2003年出生極低出生体重児の 3歳時予後 :施設間比較と予後指標

Slides:



Advertisements
Similar presentations
米国の外来呼吸器感染症での抗菌薬投与状況 抗菌薬投与率 普通感冒 5 1% 急性上気道炎 52% 気管支炎 6 6% 年間抗菌薬総消費量 21% 【 Gonzales R et al : JAMA 278 : ,1997 】
Advertisements

1 / 44 SPSS ハウツー 独立行政法人 大学入試センター 橋本 貴充 2007 年 3 月 30 日 ( 金 )
Journal Club 東京ベイ浦安市川医療センター 後期研修医 吉野かえで BMJ 2014;348:g2197 Selective digestive or oropharyngeal decontamination and topical oropharyngeal chlorhexidine.
2006 年 ネットワークデータベース解析 東京女子医科大学母子総合医療センター 楠田 聡. 釧路赤十字病院青森県立中央病院 岩手医科大学仙台赤十字病院 福島県立医科大学附属病院獨協医科大学 自治医科大学群馬県立小児医療センター 埼玉県立小児医療センター埼玉医科大学総合医療センター 亀田総合病院東京女子医科大学.
logistic regression をしたい場合の STATISTICA2000のアプリケーションの使い方について
低出生体重児の 発育と発達 静岡県富士保健所 後藤 幹生 静岡県富士保健所  後藤幹生 .
【MedR】第7回 東京大学医学系研究科 特任助教 倉橋一成.
第7回 独立多群の差の検定 問題例1 出産までの週数によって新生児を3群に分け、新生児期黄疸の
時系列の予測 時系列:観測値を時刻の順に並べたものの集合
パネル分析について 中村さやか.
浅間総合病院小児科の紹介 浅間病院小児科は、一般(病院)小児科として機能しています。
Association of Major and Minor ECG Abnormalities With Coronary Heart Disease Events 心電図異常と 心血管イベントの関係 谷川 徹也 JAMA, April 11, 2012—Vol 307, No
新生児医療の現状   全国と滋賀県 1997年7月25日、県立小児保健医療センターで行われた乳幼児健診従事者研修会での講演に使用したスライドです。 (滋賀医科大学小児科 青谷裕文 作成) ? 新生児は減っているのか? 未熟児は増えているのか? 未熟児はどれくらい助かるのか? (全国では?滋賀県では?)
母子保健の現状及び取り巻く環境の 変遷について 厚生労働省.
大量free airにて 消化管穿孔を疑い緊急開腹術を施行 高気圧酸素療法が著効した 腸管嚢状気腫症の1例
日本人在胎期間別出生時体格基準値の作成 昭和大学小児科 板橋 家頭夫 分担研究者 研究協力者
透析患者に対する 大動脈弁置換術後遠隔期の出血性合併症
メタボリック症候群(MetS)の有無と、成人以降の体重増加とCKDの関連
インダシン予防投与多施設ランダム化比較試験・二次解析報告
因子分析や3相因子分析による分析の問題点を整理する 狩野裕+原田章(行動工学講座)
日本の少子化問題:その原因と対策 ~県別のパネルデータでの分析~.
ベイズ的ロジスティックモデル に関する研究
質的データの分析手法 ---プロビットモデル・ロジットモデルの概要---
A 「喫煙率が下がっても肺ガン死亡率が減っていないじゃないか」 B 「喫煙を減らしてもガン減るかどうか疑問だ」
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 社会統計 第12回 重回帰分析(第11章前半) 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
キーワード 平均寿命・平均余命・乳児死亡率 感染症・生活習慣病
健康寿命について H27.1健康づくり課作成 ○健康寿命とは… 一般に、ある健康状態で生活することが期待される平均期間またはその指標の総称
計算値が表の値より小さいので「異なるとは言えない」。
3章 Analysing averages and frequencies (前半 p )
資料2.
「リステリア」による食中毒を 防ぐために衛生管理を徹底しましょう
インスリンの使い方 インターンレクチャー.
Hironori Kitaoka.
    「超低出生体重児の後障害なき救命に関する研究」
Study Design and Statistical Analysis
VARモデルによる分析 高橋青天ゼミ 製作者 福原 充 増田 佑太郎 鈴木 茜
需要の価格弾力性 価格の変化率と需要の変化率の比.
目的  成人喫煙率は、男性喫煙率が30%台となるなど、全体に減少傾向にはあるが、若い女性や未成年者の喫煙対策が課題となっている。特に、妊婦の喫煙は、胎児や乳児に深刻な影響を与え、有効な対策が急務である。  本日は昨年に引き続き洲本市における妊婦喫煙の状況と、加えて、出生体重に対する妊婦喫煙や受動喫煙の影響について報告する。
VAP(人工呼吸器関連肺炎) の予防 JSEPTIC_Nursing.
柿原論文へのコメント 東京学芸大学教育学部 鈴木 亘.
離婚が出生数に与える影響 -都道府県データを用いた計量分析
極低出生体重児の 新生児遷延性肺高血圧症の検討
相関分析.
リサーチカンファ 29 Aug, 2017.
がん患者の期待に応えるがん対策推進基本計画の策定のために 参考資料 (死亡率試算図表)
4章までのまとめ ー 計量経済学 ー.
疫学概論 交絡 Lesson 17. バイアスと交絡 §A. 交絡 S.Harano, MD,PhD,MPH.
医療法人社団 高山泌尿器科 臨床工学部門 斎藤 寿 友西 寛 工藤 和歌子 佐藤 友紀
2003年出生極低出生体重児の 3歳時予後: 脳室内出血の重症度と予後
Interventions to Improve the Physical Function of ICU Survivors            (CHEST 2013;144(5): ) 聖マリアンナ医科大学 救急医学 田北 無門.
指標の数と信頼性・ 内容的妥当性 指標の数は多いほうがよい.
疫学概論 疾病の自然史と予後の測定 Lesson 6. 疾病の自然史と 予後の測定 S.Harano,MD,PhD,MPH.
予後因子(入院時年齢・FIM・発症後日数)の階層化による回復期リハの成果測定法の提唱
St. Marianna University, School of Medicine Department of Urology 薄場 渉
「周産期母子医療センターネットワーク」による フォローアップ・介入による改善・向上に関する研究
尺度化について 狩野 裕 大阪大学人間科学部.
Journal Club 2013/11/19 聖マリアンナ医科大学 救急医学
疫学概論 直接法と間接法の相違 Lesson 5. 率の調整 §D. 直接法と間接法の相違 S.Harano,MD,PhD,MPH.
母分散の信頼区間 F分布 母分散の比の信頼区間
肺の構造. 肺の構造 肺の間質とは? IPF(特発性肺線維症)とは? IPF患者さんの肺の画像(胸部X線)
総合周産期母子医療センターにおけるフォローアップ体制の整備 -フォローアップ率への影響要因-
疫学初級者研修  ~2×2表~ 平成12年2月14日(月) 13:00~ 岡山理科大学情報処理センター.
情報経済システム論:第13回 担当教員 黒田敏史 2019/5/7 情報経済システム論.
特定健診・がん検診等の保健事業の場における禁煙支援
「カテゴリ変数2つの解析」 中澤 港 統計学第7回 「カテゴリ変数2つの解析」 中澤 港
「リステリア」による食中毒を 防ぐために衛生管理を徹底しましょう
議論の前提 ある人獣共通感染症は、野生動物が感染源となって直接又は媒介動物を通じて人に感染を起こす。
回帰分析入門 経済データ解析 2011年度.
疫学概論 §C. スクリーニングのバイアスと 要件
疫学概論 臨床試験の種類 Lesson 14. 無作為化臨床試験 §B. 臨床試験の種類 S.Harano,MD,PhD,MPH.
Presentation transcript:

