LHC-ALICE実験のための 遷移輻射検出器の性能評価

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LHC-ALICE実験のための 遷移輻射検出器の性能評価 概要 研究目的 CERN-PSでのテスト実験 セットアップ Likelihood Methodによる粒子識別能力の結果 Neural Network Neural Network 設定 結果及び2DLQとの比較 まとめ 筑波大学 数理物質科学研究科 物理学専攻 高エネルギー原子核研究室 佐野 正人

研究目的 重イオン衝突実験における電子測定 研究目的 J/ψ粒子の生成抑制効果 ⇒ J/ψをプローブとしたQGP物性の理解。 クォークやグルーオンが自由に動き回れるQGP相では、カラー電荷のDebye Screening効果によって、J/ψ粒子が束縛状態を作ることが出来ず、J/ψ粒子の生成が抑制される。 ⇒ J/ψをプローブとしたQGP物性の理解。 J/ψ→ee+ (B.R. 6.02%) に崩壊。 電子を確実に識別し、測定することが、もともと収量の少ないJ/ψ粒子を精度よく測定するために重要である。 研究目的 電子識別を目的の一つとした検出器である遷移輻射検出器(TRD)の電子パイオン識別能力について評価する。特に、前講演のLikelihood での結果を受けて、本講演ではNeural Networkを用いてTRDの識別能力を評価し、Likelihood Methodによる結果と比較する。 11/9/2018

テスト実験 @ CERN-PS ALICEへ実際にインストールされる実機版TRDのテスト CERN-PSにおけるテストビームライン:T10 φ=10° θ=16° ALICEへ実際にインストールされる実機版TRDのテスト CERN-PSにおけるテストビームライン:T10 2007年11月1日~13日 Beam: 粒子: e 、πー  運動量:1.0, 2.0, 4.0, 6.0GeV ガスチェレンコフ検出器 & 鉛グラス電磁カロリメータ  :粒子識別 シリコンストリップ検出器 :ビーム位置の測定 Beam e π 11/9/2018

PID Method Likelihood Method (LQ, LQX, 2DLQ) 各時間領域でのエネルギー損失を用いた粒子識別法。 Likelihoodは以下の式により定義。 赤:電子 青:π粒子 積分、規格化 積分、規格化 ・・・・・・ ・・・・・・ 11/9/2018

PID Method Likelihood Method (LQ, LQX, 2DLQ) : 結果 粒子識別能力 ⇒Likelihood分布において、電子に対するefficiency が90%である時の、 π粒子のefficiency (mis-pidの確率)によって評価。 赤:電子 青:π粒子 運動量:4GeV (6layers) LQ(6layer) ⇒ 6.5 % LQX(6layer) ⇒ 5.9 % 2DLQ (6layer) ⇒ 5.3 % 11/9/2018

PID Method Neural Network 定式化の困難なパターン認識の問題に有効である。 あるクラス(本研究ではe or π)からの複数の入力情報に対して、重み付け計算を行い、シグモイド関数によって、それぞれのクラスに区別する。この際、望ましい出力が得られるように重みを更新する。 中間層を入れることで、入力情報の内部情報を構成することが出来る。 ・・・ ・・・・・・ 中間層 出力層 電子である確率 (0~1) π粒子である確率 入力層 電子の (もしくはパイオン) 特徴を持った情報 TR photonの有無 エネルギー損失の大きさ      及び時間依存性 シグモイド関数 11/9/2018

PID Method Neural Network 全event =学習用+テスト用  テスト用 データの入力 テスト用データ に対する 出力を求める テスト 学習用 データの入力 学習用データ に対する 出力を求める 出力の誤差を求める 結合荷重を更新 5000event 学習 ×10000cycle ・・・・・・ 電子である確率 (0~1) π粒子である確率 ・・・ 電子の (もしくはパイオン) 特徴を持った情報 テスト用データによる PID能力の評価 5000event 入力層 中間層 出力層 ×10000cycle 勾配法による重みの更新 11/9/2018

PID Method Neural Network : ネットワーク構成、設定 各時間での波高(エネルギー損失)を入力とする:30ノード ・・・ 電子である確率 (0~1) ・・・・・ ・・・・・・ 赤:電子 青:π粒子 (0~1) π粒子である確率 入力層 中間層 出力層 a: 学習率⇒学習の速度を表す b: モーメンタム⇒誤差の収束を 早めることが出来る。 入力情報:各時間での波高(エネルギー損失)⇒入力層30ノード    実験で使用したFlash ADCのサンプリングレート:10MHz(0.1μsec)、測定時間3μsec ⇒TRDからの情報量(波高及び時間情報)を最大限使用 中間層:1層、61ノード 学習率:学習回数に対する誤差推移から、安定に収束するように0.01とした。 ⇒PID能力のパラメータ依存性については次講演(高原氏)において報告される。 11/9/2018

PID Method Neural Network : 学習 とした時の、それぞれの粒子の検出効率 赤:電子 青:π粒子 学習回数を重ねることで、検出効率は上がり、誤差は小さくなるが、どちらもある程度の学習以降はほぼ一定となる。 11/9/2018

