次世代システムLSIのシステムデザイン・システムインテグレーション(SDSI)手法に関する研究 2009/2/3 大阪大学 村田秀則 岩田剛治 多屋淳志 佐藤了平 森永英二 岡本和也 工藤啓治 東京大学 青山和浩 古賀毅
システムデザイン ・インテグレーション手法の背景 経済成長率 世界の人口・GDP 破壊的イノベーション 開業率 イノベーション
システムデザイン ・インテグレーション(SDSI)手法 設 計 ・大規模化( 回路・構成要素・・・) ・複雑化( 多機能・多用途・・・) ・短期間化 ・創造性 製品 企画 評価・ 試作 生産 【従来】 概念設計 詳細設計 生産設計 製品 企画 設 計 生産 概念設計 詳細設計 生産設計 評価・試作 【現在】 設計・生産 期間短縮 製品企画 ・ デ ザ イ ン ラ フ シ ス テ ム 設計 評価 試作 生産 【将来】 (目標) ハイコストパフォーマンス 次世代デスプレイ 現行デスプレイ 従来の設計は概念設計から詳細設計、生産設計まで直列に実行されてきた。しかし、設計の短期間化が求められるようになり各設計段階は、一部並列化されて設計されるようになっている。しかし、今後、設計対象となるシステムの大規模化、複雑化が進展し設計がより困難に、設計の後戻りによる影響が甚大になるにつれて、設計初期段階でのラフデザインを行うことが重要になる。しかし、全体を見通した設計が困難になっており、設計初期段階からこれを行う手法は確立されていない。そのため、これを行うための手法としてシステムデザイン・インテグレーション手法が必要になると考える。 現行SoC 図 (システムLSI) 次世代3DLSI 出力イメージ図
SDSI手法の課題 現状 課題 目的 システムデザインを行うために、現在は システムズ・エンジニアリング、システム工学の手法 (SysML, UML, DSM など)が用いられている。 課題 現在のシステムズ・エンジニアリングの手法などは、 個別に用いられ、システム設計全体を見通しながら、 設計を行うためには統合・連携することが必要 目的 これらを統合し、コンピュータ上で短期間で パラメトリックに扱うためのフレームワークの構築
SDSIフレームワークの構築 工程情報: 製品情報: システムの工程情報・ システムの形・機能・性能 設計・製造等の 等の製品情報を扱う技術 工程を扱う技術 対象軸:何を扱うかで分類
SDSIフレームワークの構築 実行・処理: 実行・処理する機能が 主である技術 記述・分析: 記述・分析する機能が 主である技術 機能軸: 何をするかで分類
SDSIフレームワークの構築 時間軸: 設計の粒度で分類
SDSIフレームワークの構築 製品情報 実行・処理 工程情報 実行・処理 対象軸 製品情報 記述・分析 工程情報 記述・分析 機能軸 製品機能・性能評価: システムを部品として管理し、 機能と性能を定量的に 計算・評価する 解の自動探索・最適化: 計算・評価された製品情報・ 性能を、整理された工程情報を 基に統合、設計手順を構築し、 設計解の探索を行う 対象軸 製品情報 記述・分析 工程情報 記述・分析 システムプロファイルの定義: 製品システムの定義・記述・ 分析を行い、設計タスクの 抽出を行う 設計工程情報の記述・整理: システムの設計を行う際に 必要となる設計の順序を 適切に整理・再構成する 機能軸
SDSIフレームワークの構築 製品情報 実行・処理 工程情報 実行・処理 Excel、CAD、FEMソフト等 FIPER等 対象軸 時間軸 記述・分析 工程情報 記述・分析 SysML、UML等 DSM等 機能軸
