海氷の再現性の高いモデルを用いた 北半球の将来 地球環境気候学研究室 平野穂波 指導教員 立花義裕教授

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海氷の再現性の高いモデルを用いた 北半球の将来 地球環境気候学研究室 509376 平野穂波 指導教員 立花義裕教授 Possible future climate predicted by climate models with high reproducibility of Arctic sea ice 地球環境気候学研究室  509376 平野穂波 指導教員 立花義裕教授

発表の流れ ・研究背景 ・卒業研究テーマ ・使用データ ・CMIP3マルチ気候モデルデータ ・モデルの選定 -Taylor diagram- ・結果 -現在気候【1979~2011年 6,7,8月】- ・結果 -現在気候【1979~2011年 9月】- ・結果 -将来気候【6,7,8月】- ・結果 -将来気候【北半球】- ・まとめ・考察 ・参考引用文献 2

H L 研究背景 風が海氷減少に影響を与えている ≫2007年9月では最少の 海氷面積が観測. 2012年9月記録を塗り替え,   史上最少面積を記録した. ≫6,7,8月で減り始め,   9月で最も後退する. チュクチ海→ ② L JAXAHP ③ ① H Ogi and Wallace., 2012 NCEP/NCAR再解析データを用いて、最小海氷面積を 記録した2007年9月の地上風の偏差場をみたところ、 特徴的な大気場がみられた ① 北極中心に高気圧性循環 ② ラプテフ海あたりに低気圧性循環 ←フラム海峡 風が海氷減少に影響を与えている ③ チュクチ海から入り、北極中心を横切り、 フラム海峡に向かう流れ 3

また将来北半球にどんな影響を与えるか,を求める 研究目的 CMIP3マルチ気候モデルの中から 海氷の再現性の高いモデルを選定し, 海氷減少に影響を与える大気場を探る. また将来北半球にどんな影響を与えるか,を求める      本研究のNEWな点 ◆複数のモデルをアンサンブル実験するのでなく,   海氷の再現性の高いモデルのみ抽出し,将来を予測する ◆モデルデータを用いて海氷減少と大気場の関係性を探る 4

より観測値のパターン場に近いモデルを選定することがとても重要 使用データ ◆HadISST       ・1979~2011年9月 海氷密接度 ◆NCEP/NCAR    ・1979~2011年9月 風の東西・南北成分 ,海面気圧 ◆CMIP3 ・1979~2050年9月 海氷密接度,海氷厚.風の東西・南北成分,                           海面気圧 CMIP3マルチ気候モデル ≫(The third phase of the Coupled Model                      Intercomparison Project)   第三次気候モデル相互比較プロジェクト ≫世界各国の大気海洋海氷陸面結合モデル ≫初期値・・・現在気候の気候値   境界値・・・CO2,エアロゾル   ⇒温暖化シミュレーションモデル 【14種類のモデルデータ】 A: bccr_bcm2_0, B: csiro_mk3_5, C: miroc3_2_medres, D: mri_cgcm2_3_2a, E: ncar_ccsm3_0, F: ukmo_hadcm3, G: ukmo_hadgem1,H: cccma_cgcm3_1_t63, I: cnrm_cm3, J: gfdl_cm2_0, K: gfdl_cm2_1, L: giss_aom, M: inmcm3_0, N: miroc3_2_hires, O: csiro_mk3_0 より正確な将来気候を予測するためには, より観測値のパターン場に近いモデルを選定することがとても重要 5

モデルの選定 -Taylor diagram- 1 Correlation Standard Deviation -1 ● 16 4 8 12 20 A B C D E F G H I J K L N O -1 1 Correlation Standard Deviation ● 16 4 8 12 20 A B C D E F G H I J K L N O 1979~2011年9月平均の 海氷密接度時系列を, 同期間6,7,8月平均の 北緯75~90度の 海面気圧場に回帰した. ★ ★観測値(NCEP/NCAR) モデルC miroc_medres モデルJ gfdl2_0 モデルK gfdl2_1 ★・・・観測値 モデルA bccr_bcm モデルK gfdl2_1 [1] 正相関かつ 観測値の標準偏差をもつ [2] 海氷密接度が 観測値と同様に減っている モデルC,J,K 選定 6

結果 -現在気候【1979~2011年6,7,8月】- フラム海峡を大西洋向きに流れる風の場 北極上に高気圧性循環の卓越, がみられた. ≫1979~2011年9月の北極海氷密接度時系列を, 6,7,8月平均の風の場に回帰した 北極上に高気圧性循環の卓越, フラム海峡を大西洋向きに流れる風の場 がみられた. 観測値の大気場 C miroc_medres J gfdl2_0 K gfdl2_1 (m) 7

