Delay 37% DNS 15% Connection Setup Delay 28% Server Processing Delay 20% Produced from ftp://www.telcordia.com/pub/huitema/stats M. Murata
ネットワークディメンジョニング における課題 少なくともプロビジョニングレベルにおけるQoS予測が必要 電気通信網ではなかった新たな問題 データ系QoSとは何か? QoSをどのように計測するべきか? 「サービス」に対してどのように課金するべきか? トラヒック特性を予測できるか? エンド間性能はユーザしかわからない 1000 800 Data (100% per year) 600 Traffic (Gbps) 400 Voice (8% per year) 200 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 Year 米国における例 電話; 8%/年、データ; 100%/年、3年で1桁上昇 K.G. Coffman and A.M. Odlyzko, “The size and growth rate of the Internet,” http://www.research.att.com/~amo 予測は不可能! M. Murata
データ系アプリケーションに適したQoS制御: スパイラルアプローチ 電気通信網ではなかった新たな問題 データ系QoSとは何か? パケット遅延、棄却率はエンドユーザレベルの性能指標ではない エンド間QoSはユーザしかわからない(エッジルータの可能性はありうる) QoSをどのように計測するべきか? トラヒック変動 エンドユーザのトラヒック特性予測は困難 「サービス」に対してどのように課金 するべきか? 統計手法に基く 分析 帯域設計 将来的なトラヒック需要予測は困難 計測値からユーザ品質規定項目への変換 柔軟な帯域設定が必須(ATM、WDMにおける波長ルーティング) 結果に対する信頼性を与える トラヒック計測 M. Murata
トラヒック計測の2つのアプローチ パッシブ/アクティブ パッシブな計測 OC3MON, OC12MON, … 点観測 経路制御による経路の不安定性 TCPの誤り制御によるセグメント再送 例:利用率が低いのは輻輳制御のため? エンドユーザのアクセス回線が細いため? エンドホストのパワー不足? ストリーミングメディアのレート制御 ユーザQoSは不明 アクティブな計測 Pchar, Netperf, bprobe, … エンド間ユーザQoSの計測 ある特定のユーザのQoSがわかったとしてもネットワーク設計ができるわけではない ネットワークトラヒックの変動への対処 M. Murata
フォトニックインターネット アーキテクチャ 3つのアーキテクチャ WDM link network 隣接ルータ間を複数波長で接続 複数リンクが提供される WDM path network 波長ルーティングに基き、論理トポロジーを形成 オプション:ネットワーク内部のルーティング機能 RWA (Routing and Wavelength Assignment)問題 Router Optical Crossconnect Router X まず、WDMを中心としたこれまでのアーキテクチャの比較を行う 1番目は現在すでに商用化されている。ルータ間の帯域は波長分、確実に増えるが、ルータがボトルネックになるのは明らか 2番は波長で論理トポロジーを構成するもの。オプションとして、ネットワーク内部にルーティングをおくかどうかが考えられる(後述) M. Murata
フォトニックインターネット アーキテクチャ(続) 3. WDM Packet-switched Network バースト到着時に波長(+経路)を定める光バーストスイッチング 光パケットスイッチング burst X X X パケット発生に対して、オンデマンドで経路・波長を定めて送るもの。OBS (Optical Burst Switching:光バースト交換)と呼ばれている。波長予約に要するオーバーヘッドが問題となる。プロトコルの簡素化のため、経路は予め定めておくのが一般的。***Deflection Routingはよくない*** ただし、波長が十分ある場合には、それを有効に活用することによって性能向上が見込める。例えば、大串君のように、波長を複数使って予約を行うタイプ。 もうひとつかんがえられるのが、本稿で、検討するフォトニックラベル処理に基くパケット交換(後述)。 M. Murata
IP over フォトニックのロードマップ Cross-Connect, Switch or Router? ルーティング フォトニックIPルータ フォトニックパケット スイッチ+GMPLS フォワーディング Queue Management payload header クロスコネクト+ MPlS スイッチング バッファリング M. Murata