PID Method Neural Network : 結果 粒子識別能力 ⇒Likelihood 分布において電子に対するefficiency が90%である時の、 π粒子のefficiency (mis-pidの確率)によって評価。 赤:電子 青:π粒子 運動量4GeV 11/9/2018

2DLQ vs Neural Network For pion For electron 運動量4GeV 一方、どちらの方法によっても識別できなかったイベントが存在する。特に、π粒子に関して、L=1付近のイベントはTRDでの粒子識別能力に大きく影響する。 11/9/2018

PID Method : Neural Network : 結果 運動量4GeV  In 6layers … 2DLQ Method ⇒5.2% Neural Network Method ⇒2.4% 11/9/2018

Summary CERN-PSの二次テストビームラインT10において、実際にALICEにインストールされるTRDのテストを行い、この実験の結果から、TRDの電子パイオン識別能力をNeural Networkを用いた方法により評価し、Likelihood Method(LQ、LQX、2DLQ)による結果と比較した。 その結果、Neural Networkを用いた方法は、2DLQにおいて識別不可能であったイベントに対しても粒子識別できており、Likelihood Methodよりも高い電子パイオン識別能力を示した。 4GeV: 5.2%(2DLQ)⇒2.4%(Neural Network) 一方、Likelihood Method及び、Neural Networkによっても識別不可能であったイベントが存在し、特にL=1付近のπ粒子は、TRDによる電子π粒子識別に大きく影響する。 ⇒Double track やδ- rayの影響が考えられる。 今後、これらの効果が、どの程度影響するのか、シミュレーションによる評価が必要である。 11/9/2018

Back up 11/9/2018

閉じ込められているクォークやグルーオンが QGPと高エネルギー重イオン衝突実験 クォークグルーオンプラズマ:QGP ・・・高温高密度において達成する未知の物質状態 通常では強い相互作用により核子内に 閉じ込められているクォークやグルーオンが 比較的大きな体積内を自由に飛び回る状態 今回のSummerStudentとしてのテーマもそうですが、Photonの測定はこういった実験において活発に研究されているテーマの一つである。 自然界では   Big Bang後、数μ秒の初期宇宙      中性子星の内部に存在 高エネルギー重イオン衝突実験による再現 11/9/2018

ALICE:A Large Ion Collider Experiment LHC-ALICE 目的:QGPの生成とその性質の理解  CERN-LHC加速器 PbPb衝突 pp衝突 TRD:電子識別及び荷電粒子の飛跡再構成を主な目的とした検出器。 18supermodule 1supermodule=6layer×5stack=30chamber TOF TRD HMPID TRD TPC PHOS ITS Muon arm 11/9/2018

遷移輻射検出器(TRD) 構造と原理 TRD : Radiator + Drift Chamber TR-Photon : Anode wires:直径20μm、Au Cathode wires:直径75μm、Cu Cathode pad:6.5mm×75.3mm~8.0mm×101.1mm Drift electrode:厚さ50μm アルミナイズドマイラー箔 ガス:Xe+CO2 (85%+15%) TR-Photon : 誘電率の違う物質中を光速の粒子が通過するときに放射され、強度はγ因子に比例する。 ⇒質量差の大きなe/πの識別に適している。 30mm 3.5mm 0V 1.4kV -2.1kV 42mm 11/9/2018

TRD の出力 1eventに対する出力波高 全イベントでの平均波高 赤:電子 青:π粒子 TR photonによるシグナル 増幅領域のシグナル TR-photonはドリフトチャンバーに入射後すぐに吸収されており、電子にのみ、TR-photonからのシグナルが確認できる。 11/9/2018

Event selection PID Y切片 傾き Charge vs pad number (accept region) トラッキングにおけるフィット関数(直線)のy切片と傾き トラッキング Y切片 傾き 11/9/2018

TRD出力 Pad response function φ=10° θ=16° エネルギー損失は3pad分 Redidual of center of gravity from fitting function Track by center of gravity 11/9/2018

PID Method : Likelihood Method (LQ, LQX, 2DLQ) 全時間領域における、 エネルギー損失(波高分布の積分値)による粒子識別法。 電子らしさ(Likelihood)を以下で定義する。 赤:電子 青:π粒子 積分、規格化 11/9/2018

PID Method : Likelihood Method (LQ, LQX, 2DLQ) 赤:電子 青:π粒子 積分、規格化 規格化 11/9/2018

Neural Network シグモイド関数 X:input H:hidden O:output T:teacher signal W,V:重み Ep:誤差 f:シグモイド関数 a:学習率 b:モーメンタム シグモイド関数 11/9/2018

2DLQ vs Neural Network for π 2~3% 11/9/2018

2DLQ vs Neural Network for e 1~2% 11/9/2018

L<0.02の電子 L>0.98のπ L>0.98の電子 L<0.02のπ 11/9/2018

Mispid pion Pion in L>0.99 Mispid πの平均波高 ダブルトラック?? 11/9/2018

Electron efficiency vs pion efficiency 11/9/2018