Selfish Routing and the Price of Anarchy 第2回

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Selfish Routing and the Price of Anarchy 第2回

復習 扱っている問題 ナッシュフローと最適フロー ナッシュフローの性質

復習 コスト関数 (遅延を表す) の遅延. 60台 60 s t 平均遅延: 60×0 + 60×1 = 60 ナッシュフロー

復習 s t 60 30 s t 60台 60台 平均遅延: 60×0 + 60×1 = 60 ナッシュフロー コスト関数 (遅延を表す) の遅延. 60台 s t 平均遅延: 60×0 + 60×1 = 60 60 ナッシュフロー の遅延. 平均遅延: 60×0.5 + 30×0.5 = 45 60台 30 s t 最適フロー

復習 s t 1 0.5 s t 1 1 平均遅延: 1×0 + 1×1 = 1 ナッシュフロー コスト関数 (遅延を表す) の遅延. 1 s t 平均遅延: 1×0 + 1×1 = 1 1 ナッシュフロー の遅延. 1 0.5 s t 平均遅延: 1×0.5 + 0.5×0.5 = 0.75 最適フロー

復習 0.5 1 si ti フロー f がナッシュフロー si から ti へのパス に対し, si から ti へのパス に対し, ⇔ si から ti へのパス              に対し,           1 0.5 全てのパスの遅延時間は2 si ti

発表内容 2.4節 最適フローの特徴付け 2.5節 例 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性 2.7節 単品種ネットワークのナッシュフロー

発表内容 2.4節 最適フローの特徴付け 2.5節 例 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性       最適フローの求め方 2.5節 例 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性 2.7節 単品種ネットワークのナッシュフロー

定義 2.4.2 ユークリッド空間上の2点 x, y の凸結合 (convex combination). ⇔ x, y を結ぶ線分上の点. (b) S ⊆ Rn が凸 (convex).    ⇔ 要素が凸結合で閉じている集合. (c) 関数 h: S → R が凸 (convex function).    ⇔ (d) 関数 c: R+ → R+ が準凸 (semiconvex function).   ⇔ x・c(x) が凸. (2階微分導関数が0以上) c を滑らかで非減少とすると, c が凸 ⇒ c が準凸

問題の定式化 Min. Subject to: (NLP) とする. ce が準凸 (he が凸) ⇒ 凸計画問題

最適フローの求め方 0.5 s t s t 0.5 1 ナッシュフロー コスト関数に x をかけて微分 このネットワークでのナッシュフローは 元のネットワークの最適フローとなっている.

最適フローの特徴付け s t 定義 2.4.5 系 2.4.6 フロー f が最適 ⇔ f は(G, r, c*)のナッシュフロー. を限界コスト関数 (marginal cost function) と定義する. 系 2.4.6 (G, r, c) を滑らかで準凸なコスト関数を持つインスタンスとする. フロー f が最適 ⇔ f は(G, r, c*)のナッシュフロー. 証明: 次の命題の(a)と(b)から.

命題 2.4.4 f*: NLPの実行可能解 he= c(x)・x: 滑らか,凸. (a)~(d)は同値. (a) f* が最適フロー (b) 全ての i ∈ {1, ..., k} と, f*P1 > 0 となる P1, P2 ∈ Pi に対し, (c) 全ての実行可能なフロー f に対し, (d) 全ての実行可能なフロー f に対し,

命題 2.4.4 の証明 全ての i ∈ {1, ..., k} と, f*P1 > 0 となる P1, P2 ∈ Pi に対し, (c) (d) (c) ⇔ (d) Σの順番をいれかえ. (b) ⇔ (c) (b) 全ての i ∈ {1, ..., k} と, f*P1 > 0 となる P1, P2 ∈ Pi に対し, P1 を定義 f* を固定すると,定数コストのネットワークにおける f の平均遅延を表す式となる. (b) は元のネットワークで f*P > 0 のパスは,固定後にコスト最小のパスとなると言っている. (c) の左辺は,f* を流したときの平均遅延,右辺はその他のフロー平均遅延.