SDSI-Cubicの提案 個別に用いられてきたシステムデザイン手法を統合し、 システムの設計工程の全体を見通しながら、 このような現状に対し、システムデザイン・インテグレーション手法の構築が必要である。これに対し、本研究では、システム全体を見通しながら、その最適解をに導出することを可能とするSDSI-Cubic(System Design System Integration- Cubic)と呼ぶワークフレーム構築しこれを提案します。このフレームワークは、従来のシステムデザイン手法では個別に用いられてきた、各設計手法を機能軸、対象軸、時間軸で整理し、システムデザインを時間で繰り返される4つの特徴面を有するモデルであり、システムデザイン・インテグレーション手法のフレームワークであるとした。 個別に用いられてきたシステムデザイン手法を統合し、 システムの設計工程の全体を見通しながら、 最適解を導出することを可能とするSDSIのフレームワーク
SDSI-Cubic –SDSI手法のフレームワーク– 製品プロファイルを定義する面 評価関数や解析を用いて機能・性能を評価する面 設計工程に順位付けをし、その適正化を行う面 2と3から適切な設計解の探索を自動で実行する面 設計仕様を入力する面とフレームワーク内で導出された適正構成を出力する面の2面を持つ。その他の、4面がSDSIの特徴面の4面となる。1つ目の面として、製品ライフサイクル・プロファイルを記述し、関連性を分析する製品プロファイル定義の面。2つ目の面として、製品の形状作成、機能・性能のパラメトリックな評価を実行する、製品機能・性能評価の面。3つ目に、設計の後戻りなどの設計負荷が小さくなるようにプロセスを再構築するデータフロー構造の面。最後の4つ目に、2と3で得られた結果から、適切なワークフローを構築し、自動的にパラメータスタディを実行し、より良い設計解を探索する、プロセス自動化・解探索の面。以上の4面に加え、入出力の2面を加えた6面により形成されるキュービックモデルをSDSI-Cubicと呼び、提案する。これを、システムLSIを対象としたシステムデザインのラフデザインに適用し、その可能性の検討を行った。その結果とともに、各面の手法に関して次から述べていく。
設計対象:次世代携帯電話用システムLSI 設計対象と入力 設計対象:次世代携帯電話用システムLSI 構成はロジック(汎用処理回路、 キャッシュ)、メインメモリ、基板 SoCか3D-SiPを設計初期段階で 決定することを目的 ・3D-SiP化の影響として、内部配線 の外部配線化、チップ分割を考慮 目的関数 設計変数 はじめに、 パラメトリックに評価可能 評価に処理速度、消費電力、コストを考慮 テクノロジーノード 信号ピン数 メモリチップ分割数 消費電力・コスト 処理速度 SDSI-C=
製品プロファイル定義 製品プロファイル定義 システムをもの、機能(属性)、属性間の関連(制約) に分解して記述 ものの定義 属性の定義 制約の定義
製品機能・性能評価 製品機能・性能評価 システムプロファイルで定義された制約をエクセルファイルに実装することで目的関数の値を導出 またCADで最適解の構成を図示
データフロー構造 DSMを用いた設計プロセスの適正化 ①テクノロジーノード 設計 ② キャッシュ メモリ設計 ③ 汎用演算 回路設計 ⑤ I/O モジュール ④ メモリチップ ⑥ 実装設計
プロセス自動化・解の探索 自動化・最適化 製品機能・性能評価により得られたエクセルファイルと、 データフロー構造により得られたプロセスのフローにより、 自動化のためのワークフローを構築 ワークフロー 目的関数:SDSI-Cの最大化 汎用処理回路 設計 テクノロジーノード 設計 I/O モジュール 設計 メインメモリチップ 設計 実装 設計 キャッシュメモリ 設計 設計変数 最適化方法 チップ分割数: 0 (=DRAM Mixed SoC), 1, 2, 4, 8, 16 テクノロジーノード: 90 nm, 65 nm, 45 nm 全数探索: 探索数が少なく、1回のフローに かかる時間も短いため I/O信号ピン数: 64, 128, 256, 512, 1024, 2048