MPLSと光MPLS(GMPLS)の対応 LSP (Label-Switched Path); 波長パス(ライトパス) LSR (Label Switching Router); 光クロスコネクトが直接入力信号と出力信号を接続する X X X Wavelength Demux Wavelength Mux Optical Crossconnect λ 1 2 Optical Switch Ingress LSR; IPアドレスから波長への変換 なお、上記のような対応が一般MPLSと光MPLSの間にはある。 LDP (Label Distribution Protocol); WRAによる波長による経路の設定 M. Murata
IP over WDMの実現に向けた課題 機能分割 論理パストポロジー設計問題 光パス設定の高速化 IPルーティングとWDMによる波長ルーティングのマッチング Quality of Protectionをどう実現するか? 論理パストポロジー設計問題 トラヒックエンジニアリングの観点に基づく段階的波長パス設定 ただし、これまでは、トラヒック量既知として全体のトポロジーを最適化問題として求めていた 光パス設定の高速化 光バースト交換技術の応用 Ingress LSRにおけるボトルネック ただし、WDM Ringなどによる処理分散は可能 Labelの粒度が大きい;波長 Label Merging/Splittingは困難 4層スイッチングが困難 バックボーンからフラットなネットワークへ:PhotonicGrid IP Router Ingress LSR l 2 1 N 4 3 Core LSR l-MPLS 5 M. Murata
WDM技術を用いた 論理トポロジーの生成 最適化問題 波長による直接パスをエンド間に設定することにより、ルータボトルネックを解消 IP Router IP Router N 1 N 4 N 1 N 4 Ingress LSR Ingress LSR l-MPLS l-MPLS l 1 l 2 l 1 l 2 N 3 N 3 l 1 l 2 l 1 l 2 l 2 l 2 l 2 l 1 l 1 l 1 l 1 Core LSR Core LSR N 5 N 5 N 2 N 2 Lambda MPLSにおいてControl Drivenすなわち、あらかじめラベル変換テーブルを設定するのは、いかに波長パスを設定するかという問題に帰結する。これは、例えば、トラヒックデマンドに基いて、各波長上のトラヒックを最大化するのに必要な最小波長数を求める最適化問題への定式化(あるいは、その発見的アルゴリズム)として過去多く扱われてきた。 lambda-MPLSの特徴は、波長を用いた直接パスをエンド間に設定することにより、ルータボトルネックを解消できるところにある。 最適化問題 例:トラヒックデマンドに基いて、各波長上のトラヒックを最大化するのに必要な最小波長数を求める 波長による直接パスをエンド間に設定することにより、ルータボトルネックを解消 M. Murata
Optical Cross-Connect 必要波長数の増大 すべてのノード間でAll-to-All Connectivityを保証するには多くの波長が必要 IP Router Wavelength Demux Wavelength Mux Optical Cross-Connect l 2 1 N 3 4 Optical Switch N 1 N 4 Ingress LSR l-MPLS l 1 l 2 N 3 l 1 l 2 ただし、このようにすべてのノード間でAll-to-All Connectivityを保証には多くの波長が必要になるという問題がある。この例では、4本の波長が必要。右は、ノードN5の波長設定の様子。 l 2 l 1 l 1 Core LSR N 5 N 2 M. Murata
波長パスの積極的なカットによる 必要波長数増大の抑制 IP Router Wavelength Demux Wavelength Mux Wavelength Router l 2 1 Electronic Router N 3 4 Optical Switch N 1 N 4 Ingress LSR l-MPLS l 1 l 2 N 3 l 1 l 2 l 2 l 1 l 1 Core LSR N 5 N 2 そこで、ネットワーク内部で積極的に波長パスを切断し、波長数増大を抑えることがかんがえられる。この場合、ネットワーク内部で電気処理が必要になるが、波長を有効に活用できる。電気ルータボトルネックの可能性があるが、どれだけ波長があり、どれだけ波長パスを切断しなくてすむか、バランスの問題。 M. Murata
IPに提供される論理ネットワーク 度数の増加による冗長性の高いネットワークの低居 エンドノード間のホップ数の減少 ルータにおけるパケット処理量の減少 ルータボトルネックの解消 IP Router M. Murata