2003年出生極低出生体重児の 3歳時予後 :施設間比較と予後指標 2003年出生極低出生体重児の 3歳時予後   :施設間比較と予後指標 2009.1.23 全体班会議  フォローアップ 河野班 大阪府立母子保健総合医療センター 米本 直裕

目的:施設間比較とベンチマーク 出生前,出生時の要因を調整したうえで,極低出生体重児の生命・長期予後に施設間差があるか? 出生前,出生時の要因を調整したうえで,生命・長期予後に影響を与える新生児合併症は何か? 出生前,出生時の要因を調整したうえで,出生後の治療法と生命・長期予後に関係があるか?

方法:解析モデル 関心のある変数とそれ以外の複数の交絡要因を 回帰モデルで調整する 回帰モデル ロジスティック回帰:オッズ比と95%信頼区間 (補完的に他のモデルでも検討) ポワソン回帰 Cox回帰  Intact Survivalをイベント,検診日までの時間を考慮

方法:モデルの変数 施設 新生児合併症 出産後インターベンション 従属変数[アウトカム]:2値(あり/なし) Major Handicap +死亡 打ち切りは「なし」扱い 独立変数: 施設 出生時要因 出生前インターベンション 新生児合併症 出産後インターベンション

独立変数:リスク要因,治療 出生時要因: 母年齢,多胎,性別,出生体重, Light for dates,大奇形 出生前インターベンション: 出産前ステロイド,帝王切開,院外出生,アプガ-5分 新生児合併症: RDS,空気漏出症候群,PPHN, CLD,症候性PDA, 新生児けいれん,IVH(無+1-2,3-4),PVL,HIE, 敗血症,壊死性腸炎,消化管穿孔, 水頭症 出生後インターベンション: 出生蘇生時の挿管, サーファファクタント,HFO,インダシン投与,PDA結紮術,抗菌薬,中心静脈栄養,   

