重力波天文学に向けた 小型衛星による検証実験

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重力波天文学に向けた 小型衛星による検証実験 イラスト/ KAGAYA 安東 正樹 (東京大学理学系研究科) 川村 静児(国立天文台), 中村 卓史(京大理), 坪野 公夫(東大理), 瀬戸 直樹(Caltech), 長野 重夫(NICT), 田中 貴浩(京大理), 石川 毅彦(JAXA), 植田 憲一(電通大), 武者 満(電通大), 佐藤 孝(新潟大工), 細川 瑞彦(NICT), 森脇 成典 (東大新領域), 高島 健(JAXA-ISAS), 沼田 健司(NASA), 平林 久(JAXA-ISAS), 高野 忠(JAXA-ISAS), 藤本 眞克(国立天文台), 樽家 篤史(東大理), 姫本 宣朗(東大理), 柳 哲文(阪市大理), 中尾 憲一(阪市大理), 原田 知広(京大理), 井岡 邦仁(京大理), 佐合 紀親(阪大理), 疋田 渉(京大基研), 佐藤 修一(国立天文台), 苔山 圭以子(お茶大人間文化), 福嶋 美津広(国立天文台), 國森 裕生(NICT), 山崎 利孝(国立天文台), 大河 正志(新潟大工), 橋本 樹明(JAXA-ISAS), 高橋 忠幸(JAXA-ISAS), 青柳 巧介(早大理工), 我妻 一博(東大宇宙線研), 阿久津 智忠(東大理), 浅田 秀樹(弘前大理工), 麻生 洋一(東大理), 新井 宏二(国立天文台), 新谷 昌人(東大地震研), 池上 健(産総研),  石徹白 晃治(東大理), 市耒 淨與(国立天文台), 伊藤 洋介(Univ. of Wisconsin), 井上 開輝(近大理工), 戎崎 俊一(理研), 江里口 良治(東大総合文化), 大石 奈緒子(国立天文台), 大橋 正健(東大宇宙線研), 大原 謙一(新潟大理), 奥冨 聡(東大宇宙線研), 鎌ヶ迫 将悟(東大宇宙線研), 河島 信樹(近大理工), 川村 麻里(新潟大理), 神田 展行(阪市大理), 雁津 克彦(京大理), 木内 建太(早大理工), 桐原 裕之(東大宇宙線研), 工藤 秀明(東大理), 黒田 和明(東大宇宙線研), 郡 和範(Harvard-Smithsonian Center), 古在 由秀(ぐんま天文台), 小嶌 康史(広島大理), 小林 史歩(Penn. State Univ.), 西條 統之(Observatoire de Paris), 阪上 雅昭(京大総合), 阪田 紫帆里(お茶大人間文化), 佐々木 節(京大基研), 柴田 大(東大総合文化), 真貝 寿明(稲盛財団), 杉山 直(国立天文台), 宗宮 健太郎(AEI), 祖谷 元(早大理工), 高橋 弘毅(阪市大理), 高橋 龍一(国立天文台), 高橋 竜太郎(国立天文台), 田越 秀行(阪大理), 田代 寛之(京大理), 谷口 敬介(Univ. of Illinois at Urbana-Champaign), 千葉 剛(日大文理), 辻川 信二(東大理), 常定 芳基(東工大), 徳成 正雄(東大宇宙線研), 内藤 勲夫(無所属), 中川 憲保(東大宇宙線研), 中野 寛之(阪市大理), 中村 康二(国立天文台), 西澤 篤志(京大総合), 丹羽 佳人(京大総合), 野沢 超越(新潟大理), 端山 和大(国立天文台), 平松 尚志(東大理), 二間瀬 敏史(東北大理), 前田 恵一(早大理工), 松原 英雄(JAXA-ISAS), 水澤 広美(新潟大理), 蓑 泰志(Caltech), 宮川 治(Caltech), 三代木 伸二(東大宇宙線研), 向山 信治(東大理), 森澤 理之(京大基研), 山元 一広(東大宇宙線研), 横山 順一(東大理), 吉田 至順(早大理工), 吉野 泰造(無所属) スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

