真夏の磁気圏境界層 長谷川 洋 STPセミナー 2009/09/16
磁気圏現象の季節依存性 地軸: 公転面の法線に対して23.4°の傾き。 磁軸(磁気双極子モーメントの軸): 地軸に対して約11°の傾き。 地軸: 公転面の法線に対して23.4°の傾き。 磁軸(磁気双極子モーメントの軸): 地軸に対して約11°の傾き。 磁気圏の現象には、季節依存性が生じうる。
地磁気活動度の季節依存性 Russell & McPherron, 1973
Russell-McPherron効果 太陽風速度の影響 春・秋[View from Sun] IMF 太陽の磁気赤道 GSM座標系で、IMF南北成分が現れる。 太陽風速度の影響 夏・冬[GSM X-Z plane] 太陽風速度 Yoshida, AG, 2009
IMF北向きの場合は? 2007年6月3日(~夏至)の観測 (Øieroset et al., 2008) Song & Russell, 1992 40 min
グローバルMHDシミュレーション 子午面 Vz Li et al., JGR, 2009
特徴的な低緯度境界層(LLBL) 赤道面 密度 Vz Li et al., JGR, 2009
MHDシミュレーション結果 夏(北)半球で最初に高緯度リコネクション。 南向きのプラズマジェット(~100 km/s)の層 - 昼側磁気圏界面のすぐ地球側に形成。 - 低温(< 1 keV)、高密度(> 1 /cc)のプラズマ。 - 経度方向の広がり大。 - 大部分は開いた磁力線の領域。 開いた磁力線の一部は、冬(南)半球での高緯度リコネクションにより、閉じる。 低温高密度プラズマ層の厚み > 1 Re
MHDシミュレーション結果 夏(北)半球で最初に高緯度リコネクション。 南向きのプラズマジェット(~100 km/s)の層 - 昼側磁気圏界面のすぐ地球側に形成。 - 低温(< 1 keV)、高密度(> 1 /cc)のプラズマ。 - 経度方向の広がり大。 - 大部分は開いた磁力線の領域。 開いた磁力線の一部は、冬(南)半球での高緯度リコネクションにより、閉じる。 低温高密度プラズマ層の厚み > 1 Re
2008年7月11日のTHEMIS観測 太陽風、シース、昼側境界層を同時観測
2008年7月11日のIMF 2.5 hours IMF clock angle = tan–1(By/Bz) IMFは長時間、強い北向き
MHDシミュレーション結果 夏(北)半球で最初に高緯度リコネクション。 南向きのプラズマジェット(~100 km/s)の層 - 昼側磁気圏界面のすぐ地球側に形成。 - 低温(< 1 keV)、高密度(> 1 /cc)のプラズマ。 - 経度方向の広がり大。 - 大部分は開いた磁力線の領域。 開いた磁力線の一部は、冬(南)半球での高緯度リコネクションにより、閉じる。 低温高密度プラズマ層の厚み > 1 Re
電子のMSBL(magnetosheath boundary layer) TH-E
MHDシミュレーション結果 夏(北)半球で最初に高緯度リコネクション。 南向きのプラズマジェット(~100 km/s)の層 - 昼側磁気圏界面のすぐ地球側に形成。 - 低温(< 1 keV)、高密度(> 1 /cc)のプラズマ。 - 経度方向の広がり大。 - 大部分は開いた磁力線の領域。 開いた磁力線の一部は、冬(南)半球での高緯度リコネクションにより、閉じる。 低温高密度プラズマ層の厚み > 1 Re
2008年7月11日の境界層観測
リコネクションは続いていた
TH-AとTH-Eの経度方向の距離 ~ 3.5 Re 経度方向に広がったジェットの層 TH-AとTH-Eの経度方向の距離 ~ 3.5 Re
ピッチ角~0°と~180°の電子フラックスがバランス ジェットは閉じた磁力線上 ピッチ角~0°と~180°の電子フラックスがバランス
MHDシミュレーション結果 夏(北)半球で最初に高緯度リコネクション。 南向きのプラズマジェット(~100 km/s)の層 - 昼側磁気圏界面のすぐ地球側に形成。 - 低温(< 1 keV)、高密度(> 1 /cc)のプラズマ。 - 経度方向の広がり大。 - 大部分は開いた磁力線の領域。 開いた磁力線の一部は、冬(南)半球での高緯度リコネクションにより、閉じる。 低温高密度プラズマ層の厚み > 1 Re
高密度境界層の厚み < 0.5 Re TH-D TH-E TH-A
MHDシミュレーション結果 夏(北)半球で最初に高緯度リコネクション。 南向きのプラズマジェット(~100 km/s)の層 - 昼側磁気圏界面のすぐ地球側に形成。 - 低温(< 1 keV)、高密度(> 1 /cc)のプラズマ。 - 経度方向の広がり大。 - 大部分は開いた磁力線の領域。 開いた磁力線の一部は、冬(南)半球での高緯度リコネクションにより、閉じる。 低温高密度プラズマ層の厚み > 1 Re
観測結果 夏(北)半球で最初に高緯度リコネクション。 南向きのプラズマジェット(~100 km/s)の層 - 昼側磁気圏界面のすぐ地球側に形成。 - 低温(< 1 keV)、高密度(> 1 /cc)のプラズマ。 - 経度方向の広がり > 3.5 Re。 - 大部分は閉じた磁力線の領域。 開いた磁力線の大部分は、冬(南)半球での高緯度リコネクションにより、閉じる。 低温高密度プラズマ層の厚み < 0.5 Re
