2003年出生極低出生体重児の 3歳時予後 :施設間比較と予後指標 2003年出生極低出生体重児の 3歳時予後 :施設間比較と予後指標 2009.1.23 全体班会議 フォローアップ 河野班 大阪府立母子保健総合医療センター 米本 直裕
目的:施設間比較とベンチマーク 出生前,出生時の要因を調整したうえで,極低出生体重児の生命・長期予後に施設間差があるか? 出生前,出生時の要因を調整したうえで,生命・長期予後に影響を与える新生児合併症は何か? 出生前,出生時の要因を調整したうえで,出生後の治療法と生命・長期予後に関係があるか?
方法:解析モデル 関心のある変数とそれ以外の複数の交絡要因を 回帰モデルで調整する 回帰モデル ロジスティック回帰:オッズ比と95%信頼区間 (補完的に他のモデルでも検討) ポワソン回帰 Cox回帰 Intact Survivalをイベント,検診日までの時間を考慮
方法:モデルの変数 施設 新生児合併症 出産後インターベンション 従属変数[アウトカム]:2値(あり/なし) Major Handicap +死亡 打ち切りは「なし」扱い 独立変数: 施設 出生時要因 出生前インターベンション 新生児合併症 出産後インターベンション
独立変数:リスク要因,治療 出生時要因: 母年齢,多胎,性別,出生体重, Light for dates,大奇形 出生前インターベンション: 出産前ステロイド,帝王切開,院外出生,アプガ-5分 新生児合併症: RDS,空気漏出症候群,PPHN, CLD,症候性PDA, 新生児けいれん,IVH(無+1-2,3-4),PVL,HIE, 敗血症,壊死性腸炎,消化管穿孔, 水頭症 出生後インターベンション: 出生蘇生時の挿管, サーファファクタント,HFO,インダシン投与,PDA結紮術,抗菌薬,中心静脈栄養,
結果:施設間差(調整前) N=1397 95% 信頼区間 (上-下) 対数オッズ比 対数 オッズ比 施設
結果:施設間差(調整後) N=1397 施設 対数オッズ比 (出生時要因,出生前インターベンションで調整) 95% 信頼区間 (上-下)
結果:合併症リスク N=353 RDS CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 消化管穿孔 (ロジスティック回帰:変数選択) 合併症 オッズ比 95%信頼区間 P値 RDS 0.28 (0.11 0.65) 0.004 1.69 (0.79 3.78) 0.188 0.18 (0.08 0.36) <.0001 0.35 (0.09 1.45) 0.137 1.53 (0.12 19.43) 0.732 0.40 1.83) 0.233 CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 消化管穿孔
結果:合併症リスク N=353 RDS CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 消化管穿孔 (ポワソン回帰:変数選択) 回帰係数 95%信頼区間 P値 RDS 0.82 (0.27 1.45) 0.003 -0.24 (-0.78 0.25) 0.354 0.74 (0.32 1.15) 0.001 0.68 (-0.23 1.43) 0.134 0.10 (-1.48 1.27) 0.885 0.20 (-0.64 0.94) 0.620 CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 消化管穿孔
結果:合併症リスク N=172 RDS CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 (不安定につき除外) 消化管穿孔 (Cox 回帰:intact survival, 変数選択) 合併症 ハザード比 95%信頼区間 P値 RDS 0.80 (0.56 1.17) 0.251 0.62 (0.39 0.98) 0.038 0.76 1.37) 0.379 0.46 (0.07 1.59) 0.250 1.37 (0.41 3.48) 0.570 CLD(36wk) IVH(3,4) PVL 壊死性腸炎 (不安定につき除外) 消化管穿孔
結果:出生後の治療効果 N=1397 (ロジスティック回帰) 出生後 インターベンション オッズ比 95%信頼区間 P値 出生蘇生時の挿管 95%信頼区間 P値 出生蘇生時の挿管 0.56 (0.36 0.85) 0.006 0.75 (0.51 1.11) 0.157 0.74 (0.50 1.09) 0.130 0.92 (0.63 1.35) 0.658 0.91 (0.47 1.83) 0.792 0.68 (0.44 1.04) 0.081 2.41 (1.64 3.59) <.0001 サーファクタント使用 HFO使用 PDAインダシン投与 PDA結紮術 抗菌薬使用 中心静脈栄養
結果:出生後の治療効果 N=1397 (ポワソン回帰) 出生後 インターベンション 回帰係数 95%信頼区間 P値 出生蘇生時の挿管 95%信頼区間 P値 出生蘇生時の挿管 0.42 0.11 0.74 0.007 0.17 -0.11 0.45 0.243 0.18 -0.09 0.196 0.06 -0.21 0.33 0.650 -0.39 0.56 0.663 0.29 -0.02 0.61 0.063 -0.51 -0.79 -0.24 0.000 サーファクタント使用 HFO使用 PDAインダシン投与 PDA結紮術 抗菌薬使用 中心静脈栄養
結果:出生後の治療効果 N=688 (Cox 回帰:intact survival) 出生後 インターベンション ハザード比 95%信頼区間 95%信頼区間 P値 出生蘇生時の挿管 0.97 (0.79 1.19) 0.798 0.91 (0.75 1.12) 0.379 0.96 (0.77 1.18) 0.684 0.92 1.13) 0.458 0.81 (0.51 1.23) 0.328 0.78 (0.64 0.97) 0.023 1.09 (0.90 1.32) 0.361 サーファクタント使用 HFO使用 PDAインダシン投与 PDA結紮術 抗菌薬使用 中心静脈栄養
限界 フォローアップの問題 フォローアップ率がよくない フォローアップ対象者の偏り フォローアップ率がよくない フォローアップ対象者の偏り 仮定; 打ち切りは Major Handicap +死亡無し の扱い データの欠測 リスク,介入の評価はごく一部の集団での結果でしかない モデルでの変数の問題 妥当な変数がきちんと含まれているか? 治療,合併症は時間前後していれば、片方は「中間変数」 「中間変数」での調整はバイアスを招く
中間変数: 結果の一部であるもの 中間変数 出生時 体重 新生児 死亡 出生前の インター ベンション
結論 出生前,出生時の要因を調整したうえでも,極低出生体重児の生命・長期予後に差がある施設がみられた 出生前,出生時の要因を調整したうえで,生命・長期予後に影響を与えそうな新生児合併症は,RDSとIVHであった 出生前,出生時の要因を調整したうえで, 生命・長期予後に関係がありそうな出生後の治療法は,出生蘇生時の挿管,中心静脈栄養,抗菌薬の使用であった ただし, フォローアップ率の悪さ,データの欠測,調整のモデルの問題から,この結果にはバイアスが含まれる可能性がある 結果は不安定であり,解釈には十分な注意が必要である