瀬戸直樹(京大理) CMBワークショップ2010 2010年6月8日(火) 国立天文台 重力波(GW)とCMB 瀬戸直樹(京大理) CMBワークショップ2010 2010年6月8日(火) 国立天文台
内容 GWとその直接観測 CMB観測との関連 DECIGO/BBO(0.1-1Hz)帯域 まとめ 特徴、検出法、計画 期待される宇宙論への貢献 CMB観測との関連 輻射成分としての制限 B-mode観測結果の影響(inflation GW) DECIGO/BBO(0.1-1Hz)帯域 課題と展望 まとめ
重力波の放出と伝播 ⇒重力波 一般相対論(Einstein方程式) 計量を線形化して整理すると 波動方程式 光速で伝わる エネルギー分布 時空の曲がり具合 平坦 計量の揺らぎ 波動方程式 光速で伝わる ⇒重力波 3
重力波の性質 横波 質量の“加速度運動” で発生 電磁波:電荷の加速度運動 振幅: とても小さい 2つの偏光モード 天体の運動等を“暗号化” 検出は容易ではない 高い透過性 Qij:四重極モーメント 1km (1+h)km 4
レーザー干渉計による重力波の検出 重力波:空間の非等方な歪み レーザー干渉で光路差計測 空間の歪みから波源の情報を推定 波”を直接観測 波”を直接観測 “一台”では指向性がほとんどない シールド不可能 データ中で信号重複(連星、爆発、初期宇宙雑音…:今はいい) 空間の歪みから波源の情報を推定 一般相対論による ”暗号化” データ解析で 解読 5
地上レーザー干渉計 波源方向:時間差で決定 10Hz-1000Hz 0.01秒 LCGT TAMA 6 重力場の揺らぎをシールド GEO LIGO LCGT 0.01秒 波源方向:時間差で決定 重力場の揺らぎをシールド LIGO VIRGO AIGO 6
LIGO(米国) 初期の目標感度を到達(~2006) 2016年ごろまでに大幅なアップグレード 連星中性子星の重力波が~15Mpcまで見える ΩGW<10-5(@100Hz 相関解析) 2016年ごろまでに大幅なアップグレード レート1000倍 LCGT(日)も計画中 低周波が有利 7
スペース干渉計 10Hz以下の低周波重力波を狙う ”低密度”の天体が観測可能 地面振動等のために地上では厳しい 干渉計の腕を長く取れる (パルサータイミング@nHz) ”低密度”の天体が観測可能 総数大 8
Laser Interferometer Space Antenna(LISA) NASA+ESA 0.1mHz-0.1Hzに感度 アーム長:5x106km 連星の方向も決定(if coherent) 2020+打ち上げ予定 背景GW 白色矮星foreground 相関解析なし(ΩGW~10-10) LISA = + 9
DECIGO/BBO 0.1-1Hzを狙う LISAと地上干渉計の間 サイエンス 深い重力波の窓? inflation GW(相関解析) ダークエネルギー BH成長史(IMBHMBH) … 安東さんのスライドより 10
GW観測と宇宙論1/2 連星を使ったダークエネルギーの観測的研究 光度距離の第一原理的決定(Schutz 1987) 赤方偏移は電磁波で 重力波観測だけから 赤方偏移は電磁波で 角度分解能が重要 Transient objectは見つかるか(short-GRB等)? 105/yrにもおよぶNS+NSの合体率(foreground) m1 周波数変調 m2 dL 振幅 チャープ質量
GW観測と宇宙論2/2 背景重力波観測 高い透過性が強み 極初期宇宙起源のもの 相関解析による長期間積分 存在すれば貴重な化石 LIGO、DECIGO/BBO
相関解析法 干渉計ノイズと背景GWを区別 LIGOで既に成果 DECIGO/BBOでも利用 ノイズは独立 GWは共通 複数の干渉計の積 偏光や大角度パターンも LIGOで既に成果 DECIGO/BBOでも利用 目標感度 ΩGW:10-16 (10yr) 2台の干渉計 DECIGO correlation (fTobs)1/4 13
CMBとGW直接計測の対応 「GWエネルギー密度」への間接的制限 インフレーション起源のGW(有望なソース) 10-18Hz 1Hz 輻射成分、周波数積分 インフレーション起源のGW(有望なソース) B-mode偏光観測による高周波領域への予言 10-18Hz 1Hz
間接的制限:輻射成分としてのGW 従来:軽元素合成時の宇宙の膨張率 CMBの角度パターン等 10-10Hz以上のGW成分 Massless νへの制限同様 従来:軽元素合成時の宇宙の膨張率 10-10Hz以上のGW成分 ΩGW<10-5 CMBの角度パターン等 ~10-15Hz以上のGW成分 ΩGW<10-5(現状) Smith et al. 2006
インフレーション起源の重力波 量子揺らぎとして生成 最終的なスペクトルΩGW(f) インフレーションの基本的な予言 振幅 h∝Hinf∝V1/2 エネルギースケール CMB1Hz:Vの変化小(と期待) 最終的なスペクトルΩGW(f) ホライズン再入後の進化(transfer fn.) 宇宙の熱史の情報 B-mode+1Hzの組み合わせ inflatonポテンシャルの構造に迫る? V φ
CMB B-mode観測 ΩGW(1Hz)へ上限を与える r=0.01はΩGW(1Hz)=O(10-16)に対応 DECIGO/BBOの強い要求感度 Kuroyanagi et al. 2009 Watanabe,Komatsu 2006 Smith et al. 2006
~1Hzで背景GWを捉えるには foregroundの除去が不可欠 確実なソース 他のGW foregroundなど 連星中性子星(+ブラックホール連星等) 比較的よく分かっている(ΩGWで2桁上消去) 合体レート:~105/yr クリーニングする 波形:少数のパラメーターで精度よく記述 high-zまで検出できる検出器感度 効率のよいデータ解析方法必須(計算機資源有限) 他のGW foregroundなど pop III SNe:情報不足、複雑? 予期せぬものがあるかも…
まとめ 重力波観測 高い透過性:初期宇宙の探求に 干渉計:ほとんど指向性なし CMB観測との関連 foregroundの扱いが本質的 1HzにGWの窓が開けると期待 CMB観測との関連 輻射成分としてのGW: f>10-15HzでΩGW(f)に上限 inflation起源の背景GW B-mode: 1Hzでの振幅に上限を与える 組み合わせて情報を (inflaton potential, etc)