命題 2.4.4 の証明 (a) ⇒ (b) (a) f* が最適フロー (b) 全ての i ∈ {1, ..., k} と, f*P1 > 0 となる P1, P2 ∈ Pi に対し, f* のうち,f*P1 > 0 となるパス P1 のフローの微小量 λを P2 に流れるフローに加えると, 目的関数値は, に変化する.f* の最適性から [・] 内は 0 以上. P1 P2

命題 2.4.4 の証明 he は凸 (d) ⇒ (a) (d) (a) f* は最適フロー f を任意の実行可能フローとする.

その他の事実 事実 2.4.9 事実 2.4.12 コスト関数c が準凸のとき,最適フローは,任意に小さい誤りで, 入力サイズと要求された正確さ(precision)のビット数の多項式時間で計算できる. ・ 入力サイズについては正確に議論しない (remark 2.4.10). ・ 誤りを含むのは,最適フローが無理数だとしても  既存の凸計画問題のアルゴリズムは有理数を出力するため (remark 2.4.11). 事実 2.4.12 コスト関数 c が任意のとき,入力サイズと近似の正確さのビット数の 多項式時間で近似解を計算するアルゴリズムは存在しない if P≠NP. ・ 下界: ω(n1-ε).

発表内容 2.4節 最適フローの特徴付け 2.5節 例 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性       いくつかの例を紹介 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性 2.7節 単品種ネットワークのナッシュフロー

例 2.5.3 (強パレート suboptimality) 枝追加後の Braess’s paradox のナッシュフローは最適フローに強パレート支配される. しかし,枝の削除 (追加する前) によってナッシュフローは改善され, 最適フローの強パレート支配ではなくなる. x 1 ナッシュフロー x 1 0.5 1 s t s t 1 0.5 x 1 x 枝の追加 x 1 x 1 0.5 0.5 s t s t 最適フロー 0.5 1 0.5 x 1 x

例 2.5.3 (強パレート suboptimality) ナッシュフローが最適フローに強パレート支配され, かつどの枝を削除しても強パレート支配される例を示す. 1 1 s t 1 ナッシュフロー コスト(遅延)は2 x x

例 2.5.3 (強パレート suboptimality) ナッシュフローが最適フローに強パレート支配され, かつどの枝を削除しても強パレート支配される例を示す. 1 1 s t ナッシュフロー x x 1 コスト(遅延)は2 1 1 0.5 最適フロー それぞれのパスの コスト(遅延)は1.5 s t x x

例 2.5.4 (非線形な Pigou の例) Pigou の例,Braess’s paradox,例 2.5.3の price of anarchy は 3/4. これは偶然ではなく,コスト関数が線形のときは高々3/4 となる (3章). しかし,線形ではないときには price of anarchy が任意に大きくなる場合がある. 1 s t ナッシュフローは下のリンクに1. 平均遅延は1. 1 (G, r, c)

例 2.5.4 (非線形な Pigou の例) Pigou の例,Braess’s paradox,例 2.5.3の price of anarchy は 4/3. 偶然ではなく,コスト関数が線形のときは高々4/3 となる (3章). しかし,線形ではないときには price of anarchy が任意に大きくなる場合がある. 1 1 s t s t (G, r, c) (G, r, c*) ナッシュフローは下のリンクに1. 平均遅延は1. 最適フローは,上のリンクに           下のリンクに 平均遅延は

例 2.5.5 (最適フローの不公正性) s t 2-ε 1 今までの例では, 全てのトラフィックにおいて最適フローの各々のパスの遅延は ナッシュフローよりコストが優るか同等だった. 一部のトラフィックを犠牲にしてコストを最小とする最適フローの例を示す. 2-ε s t ナッシュフローは下のリンクに1.遅延は1. 1 (G, r, c)

例 2.5.5 (最適フローの不公正性) s t s t 2-ε 2-ε 2-εの遅延 の遅延 今までの例では, 全てのトラフィックにおいて最適フローの各々のパスの遅延は ナッシュフローよりコストが優るか同等だった. 一部のトラフィックを犠牲にしてコストを最小とする最適フローの例を示す. 2-ε 2-ε s t s t (G, r, c) (G, r, c*) ナッシュフローは下のリンクに1.遅延は1. 2-εの遅延 の遅延 最適フローは,上のリンクに      下のリンクに 平均遅延は

例 2.5.6 (多品種の Braess’s paradox) Braess’s paradox の多品種版(品種が2つ)  (コスト 0 の 枝を加えたらナッシュフローの平均遅延が増大) t2 s2 v 1 s1 t1 1 w ナッシュフロー: 品種1 のコストは         品種2 のコストは p → ∞ で 1 と 0 になる.