重力波とその検出 (1) 重力波 (時空のさざなみ) 一般相対性理論, アインシュタイン方程式 波動解 重力波 (時空のさざなみ) 一般相対性理論, アインシュタイン方程式 波動解 (光の速度で伝播する時空の歪み) 連星パルサーの公転周期の観測により存在証明 (重力波放射による連星公転エネルギーの損失を確認) A.Einstein (TAMAプロジェクトパンフレットより)   質量の加速度運動により生成    ( 電磁波:電荷の加速度運動により生成)   強い透過力 (物質との相互作用が小さい)  「重力波天文学」の可能性  電磁波による天文学とは質の異なった情報 天体内部のダイナミックな運動の観測 電磁波では見ることのできない初期宇宙 近星点通過時刻のずれ [s] 時間 [year] スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波) 重力波とその検出 (2) しかし… 効果が非常に小さいため, まだ直接検出はされていない (振幅 h~10-21) 安定な環境・微小検出技術が必要 スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波) 重力波とその検出 (3) 世界の重力波検出器 稼働中の検出器  レーザー干渉計型 : 6台 (4プロジェクト) 共振型検出器 : 4台 Resonant detectors (ITA, USA, SUI) 1990s - LIGO (USA) 4km x 2. 2002- GEO (GER-UK) 600m. 2002- VIRGO (ITA-FRA) 3km. 2004- TAMA (JPN) 300m. 1999- スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波) 重力波天文学へ向けて 重力波天文学にむけて 稼働中の地上重力波検出器 :   我々の銀河, 近傍銀河での連星中性子星合体イベント を検出可能 ただ… そのようなイベントは極めて稀 (10-5 event/yr/gal) 本格的な天文学のためには、 高感度化  より多くの銀河をカバーする   多周波数での観測  さまざまな対象を観測, 定常的な重力波の観測 LIGO(米)     Ad. LIGO 現在 2010 2015 2020 2025 TAMA (日)   LCGT ~10 event/yr  のイベントレート LISA(NASA/ESA) 地上検出器 (10-1kHz) 宇宙検出器 BBO DECIGO 0.1mHz-10mHz 確実な重力波源 0.1Hz帯 宇宙論的な重力波 長基線長がとれる 地球重力場変動の影響がない 宇宙空間での重力波観測のための              最初のステップ 衛星搭載用の   小型重力波検出器の開発 スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波) 宇宙重力波検出器 宇宙での重力波検出 DECIGO    (Deci-hertz Interferometer      Gravitational Wave Observatory)  3台のS/Cで基線長1000kmの干渉計を構成  ターゲット: 0.1Hz 前後の周波数帯   打ち上げ: 2025年頃 LISA  (Laser Interferometer Space Antenna)  3台のS/Cで基線長500万kmの干渉計を構成  ターゲット: 1mHz 前後の周波数帯   ESA/NASA共同プロジェクト   打ち上げ: 2014年以降 Laser Drag-free satellite Arm cavity PD スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波) DECIGO (1) DECIGO road map 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 予備概念設計 R&D・概念設計 高度なR&D・予備設計 最終設計・試験・製作 観測 DECIGO PF-1 設計・試験・製作 観測 PF -1 PF-2 設計・試験・製作 観測 DECIGO PF -2 LISA LPF ESA単独? LISA 遅れる可能性大 BBO 2020-2025目標 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波) 衛星搭載重力波検出器 (1) 衛星搭載用 超小型重力波検出器 (DECIGO-PFのさらに前段階) 試験マスの重力波による差動回転をフォトセンサーによって検出 80mm立方 x 2つのスペースに収める 特徴   実際に宇宙で重力波観測を行なう世界で初めての検出器になる 地面振動の影響を受けないため、低周波数帯の重力波観測が期待できる     (これまで重力波観測が行なわれていない 0.1-1 Hz周波数帯での観測) 目的 宇宙空間での重力波観測とそのデータの解析 宇宙空間でのアンテナ制御技術の検証実験 人工衛星内の振動・温度・磁気環境の計測 一連の計画の遂行に伴う経験と実績の蓄積 スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波) 衛星搭載重力波検出器 (2) 検出器プロトタイプ 重量: 約1kg 外観 内部 80mm 80mm 80mm 設計図 試験マス 外形 : 80mm立方 重量 : 約1kg 材質 : 主にアルミニウム 試験マス: 50x20x20mm アルミニウム製 フォトセンサー 制御用コイル スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波) 衛星搭載重力波検出器 (3) フォトセンサー 試作基板 LEDの光を対象物に当てる  反射光強度から変動量を測定   非接触での高感度測定が可能   表面実装素子を使用  小型化できる LED ~40mm PD Buffer Amp ~60mm 感度の測定 (赤線) 10-9 m/Hz1/2 以下の変位感度が実現されている スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)

スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波) まとめ 重力波天文学にむけて 本格的な天文学のためには、宇宙での観測が不可欠 そのためには、 入念な地上試験 と 宇宙空間での実証試験 が不可欠 小型衛星を利用した実証試験 衛星搭載用の超小型重力波検出器を開発中 技術試験だけではない…. 実際に宇宙で重力波観測を行なう世界で初めての検出器になる   これまで重力波観測が行なわれていない 0.1-1 Hz周波数帯での重力波観測が期待できる 重力波観測以外への発展 安定な宇宙環境 (微小重力, 大気の影響・地面振動が無い) と、 精密計測・制御技術の組み合わせ 基礎物理実験 (重力逆二乗則, 空間の等方性, 等価原理 etc.)  物性計測 (機械的損失・熱振動の測定 etc.), 衛星環境測定など スペースウィーク2006 小型衛星セッション (2006年6月28日 筑波宇宙センター総合開発推進棟, 筑波)