テクノロジーノード:45nm、メモリチップ分割数:8枚、 I/O信号ピン数:256本のときに評価指標SDSI-Cが最大となる 出力結果 SDSI-Cを用いて予測された3D-SiPの適正構成(CAD) テクノロジーノード:45nm メモリチップ分割数: 8枚 I/O信号ピン数: 256本 目的関数 消費電力・コスト 処理速度 SDSI-C= 設計変数 ・テクノロジーノード: 90 nm、65 nm、45 nm ・チップ分割数: 0 (=DRAM Mixed SoC), 1, 2, 4, 8, 16 ・I/O信号ピン数: 64、128、256、512、1024、2048 テクノロジーノード:45nm、メモリチップ分割数:8枚、 I/O信号ピン数:256本のときに評価指標SDSI-Cが最大となる
結言 大規模システムを最適設計するための設計フレームワークであるSDSI-Cubicのケーススタディとして携帯電話用次世代システムLSIを対象とした適正構成の導出を行い、以下の結論を得た。 大規模システムを最適設計するSDSI-Cubicが、携帯電話用次世代システムLSIの概念設計段階に対して適用できることを確認した。 SDSI-Cubicのケーススタディとして次世代システムLSIの適正構成の導出を行った結果、テクノロジーノード45nm、メモリチップ分割数8、信号ピン数256が適正構成であることを明らかにした。 今後はSDSI-Cubicの第1面から第6面までの一連の作業の自動化への展開が課題である。 高度情報化社会のコアとなる携帯電話用のシステムLSIを対象に、SDSI-Cubicに基づいて機能面から推定される適正構成の導出を行った。その際、システムLSIの適正構成を導出するために、システム評価指標としてSDSI-Cを提案し、これをパラメトリックに評価する体系を構築した。その結果、適正構成を導出することができSDSI-Cubicを実行することによって、大きな価値を生み出すシステムの最適解をシステマティックに導出できる可能性を見出した。
人 GDP/人 口 (億) (千$) 現在 100 1.4倍 (約92億人) 25 80 (約66億人) 60 約22.4千$ 3.4倍 6.5千$ 約22.4千$ 3.4倍 約10.4千$ 約16.4千$ 2.5倍 1.6倍 日本 (GDP/人) 世界 40 20 人 口 GDP/人 20 ~ 18 15 14 (億) 10 10 6 (千$) 2 ~ 日本(1億人) 5 1 0.5 1950 2000 2050 2100 年
成長率の変化 開業率(Nb) (%) 5 4 3 2 1 (ΔY) (%) -1 -2 日本 -3 5 10 15 (90年代ー 80年代) アイルランド 3 2 ノルウェー ギリシャ 1 (ΔY) (%) 90年代=80年代 成長率変化幅 オランダ オーストリア アメリカ (90年代ー 80年代) フランス スウェーデン ドイツ -1 イタリア デンマーク イギリス スイス フィンランド -2 ポルトガル スペイン 日本 -3 5 10 15 開業率(Nb) (%)
高度経済成長期 安定成長期 バブル崩壊以後 600 30 (%) 25 500 20 400 15 300 10 200 5 100 -5 505.4 25 500 495.7 502.8 名目GDP成長率・実質GDP成長率 450.0 20.0 20 400 名目GDP 15.7 15 13.3 327.4 300 12.0 11.4 11.1 246.3 10 10.0 8.5 8.2 9.0 200 6.7 6.0 6.2 5 152.4 4.5 3.2 2.4 2.8 4.0 100 2.6 1.8 75.3 1.8 1.2 33.8 8.6 16.7 -5 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1900 1995 2000 2005 (年度)
性 能 時 間 持続的技術進歩 持続的 イノベーション事業 ユーザのニーズ (潜在的なものを含む) 破壊的 イノベーション事業 垂直統合型事業有利 グレーゾーン 水平分業化 CP向上 CP向上 持続的 イノベーション事業 オーバー スペック ユーザのニーズ (潜在的なものを含む) 性 能 破壊的 イノベーション事業 イノベーション 破壊的 性能 Gap 垂直統合型事業有利 グレーゾーン 水平分業化 産学連携の寄与 (大学の自由・独創的発想が必要) 時 間