M2 志知秀治 名古屋大学 理学研究科 高エネルギー物理学研究室

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M2 志知秀治 名古屋大学 理学研究科 高エネルギー物理学研究室 PLLを用いた可変遅延回路の製作 M2 志知秀治 名古屋大学 理学研究科 高エネルギー物理学研究室 OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

Intro 自己紹介 + 回路のモチベーション OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 自己紹介 + 回路のモチベーション LHC(Large Hadron Collider)実験 世界最大の加速器実験  陽子陽子衝突型  重心系エネルギー:14TeV  衝突頻度:40MHz ヒッグス粒子の発見 暗黒物質の発見 ATLAS検出器 高さ:25m 幅:44m 読み出しチャンネル:1億6千万  →トリガー検出器が重要! 陽子陽子衝突のため、ほとんどの衝突はゴミ OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

自己紹介 + 回路のモチベーション →飛跡検出器を用いて運動量(磁場中の曲率)から事象選別する →全ての計算は論理回路を用いて行われる。 + 荷電粒子の通過によってイオン化された 電子を電場をかけてワイヤーに集める + − − − + + − 3/4 2/3 μ 磁場 →全ての計算は論理回路を用いて行われる。

自己紹介 + 回路のモチベーション →トリガー判定は、40MHzのクロックに同期した論理回路で行う →「何回目の衝突から来たか」を正確に把握することが重要! N-1回目 N回目 N+1回目 25ns With ASIC 時間(t) この部分の信号をロスする 1n秒以下の精度を持つ可変遅延回路(0ns~25ns)を備えたICの製作 細かい開発の経緯 →より衝突点に近い位置に同様のシステムを設置 →放射線耐性のため、絶縁膜の薄いプロセスを用いて再設計

回路設計 CAD : cadence custom IC design tool シミュレーター : hspiceS プロセス : UMC社 0.25um(耐電圧2.5V) CAD : cadence custom IC design tool シミュレーター : hspiceS OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

ASICの仕様 1ns以下の遅延ステップ、25ns以上の遅延幅を持った可変遅延回路 実現するための作戦 1 delay unit input output selector [0:31] TTL(0V-2.5V) 実現するための作戦  (1)インバータ2つを1unitとしたディレイ回路を32個並べる  (2)32個合わせて25nsの遅延になるように調整する  (3)32個中どこのunitを通過した後で取り出すかを決める   →25ns/32の遅延ステップ、25nsの遅延幅が可能! (2)は、温度変化、電源電圧変化、製造誤差など含め調整が必要              →PLLを用いて実現!! OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

PLLを含むASICの構成 32 step variable delay PLL 32 step variable delay (VCRO) Phase Detector Charge Pump Filter ref_CLK (20MHz) Up Down 32 step variable delay VCON PLL ダイナミックレンジ 調整用 重要なのは遅延素子とローパスフィルタ 1 delay unit input output VCON selector [0:31] OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

PLLを含むASICの構成 32 step variable delay PLL 32 step variable delay (VCRO) Phase Detector Charge Pump Filter ref_CLK (20MHz) Up Down 32 step variable delay VCON PLL 重要なのは遅延素子とローパスフィルタ 1 delay unit input output VCON selector [0:31] OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 遅延素子 出力(セレクタへ) インバータ 入力 出力 (次の遅延素子へ) 下段のNMOSで電流量の調整→電圧変化の早さを調整 VCON ここのMOSで 電流量を調節する OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 遅延時間とVCONの関係 25ns PLL Pulsar オシロ 電源 VCON 遅延回路を作る場合のポイント  •VCONで調整可能な範囲内にあるか?  •VCONの揺れが遅延時間に大きな影響を与えないか?    (今回作成したのは、25ns周辺で、1ns/0.02V程度) OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

