Probabilistic method 輪講 第7回

Slides:



Advertisements
Similar presentations
北海道大学 Hokkaido University 1 情報理論 講義資料 2016/06/22 情報エレクトロニクス学科共通科目・2年次・第 1 学期〔必修 科目〕 講義「情報理論」第 5 回 第 3 章 情報源のモデル [ 後半 ] 3.5 情報源のエントロピー.
Advertisements

Probabilistic Method 7.7
第1回 確率変数、確率分布 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
疫学概論 ポアソン分布 Lesson 9.頻度と分布 §C. ポアソン分布 S.Harano,MD,PhD,MPH.
3.2.3~3.3 D3 川原 純.
第6章 数え上げ理論と確率 B4 酒井 隆行.
    有限幾何学        第8回.
第5回 ディジタル回路内の数値表現 瀬戸 ディジタル回路内部で,数を表現する方法(2進数)を学ぶ 10進数⇔2進数⇔16進数の変換ができる
Generating Functions (前半) B4 堺谷光.
Extremal Combinatorics 14.1 ~ 14.2
    有限幾何学        第5回.
Probabilistic Method.
Extremal Combinatrics Chapter 4
Approximation of k-Set Cover by Semi-Local Optimization
一般化マクマホン立方体パズルの 問題例生成
    有限幾何学        第12回.
Designs M1 後藤 順一.
論理式の表現を数学的に取り扱いやすくするために代数学の助けを借りる.
Natural Semantics 実行過程の、最初と最後の状態(state)の関係を考える。
Semantics with Applications
応用統計学の内容 推測統計学(inferential statistics)   連続型の確率分布   標本分布   統計推定   統計的検定.
Probabilistic Method 6-3,4
A path to combinatorics 第6章前半(最初-Ex6.5)
透視投影(中心射影)とは  ○ 3次元空間上の点を2次元平面へ投影する方法の一つ  ○ 投影方法   1.投影中心を定義する   2.投影平面を定義する
8.Intersecting Families
5.5 The Linear Arboricity of Graphs (グラフの線形樹化数)
計算量理論輪講 岩間研究室 照山順一.
A First Course in Combinatorial Optimization Chapter 3(前半)
第2章 「有限オートマトン」.
シャノンのスイッチングゲームにおけるペアリング戦略について
第25章 単一始点最短路 3節 Bellman-Fordのアルゴリズム
確率・統計Ⅰ 第3回 確率変数の独立性 / 確率変数の平均 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均
形式言語の理論 5. 文脈依存言語.
確率論の基礎 「ロジスティクス工学」 第3章 鞭効果 第4章 確率的在庫モデル 補助資料
Probabilistic Method 2007/11/02 岩間研究室M1 市場孝之.
7.4 Two General Settings D3 杉原堅也.
【第二講義】1次元非線形写像の不変集合とエントロピー
Basic Tools B4  八田 直樹.
1.標本平均の特性値 2.母分散既知の標本平均の分布 3.大数法則と中心極限定理
計算量理論 1. マトロイドと貪欲アルゴリズム 1. Matroids and the Greedy Algorithm
東北大学 大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 田中 和之(Kazuyuki Tanaka)
Extractor D3 川原 純.
25. Randomized Algorithms
Selfish Routing and the Price of Anarchy 4.3
b f c a d e g h a b c d e f g 図1 図2 2012年度 有限幾何学 期末試験
計算量理論輪講 chap5-3 M1 高井唯史.
A First Course in Combinatorial Optimization Chapter
Additive Combinatrics 7
ボルツマンマシンの定義 ボルツマンマシン(Boltzmann machine)は、スピン・システムをヒントに作られたモデルである。
SUNFLOWER B4 岡田翔太.
A path to combinatorics 第3章後半(Ex3.8-最後)
14. The Basic Method M1 太田圭亮 14.3 Spaces of polynomials
4. システムの安定性.
計算の理論 I 決定性有限オートマトン(DFA) と 非決定性有限オートマトン(NFA)
    有限幾何学        第5回.
5.3, 5.4 D2 岡本 和也.
疫学概論 ポアソン分布 Lesson 9.頻度と分布 §C. ポアソン分布 S.Harano,MD,PhD,MPH.
Max Cut and the Smallest Eigenvalue 論文紹介
解析学 ー第9〜10回ー 2019/5/12.
``Exponentiated Gradient Algorithms for Log-Linear Structured Prediction’’ A.Globerson, T.Y.Koo, X.Carreras, M.Collins を読んで 渡辺一帆(東大・新領域)
7.8 Kim-Vu Polynomial Concentration
Additive Combinatorics輪講 6章
4.プッシュダウンオートマトンと 文脈自由文法の等価性
2017年度 有限幾何学 期末試験 注意:ループと多重辺がないグラフのみを扱う. 問1 次の定理と,その証明の概略を読み,各問に答えよ.
Chapter5 Systems of Distinct Representatives
計算の理論 I 反復補題 火曜3校時 大月 美佳 平成16年7月13日 佐賀大学知能情報システム学科.
図2 x11 図1 x6 x10 x12 x3 x5 x7 x9 x13 x2 x4 x8 x14 (0,0) (1,0) x1 x15
数理論理学 最終回 茨城大学工学部情報工学科 佐々木 稔.
グラフの帯域幅連続多重彩色 を求めるアルゴリズム (Bandwidth Consective Multicolorings of Graphs) 西関研究室 西川和秀.
Time Reversal E-Text: pp.80-83(PDF: pp.49-50) FM08002 太神 諭
Presentation transcript:

