病気に関係する遺伝子の探索 ~ヒトゲノムの多様性について考える~ 2013年度 総合華頂探求(生命情報科学実習) 華頂女子中学高等学校 医療・理系進学コース 2年 ●これから、私たちが、華頂総合探究という時間に、これまで取り組んできました、「病気に関係する遺伝子の探索」について、発表を行います。
60兆個の細胞 ゲノムとは、ひとつの生物がもつ遺伝情報全体のことです。ゲノムの情報からタンパク質がつくられます。 22種類の常染色体と X,Yの性染色体 DNA(デオキシリボヌクレオチド)は、ヌクレオチドという分子が2本のらせん状に繋がってできた、とても長い分子です。 このヌクレオチドを構成する部品の一つである塩基には、A,T,G,C であらわされる4つの種類があります。 このヌクレオチドの並びが、遺伝情報と呼ばれるものの正体です。 アミノ酸 (※ヒトゲノムマップ http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/genomemap/ より引用)
フェニルアラニン ロイシン ロイシン
鎌状赤血球貧血症 “Sickle cell disease“ に関係する遺伝子の探索 北川、 木村、 久留野 ●次に、鎌状赤血球貧血症について発表します。
一つの遺伝子の一箇所の突然変異で病気になる例 グルタミン酸 Glu 一つの遺伝子の一箇所の突然変異で病気になる例 Val バリン 父親由来と母親由来の両方の遺伝子でこの変異があると鎌状赤血球貧血症になる。但し、この変異を持つヒトはマラリア原虫が増殖しにくい有利さもある。 変異 ●遺伝子には、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の、4つの塩基(えんき)が連(つら)なっています。 ●その A.G.C.Tの順番がたった1つ違うだけで突然変異を起こしてしまう例として、鎌状赤血球貧血症があります。 ●この病気は、親から子に遺伝する病気として知られます。 ●症状は酸素が少なく貧血を起こし血管がつまりますが、生活に支障はありません。
マラリアについて 年間3~5億 人の罹患者と150~270万人の死亡者があるとされる。この大部分はサハラ以南アフリカにおける5歳未満の小児である。 ●2010年には、世界で年間約2億人がマラリアを発症し、約66万人が死に至りました(「World Malaria Report」)。 ●図を見てみると、現代では、日本やヨーロッパなどの温帯地域はマラリアの流行地帯ではなく、熱帯地域に多く ●マラリアの発生、流行は、現在、熱帯、亜熱帯地域の70か国以上に分布しています。 ●マラリアとはマラリア原虫に感染したハマダラカの雌が人の血を吸って蚊の睡液と一緒に体内に入ります。 ●その時に、マラリアに感染してしまいます。感染すると死亡することがあり、年間3~5億 人の罹患者と150~270万人の死者が出て この大部分はサハラ以南アフリカにおける5歳未満の小児に多いです。
●鎌状赤血球を遺伝子百科で調べたところ、2つの遺伝子が見つかりました。 ●その1つの HBB という遺伝子について調べた内容を紹介します。
11番染色体のここ ●矢印のところをクリックすると、高校生の私達でも、この遺伝子のアミノ酸配列を見ることができます。 ●正式な遺伝子名は、ヘモグロビン です。 ●22染色体があるなかでこの遺伝子は11番染色体の短腕の外側にあります。
HBB のアミノ酸配列の一例 アミノ酸配列 ●これがアミノ酸配列です。 私たち高校生でも、関心のある遺伝子の配列が入手できます。 HBB のアミノ酸配列の一例 アミノ酸配列 ●これがアミノ酸配列です。 私たち高校生でも、関心のある遺伝子の配列が入手できます。 ●次にこのアミノ酸配列の、どこが変異していると、この病気を発症する可能性が高くなるのかを説明します。
HBB, GLU 6 VAL ●英語で書かれていますが、どこが変異していると、鎌状赤血球貧血症を発症する可能性が高いのかを示しています。 (e) (v)
HBB, GLU 6 VAL HBB 遺伝子のアミノ酸配 m(メチオニン)を除いて、6番目 アミノ酸配列 m(メチオニン)を除いて、6番目 正常なヒトは、e(Glu)グルタミン酸。 v(Val)バリン に変異していると、発病の可能性が高い。 ●HBB, GLU 6 VAL の意味は ●HBB遺伝子の、6番目のアミノ酸が、正常な人はグルタミン酸(e)ですが、 赤丸のところが、バリン(v)に変異していると、鎌状赤血球を発症する可能性が高いというとこが研究でわかっています。