結果 -現在気候【1979~2011年 9月】- フラム海峡へ海氷を押し流す風の向き, 北極海上に低気圧性循環がみられた ≫1979~2011年9月の北極海氷密接度時系列を, 9月平均の風の場に回帰した モデルCとJで,北極上で北極海を横断し, フラム海峡へ海氷を押し流す風の向き, 北極海上に低気圧性循環がみられた 観測値の大気場 C miroc_medres J gfdl2_0 K gfdl2_1 8 (m)

結果 -将来気候【6,7,8月】- ◆海氷の減少が大きいモデルCでは,現在気候でも見られた フラム海峡で大西洋に向かう風の場が効いた可能性. ≫2040~2050年6,7,8月の平均の風,海氷厚から,   1979~2011年6,7,8月の平均の風,海氷厚を引いた結果 C miroc_medres J gfdl2_0 K gfdl2_1 (m) ◆海氷の減少が大きいモデルCでは,現在気候でも見られた フラム海峡で大西洋に向かう風の場が効いた可能性. ◆モデルJ,Kでは他の要因で海氷が減少 9

結果 -将来気候【北半球】- ≫2040~2050年6,7,8月の平均ジオポテンシャル(500hPa)・地上気温から, C miroc_medres J gfdl2_0 K gfdl2_1 (m) 地上気温 (℃) 10

考察・まとめ Taylor diagram 1979~2011年 6,7,8月と9月 ●1979~2011年9月の海氷密接度時系列を海面気圧場に回帰した   パターンを用いてTaylor diagramでモデル選定をした結果,   3モデルを選定したが,全体的に相関が良くなかったことから,   CMIP3マルチ気候モデルの海面気圧場に対する海氷の再現性が   良くないことが分かった. 1979~2011年 6,7,8月と9月 K gfdl2_1 J gfdl2_0 C miroc_medres 6,7,8月 9月 ●海氷の減少が観測値と同様に減少している 選定したモデルを用いて,9月の海氷密接度時系列 を6,7,8月・9月の風の場に回帰した結果, それぞれの月で特徴的な風の場を得ることが出来た. [Ogi and Wallace., 2012]で示されていた,海氷減少と 大気場との関係をモデルでも確認することが出来た. 11

参考引用文献 [1] Ogi, M., J. M. Wallace. (2012), The role of summer surface wind anomalies in the summer Arctic sea ice extent in 2010 and 2011, GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, VOL. 39, L09704, doi:10.1029/2012GL051330, 2012 . [2] R. Kwok. (2011), Observational assessment of Arctic Ocean sea ice motion, export, and thickness in CMIP3 climate simulations, JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, VOL, 116,C00D05, doi:10,1029/2011JC007004, 2011 [3] http://www.ijis.iarc.uaf.edu/seaice/extent/Sea_Ice_Extent_ L.png 12

ご清聴ありがとうございました

考察・まとめ この風の場が海氷に, 海氷を溶かすきっかけとして影響を与えた この風の場が海氷に影響を与えて さらに海氷を溶かした 1979~2011年 6,7,8月 高気圧性循環の卓越・ フラム海峡を大西洋へと向かう風の場が見られた この風の場が海氷に, 海氷を溶かすきっかけとして影響を与えた 1979~2011年 9月 北極海を横断し, フラム海峡で大西洋へと向かう風の場・ 低気圧性循環の卓越が見られた この風の場が海氷に影響を与えて さらに海氷を溶かした 将来気候 6,7,8月 1モデルでは風と海氷減少の関係が 見られたが,2モデルでは海氷の減少が あまり見られなかった

使用データ ≫HadISST ≫CMIP3 【観測値のデータセット】  【観測値のデータセット】 ≫CMIP3  (The third phase of the Coupled Model Intercomparison Project)   【・世界各国の大気海洋結合モデルを用いた    相互比較プロジェクトに基づくデータセット      ⇒つまり気候を構成する大気、海洋等の中で起こることを、       物理法則によって式を作成し、計算機(コンピュータ)の中で       擬似的な地球を再現しようとする計算プログラム.    ・IPCC第4次報告書のために行われた実験】 ・境界値から温暖化データであること強調! ・数値シミュレーションより季節予報など様々な現象の予測の道具としてつかえる ◎bccr_bcm2_0  (ノルウェーのビヤーツクセンター) ◎miroc3_2_medres (東京大学/国立環境研究所)   ○20c3m・・・現在気候の再現実験 [1850~1999年]   ○sresa1b・・・温暖化予測実験 [2000年以降]          (温暖化シミュレーション) 6