東京商船大学における 地上気象データの解析

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東京商船大学における 地上気象データの解析 交通電子機械工学課程 橋本 健 川上 宇男

発表内容 目的 観測システム データ解析(気圧、気温  相対湿度、風向・風速) まとめ

1.目的  東京商船大学近辺の気象は、地域的な気候に加え海陸風、都市化によるヒートアイランドなど局地的な気候影響も考えられる。            本研究では多年にわたる地上気象データの統計的な解析をすることにより、客観的に季節変化、経年変動を考察した。

2.観測システム構成図について 第3実験棟7階及び屋上に設置(海抜約35mに位置) 高分子薄膜の 容量変化を利用 温湿度計 高分子薄膜の 容量変化を利用 気圧計 シリコン静電容量絶対センサ(シリコン単結晶)の弾性特性を用いている

3.気圧のデータ解析 1ヶ月分をまとめた気圧のデータ作成 各月の気圧の最大値、最小値、平均値、標準偏差を求め年ごとにグラフを作成 1ヶ月分をまとめた気圧データのスペクトル解析を実行

1ヶ月分をまとめたグラフの例           (2001年9月) 大気潮汐海陸風の影響 低気圧の通過の影響 台風の影響

気圧最小値の月変化 気圧(hPa) 最小気圧は    2002年10月1日台風第21号の  962.7hPa   台風の影響により値が急激に低下 月

気圧最大値の月変化 最大気圧は    1998年2月18日の1034.5hPa 冬季に上昇し夏季に下降している 気圧(hPa) 月

月平均気圧の年変化 最大値と似た変化をしている 気圧(hPa) 全ての平均の値1010.7hPa  月

月平均気圧の経時変化 誤差棒は標準偏差 気圧(hPa) 月

スペクトル解析図について 気圧のデータに対しスペクトル解析を実行  スペクトルとは時間変動する現象を様々な周期の正弦関数の和であると仮定し、時間変動の周期性のような特徴を理解するのに便利である。このような時系列解析手法がスペクトル解析である。時列をスペクトル解析すると、各正弦関数の振幅(の2乗、すなわちエネルギー密度)を周波数別に表すことができる。 気圧のデータに対しスペクトル解析を実行

(2000年1月) 気圧のグラフとスペクトル解析の比較 3日強の低気圧の通過周期 3日強の低気圧の通過周期 大気潮汐による半日周期振動の影響    (2000年1月) 気圧のグラフとスペクトル解析の比較   大気潮汐による半日周期振動の影響 3日強の低気圧の通過周期 3日強の低気圧の通過周期 海陸風、大気潮汐の影響 大気潮汐の影響

気圧のグラフとスペクトル解析の比較 高気圧に覆われていて 低気圧の周期が現れてない (2000年8月)         (2000年8月) 気圧のグラフとスペクトル解析の比較 大気潮汐による半日周期振動が分かりやすい 高気圧に覆われていて    低気圧の周期が現れてない 海陸風、大気潮汐の影響 大気潮汐の影響

12時間周期のパワースペクトル値の月変化 平均気圧と似た変化をしている

24時間周期のパワースペクトル値の月変化 3月は多少突出しているが変動は小さい

気圧の考察 商船大学での気圧は1日周期では海陸風、大気潮汐に影響を受けているが、海陸風に対応した24時間周期はあまり影響はないようだ。大気潮汐では8時間、12時間、24時間周期が見えた。統計的に10、22時にピークを4、16時に最小値をとっていた。最も影響があるのは低気圧である。低気圧にも周期性が存在し夏季とその他の季節では差がある。 夏季には気圧が下がり、冬季には気圧が上がる。冬季は大陸からのシベリア高気圧の張り出しにより高圧部になるからである。 気圧の経年変化は見られなかった。

気温について 平均気温 その標準偏差を含む経時変化 最低気温

月平均気温の年変化 気温(℃) 月

月最低気温の年変化 気温(℃) 6月~8月の値に注目すると、 99年から最低温度が少し上昇している。 月

月平均気温の経時変化 気温(℃) 目立った温暖化傾向は見られない。

湿度について 相対湿度と混合比の定義 相対湿度と混合比のグラフ

相対湿度と混合比の定義 相対湿度は、水蒸気圧とそのときの気温における飽和水蒸気圧との比を百分率で表したものである。 混合比は空気内の乾燥空気の質量に対する水蒸気の質量の比である。

最も簡単な、かつ実用的な実験式としては,テテン(Tetens)の実験式を使用する。 水上:a=7.5,b=237.3

水蒸気圧のと相対湿度の関係 RH:相対湿度(%) 混合比の式 P:気圧(hPa)

月平均相対湿度の年変化 相対湿度(%) 月 11月~3月の相対湿度は40%~60% 4月と10月の相対湿度は60%~75% 5月~9月の相対湿度は70%~80% 月

相対湿度(%) 年月 月平均相対湿度の経時変化 毎年の8月を中心とした夏の季節の標準偏差が一番少ない。 毎年の1月を中心とした冬の季節の標準偏差が一番多い。 年月

月平均混合比の年変化 相対湿度(%) 混合比は,水蒸気量と乾燥空気量の質量比[g/kg]なので,相対湿度よりも水蒸気量の絶対量を見る上で有用である。 月

月平均混合比の経時変化 相対湿度(%) 月 月平均標準誤差を示す。夏季に大きく、冬季に少ない。これは冬の温度が低く、水蒸気量の絶対量が少ないと考えられる。

風向の値0.0~15.9を16方位に区分化する

各方位の出現頻度を表す

各方位の平均風速を表す

各方位の大気輸送量に比例する

風向・風速のまとめ 12月と1月の気温が低く,降雨も少なく,地上の水分の蒸発により気流の変化が少ない 。 3月~5月は春の季節風による強い風が吹く。 7月~8月は,陸と海の温差による海陸風と台風の影響で強い風が吹く。 9月~10月は台風によって強い風が吹く。 冬(11月~2月)の風向は北、北北東に集中する。 春(3月~4月)の風向は北、北北東から南西、南南西に移り変る。 夏(5月~8月) の風向は南西、南南西に集中する。 秋(9月~10月)の風向は南西、南南西から北、北北東に移り変る。

まとめ 1997年4月~2002年11月までの5分毎に記録した気象データ(気圧、気温、相対湿度、風向風速)について月毎に平均値、最大値、最小値などの統計的な解析を行った。 気圧のスペクトル解析から半日、1日周期の大気潮汐による振動が見られた。低気圧による周期的な気圧の変動が見られた。低気圧の周期は季節に依存している。月平均気圧は夏季に下がり、冬季に上昇している。 気温からは、明らかな温暖化現象は見られなかった。 相対湿度と混合比からは、1年を周期とする変動が見られ特に混合比から水蒸気量の変化が明らかになった。 季節による風向の移り変わりがよく分かった。