IP over WDMへの適用に おける課題 経路/波長割り当て問題 (Routing and Wavelength Assignment: RWA)の例 与条件: トラヒック量既知 目的関数: 利用可能波長を使い切って各波長ごとのトラヒック量を最小化 ライトパスに流れるトラヒック量最小化 IPのメトリックス(Hop数、遅延時間)を考慮した場合、IPの経路が振動してしまう恐れがある ノードにおける負荷最小化 ルータボトルネックの回避 エンドノード間遅延の最大時間の最小化 「物理ホップ数が大きければ、遅延時間が大きくなるのはしかたない」ことか? データ系のQoS? 性能指標はドキュメント転送遅延であるべき IP Router Ingress LSR l 2 1 N 4 3 Core LSR l-MPLS 5 従来の研究では、 M. Murata
WDMプロテクション プロテクション技術 1対1プロテクションと多対1プロテクション 障害時にバックアップパスへ高速に切り替える ~ 50ms 1対1プロテクションと多対1プロテクション 1対1プロテクションは複数の障害に対応可能 1対1プロテクションはより多くの波長を必要とする 主経路 主経路 バックアップパス M. Murata 多対1プロテクション 1対1プロテクション
IP over WDMネットワークのための プロテクション技術 1対1プロテクションにおいてはより多くの波長が必要 IPネットワークにおける経路制御機構 迂回経路の設定による耐障害性 波長の有効利用 多対1プロテクション M. Murata
リンクプロテクション方式 リンク障害に対応可能であるプロテクション方式 ファイバを通る全てのライトパスに対してプロテクション 障害時 非アクティブ アクティブ アクティブ 障害時 正常時 M. Murata
スパイラルアプローチの実現 段階的ネットワーク設計 WDM技術による高信頼化:IP&WDM Integration 初期ステップ 与えられたトラヒック量に基いたトポロジー設計;従来の設計手法が適用可能、ただし、トラヒック予測が間違っていたとしても、追加ステップで修正可能 追加ステップ トラヒック測定(パッシブ)、エンドユーザ品質測定(アクティブ)に基いた波長設定 波長の追加、削減のみ バックアップパスの有効利用 調整ステップ 全体の波長有効利用を考慮したトポロジー再設計 サービスの継続性を考慮した1波長ルートごとの変更 WDM技術による高信頼化:IP&WDM Integration 共有プロテクション方式 複数の障害には対応不可、必要波長数小 追加ステップにおけるバックアップパスの有効利用 QoP (Quality of Protection) IP Router Ingress LSR l 2 1 N 4 3 Core LSR l-MPLS 5 M. Murata
論理トポロジー再構成時の パス設定手法 論理トポロジー再構成アルゴリズムで用いるパス設定手法 用語 新規プライマリ光パスの追加 (Append) 現行プライマリ光パスの削除 (Delete) 同じ送受信ノードをもつ現行プライマリ光パスと新規プライマリ光パスの切り換え (Exchange) バックアップ光パスへのトラヒックの退避 (Switch) バックアップ光パスの波長資源の解放 (Release) 用語 現行光パス → 現在の論理トポロジー上の光パス 新規光パス → 再構成後の論理トポロジー上の光パス 論理トポロジー再構成アルゴリズムを紹介する前に, このアルゴリズムの中で用いているパス設定手法を紹介します. 今回提案する論理トポロジー再構成アルゴリズムでは, 新規プライマリ光パスの追加, 現行プライマリ光パスの削除, 現行プライマリ光パスと新規プライマリ光パスの交換, 現行プライマリ光パス上のトラヒックの退避, 現行バックアップ光パス用の資源の解放の5つの操作を用いて再構成を行います. 今回,これらの操作をそれぞれ Append,Delete,Exchange,Switch,Release と呼ぶことにします. また,ここで現行,新規という言葉を使用していますが, 現在の論理トポロジー上の光パスを現行光パス, 再構成後の論理トポロジー上の光パスを新規光パスと呼ぶことにします. それでは,各操作について説明します. M. Murata
Append 操作,Delete 操作 新規プライマリ光パスの追加 (Append) 現行プライマリ光パスの削除 (Delete) 必要な波長資源が確保できる新規プライマリ光パスを設定 波長資源が確保できる条件 波長資源が現行プライマリ光パスで使用されていない 波長資源が現行バックアップ光パスで使用されていない 現行プライマリ光パスの削除 (Delete) 現在設定されている光パスで使われている波長資源を解放 削除した光パス上のトラヒックを損失 Append 操作は,新規プライマリ光パスの追加を行います. この操作をはじめ,新たに光パスを追加設定する操作は, 光パスの設定に必要な波長資源が確保できるときのみ行えるとしています. 波長資源が確保できるとは,必要な波長資源が現行のプライマリ光パスおよび, バックアップ光パスで使用されていないということです. 必要な波長資源が既にプライマリ光パスに使用されているときは, その光パスを削除し,使われていた資源を解放する必要があります. この資源の解放に当たる操作が Delete 操作になります. この操作により削除される光パスを流れるトラヒックは損失されます. M. Murata
