北大MMCセミナー 第60回 附属社会創造数学センター主催 Date: 2016年7月28日(木) 16:30~18:00 ※通常と曜日が異なります Speaker: 池田幸太 (明治大学) Kota Ikeda (Meiji University) Place: 電子科学研究所 中央キャンパス総合研究棟2号館 5F北側講義室(北12条西7丁目) Title: 樟脳船の反応拡散モデルに対する縮約アプローチ Reduction approach to a reaction-diffusion system for collective motions of camphor boats アブストラクト: 等高線法を用いた結晶のスパイラル成長の数理モデルを用いて、共回転対と呼ばれる、 同じ回転方向を示すらせん転位の対による結晶表面の成長速度について考察する。 Burton-Cabrera-Frankによると、対の距離がある臨界距離より遠い場合は 単独のらせん転位による結晶表面の成長と見分けが付かないとされる。 他方その臨界距離より近い場合は、対を限りなく近づけた時の成長速度が 単独のらせん転位の2倍になるとされるが、その中間の距離において 成長速度がどうなるかという評価式は与えられていない。 そこで上記の事実について数値計算実験を行った結果、臨界距離にずれがあることを発見した。 そこで共回転対による成長速度の評価を行い、その観点から臨界距離の新しい定義とその数値を与え、 これが数値計算実験の結果と非常に良く合うことを報告する。 評価と臨界距離の改善において重要な役割を果たしたのは単独のらせん転位により 与えられるスパイラルステップの回転速度で、Burton-Cabrera-Frankはこれを アルキメデスのらせんによる近似から計算していた。この結果をより精度の良いものに 改めることによりある程度の指標となる成長速度の評価式を得ることができた。 連絡先: 北海道大学電子科学研究所 附属社会創造数学研究センター 人間数理研究分野 長山 雅晴 内線: 3357 nagayama@es.hokudai.ac.jp
Abstract: 円環水路上に浮かべた樟脳船の集団運動には、等間隔、一定速度で進行する状態(一様流と呼ぶ)と、密度差を伴う状態(非一様流)が樟脳船の個数に応じて現れる。樟脳船の挙動は長山氏によって提案された反応拡散モデルによって記述される。このモデルでは水面上の拡散性分子が表面張力を変化させることが仮定されており、この効果によって樟脳船同士は間接的に相互作用を及ぼし合う。樟脳船の集団運動に見られる非一様流を調べるためには、一様流に対する線形化固有値問題を調べれば良いが、粒子数が2つの場合であっても解析は難しい。そこで、中心多様体理論を適用しモデル方程式を縮約することで解析を行いたい。 様々な反応拡散方程式にはパルス型の解が現れる。栄氏らの先行研究において提案された手法によって、パルス同士の相互作用を数学的に取り扱うことが可能である。この研究においては、中心多様体理論を適用することで縮約方程式である常微分方程式系が導出される。ただし、L2空間の枠組みで考えられているため、本研究のようにデルタ関数が自然と現れる系に対して栄氏らの理論を直接適用することはできない。本研究では、栄氏らの理論を発展させ、デルタ関数を含む系における中心多様体理論の構築を行うことを目標とする。 The collective motion of camphor boats in the water channel exhibits both a homogeneous and an inhomogeneous state, depending on the number of boats. The motion of each camphor boat is described by a traveling pulse in a reaction-diffusion model proposed in Nagayama et al. (2004), in which camphor boats are assumed to interact each other by the change of surface tension by diffusive molecules on the water surface. In order to verify the inhomogeneous motion of camphor boats, we have to study the linearized eigenvalue problem and see the destabilization of the homogeneous flow. However, the eigenvalue problem is too difficult to analyze even if the number of camphor boats is 2. Then we would like to derive a reduced system from the original model and analyze it by applying the center manifold theorem. Several reaction-diffusion systems can generate a solution with a pulse shape. Pulse-pulse interaction is treated mathematically in Ei et al. (2002), in which a reduced system of an ODE form is derived from a reaction-diffusion model by applying a center manifold theorem. Since the delta functions naturally arise in our model, the theory established in L2-framework cannot be applied directly. In this talk, we modify the previous results in Ei et al. (2002) and propose a new approach of reduction to systems with the delta function.