基礎商法2_07 2015/11/18 基礎商法2 第8回.

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基礎商法2_07 2015/11/18 基礎商法2 第8回

本日のお題 運送人の運送品に対する責任 場屋営業者の寄託物等に対する責任

運送営業

運送営業 (一般的な用語としての)運送営業の意義 運送営業の区分 人または物品を場所的に(ある地点から別の地点へ)移動させること 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 運送営業 (一般的な用語としての)運送営業の意義 人または物品を場所的に(ある地点から別の地点へ)移動させること 運送営業の区分 運送対象による区分 旅客運送/物品運送 運送手段による区分 陸上運送/海上運送/航空運送/複合運送 運送領域による区分 国内運送/国際運送 ※わが国においては国際陸上運送は成立しない

物品運送の概要 運送状 荷送人 運送人 荷受人 貨物引換証

商法における運送営業 運送営業=陸上、湖川、港湾における物品・旅客運送を業とする者(商569) 〔留意点〕 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 商法における運送営業 運送営業=陸上、湖川、港湾における物品・旅客運送を業とする者(商569) ※改正中間試案では海上運送、航空運送も対象 〔留意点〕 商法上の運送営業は国内陸上運送(物品、旅客)。ただし旅客運送の規定はほとんどない。国際海上物品運送は国際海上物品運送法が規制 有償・諾成・双務契約 運送契約の法的性質は請負(運送という事実行為の完成の請負) 運送人は自分で運送手段を有する必要はなく、他人を履行補助者として利用することにより運送を引き受ける契約も許される(利用運送契約)

運送契約の成立 運送契約の成立 契約成立時、成立後の行為 運送状の交付(商570) 貨物引換証の交付(商571) 運送契約は諾成契約 →運送品引渡しは効力発生要件ではない 契約成立時、成立後の行為 運送状の交付(商570) ※宅配便の送り状をイメージ。貨物引換証と区別 ※運送状の交付は運送品の引渡し以前でもよい 貨物引換証の交付(商571) ・・・運送品引渡請求権を表章する有価証券 ※貨物引換証は運送品引渡しと同時履行(詳細は次回)

運送人の権利 運送状交付請求権(商570) 運送賃請求権(商512) 運送賃請求権の行使 運送品の滅失と運送賃 立替金償還請求権(商513) 自主学習 運送状交付請求権(商570) 運送賃請求権(商512) 運送賃請求権の行使 運送賃は荷送人負担(契約当事者だから) 運送賃は先払いでも後払いでもよい(成功報酬ではない) ※費用は別に請求できる(商589が準用する商562参照) 運送品を荷受人が受け取った後は荷受人にも運送賃を請求可能(商583Ⅱ) 運送品の滅失と運送賃 ・・・不可抗力による運送品滅失の場合は運送人は運送賃請求不可。収受した運送賃は返還。ただし荷送人に過失があるか、または運送品の性質・瑕疵に起因する滅失の場合は運送賃収受可(商576) 。 立替金償還請求権(商513)

大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 自主学習 運送人の供託・競売権(商585~587) ・・・受領遅滞の場合の売主の権利と同趣旨 運送人は、運送品を①供託、②荷送人に相当の期間を定めて処分についての指図をなすように催告し、なお指示がない場合には競売(商585) ※競売時は荷送人に遅滞なく通知発信 引渡しに争いがある場合(例:荷受人が数量不足を理由に受領拒否)には、①供託、②荷受人に対して相当の期間を定めて受取の催告をし、その後に荷送人に催告を行い、指示がない場合には競売(商586) ※競売の場合は荷送人・荷受人に遅滞なく通知発信 損敗する物については無催告競売可(商524Ⅱ準用) 売得金は運送賃に充当して残額を供託(同Ⅲ準用)

運送人の留置権(商589、562) 要件 効果 債権者が運送人、債務者が運送料等の支払義務者であること 被担保債権が運送賃、荷送人のために行った立替え、前貸金であること ※運賃前払い特約がない限り荷物到着まで被担保債権未発生 債務者が債務を履行していないこと 留置物と債権の間には個別的牽連関係が必要(ただし債務者所有の物である必要はない) 債権者が運送品を占有していること 効果 債権者は運送品を留置可能 ※荷送人が運送賃を負担する場合に、荷受人に対して運送賃の請求ができることにはならない(留置できるだけ) 自主学習

【留置権】 自主学習 運送賃・立替金請求権 請求 荷送人 運送人 荷受人 留置権 留置権

自主学習 その他の権利 運輸の先取特権(民318) 民事留置権(民295) 商人間の留置権(債務者が商人の場合)

