相互作用模型の理解へむけて (I) SIBYLL

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相互作用模型の理解へむけて (I) SIBYLL 板倉数記 KEK 2008年10月4日 ICRR

目次 Mini-jet models SIBYLL ver 1.7 SIBYLL ver 2.0 1. Cline, Halzen, and Luthe, PRL 31 (1973) 491 2. Gaisser and Halzen, PRL 54 (1985) 1754 3. Durand and Pi, PRL 58 (1987) 303 量子力学における高エネルギー散乱問題 (eikonal approximation) SIBYLL ver 1.7 Fletcher, Gaisser, Lipari, and Stanev, Phys. Rev.D50 (1994) 5710 多重散乱理論 (spp  spA) SIBYLL ver 2.0 Engel, Gaisser, Lipari and Stanev, proceedings for ICRC99 (Salt Lake City) http://dpnc.unige.ch/ams/ICRC-99/root/vol1/h2_5_03.pdf

Minijet model (1) 最初のminijet model (QCDが確立する前 1973年5月) Gross-Wilczekの 漸近的自由性 PRL 27th April 1973 最初のminijet model (QCDが確立する前 1973年5月) はじめから宇宙線の相互作用を記述すべきものとして提案された CERNのISR実験を受けて理論を構成: 1. pp cross sectionが大きい, high pt pion (pt > 3GeV)が存在する 2. 生成粒子のtransverse momentum 分布 pt < 1 GeV exp{-6pt} 指数的 平均<pt > ~ 0.3GeV    pt > 3 GeV 1/pt8     べき的   < pt >はエネルギーの増加とともに増大 宇宙線の2次生成粒子の運動量分布も、低運動量成分と高運動量成分がある  high pt jet はハード散乱で生じたもの。それが断面積の増加を担う!

Minijet model (1) 平均横運動量のエネルギー依存性   2次生成粒子の横運動量分布                           E = 10^4 GeV

Minijet model (1) pp Parton modelが予言する「べき的」な ds/dptを用いて、 ジェットから来る寄与 を評価 pp 積分の下端: pt = 2 -- 3 GeVで固定 さらに、幾何学的な断面積 38.5mb を加える 1 TeV ハードな寄与が断面積の増加を与える ソフトな寄与はエネルギー依存性なし

Minijet model (2) pQCDに根ざしたMinijet modelとして挙げられる最初の論文 ppbar high pt jetの存在を確証したCERNのUA1実験を受けて模型を構成 今度は、そのジェットの性質をよく記述する摂動的QCDでハード部分を計算 全ジェット断面積は前方散乱 が主で、エネルギーの増加に 伴って増加するだろうが、ptが 小さくなるとpQCDが使えなく なるので切断が必要

Minijet model (2) Saturationの必要性!? Loyal Durand (1984): “It is possible that the problem will be reduced to some extent by the saturation of parton distributions at small x which results from nonlinear modification of the AP evolution equations”

Minijet model (2) 宇宙線のデータを考慮 soft part s0 = 38mb Structure function: Baier, Engels and Petterson 1980 Low momentum  exponential faloff High momentum  power

Minijet model (3) 単純なソフト+ハードの模型では断面積が 異常に早く増加して、Tevatron やSSCエネルギー で散乱振幅のユニタリ性を破ってしまう  “diffraction-scattering formalism” でユニタリ性を破らない計算をする   これは、multi-Pomeron exchangeを   足しあげることに相当(多重散乱)  SIBYLLのminijet model はこれを採用

Minijet model (3) ここで、c (b,s) はeikonal functionで、 A(b): pp散乱の「重なり度」。陽子の拡がり。形状因子を利用 C(s) のエネルギー依存性無視、Qminはエネルギーに依存しない

k’ 量子力学における散乱問題 k S matrix 微分断面積 中心力の場合は角運動量で展開して 断面積

高エネルギー散乱 高エネルギーの散乱では簡単にS行列が求まる(eikonal approximation, Glauber) と置くと Barone & Predazzi, 2002 “High-Energy Particle Diffraction” 高エネルギーの散乱では簡単にS行列が求まる(eikonal approximation, Glauber) と置くと 入射平面波が前方方向へそのまま残るような解を考える φは運動量 k よりもゆっくりと変化するとして、2次の微分を無視 散乱によるPhase shift 散乱振幅(外向き散乱波の係数) に相当 eikonal function

高エネルギー散乱 ポテンシャルが弱い時、eikonal が小さいとして展開できる  Born 近似 Eikonal approximationの結果は、相互作用を無限次まで足しあげた 寄与に相当 U Eikonal がパートンパートン散乱振幅で、ハードポメロンの交換を 記述するなら、多重ポメロン交換を足しあげることに相当

SIBYLL ver 1.7 Dual parton model にminijet productionを加えた模型 現在は改良版(1999)が存在(後述)

SIBYLLの目指すもの 低エネルギーでの ハドロン-陽子散乱 より高いエネルギーの 散乱では、低エネルギー での性質が否定された これらの性質が宇宙線 エネルギーでも続くことを 期待

SIBYLLの構成 低エネルギーでの ハドロン・ハドロン散乱 をstring breaking model で記述  奈良さん で記述  奈良さん より高いエネルギーの ハドロン・ハドロン散乱 での現象はminijet model で記述する Durand-Piのminijet model を採用 (説明済み) からハドロン・原子核散乱 への移行

Glauberの多重散乱理論 Thickness function 衝突径数 b における密度の厚さについての積分 原子核A (B) 中のd2bdzに核子を見出す確率 NN非弾性散乱の起こる確率 NN非弾性散乱がn回起こる確率 (可能な2体散乱はAB回あるうち、bで起こるのがn回) 重イオン衝突 で利用

Glauberの多重散乱理論 pA collisionの場合 B=1, TAB(b)=TA(b) 従って ここで、無限に大きい原子核の場合は なので 多重Pomeron散乱の式と似ている。各散乱が独立な場合の式 原子核の分布 r (r) の選び方に依存する

SIBYLL ver 2.0 のモードは全てソフトとして扱う SIBYLL ver 1.7では、古い(HERA以前)parton distributionを用いていた(EHLQ 1984)ので、HERAの新しいデータを取り入れた     Small-x での上昇の効果が入ったので、より早く断面積が増加  一方で、あまりにグルオン密度が高くなるとsaturationの効果が必要  pQCDの公式が安全に使えるように、カットオフにエネルギー依存性を与えよう(おそらくあまりに早く断面積が増加するのを抑える働きもさせている)       これはsaturation scaleとそっくり のモードは全てソフトとして扱う