PLLを含むASICの構成 32 step variable delay PLL 32 step variable delay (VCRO) Phase Detector Charge Pump Filter ref_CLK (20MHz) Up Down 32 step variable delay VCON PLL 重要なのは遅延素子とローパスフィルタ 1 delay unit input output VCON selector [0:31] OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 ローパスフィルター チャージポンプの出力の時定数を調整し、 全遅延素子のVCONに電圧を供給する。 10kΩ Charge Pump 抵抗(~6.7kΩ) By MOSFET 70pF VCON ここの電圧は位相に応じて 2.5V or 0Vの出力 ポイント ( PLL作成における重要点!! )  •VCONの値が収束(ロック)するまでの時間  •ロックしたときの振幅 OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 VCONの収束 2us 500mV ロックするまでの時間 < 10us ロックしてからの振幅 < 0.01V  → 十分な性能  OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 動作テスト power Pulsar オシロ Debug line VCON PLL 電圧計 Input 波長25ns 0V~2.5V Output 波長25ns 0V~2.5V OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 遅延回路の遅延ステップと遅延幅 PLL内の発振回路の 遅延素子数を変えて検証 →理想的には32個の遅延素子で  構成したときには、  遅延ステップ : 0.78ns (25/32)  遅延幅 : 25ns  になるはず。。。 PLL step VCON(V) 遅延ステップ(ns) 遅延幅(ns) 32 1.07 0.73 22.67 28 1.01 0.84 25.96 24 0.948 0.98 30.25 OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 検証 selector [0:31] 1 delay unit VCON 実際には   「遅延素子32個 + セレクタ + インバータ1つ」 の遅延時間が25nsになるように調整する →遅延ステップは(25/32)より短くなる 遅延幅は遅延ステップ31個分 PLL step VCON(V) 遅延ステップ(ns) 遅延幅(ns) 32 1.07 0.73 22.67 28 1.01 0.84 25.96 24 0.948 0.98 30.25 OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 電源電圧の変化 ASICに与える電源電圧を2.1 ~ 2.9Vまで変化 →VCONによって、遅延時間が保たれている。 OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 温度の変化 温度を5 ~ 40℃まで変化 →VCONによって、遅延時間が保たれている。 (少しずつ増えているのは、ASICの保護回路の影響?) OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 放射線耐性 10kGy(SiO2)までのガンマ線照射における変化 →遅延時間の変化は1ns以下で保たれている OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 まとめ PLLを用いて、可変遅延回路の作成を行った。 →要求性能である、   •1ns以下の遅延ステップ   •25ns以上の遅延幅  を満たすASICを作成することができた。 →温度変化(5℃~40℃)  電源電圧(2.1V~2.9V) 10kGyまでの放射線 に対して遅延時間が1ns以下で保証されている OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 BACK UP BACK UP OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 イントロダクション PLL ( Phase Locked Loop ) とは?  →高い精度を持った可変位相発振器(クロック)   水晶発振器    利点:高い安定性    欠点:発振周波数が固定   インバータ発振器    利点:任意の発振周波数    欠点:安定性が悪い(温度、製造誤差)  →PLLは双方の利点のみを併せ持つ回路   (可変分解能TDC、可変遅延回路 etc…..) ‥ 言い換えれば、インバータの遅延時間を一定に保つことができる回路 OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

Phase Detector(位相検出器) クロックの立ち下がりの時間差を検出する リファレンス クロックの入力 UP VCROの入力 DOWN リファレンス VCRO UP DOWN OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 Charge Pump VCROが進み位相のときは青枠が onになってVCONの値を下げる VCROが遅れ位相のときは赤枠が onになってVCONの値を上げる OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 TEGパラメータ抽出 OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 TEG バイアス 黒 : バイアス有り(Vgs=2.5、Vds=0、Vbs=0) 赤 : バイアス無し OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 TEG NMOS OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 TEG PMOS OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治

OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治 TEG ELT-NMOS OSC @ Nagasaki Institute of Appled Science 11.02.01 志知 秀治