Exchange 操作 同じ送受信ノードをもつ現行プライマリ光パスと新規プライマリ光パスの切り換え 4 1 3 2 λ1 λ2 6 5 4 現行プライマリ光パス上のトラヒックを保護 現行プライマリ光パスとそのバックアップ光パスの波長資源を解放 4 1 3 2 λ1 λ2 6 5 4 1 3 2 λ1 λ2 6 5 4 1 3 2 λ1 λ2 6 5 4 1 3 2 λ1 λ2 6 5 まず,Exchange 操作ですが, これは送信ノードと受信ノードが同じ現行プライマリ光パスと 新規プライマリ光パス間でパス交換を行う操作です. 図を見てください. 赤の矢印が現行のプライマリ光パスで,青の矢印が新規のプライマリ光パスとします. この段階では現行のプライマリ光パス上にトラヒックが流れ, また,新規プライマリ光パスはまだ設定されていません. ここで,新規プライマリ光パスを設定し,トラヒックがそちらへ流れるようにします. 現行のプライマリ光パス上にトラヒックが流れなくなった時点で, 現行プライマリ光パスの波長資源を解放します. このようにすることで,トラヒックを保護しながら, 現行光パスの削除と新規光パスの追加が行えます. M. Murata
Switch 操作 バックアップ光パスへのトラヒックの退避 トラヒックをバックアップ光パスへ退避できる条件 ペアとなる新規プライマリ光パスがなく,Exchange 操作が不可能 現行プライマリ光パスの資源が新規プライマリ光パスの設定に必要 バックアップ光パスが波長資源を専有 (共有バックアップ方式の場合) 新規プライマリ光パスは Append または Exchange 操作で設定 7 8 4 1 3 2 λ1 λ2 6 5 7 8 4 1 3 2 λ2 λ1 6 5 7 8 4 1 3 2 λ2 λ1 6 5 次に Switch 操作について説明します. ある現行プライマリ光パスの波長資源の一部を用いて 新規プライマリ光パスを設定しなければならない状況を考えます. 新規プライマリ光パスを設定するために現行プライマリ光パスを削除しなければなりません. Exchange 操作を行うには同じ送受信ノードをもつ新規光パスがなければなりませんでした. しかし,そのような新規光パスが存在しない場合は, 現行プライマリ光パス上のトラヒックを,バックアップ光パスへ退避させます. こうすることで,トラヒックの損失を引き起こすことなく 新規プライマリ光パスを設定することが可能となります. M. Murata
Release操作 バックアップ光パスの波長資源の解放 7 8 4 1 3 2 λ2 λ1 6 5 7 8 4 1 3 2 λ1 λ2 6 トラヒックが流れていないバックアップ光パスの波長資源を利用 新規プライマリ光パスは Append または Exchange 操作で設定 7 8 4 1 3 2 λ2 λ1 6 5 7 8 4 1 3 2 λ1 λ2 6 5 7 8 4 1 3 2 λ1 λ2 6 5 続いて Release 操作について説明します. これは,現行バックアップ光パスの資源を解放し, それを用いて新規プライマリ光パスを設定するという操作です. M. Murata
割り当て波長の変更 割り当て波長 ある光パスの設定で用いるように,設計時に指定された波長 割り当て波長で光パスを設定できない場合,別の波長を用いて設定 ネットワーク上位層からみた性能は同等 空き波長資源を有効に利用 4 1 3 2 λ2 λ1 λ3 6 5 遅延時間が異なる 今回提案する再構成アルゴリズムでは,光パスが複雑に配置された論理トポロジーでも より効率的に再構成を行うために割り当て波長を変更を行います. ここで,割り当て波長とは,論理トポロジーを設計した段階で, 各光パスの設定で用いるように指定されている元もとの波長のことです. 例えば,この図で1-5-6-7と赤のラムダ1で示されている光パスを設定したいときに, 5-6の部分の資源が他の光パスで使用されていたとします. その光パスを削除し,5-6の資源を解放すれば赤の光パスが設定できますが,トラヒックを損失します. また,代わりに青で示されているような光パスを張った場合は,ノード1からノード4への通信は可能となりますが, 光パスの遅延時間が異なるため,ネットワークの性能が変化してしまいます. そこで,緑で示されてるような,赤の光パスと同経路で別波長の光パスを設定します. この場合,ネットワークの性能は同じであり,空き波長を有効に利用することで再構成を効率よく行うことができます. 1 4 遅延時間が等しい M. Murata