運送人の義務 善管注意義務(民400) 貨物引換証交付義務(商571) 荷送人の指示に従う義務(商582) 荷送人、貨物引換証所持人は運送人に対して運送の中止、運送品の返還、その他の処分を請求することができる 上記の場合、運送賃は割合にしたがって請求 荷送人の指図権限は運送品が目的地に到達し荷受人が引渡しを請求した時点で消滅

大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 運送人の責任 総論 運送人は運送品の滅失、毀損、延着について損害賠償責任を負う(債務不履行責任)。ただし運送人側が自己又は履行補助者の無過失を立証する義務を負う 〔留意点〕 高価品免責(商578) 賠償額算定の特則(商580、581)

高価品免責 要件 趣旨 効果 運送品が高価品であること 荷送人が委託時に明告していないこと 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 高価品免責 要件 運送品が高価品であること 荷送人が委託時に明告していないこと 運送人が悪意・重過失で運送品を滅失・毀損したものでないこと(最判S55.3.25百96。ただし581条を根拠とすること(原審)については批判多し) 趣旨  運送人保護規定。高価品と判れば高度の注意を払い、割増運賃を請求したり引受けを拒絶したであろう点に配慮 効果 運送人は賠償責任を負わない(普通品としての責任もない) ※普通品としての賠償額の算定ができないから

高価品=容積・重量の割に著しく高価な物品 明告 研磨機は該当せず、新聞原稿は該当する 明告 明告は運送契約成立時までに行う必要がある 明告の内容=種類と価額 明告がなくても運送人が高価品であることについて悪意・重過失の場合は高価品免責は適用がない 不法行為責任への適用 前提として請求権競合論 判例は請求権競合説に立ち、不法行為への責任制限規定適用を否定(ただし過失相殺で処理) 学説は不法行為責任への責任制限規定の(類推)適用を肯定。根拠は国際海上物品運送20の2Ⅰ ※改正中間試案は不法行為責任制限を明確化

約款との関係 約款による免責・責任制限は公序良俗や消費者契約法に反しない限り認められる 約款が運送品について賠償額の上限を定めている場合には約款優先で限度額までは賠償される(運送人は上限までの賠償リスクを折り込んで運賃設定をしているはず) 約款の免責規定が不法行為にも適用されるかどうかについては、判例は肯定(最判H10.4.30判時1646-162百-99)。ただし運送人に悪意・重過失がある場合には(商578と同様に)免責を認めない。 ※不法行為を含めた免責規定自体は約定可能。意思解釈の問題。 事情によっては非契約当事者(たとえば荷受人)も約款の免責規定を超えた賠償請求を信義則違反で否定される(前掲、最判H10.4.30)

損害賠償額の算定(商580,581) 趣旨 要件 効果 運送人の損害賠償額の算定の特則(定型化)。運送人保護規定 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 損害賠償額の算定(商580,581) 趣旨 運送人の損害賠償額の算定の特則(定型化)。運送人保護規定 要件 運送品が滅失・毀損・延着したこと 運送人が悪意・重過失で滅失・毀損・延着させたものでないこと ※「悪意・重過失」は滅失・毀損を知っているかどうかではない 効果 全部滅失・延着の場合は引き渡すべき日の到達地の価格 一部滅失・毀損の場合は引渡日の到達地の価格

留意点 推定規定ではないので、「実損額>算定額」でも「実損額<算定額」でも算定額を用いる 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 留意点 推定規定ではないので、「実損額>算定額」でも「実損額<算定額」でも算定額を用いる ただし、まったく損害が生じていない場合(単に荷送人、荷受人に損害がないだけでなく、第三者との関係でも損害が生じていないことが必要)には賠償額は0(最判S53.4.20百-95) 損益相殺は認められる(580Ⅲ) 悪意・重過失の場合には実損填補になるが、「580条の算定額>実損額」となる場合は、580条の算定額を用いる(悪意の運送人の保護は不要だから) 履行補助者に悪意・重過失がある場合も本条の適用がある(最判S55.3.25百選96事件) 581条は580条の特則だが、578条の特則ではない(通説)

大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 約款による責任制限 総説 商法の運送人の損害賠償規定は任意規定であり、別途損害賠償についての約定は可能。問題はどの範囲の約定を有効とみるか 損害賠償額の制限 普通品・高価品いずれについても、損害賠償額の上限を定めることは可能(ドイツ商法は明文で制限を認める) ただし、荷送人等が消費者である場合には消費者契約法の規定による制約がある

