前回の内容 結晶工学特論 第4回目 格子欠陥 ミラー指数 3次元成長 積層欠陥 転位(刃状転位、らせん転位、バーガーズベクトル)

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前回の内容 結晶工学特論 第4回目 格子欠陥 ミラー指数 3次元成長 積層欠陥 転位(刃状転位、らせん転位、バーガーズベクトル) 結晶工学特論  第4回目 前回の内容 格子欠陥 3次元成長 積層欠陥 転位(刃状転位、らせん転位、バーガーズベクトル)  ミラー指数 結晶面の指数 括弧の定義 六方晶の場合

今日の内容 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球 構造因子

結晶の構造を調べる(評価する)一般的な方法 結晶の構造、とくに原子の配列を調べたい! でも ・・・ 肉眼では原子は見えない 光学顕微鏡でも倍率、分解能が足りない 光(可視光) ・・・ 4000Å~7500Å 原子の間隔 ・・・ 数Å ショベルカーで食塩を1粒つかむようなもの 原子の間隔(格子定数)以下のプローブを使う必要がある X線回折 電子線回折 電子顕微鏡

n:0,1,2,3,・・・ Braggの式 q q a 等位相面 原子面の間隔によって生じる入射波と反射波の行路差 これが波長の整数倍であれば、各原子面からの散乱波の位相が等しい n:0,1,2,3,・・・

1次元の原子列からの回折(Laue関数) a . N 個の原子列 位相差 散乱強度は q q f 2f 3f (n-1)f Laue関数 q q f a 2f 3f . (n-1)f Laue関数 N 個の原子列 原子間隔  a

Laue関数のグラフ X線回折スペクトルに現れた干渉縞 x=0付近拡大

Laue関数とBraggの式 Laue関数 Braggの式 分母がゼロ(主極大) 分子が極大(副極大) 格子間隔(a)がわかる 結晶の大きさ(Na)がわかる

結晶は3次元的に周期性をもつ

周期性 例えば、T = 20 msec f = 50 Hz きれいな正弦波でない場合 高調波を含む 高次の成分の発生

結晶では何が周期的か? 電気信号 時間的な変化 周波数 結晶 空間的な変化 逆格子 結晶は3次元 周期 すべて ベクトル 逆格子の定義は? 電圧、電流 時間的な変化        周波数 結晶 原子の並び方、電荷密度、 電子密度、磁気モーメント密度 空間的な変化        逆格子 結晶は3次元  周期           すべて ベクトル 逆格子の定義は?

逆格子の定義 結晶が存在する時点で逆格子も定義可能 結晶の方向を固定した時点で逆格子の方向も決定 3次元なので逆格子も3つの独立なベクトルで表す    逆格子ベクトル 次元(dimension)は 1/長さ f = 1/T , w =2p/T ~ [Hz] = [1/s] ( T ~ [s] ) 結晶が存在する時点で逆格子も定義可能 結晶の方向を固定した時点で逆格子の方向も決定

単純立方格子の逆格子

六方単純格子の逆格子

六方格子の逆格子(c軸方向から見ると) 120° 60°

3次元結晶のフーリエ級数展開 3次元の場合 1次元の場合

結晶による波の回折 位相差    ただし dV q1 r q2 k k’ Φ O 散乱強度(観測できるのは )

入射電子線と反射電子線の波数ベクトルの差が逆格子ベクトルと等しい 散乱波の強度 F ≠ 0 とならないためには 積分が r にかかわらず定数 入射電子線と反射電子線の波数ベクトルの差が逆格子ベクトルと等しい

Ewald球 k’ 2q G k 2q Ewald球による回折点の決定 結晶を置く方位を決める 実格子に対応する逆格子を描く 適当な逆格子点を原点に定める 入射電子線の波長、入射方向を決める 逆格子の原点が入射電子線の波数ベクトルk の終点となるようにk を描く k の始点を中心とする球を描く(Ewald球) Ewald球面上にある逆格子が観測可能な回折点 k’ 2q G k 反射電子線 k’ 2q 入射電子線 k

Ewald球の半径が逆格子ベクトルより小さいと・・・ 測定したい結晶の格子定数以下の波長を選ばないとダメ Braggの式ではどういう意味?

Ewald球の半径が逆格子ベクトルより十分大きいと・・・ k 検出できる回折点(逆格子ベクトル)は G ⊥ k   (G・k = 0)

Ewald球とブラッグの式 k’ q q G 2q a k Ewald球による説明 Braggの式の場合の説明 より、

構造因子(G=Dkのときの散乱波の強度) ただし、 N:単位格子の数 SG:構造因子 原子形状因子

構造因子は逆格子点の強度を表す 散乱波の強度 散乱強度 F 単位格子の数×構造因子 構造因子 SG 単位格子に含まれる原子(電子密度)のフーリエ変換 原子形状因子 fj 各原子がどれだけ波を散乱するか 構造因子は逆格子点の強度を表す

構造因子の計算方法 逆格子ベクトル j番目の原子の位置 より

構造因子の計算例(単純立方格子) 頂点(8個) rj = (0, 0, 0), (a, 0, 0), (0, a, 0), (0, 0, a), (0, a, a), (a,0, a), (a, a,0), (a, a, a) 逆格子 b1 = 2p(1/a, 0, 0), b2 = 2p(0, 1/a, 0), b3 = 2p(0, 0, 1/a) 頂点の原子は8個の単位格子で共有されているので、1つのセルへの寄与は 1/8 と考えてもよいし 単位格子に含まれる原子の総数は 1/8×8 = 1 なので、原点の原子を代表として と考えてもよい

構造因子の計算例(面心立方格子) 頂点(8個) rj = (0, 0, 0), (a, 0, 0), (0, a, 0), (0, 0, a), (0, a, a), (a, 0, a), (a, a, 0), (a, a, a) ( j=1~8 ) 面心(6個) rj = (a/2, a/2, 0), (a/2, 0, a/2), (0, a/2, a/2), (a/2, a/2, a), (a/2, a, a/2), (a, a/2, a/2) ( j=9~14 ) 逆格子 b1 = 2p(1/a, 0, 0), b2 = 2p(0, 1/a, 0), b3 = 2p(0, 0, 1/a) 頂点8個は1/8の寄与、面心6個は1/2の寄与なので と考えてもよいし 頂点で1個(原点)、面心3個( rj = (a/2, a/2, 0), (a/2, 0, a/2), (0, a/2, a/2) )として

散乱因子の計算例(閃亜鉛鉱構造) 頂点(8個) rj = (0, 0, 0), (a, 0, 0), (0, a, 0), (0, 0, a), (0, a, a), (a, 0, a), (a, a, 0), (a, a, a) ( j=1~8 ) 面心(6個) rj = (a/2, a/2, 0), (a/2, 0, a/2), (0, a/2, a/2), (a/2, a/2, a), (a/2, a, a/2), (a, a/2, a/2) ( j=9~14 ) 内部(4個) rj = (a/4, a/4, a/4), (3a/4, 3a/4, a/4), (3a/4, a/4, 3a/4), (a/4, 3a/4, 3a/4) ( j=15~18 )

消滅則 v1, v2, v3:全て奇数か全て偶数でないとSG=0 <100>方向 面心立方格子の場合 位相差 この方向から見た図 (001)面同士で位相差が2pになるとき 位相差 この方向から見た図 <100>方向

(111)や(113)とは? (111)面 (113)面 この方向から見た図 <110>方向

今日の内容 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球 構造因子と原子形状因子 でのみ回折波が観測可能 Ewald球 構造因子と原子形状因子   構造因子は逆格子点の強度、消滅則