Subaru/RAVENのon-sky観測データを用いた トモグラフィック再構成行列の推定

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Subaru/RAVENのon-sky観測データを用いた トモグラフィック再構成行列の推定 2015/12/8 第5回 可視赤外線観測装置技術ワークショップ 於 東北大学 Subaru/RAVENのon-sky観測データを用いた トモグラフィック再構成行列の推定 東北大学修士2年 山崎 公大 秋山 正幸(東北大学)、大野 良人(東北大学)、 大屋 真(国立天文台)

TMTプロジェクトにおける広視野補償光学 IRIS (InfraRed Imaging Spectrograph) ⇒ 撮像+面分光  with AO(NFIRAOS) IRMS(Infrared Multi-slit Spectrograph) ⇒ 広視野多天体分光 with AO(NFIRAOS) TMT 第2期観測装置 IRMOS(InfraRed Multi-Object Spectrograph)  TMT-AGEプロジェクト 地表層補償光学(GLAO)+ 多天体補償光学(MOAO) + IFU 視野10分角 ビクトリア大学、国立天文台ハワイ観測所のチームと共同で研究

広視野補償光学 GS More GSs!! ⇓ Laser Guide Star (LGS) Anisoplanatism トモグラフィーの手法により大気揺らぎを3次元的に補正 広視野での補正が可能に WFS

RAVEN ビクトリア大学(カナダ)を中心に東北大学、国立天文台ハワイ観測所が協力 MOAO(多天体補償光学)の実証実験装置 2014年5月,8月、2015年6月にon-sky観測を実施 @すばる望遠鏡 RAVEN仕様 AOシステム MOAO 観測装置 IRCS サイエンス チャンネル数 2 波面センサー(WFS) 3NGS + 1 on-axis LGC Field of Regard 3.5 arcmin Science Field 視野 4 arcsec Ensquared Energy(EE) >30% (140mas ,H-band) Throughput AO188の80% WFS限界等級 R<14

RAVEN システム概要 ガイド星(NGS3個+LGS1個) サイエンスターゲット2天体 シャックハルトマン波面センサー(WFS) ⇒ 波面slopeの測定 トモグラフィー推定 ⇒ 可変形鏡(DM)で補正 => 分光/撮像(IRCS)

大気揺らぎの推定 3つの開ループWFSの測定値からサイエンスターゲット方向の大気揺らぎを導く行列の作成 サイエンスパスに対する 位置合わせ(回転等) キャリブレーション 波面再構成 全層足し合わせ 層ごとに揺らぎの 内挿・補間 揺らぎの高度分布仮定 望遠鏡上空の大気を断層化 CL-WFS phase 3 OL-WFS slope 3次元的波面推定 =トモグラフィ― トモグラフィック波面再構成 トモグラフィック波面再構成行列

性能シュミレーション RAVENのBaseline GS配置(NGSのみ)を仮定した時の波面推定精度 横軸:location r0=15.6cm GS配置:半径45秒のリングに3つのNGS

トモグラフィック波面再構成の妥当性 トモグラフィック再構成行列はモデル化されたものを使用 現実の観測にどこまで対応できるか? パラメータ ・高度プロファイル ・大気揺らぎパワースペクトル ・位相⇔slope関係 ・波面センサーの位置関係 ・GS配置 など モデル化 On-sky観測では、現実の観測コンディションや装置の機械的特性など、トモグラフィーモデルに含めきれないパラメータの影響を受けると予想できる。 既定のトモグラフィーモデルが現実のon-sky観測に適用できているかを検証し、MOAOの実用化に向けて課題点を洗い出すことが必要

トモグラフィック再構成行列を 経験的に求める手法 Learn & Apply 法 (Vidal et al.2010) EAGLE(Elt Adaptive optics for GaLaxy Evolution)のMOAO実証装置CANARYのトモグラフィーアルゴリズムとして提案 共分散行列の計算にはon-skyで実際に測定されたSlopeデータを用いる 行列計算のために一定期間データを記録、蓄積 ⇒ Learn 計算した行列を適応 ⇒ Apply 実際の観測コンディション、装置の機械的特性、大気揺らぎの性質等を反映したトモグラフィック再構成行列を経験的に導くことができると期待される。 再構成行列の構造を比較することでトモグラフィー手法の課題点の洗い出しに繋がる 共分散行列

経験的トモグラフィック波面再構成行列 波面slopeの測定データセット MMSE法 OL-WFS1 OL-WFS2 波面slopeの測定データセット DM CL-WFS Science Field MMSE法 OL-WFS3 開ループ測定値( )からサイエンス対象方向の揺らぎ( )を関係付ける行列を MMSE(Minimum Mean Square Error)法により求める

RAVEN on-skyデータの解析 (経験的トモグラフィー) MMSE法による 経験的トモグラフィック再構成行列 経験的トモグラフィー ① Slope 推定波面 ②  Data Set OL-WFS 1,2,3 X 波面再構成  Data Set Y CL-WFS t Original L (データ回収) ③ Error

Tomographic Error(TT-free) データ 観測名 :Fd38 観測日時 :2015/6/23 19:53:19 ~ 19:55:51 (132秒) Science Channel :ch2 AO モード :NOAO (LGS無し) Tomographic Error Tomographic Error(TT-free) Original RMS RMS (TT-free) 平均RMS [nm] 640.90 490.58 1026.2 771.17 Σ [nm] 142.92 66.528 241.79 123.82

経験的トモグラフィー推定結果1 データ記録時間 90秒~120秒 データ記録時間 60秒~120秒

経験的トモグラフィー推定結果2 データ記録時間 30秒~120秒 データ記録時間 0秒~120秒

トモグラフィー推定の精度を上回る精度を確認 経験的トモグラフィック推定の性能評価 RMS [nm] 行列計算のためのデータ記録終了(120秒地点)から5秒後のWFEの平均値 データ記録時間を5秒間隔で変化 記録時間を長く取るほどWFEが減少 トモグラフィー推定の精度を上回る精度を確認

特異値によるノイズ依存性の低減 経験的トモグラフィック再構成行列の特異値 特異値 全432個 1e-0未満 21個 特異値 全432個 1e-0未満 21個 1e-10未満 6個 (計算不能) 低すぎる特異値は疑似逆行列の計算時に省くことで、推定のノイズ依存を調整

特異値によるノイズ依存性の低減 Criteria : 10^-10 Criteria : 1

特異値によるノイズ依存性の低減 行列構造の比較 Criteria : 10^-10 Criteria : 1 比較 比較 上:経験的トモグラフィック再構成行列 右:トモグラフィック再構成行列(モデル) 比較的大きい特異値までカットするとモデル行列の構造が捉えられる ⇒ トモグラフィーのモデルを経験的に再現している可能性

まとめと今後の展望 まとめ Future Work 2015年6月のRAVEN on-sky測定データにLearn & Apply法を適用し、経験的にトモグラフィック再構成行列を構成。 既定の再構成行列によるトモグラフィーと経験的トモグラフィーの精度を比較 ⇒ データ記録時間によっては経験的トモグラフィーの精度が上回る結果。 経験的トモグラフィック再構成行列の推定性能及び行列構造と特異値との関連性の示唆。 Future Work 経験的トモグラフィック再構成行列の構造からトモグラフィーのモデルとの対応関係を分析。 on-sky観測においてトモグラフィー性能に影響を与えるパラメータを洗い出す。