Probabilistic method 輪講 第7回 2007年7月4日(水) 岩間研究室 M2 門下 雅一

5章 The Local Lemma 1節 The Lemma 2節 Property B and Multicolored Set of Real Numbers 3節 Lower Bonds for Ramsey Numbers 4節 A Geometric Result 5節 The Linear Arboricity of Graphs

復習 確率を用いた証明論法の典型 実は確率が大きいということも(証明の中で)得られる 事象Xの生起確率が正であることを示す。 e. g. 性質Skを持つトーナメント(第1章) 完全グラフの枝に向きを付与する。 性質Sk : 任意にk個の頂点を選んだとき、それらすべての頂点に枝が出ている頂点が存在する。 kに対してnが十分大きくなるとほとんどすべての枝のむき付けに対して、性質を満たす。 S1を満たす例

独立性・希薄依存性 (independence and rare dependence) 逆に、事象の生起確率が正ではあるが非常に小さいことを示す場合もある。 特にn個の互いに独立な事象の確率が少なくともp(>0)であるとき n個のすべてが同時に起きる事象の確率はpn以上 確率は正ではあるが、nに関して指数関数的に小さくなる 互いに独立ではないが、ほとんど依存しない事象でも上のような性質と似た性質があるのではないか? これから用いたい論法 証明したい性質を持つ事象が、n個の互いに独立ではない事象が同時に起きると表現される。 確率は小さいけれど、正である。よって証明したい性質の存在が証明できる。

Lovasz Local Lemma Lemma 5.1.1 A1, A2 , …,Anを任意の確率空間上の事象とする.n個の頂点V={1,2,…,n}を持つ有向グラフD=(V,E)で、任意の にたいして事象Aiが事象       と互いに独立であるとき、そのような有向グラフを依存有向グラフと呼ぶ。いま、上で示した事象上の依存有向グラフD=(V,E)と、n個の実数            が存在し、任意の について を満たすならば 特に、事象Aiがすべて起きない確率が正である。

依存有向グラフD=(V,E) 事象の対が互いに独立であるか否かという情報を保持する 対称に有向枝を持つ 互いに独立

Lovasz Local Lemma(再掲) A1, A2 , …,Anを任意の確率空間上の事象とする.n個の頂点V={1,2,…,n}を持つ有向グラフD=(V,E)で、任意の にたいして事象Aiが事象       と互いに独立であるとき、そのような有向グラフを依存有向グラフと呼ぶ。いま、上で示した事象上の依存有向グラフD=(V,E)と、n個の実数            が存在し、任意の について を満たすならば 特に、事象Aiがすべて起きない確率が正である。

条件付確率の基本 基本的事項の復習 事象AとBが互いに独立 条件付確率 余事象の確率

実数xの役割 [補題5.1.1の証明] はじめに任意の部分集合S⊂{1,2,…,n}, |S|=s<n,と任意の について(5.1)式  を示す。 数学的帰納法 s=0のとき

補題5.1.1の証明[1] s’<sなるすべてのs’で       が成立すると仮定する。                  と置く。 D=(V,E) i l j S2 S1