論理トポロジー再構成 アルゴリズム 論理トポロジー再構成の手順を求める 再構成中は障害が発生しないと仮定 Delete 操作回数の最小化が目標 再構成中は障害が発生しないと仮定 新規プライマリ光パスの設定手順を求める部分 Step1: P ← 0. Step2: 設定可能な新規プライマリ光パスがあるならば Step2.1 へ. そうでなければ Step3 へ. Step2.1: Exchange 操作で設定できれば P ← P+1 として Step2 へ. そうでなければ Step2.2 へ. Step2.2: Append 操作で設定し,P ← P+1 として Step2 へ. Step3: 全ての新規プライマリ光パスが設定されていれば終了. そうでなければ Step4 へ. Step4: 可能な限り Switch 操作を行う (操作ごとに P ← P+1).Step5 へ. Step5: P > 0 ならば P ← 0 として Step2 へ.そうでなければ Step5.1 へ. Step5.1: Release 操作が可能ならばそれを行い P ← 0 として Step2 へ. そうでなければ Step5.2 へ. Step5.2: Delete 操作を行いP ← 0 として Step2 へ. 新規プライマリ光パスの設定に 必要な波長資源を最も多く使用 している現行プライマリ光パス から順に削除 以上,5つのパス設定操作と割り当て波長の変更を用いて 論理トポロジーを再構成するアルゴリズムを提案します. 5つのパス設定操作のうち Delete 操作を行ったときのみトラヒックが損失されるので, Delete 操作を行わなければトラヒックの損失を抑えることができると考え, 今回提案するアルゴリズムの目標は Delete 操作回数の最小化としました. 枠の中は提案アルゴリズムの新規プライマリ光パスの設定手順を求める部分です. この部分が今回提案するアルゴリズムの中心となっています. このアルゴリズムでは再構成の進行具合を表すための変数 P を用います. まず,Step1 で P を0に初期化します. Step2 では Exchange, Append 操作で新規光パスを設定します. まず Step2.1 で Exchange 操作による設定を試み,不可能な場合のみ Step2.2 で Append 操作を行います. Exchange 操作では現行光パスの波長資源を解放できるためこの順序となっています. それぞれ操作を1回行うたびに P の値を1増やします. Step2 で設定可能な新規プライマリ光パスがなくなったらStep3へ移ります. Step3で,全ての新規プライマリ光パスが設定されていれば作業を終了します. そうでなければStep4へ移り,可能な限り Switch 操作を行います. また,Switch操作を行うたびに Pの値を1増やします. Step5では Pの値が0,つまり,再構成が全く進行していない場合に Release または Delete 操作を行います. Release 操作が可能であればそれを行い,そうでない場合に限り Delete 操作を行います. このアルゴリズムでポイントとなるのは,赤で示されている Exchange, Release, Delete 操作で削除する現行光パスの選び方です. この選び方により,それ以降の再構成の進み方が変わります. 今回のアルゴリズムでは,より効率良く再構成を進めるために,これらの操作で削除する現行光パスは 新規プライマリ光パスの設定に必要な波長資源を最も多く使用しているものから順に選ぶことにしました. M. Murata
Append + Delete + Exchange + Release 提案アルゴリズムの評価 評価モデル NTT 基幹ネットワーク ノード数 49,リンク数 89 波長数: 16,32,64,128,256 最大ホップ数 4 評価方法 31 個の論理トポロジーを,光パスをランダムに配置して生成 30 回の再構成を行い Delete の操作回数の平均で評価 アルゴリズム 1,2,3 で比較 では,提案アルゴリズムの評価について説明します. 評価モデルには NTT 基幹ネットワークを用いました. 今回の評価では,論理トポロジーの移行を問題としているため,トラヒック量は考慮せず, 光パスをランダムに配置することで論理トポロジーを生成しました. 波長数を16,32,64,128,256としたそれぞれの場合において, 31個の論理トポロジーを用意し,30回の再構成を提案アルゴリズムを用いて行いました. 比較対照のアルゴリズムには,提案アルゴリズムのサブセットを用いました. アルゴリズム1では Append,Delete,Exchange, Release 操作のみで再構成を行います. これは,先ほど紹介したアルゴリズムのうち,Step4でSwitch操作を行わないものとなっています. アルゴリズム2はアルゴリズム1で割り当て波長の変更を可能にしたものです. アルゴリズム3は提案アルゴリズムです. この3つのアルゴリズムの適用したときの Delete 操作回数の平均値で評価を行いました. アルゴリズム 1 Append + Delete + Exchange + Release アルゴリズム 2 アルゴリズム 1 + 波長の変更 アルゴリズム 3 提案アルゴリズム M. Murata