違いから推測できること ジェット層、高密度境界層の大部分は閉じた磁力線上にある。 ⇒ リコネクション率は、南北両半球でほぼ等しい。 昼側境界層の厚み < 0.5 Re。 グローバルMHDシミュレーション(Li et al., JGR, 2009)と比べて、 ⇒ 実際のリコネクション率は低い、and/or 実際の尾部へのプラズマ輸送効率は高い。
今の(グローバル)MHDシミュレーションの短所 リコネクションは異常(人工)・数値抵抗が原因で起きている。 空間分解能が(多分)足りない。 ⇒ 大きな数値抵抗 ⇒ 現実より大きいリコネクション(磁場拡散)率? ⇒ KH渦が生じない ⇒ 現実より小さい運動量輸送? Plasma Depletion Layerが形成されにくい。冬半球でのリコネクションが起こりにくくなっている?
未解決問題 IMF北向き時に、リコネクション率は磁軸の傾き(季節)に依存するか? If so, AND 支配的な太陽風プラズマ流入・輸送メカニズムがリコネクションならば、プラズマシートの密度や境界層の厚みも、磁軸の傾きに依存するはず。 グローバルMHDシミュレーション(Li et al., 2008): 流入率は磁軸の傾きに依存。 実際は???
DMSPデータで迫れるか 北向きIMF時 磁気圏赤道面での密度&温度2Dマップ(Wing & Newell, 2002) 南向きIMF時 プラズマ密度 プラズマ温度 南向きIMF時
2008年7月11日の衛星配置 TH-B Geotail TH-C TH-A,D,E Cluster
まとめ IMF北向き時にLLBLで、南向きのリコネクションジェットを多点観測。 ジェット層、境界層は閉じた磁力線上にある。 - リコネクション率は、南北両半球でほぼ等しい。 高密度境界層の厚み < 0.5 Re。 グローバルMHDシミュレーションと比べて、 - 実際のリコネクション率は低い、and/or - 実際の尾部へのプラズマ輸送効率は高い。 プラズマ流入・輸送効率に季節依存性はあるか?
References Hasegawa, H., J. P. McFadden, O. D. Constantinescu, et al., Boundary layer plasma flows from high-latitude reconnection in the summer hemisphere for northward IMF: THEMIS multi-point observations, Geophys. Res. Lett., 36, L15107, doi:10.1029/2009GL039410, 2009. Li, W., J. Raeder, M. F. Thomsen, and B. Lavraud, Solar wind plasma entry into the magnetosphere under northward IMF conditions, J. Geophys. Res., 113, A04204, doi:10.1029/2007JA012604, 2008. Li, W., J. Raeder, M. Øieroset, and T. D. Phan, Cold dense magnetopause boundary layer under northward IMF: Results from THEMIS and MHD simulations, J. Geophys. Res., 114, A00C15, doi:10.1029/2008JA013497, 2009. Øieroset, M., T. D. Phan, V. Angelopoulos, et al., THEMIS multi-spacecraft observations of magnetosheath plasma penetration deep into the dayside low-latitude magnetosphere for northward and strong By IMF, Geophys. Res. Lett., 35, L17S11, doi:10.1029/2008GL033661, 2008. Russell, C. T., and R. L. McPherron, Semiannual variation of geomagnetic activity, J. Geophys. Res., 78, 92-108, 1973. Song, P., and C. T. Russell, Model of the formation of the low-latitude boundary layer for strongly northward interplanetary magnetic field, J. Geophys. Res., 97, 1411-1420, 1992. Yoshida, A., Physical meaning of the equinoctial effect for semi-annual variation in geomagnetic activity, Ann. Geophys., 27, 1909-1914, 2009.