補題5.1.1の証明[2] 帰納法の仮定を 使う よって、任意の真部分集合S⊂{1,2,…,n}, |S|=s<n,と任意の  について(5.1)式

補題5.1.1の証明[3] 証明のラストも簡単  [証明終]

The local lemma ; symmetric case 系5.1.2 A1, A2 , …,Anを任意の確率空間上の事象とする.どの事象Aiも、それと互いに独立でない事象Ajの個数がd個以下であるとする。事象Aiの起きる確率がp以下であるとする。条件式 を満たすならば 系5.1.2の証明 d=0のときはAi とAiはすべて互いに独立であるので、自明。 その他の場合、事象上の依存有向グラフで、任意のiについて              を満たすものが存在する 補題5.1.1で と置くと

性質Bを持つハイパーグラフ ハイパーグラフH=(V,E)が性質Bを持つ 定理5.2.1 証明 頂点の2彩色で任意の枝fについてfに含まれる頂点が単一の色で塗られていない 定理5.2.1 ハイパーグラフH=(V,E)はどんな枝もk個以下の頂点を含むとする。Hのどんな枝も多くともd本の枝と交差(intersect)しているとする。このとき ならばHは性質Bを持つ。 証明 頂点vを無作為に独立に赤・青に塗る。任意の枝fについて、Afを枝fが1色で塗られているという事象とする。事象Afが起きる確率を計算すると、 f と異なる枝でf と交差していない枝f’ に関する同様の事象Af’ は事象Af と互いに独立である。 よって系5.1.2をそのまま用いることにより、どの枝も単一で塗られていない確率は正である。[証明終]

定理5.2.1の特殊な場合 注意 なるk-uniform k-regularハイパーグラフHはいつも性質Bを持つ。 枝 f は高々d=k(k-1)本の枝と交差する。

実数のk-彩色 定義 定理5.2.2 実数に色{1,2,…,k}のうちひとつを割り当てる 実数の部分集合T⊂RでTに割り当てられた色の集合をc(T)と書く。c(T)={1,2,…k}であるとき、Tは全彩色されたという 定理5.2.2 m ,k を正の整数とする。条件式   を満たすとき、m個の実数からなる任意の集合Sにたいして、任意の置換x+S (x∈R)が全彩色になるような実数のk-彩色が存在する 特に            のとき、いつも条件式を満たす。

定理5.2.2の証明[1] [定理5.2.2の証明] はじめに実数の有限集合X⊂Rを固定する。任意の置換x+S (x∈X)が全彩色になるような実数k-彩色が存在することを示す。 y∈Yをランダムに選び、c(y)を{1,2,…,k}の一様分布に従って塗る。 Axをx+Sは全彩色でないという事象とする。 高々m(m-1)通り 補題5.1.2のd,pにそれぞれ代入。

定理5.2.2の証明[2] 証明したい命題は実数xを制限しないバージョン 位相数学のはなし コンパクトという概念を使う 位相空間Xの部分集合Kにたいして、任意のKの開被覆が、有限部分被覆を持つとき、Kがコンパクトであるという。 k個の点上の離散空間はコンパクトであるから、ティコノフの定理によりそういう空間の任意の直積もコンパクトである。 特に、関数R→{1,2,…,k}全体がなす空間も、通常の直積位相を用いることによりコンパクトである。 このような空間では、任意の固定したx∈Rに対して、彩色の集合Cxで、x+Sが全彩色である集合は閉集合となる。 実は開集合でもあり閉集合でもある。なぜならば開集合へのある基は、有限個の場所の個数で定められた彩色をすべて集めた彩色の集合だから。

定理5.2.2の証明[3] 無限個の事象を補題に適用しても、一般にはうまくいかない 集合Cxの有限個の族の共通集合は空集合でない。 定理5.2.2の証明[1]のスライド このような性質を有限交叉性と呼ぶ コンパクト性より、すべての集合Cxの共通集合C(0)は空集合でない。 すべての彩色を集めた集合Cがコンパクト Cの部分集合の族が有限交叉性を持つ この共通集合C(0)に含まれる任意の彩色は、定理5.2.2の結論で述べられている性質を満たす。[証明終] 無限個の事象を補題に適用しても、一般にはうまくいかない 加算的に多くの独立した事象Aiで、             を満たす例が存在する。 そういうわけで、コンパクトを用いた論法が上の証明では必要になる。