例 2.5.6 (多品種の Braess’s paradox) Braess’s paradox の多品種版(品種が2つ)  (コスト 0 の 枝を加えたらナッシュフローの平均遅延が増大) t2 s2 v 1 s1 t1 1 w 枝を加えた後のナッシュフロー: 品種1 のコストは 2,品種2 のコストも 1. 従って,枝 (v,w) を加える前後において,p を大きくするとコストの差は大きくなる. 元のネットワークのナッシュフロー: 品種1 のコストは         品種2 のコストは p → ∞ で 1 と 0 になる.

発表内容 2.4節 最適フローの特徴付け 2.5節 例 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性 2.7節 単品種ネットワークのナッシュフロー

2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性 ⇔ ⇔ (G, r, c*) のナッシュフロー (G, r, c) の最適フロー

命題 2.6.1 (CP) Min. Subject to: とする. ・ CP の最適フローは NLP のナッシュフロー. ・ CPは凸計画問題 (ce(x) は非減少関数だから,he の2階微分は非負で he は凸). ・ 実行可能領域は有界閉集合で目的関数は連続 → 最適解(ナッシュフロー)が存在.

ナッシュフローの一意性 s t 1 上のネットワークでは全ての実行可能フローがナッシュフローとなる. ナッシュフローは厳密に一意となるわけではない.

ナッシュフローの一意性 系 2.6.2 f と がナッシュフローのとき,全てのe ∈ E で 証明 f と の凸結合を考える. CPは凸計画問題なので実行可能解. をCPの目的関数とすると,凸関数なので, はCPの最適解 つまり,           も最適解で,上式の等号が成立. 従って,                    において h は線形関数で,h は c の積分だから,c は定数関数となる.

ナッシュフローの一意性 系 2.6.2 系 2.6.3 系 2.6.4 f と がナッシュフローのとき,全てのe ∈ E で を満たすとき,  はナッシュフローである. 系 2.6.4 f と がナッシュフローのとき,ce が狭義増加関数なら

ナッシュフローの一意性 系 2.6.6 系 2.6.7 f がナッシュフロー ⇔ あらゆる 実行可能なフロー f* に対し, 略証: 命題 2.4.4 から, 系 2.6.7 ナッシュフローは,任意に小さい誤りで, 入力サイズと要求された正確さ(precision)のビット数の多項式時間で計算できる.

発表内容 2.4節 最適フローの特徴付け 2.5節 例 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性 2.7節 単品種ネットワークのナッシュフロー   2.7.1 Classical Network Flow Theory          フローに関する古典的な結果と,導かれる本問題のフローの性質.   2.7.2 Monotone Orderings

命題 2.7.1 s (G, r, c) を単品種のインスタンスとする. (a) f が(G, r, c) の実行可能フローのとき,下の線形システムの実行可能解となる. s δ+ (v) はvを始点とする枝の集合, δ- (v) はvを終点とする枝の集合. (b) f を上の線形システムの実行可能解とするとき,   全ての e で      となる(G, r, c) の実行可能フロー      が存在する.

命題 2.7.2 f が(G, r, c) の実行可能フロー,S が G の s-t カットのとき, (    の合計) - (    の合計) = r s t S G

命題 2.7.3 f が(G, r, c) の実行可能フローのとき, 有向閉路のない実行可能フロー で, 有向閉路のない実行可能フロー     で,  全ての枝 e に対し     であるものが存在する. フローの有向閉路 ⇔ fe >0 の e からなる   有向閉路. 証明 2 6 2 5 4 3 3 6 3 5 5 5 1 1 閉路内の枝でフローが最も小さいものを選び, その値を閉路内のフローからひく この操作で新たに構成したフロー は命題2.7.1の線形システムを満たす. また,命題2.7.1 (b) から となる (G, r, c) の実行可能フロー  が存在. この操作を閉路がなくなるまで繰り返す.