Homo sapiens hemoglobin, beta (HBB), mRNA NCBI Reference Sequence: NM_000518.4 塩基配列 CDS 51-494 “HBB” atg gtg cat ctg act cct gag gag aag tct gcc gtt act gcc ctg tgg ggc aag gtg aac gtg gat gaa gtt ggt ggt gag gcc ctg ggc agg ctg ctg gtg gtc tac cct tgg acc cag agg ttc ttt gag tcc ttt ggg gat ctg tcc act cct gat gct gtt atg ggc aac cct aag gtg aag gct cat ggc aag aaa gtg ctc ggt gcc ttt agt gat ggc ctg gct cac ctg gac aac ctc aag ggc acc ttt gcc aca ctg agt gag ctg cac tgt gac aag ctg cac gtg gat cct gag aac ttc agg ctc ctg ggc aac gtg ctg gtc tgt gtg ctg gcc cat cac ttt ggc aaa gaa ttc acc cca cca gtg cag gct gcc tat cag aaa gtg gtg gct ggt gtg gct aat gcc ctg gcc cac aag tat cac taa gag グルタミン酸(e) → gtg バリン(v) に変異すると発症
Homo sapiens hemoglobin, beta (HBB), mRNA NCBI Reference Sequence: NM_000518.4 CDS 51-494 “HBB” atg gtg cat ctg act cct gag gag aag tct gcc gtt act gcc ctg tgg ggc aag gtg aac gtg gat gaa gtt ggt ggt gag gcc ctg ggc agg ctg ctg gtg gtc tac cct tgg acc cag agg ttc ttt gag tcc ttt ggg gat ctg tcc act cct gat gct gtt atg ggc aac cct aag gtg aag gct cat ggc aag aaa gtg ctc ggt gcc ttt agt gat ggc ctg gct cac ctg gac aac ctc aag ggc acc ttt gcc aca ctg agt gag ctg cac tgt gac aag ctg cac gtg gat cct gag aac ttc agg ctc ctg ggc aac gtg ctg gtc tgt gtg ctg gcc cat cac ttt ggc aaa gaa ttc acc cca cca gtg cag gct gcc tat cag aaa gtg gtg gct ggt gtg gct aat gcc ctg gcc cac aag tat cac taa gag グルタミン酸(e) → gtg バリン(v) に変異すると発症 塩基配列 gag グルタミン酸(e) → gtg バリン(v) に変異すると発症 アミノ酸配列
鎌状赤血球貧血症とマラリアの分布 鎌状赤血球とマラリアの発生地域がほぼ同じである。 ●鎌状赤血球とマラリアの発生地域がほぼ同じです 鎌状赤血球貧血症とマラリアの分布 鎌状赤血球とマラリアの発生地域がほぼ同じである。 ●鎌状赤血球とマラリアの発生地域がほぼ同じです ●なぜかというと、鎌状赤血球が短時間で溶血してしまうためマラリア原虫が増殖できずマラリアの発症を抑えるためだそうです。 ●そのため鎌状赤血球の患者はマラリアに感染しません。 ●この病気でない人はマラリアにかかると死に至るので鎌状赤血球の患者とマラリアの発生地域が同じであるということがわかります。 ●マラリアにかかって死なないために、あえてマラリアへの耐性のある、鎌状赤血球貧血症の遺伝子の変異を獲得しているのです。 言い換えると、ゲノムの多様性を積極的に獲得しているとも言えます。
乳癌に関係する遺伝子の探索 田中 乃々 ・ 山下 彩夏 はじめに、乳癌に関係する遺伝子について探索した内容を発表します。
(引用サイト : メルクマニュアル医学百科 家庭版) 乳癌について 乳癌は、米国の女性にみられる癌では皮膚癌に次いで多く、 女性の癌の中では肺癌に続いて多い死亡原因となっています。 乳癌の危険因子 年齢 加齢は重要な危険因子です。乳癌の約60%は60歳を過ぎた女性に 発生しています。 乳癌の家族歴 ごく近い親族(母親、姉妹、娘)に乳癌の人がいる女性では 乳癌発症リスクが2〜3倍になります。母親、姉妹、娘の中に 乳癌の人が2人以上いる場合はリスクが5〜6倍になります。 乳癌に関係する遺伝子 乳癌に関係する遺伝子の中で、特に遺伝子BRCA1とBRCA2は、 遺伝子診断の対象として既に病院でも調べられています。 (引用サイト : メルクマニュアル医学百科 家庭版)
乳癌に関係する遺伝子 “BRCA1” jabion遺伝子百科で、乳癌に関係する 遺伝子を調べると、67の 遺伝子が 見つかりました。 (ABC1, BCAR1, BCAS1, BCMP11, BRCA1, BRCA2など) その中の1つ、BRCA1遺伝子について 詳細を調べました。 ●日本の研究機関が公開しているジャビオン遺伝子百科を使って、乳癌の関係する遺伝子を調べると、67もあります。 ●その中の一つ、BRCA1遺伝子について詳細を調べました。 (使用サイト:jabion遺伝子百科 http://www.bioportal.jp/Gene_search/search/search.cgi )