結果:施設間差(調整前) N=1397 95% 信頼区間 (上-下) 対数オッズ比 対数 オッズ比 施設

結果:施設間差(調整後) N=1397 施設 対数オッズ比 (出生時要因,出生前インターベンションで調整) 95% 信頼区間 (上-下)

結果:合併症リスク N=353 RDS CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 消化管穿孔 (ロジスティック回帰:変数選択) 合併症 オッズ比 95%信頼区間  P値 RDS 0.28 (0.11 0.65) 0.004 1.69 (0.79 3.78) 0.188 0.18 (0.08 0.36) <.0001 0.35 (0.09 1.45) 0.137 1.53 (0.12 19.43) 0.732 0.40 1.83) 0.233 CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 消化管穿孔

結果:合併症リスク N=353 RDS CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 消化管穿孔 (ポワソン回帰:変数選択) 回帰係数 95%信頼区間  P値 RDS 0.82 (0.27 1.45) 0.003 -0.24 (-0.78 0.25) 0.354 0.74 (0.32 1.15) 0.001 0.68 (-0.23 1.43) 0.134 0.10 (-1.48 1.27) 0.885 0.20 (-0.64 0.94) 0.620 CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 消化管穿孔

結果:合併症リスク N=172 RDS CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 (不安定につき除外) 消化管穿孔 (Cox 回帰:intact survival, 変数選択) 合併症 ハザード比 95%信頼区間  P値 RDS 0.80 (0.56 1.17) 0.251 0.62 (0.39 0.98) 0.038 0.76 1.37) 0.379 0.46 (0.07 1.59) 0.250 1.37 (0.41 3.48) 0.570 CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎   (不安定につき除外) 消化管穿孔

結果:出生後の治療効果 N=1397 (ロジスティック回帰) 出生後 インターベンション オッズ比 95%信頼区間 P値 出生蘇生時の挿管 95%信頼区間  P値 出生蘇生時の挿管 0.56 (0.36 0.85) 0.006 0.75 (0.51 1.11) 0.157 0.74 (0.50 1.09) 0.130 0.92 (0.63 1.35) 0.658 0.91 (0.47 1.83) 0.792 0.68 (0.44 1.04) 0.081 2.41 (1.64 3.59) <.0001 サーファクタント使用 HFO使用 PDAインダシン投与 PDA結紮術 抗菌薬使用 中心静脈栄養

結果:出生後の治療効果 N=1397 (ポワソン回帰) 出生後 インターベンション 回帰係数 95%信頼区間 P値 出生蘇生時の挿管 95%信頼区間  P値 出生蘇生時の挿管 0.42 0.11 0.74 0.007 0.17 -0.11 0.45 0.243 0.18 -0.09 0.196 0.06 -0.21 0.33 0.650 -0.39 0.56 0.663 0.29 -0.02 0.61 0.063 -0.51 -0.79 -0.24 0.000 サーファクタント使用 HFO使用 PDAインダシン投与 PDA結紮術 抗菌薬使用 中心静脈栄養

結果:出生後の治療効果 N=688 (Cox 回帰:intact survival) 出生後 インターベンション ハザード比 95%信頼区間 95%信頼区間  P値 出生蘇生時の挿管 0.97 (0.79 1.19) 0.798 0.91 (0.75 1.12) 0.379 0.96 (0.77 1.18) 0.684 0.92 1.13) 0.458 0.81 (0.51 1.23) 0.328 0.78 (0.64 0.97) 0.023 1.09 (0.90 1.32) 0.361 サーファクタント使用 HFO使用 PDAインダシン投与 PDA結紮術 抗菌薬使用 中心静脈栄養

限界 フォローアップの問題 フォローアップ率がよくない フォローアップ対象者の偏り フォローアップ率がよくない  フォローアップ対象者の偏り 仮定; 打ち切りは Major Handicap +死亡無し の扱い データの欠測 リスク,介入の評価はごく一部の集団での結果でしかない モデルでの変数の問題 妥当な変数がきちんと含まれているか? 治療,合併症は時間前後していれば、片方は「中間変数」 「中間変数」での調整はバイアスを招く

中間変数: 結果の一部であるもの 中間変数 出生時 体重 新生児 死亡 出生前の インター ベンション

結論 出生前,出生時の要因を調整したうえでも,極低出生体重児の生命・長期予後に差がある施設がみられた 出生前,出生時の要因を調整したうえで,生命・長期予後に影響を与えそうな新生児合併症は,RDSとIVHであった 出生前,出生時の要因を調整したうえで, 生命・長期予後に関係がありそうな出生後の治療法は,出生蘇生時の挿管,中心静脈栄養,抗菌薬の使用であった ただし, フォローアップ率の悪さ,データの欠測,調整のモデルの問題から,この結果にはバイアスが含まれる可能性がある 結果は不安定であり,解釈には十分な注意が必要である