発表内容 2.4節 最適フローの特徴付け 2.5節 例 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性 2.7節 単品種ネットワークのナッシュフロー   2.7.1 Classical Network Flow Theory   2.7.2 Monotone Orderings 単品種のネットワークにおけるナッシュフローの性質

命題 2.7.4 単品種ネットワークのインスタンスは有向閉路のないナッシュフローを持つ. 略証 ・ ナッシュフローの存在性は命題 2.2.5による. ・ 命題 2.6.1 から,ナッシュフロー ⇔ 凸計画問題CPの最適解. ・ 命題 2.7.3 から,あるナッシュフロー f について,  全ての枝 e で      となる有向閉路のない実行可能フロー   が存在. ・ f はCPの最適解だから  も最適解であり,ナッシュフローである.

定義 2.7.5 f をナッシュフローとする. d(v) ⇔ 枝の長さを ce(fe) としたときの s から v への最短経路の長さ. 0.5 d(v) = 2 1 0.5 1 s v t 節点の順序付けが f-monotone ⇔ 次の (P1) ~ (P3) を満たす.   (P1) ソース s が一番目. (P2) フローはこの順序に逆らわずに節点を辿る. (P3) d(v) の値がこの順序で非減少. f に有向閉路がある場合, f-monotone ordering は存在しない. 2 1 5 6 4 s 3 t

命題 2.7.7 v s w f: 実行可能フロー ・ 全ての枝 e = (v, w) に対し, ・ f がナッシュフロー ⇔ 全ての fe > 0 で上の不等式の等号成立 証明 v d(・) は最短経路の長さなので3角不等式が成立. s w

命題 2.7.7 s t G f: 実行可能フロー ・ 全ての枝 e = (v, w) に対し, ・ f がナッシュフロー ⇔ 全ての fe > 0 で上の不等式の等号成立 証明 s t ・・・ v w ・・・ G fP > 0 とする. f がナッシュフロー ⇔            (命題2.2.2) ⇔ 上式の等号成立.

命題 2.7.8 f が有向閉路のないナッシュフローならば f-monotone ordering が存在する. 証明 ・ (P1) と (P2) を満たすように,フローが0より大きい枝に対するトポロジカルソート  (有向枝 u,v が存在する2頂点に関して,uの方がvより小さい番号になる順番付け )  を求めることができる.(greedyアルゴリズム) ・ ある x, y (y より x が前) が (P3) を満たさない (d(x)>d(y)) とき,  ある順序が隣接するペア v, w で (P3) を満たさないものが存在. ・ v と w の順番を入れ替えても (P1) と (P2) は満たされる.  何故なら,d(s) = 0 で d は非負だから,明らかに (P1) は満たされる.   v, w の間に fe > 0 となる枝 e=(v, w) は存在しない. (存在すると,d(w)-d(v) = ce(fe) (命題2.7.7)).        つまり,v, w を入れ替えても (P2) は満たされる. w 1.5 s 0.5 u 1 節点の順序付けが f-monotone ⇔ 次の (P1) ~ (P3) を満たす.   (P1) ソース s が一番目. (P2) フローはこの順序に逆らわずに節点を辿る. (P3) d(v) の値がこの順序で非減少. 1 v トポロジカルソート v, w, u d(・) = 1, 0.5, 2

まとめ 2.4節 最適フローの特徴付け 2.5節 例 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性 2.7節 単品種ネットワークのナッシュフロー       最適フローの求め方 2.5節 例 2.6節 ナッシュフローの存在性と一意性 2.7節 単品種ネットワークのナッシュフロー   2.7.1 Classical Network Flow Theory          フローに関する古典的な結果と,導かれる本問題のフローの性質.   2.7.2 Monotone Orderings      単品種のネットワークにおけるナッシュフローの性質