免責条項 ヒマラヤ条項 運送人を一律に免責する条項の効力については、民法90条等によって判断(諸外国でも対応は分かれる) 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 免責条項 運送人を一律に免責する条項の効力については、民法90条等によって判断(諸外国でも対応は分かれる) 特に問題になるのは「保険利益享受約款」(運送品にかけられた保険金の範囲で運送人を免責する)の有効性。 ※国際海上物品運送法は明文で禁止。国内陸上運送については、判例は契約の意思解釈として、荷主が損害賠償請求権を放棄するのは経験則上異例であるとして、保険金額を超える部分の損害賠償請求権の放棄の趣旨の条項と解する。学説からは批判が多い。 ヒマラヤ条項 運送人の使用人、履行補助者の賠償責任を運送人と同じ範囲に制限する約定 ⇒多くの運送契約(基本的には国際海上運送)で用いられている ※改正中間試案では、悪意・重過失がない限り、履行補助者の不法行為責任も制限

責任の消滅 総論 責任の特別消滅 趣旨 要件 責任の特別消滅(商588) 責任の短期消滅時効(商589,566) 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 責任の消滅 総論 責任の特別消滅(商588) 責任の短期消滅時効(商589,566) 責任の特別消滅 趣旨 運送人保護。運送人に証拠保全の機会が失われるから 要件 (通常)荷受人が留保なく運送品受取り+運送費用等支払 (直ちに発見することができない一部滅失・毀損のある場合)に引渡後2週間以内に通知が発せられない 運送人に悪意がない

要件の検討 運送品の受取りが要件であるから、全部滅失の場合には適用がない 「留保ヲ為サズ」=荷受人が、一部滅失、毀損について概要を運送人に知らせないこと ※本条も受取時の検査が前提 運送品に直ちに発見できない瑕疵があった場合、引渡日から2週間以内に通知を発しなければならない(商526条対照) 運送人の悪意(2項)は、判例によれば、運送人が運送品に一部滅失・毀損があることを知りながら引き渡すことを言う(最判S41.12.20百-90)。通説は運送品の滅失・毀損を悪意で生じさせたか悪意で滅失・毀損を隠蔽した場合と解する。 ※判例・通説は立場は違うが特別消滅と短期消滅時効の「悪意」は共通と考えるが、588条は判例、566条は学説という有力説有り。

責任の短期消滅時効(商589,566) 趣旨 要件 「悪意」の意味 運送人保護。法律関係の早期解決 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 責任の短期消滅時効(商589,566) 趣旨 運送人保護。法律関係の早期解決 要件 運送品受取(全部滅失の場合は引渡予定日)から1年経過 運送人に悪意がない 「悪意」の意味 判例は滅失・毀損の認識があることが悪意とする(最判S41.12.20百-90事件)。多数説は、故意に滅失・毀損を惹起したか悪意で隠蔽した場合とする。有力説は特別消滅では判例の立場に立ち、短期消滅時効の場面では多数説に同調する。

荷受人の地位 荷受人は運送品の到達後は荷送人の権利を取得し、受取後は運送賃等の支払義務を負う(商583) 趣旨 荷送人の地位の変化 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 荷受人の地位 荷受人は運送品の到達後は荷送人の権利を取得し、受取後は運送賃等の支払義務を負う(商583) 趣旨 荷受人の引渡請求権の根拠。法定の特別な権利と解する見解と、第三者のためにする契約を理由とする見解がある 荷送人の地位の変化 運送品到達時点では、荷送人の権利は消滅しない(荷送人と同一の権利が荷受人にも発生する) 荷受人が引渡請求をした時点で荷送人の権利は消滅する(商582Ⅱ)

相次運送 A B C C A B A B C A B C A B C 荷送人 下請運送 荷送人 部分運送 共同運送 連帯運送 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 相次運送 荷送人 A B C C A B 下請運送 荷送人 A B C 部分運送 A B C 共同運送 A B C 連帯運送

相次運送人の責任(商579) 趣旨 留意点 連帯運送(狭義の相次運送)人につき損害賠償責任の連帯を定める 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 相次運送人の責任(商579) 趣旨 連帯運送(狭義の相次運送)人につき損害賠償責任の連帯を定める ※商563の「数人相次テ」は、下請運送、部分運送、共同運送も含む 留意点 相次運送人は全区間について連帯して損害賠償責任を負う。ただし特約で排除可。