乳癌に関係する遺伝子 “BRCA1” ゲノム配列上の位置: 17番染色体 遺伝子名: breast cancer 1 機 能: BRCA1は DNA損傷修復、細胞周期 チェックポイント、アポトーシス(細胞死)制御 など、 細胞内のいろいろな機能を調整してDNAの恒常性 を維持しています。 この遺伝子に異常があると、DNAの傷をもとどおりに修復 することができないために、DNA異常が蓄積し、それに よって生じた異常タンパク質によって、やがて増殖を止め ることのできない がん細胞 が発生します。 BRCA1はユビキチンリガーゼという酵素です。 上に述べましたようにBRCA1はたくさんの生物学的な機能を有していますが、どのようにしてこれらの機能を発揮しているかは、いまだにわかっていない点も多いです。その鍵を握る可能性があるのが、現在唯一わかっている BRCA1の生化学的活性であるユビキチンリガーゼ(E3)活性です。 BRCA1はタンパク質のN末端にRINGフィンガーと呼ばれる構造をもっていて、もう一つのRINGフィンガータンパク質であるBARD1とともにRING二量体型のユビキチンリガーゼを形成します。ユビキチンリガーゼ活性を失うRINGモチーフのミスセンス変異が家族性乳がんを引き起こすことなどから、この活性が乳がんの発症抑制に重要な役割を果たしていると考えられています。上に述べたBRCA1の生物学的機能のなかでのユビキチンリガーゼ活性の役割を解明するために最も重要なことは基質(ユビキチン化される標的のタンパク質)の同定です。これまでに基質の候補としてヌクレオフォスミン(NPM1, B23)とRNAポリメラーゼのサブユニットであるRPB8を同定しました。 これらのタンパク質を含め、BRCA1によるユビキチン化がDNA損傷修復でどのような役割を果たし、またその異常がDNA損傷を起因する抗がん剤にたいする感受性にどう関わっているかを解析しています。 (引用サイト:聖マリアンナ医科大学大学院 医学研究科 ホームページ http://www.marianna-u.ac.jp/t-oncology/general/research.html )
LOCUS : NP_009229 680 aa linear PRI 10-MAY-2009 BRCA1 遺伝子のアミノ酸配列 LOCUS : NP_009229 680 aa linear PRI 10-MAY-2009 DEFINITION: breast cancer 1, early onset isoform BRCA1-delta9-11 [Homo sapiens]. ●BRCA1 遺伝子のアミノ酸配列が、こちらです。 ●次に、この配列のどこが変異すると、病気を発症する可能性が高くなるのかを調べてみます。 (データ引用元: NCBI http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_009229.1 )
(使用サイト: OMIM http://www.ncbi.nlm.nih.gov/omim ) BRCA1 遺伝子 の突然変異情報 OMIMで、突然変異情報を調べると、15件の突然変異情報が得られました。 一例を挙げて、説明すると、 BRCA1, CYS64GLY BRCA1, CYS61GLY BRCA1, SER766TER BRCA1, SER915TER BRCA1, SER1040ASN BRCA1, ARG1203TER BRCA1, GLU1250TER BRCA1, ARG1443TER BRCA1, ARG1443GLY BRCA1, TYR1853TER BRCA1, ARG841TRP BRCA1, ARG71GLY BRCA1, MET1775ARG BRCA1, MET1775LYS BRCA1, ARG1669GLU ●OMIM(オーミム)で、突然変異情報を調べると、15件の突然変異情報が得られました。 ●その中のひとつを紹介します。 (使用サイト: OMIM http://www.ncbi.nlm.nih.gov/omim )
BRCA1, CYS 64 GLY LOCUS : NP_009229 680 aa linear PRI 10-MAY-2009 DEFINITION: breast cancer 1, early onset isoform BRCA1-delta9-11 [Homo sapiens]. ●緑の丸でかこった、ところが、正常なヒトはc(システイン)ですが、もしも ここがg(グリシン)に変異していると、乳癌を発症する可能性が高くなります。 このように、遺伝子の配列を調べることで、その病気を発症する可能性が高いのか、そうでないかを調べることが出来ます。 正常な人は、 c(CYS)システイン。 g(GLY)グリシンに変異している人は、乳癌を発症する可能性が高い。