評価結果 トラヒック損失の発生を大幅に少なくすることが可能 波長数 プライマリ 光パス数 16 630 32 1080 64 1940 アルゴリズム 1: 光パス数が増えるにつれ,Delete 操作回数も増加 アルゴリズム 2: 波長数が増えるほど,割り当て波長の変更が有効 アルゴリズム 3: 波長数が多くないときに Switch 操作が比較的有効 700 プライマリ光パス数の平均 波長数 プライマリ 光パス数 16 630 32 1080 64 1940 128 3353 256 5759 600 500 アルゴリズム 1 Delete 操作回数 400 アルゴリズム 3 300 評価結果がこの図になります. 横軸が波長数で,縦軸が Delete 操作回数の平均値を示しています. まず,アルゴリズム1ですが,波長数の増加とともに論理トポロジー上の光パスの数が増えているため, Delete の回数もそれに従って増加しています. それに対して,アルゴリズム2では,波長数が増えるほど割り当て波長の変更が行いやすくなるため, 波長数が増えるとともにDelete回数は減少しています. 提案アルゴリズムでは,波長数の少ない部分で Switch 操作が比較的有効であることが分かります. アルゴリズム 2 200 100 50 100 150 200 250 300 波長数 M. Murata
再構成に要する操作回数 再構成に要する時間を操作回数で概算 光パスの数が増えるに従い,操作回数が増加 IP の経路制御機能への影響? 波長数 16 32 64 128 256 アルゴリズム 1 1374 2217 3726 5920 9312 アルゴリズム 2 1741 2948 5095 8356 12284 アルゴリズム 3 1663 2798 4796 7645 11841 次に,各アルゴリズムを適用したときの再構成に要する操作回数を示します. これより,非常に大雑把ではありますが,論理トポロジーの再構成時間が, IPの経路制御機能に影響を及ぼすと考えられます. この点に関する対応は今後の課題となっています. M. Murata
今後? QoSに関して インターネットが目の前にあったからこそ、それに適したWebというアプリケーションが生まれた バックボーンの高速化:フォトニックイン ターネット GMPLSに基づくルーティング+MPlSに 基づく波長ルーティング GMPLSに基づくルーティング+フォトニック パケットスイッチに基づく波長ルーティング フォトニックIPルータ 高機能フォトニックIPルータ エッジルータ、ゲートウェイにおける高品質化 プログラマブルルータの活用 エンドホストの高速化 ムーアの法則:CPUのコストパフォーマンスは18ヶ月で2倍に向上(10年で100倍) ビルジョイの法則(?):回線容量は9ヶ月~1年で2倍に向上(10年で1,000倍) インターネットが目の前にあったからこそ、それに適したWebというアプリケーションが生まれた 背景:画像圧縮技術、GUI、画像表示能力 にわとりと卵(?) napster, gnutella 波長の有効利用:PhotonicGrid 波長をどれだけエンドユーザの近いところに持ってこれるか? 多重波長数に依存 高速化 高品質化 複雑なパケット処理前提 ポリシー制御 QoS制御 輻輳制御 … パケット処理の簡素化 MPLS IPv6 M. Murata
今後? エンド間QoSを保証、差別化することに意味があるか? ネットワーク資源の変動を前提とした、アダプティブなエンドホストによるQoS制御 IntServ、DiffServの前提;回線固定、ノード固定、サーバ固定 P2P;サーバが突発的に現れる モバイル環境;情報源が突発的に現れる ネットワーク資源の変動を前提とした、アダプティブなエンドホストによるQoS制御 例:ストリーミングサービス vs. リアルタイム動画配信サービス エンドシステムにとって利用可能な資源の実時間推定 ネットワークの資源管理は補助的な役割 次世代ネットワークのキーワード Scalability Adaptability Mobility M. Murata
オーバーレイネットワークの課題 論理網と物理網 効率的な論理網の構成手法 インターネット GMPLS データ転送は物理網をそのまま利用 (Gnutella) 効率的な論理網の構成手法 論理網を構成する管理ノード(集中型、分散型)の設置 物理網のQoS機能を利用する IntServ、DiffServ 論理ノードが物理網特性を自律的に把握 計測(ホップ数、利用可能帯域、、、) P2P CDN Grid VPN インターネット GMPLS WDMネットワーク M. Murata