旅客運送人の責任 趣旨 規定 旅客運送人に特有の責任についての規定。 損害賠償責任(商590) 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 旅客運送人の責任 趣旨 旅客運送人に特有の責任についての規定。 規定 損害賠償責任(商590) 責任原因は物品運送と同じ。ただし損害算定において「被害者及び其(の)家族の状況を斟酌すること」ができるとする ※改正中間試案では、①片面的強行規定化(旅客に不利な特約の禁止)の提案があるほか、②損害賠償額の算定の特則(本条2項)は削除予定

託送手荷物(チッキ)についての責任 手回り品についての責任 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 託送手荷物(チッキ)についての責任 旅客から引渡しを受けた旅客の手荷物については、無償であっても物品運送人としての責任を負う 手荷物到達後1週間内に旅客の引渡請求がなければ供託・競売可(商524準用) 手回り品についての責任 本来責任はない(寄託されていない)はずだが、特別な法定責任が課されている。 ※改正中間試案では、①手回り品のほか身回り品についても同様の規制が及ぶこととされたほか、損害算定についての特則等について物品運送の規定を準用

場屋営業者の責任

大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 寄託を受けた商人の責任 商人が営業の範囲内で寄託を受けた場合には善管注意義務を負う(商593) ⇒無償寄託でも寄託物に対する善管注意義務が発生する(営業自体が有償行為だから)

場屋営業者の責任(商594) 場屋営業者(場屋の主人) 意義 場屋取引 場屋営業者=場屋取引を業とする者 ・・・多数の人が来集するのに適した人的・物的設備を備えて、客の需要に応じて設備を利用させる取引 旅館(ホテル)、食堂、映画館、ボウリング場等。床屋については判例は否定(設備は床屋が利用)、学説は肯定。

客 荷物の区別 客=設備の利用者。ただし利用契約の成立は不要 〔例〕 ホテルの宿泊客 ホテルの宿泊客とロビーで待ち合わせている者 ロビーで時間を潰している者 ※ガソリンスタンドで給油後数時間駐車していた車の運転者は客ではない(東京高判H14.5.29) 荷物の区別 寄託物(594Ⅰ) 携帯品(同Ⅱ)

寄託物に対する責任 趣旨 要件 効果 レセプトゥム責任(ローマ時代の旅店の責任) 客が場屋の主人に物品を寄託 寄託物が滅失・毀損 原因が不可抗力ではない(不可抗力を場屋営業者が立証できない) 高価品免責が適用されない 効果 場屋営業者は損害賠償責任を負う

要件の検討 「寄託」 不可抗力 ・・・寄託 =受託者が物品を自己の支配下に置くこと(≠ 保管場所の提供) →コインロッカー、ホテルの客室のセーフティボックス、管理のない駐車場の利用は「寄託」ではない 不可抗力 主観説 事業の性質に従い最大の注意を払っても避けがたい場合 〔批判〕無過失とかわらない 客観説 外部的事象で通常その発生を予測できないもの 〔批判〕経済的合理性を全く無視している 折衷説 外部的事象で通常必要とされる予防方法を講じても防ぎえないもの ※内部的要因(従業員の横領等)については、予防方法の如何にかかわらず常に不可抗力には当たらない

高価品免責(商595) 趣旨 場屋営業者保護。運送人の高価品免責と同じ。 留意点 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 高価品免責(商595) 趣旨 場屋営業者保護。運送人の高価品免責と同じ。 留意点 高価品・明告の意義は運送人(商578)と同じ、不法行為責任への適用についても同様 明文規定はないが、場屋営業者が悪意・重過失で目的物を滅失・毀損した場合は免責されない(最判H15.2.28百選(5版)108事件) →この点でも運送人と同じ 客の携帯品(商594Ⅱ)には適用がない(そもそも携帯品については明告のしようがない)

携帯品に関する責任(594条2項3項) 要件 効果 検討 客の携行品を 場屋営業者が不注意で滅失・毀損 場屋営業者に損害賠償責任 携帯品=場屋営業者に寄託しなかった物品 不注意=注意義務違反 携帯品につき責任を負わない旨の告知は効果がない(商594Ⅲ)。ただし免責の特約を別途締結することは妨げられない

責任の短期消滅事項(商596) 商法566条の短期消滅時効と同じ。場屋営業者の「悪意」について議論がある点も同様 大宮法科大学院大学課外講座 2017/3/19 責任の短期消滅事項(商596) 商法566条の短期消滅時効と同じ。場屋営業者の「悪意」について議論がある点も同様