宇宙重力波検出器用大型複合鏡における熱雑音の研究

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宇宙重力波検出器用大型複合鏡における熱雑音の研究 東大理 小野里光司 東大理 安東正樹,大塚茂巳,坪野公夫 NASA 沼田健司 国立天文台 山元一広,山崎利孝

☆ 熱はめを行ったときの固体物質の機械損失についての測定結果 概要 ☆ 重力波源と鏡の熱雑音についての概説 ☆ 熱はめを行ったときの固体物質の機械損失についての測定結果 ・単体と熱はめしたときの試料のQ値を測定 熱はめすることによるQ値の低下を確認 ・Q値と弾性エネルギーとの関係をみる 相関があることを確認 ・接合面による機械損失の計算 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

目次 1. 序論 1.1. 重力波と重力波源 1.2. DECIGO計画の概要 1.3. 重力波検出器の雑音源 1.4. 鏡の熱雑音 1. 序論 1.1. 重力波と重力波源 1.2. DECIGO計画の概要 1.3. 重力波検出器の雑音源 1.4. 鏡の熱雑音 1.5. 鏡の弾性振動 1.6. 大型鏡の問題点 1.7. 本研究の概要 3. 結果と考察 3.1. Q値の測定結果 3.2. 弾性エネルギーとQ値の関係 3.3. 接合面における機械損失 3.4. 接合面における機械損失(2) 3.5. まとめと今後の課題 2. 実験方法・装置 2.1. 試料 2.2. Q値の測定方法 2.3. 実験装置 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

1.1.重力波と重力波源 重力波 重力波源と観測 電磁波 光速で伝播する時空の歪み 質量の加速度運動により生成 光速で伝播する電磁場の変動 1916年 アインシュタインにより予言 電荷の加速度運動により生成 1989年 連星パルサーの観測から存在を証明 質量の加速度運動により生成 物質との相互作用が弱い(透過力:強) 重力波天文学 重力波源と観測 高周波数のもの(10Hz以上) 地上重力波検出器 振り子の共振周波数(数Hz) 連星中性子星の合体 超新星爆発 以下では感度がほとんどない コンパクトで激しい天体現象(発生頻度:小)が観測対象 低周波数のもの(1Hz以下) 宇宙重力波検出器 連星の軌道放射 地面振動がない ブラックホール準固有振動 基線長を長くとることができる 背景重力波 振幅・発生頻度が大きい現象が観測対象 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

1.2.DECIGO計画の概要 DECIGO 宇宙空間に重力波検出器を打ち上げる計画 互いに1000km離れた3台のS/C間の距離を精密に測定することで重力波を観測 ファブリ・ペロー干渉計(1000km) 倍波Nd:YAGレーザー(出力10W,波長532nm) 鏡(直径1m,質量100kg) 目標感度曲線 (~3×10-24 /√Hz @1Hz付近) LISA 0.1~1Hzの低周波数帯に感度をもつ DECIGO 主要な重力波源 LCGT 合体数年前の連星中性子星 中間質量BH合体 初期宇宙起源の重力波 Ad-LIGO 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

1.3.重力波検出器の雑音源 干渉計の雑音 熱雑音 その他の雑音 光源による雑音 鏡の弾性振動により 光路長が変動する 励起された振り子の 熱振動による雑音 系が有限温度の熱浴に その他の雑音 接しているために 鏡 生じる雑音 地面振動 レーザー光 残留ガスの影響 ... 光源による雑音 鏡 励起された鏡の 散射雑音 レーザー光 熱振動による雑音 周波数雑音 強度雑音 鏡の弾性振動により 光路長が変動する 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

1.4.鏡の熱雑音 揺動散逸定理(FDT) 鏡の熱雑音 伝達関数 の計算のために鏡の弾性振動を1次元調和振動子として捉える 熱雑音と系の機械損失を関係付ける ある力が加えられたときの系の伝達関数が分かれば熱雑音を知ることができる 鏡の熱雑音 1次元調和振動子 伝達関数    の計算のために鏡の弾性振動を1次元調和振動子として捉える 1次元調和振動子のEOM 鏡の弾性振動 通常、鏡の共振周波数は観測帯域よりも十分大きくなるように設計される レーザー光 < 鏡の熱雑音 > 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

1.5.鏡の弾性振動 n=0 n=1 n=2 振動モードの形を表す数 オーダー:n 円周上の波の数 パリティ:p 円柱上下の対称性 干渉計の鏡の熱雑音に主に寄与するのは 鏡の中心が大きく変動するn=0のモード 鏡の共振周波数は数10kHz~ 地上型干渉計の観測帯域よりも十分高い 鏡のサイズや材質などからそうなるように設計 (e.g. TAMA300・・・φ100×60mm, SiO2) 現実の鏡の材質は完全なものではない 機械損失 が小さい もしくは Q値が大きい 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

1.6.大型鏡の問題点 DECIGOの場合 目標感度の低周波数帯の制限要因 倍波Nd:YAGレーザー(波長532nm) ・加速度雑音 ・レーザー光の輻射圧雑音 ・鏡の熱雑音 鏡は大きいほうが得になる DECIGO用の鏡: 倍波Nd:YAGレーザー(波長532nm) 直径1m、質量100kg を使用したときのレーザー径: 約41cm 1枚鏡は可能か? 鏡と鏡の間の接合面での機械損失が問題となる Q値の低下 熱雑音の増大 複合鏡にする可能性 地上型干渉計の場合 鏡の周りを比重の大きな材質で囲うことで質量を大きくできる 固体同士の接合面での機械損失がどの程度なのかを調べることが必要 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

1.7.本研究の概要 研究の概要 熱はめ (工業的には「焼ばめ」ともいう) 熱はめを利用した鏡の作成例 熱膨張を利用したはめ込み方法 熱はめ (工業的には「焼ばめ」ともいう) 熱膨張を利用したはめ込み方法 接合面の機械損失を考える一例として 原子力発電のタービンの設計にも 熱はめというはめ込み方法を使用 使用されるわりと一般的な手法 単体の試料と 熱はめを利用した鏡の作成例 熱はめした試料 円筒の方を加熱して熱膨張させ 両方のQ値を測定して比較する 円柱をはめ込む 冷却収縮後はしっかりとはまる 熱はめによりどれだけ Q値の低下があるかをみる + 接合面の弾性エネルギー等との関係をみる 円柱 円筒 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

2.1.試料 試料 ( アルミニウム(A5056), 真鍮(C3604) ) in out 内φ d: 20, 30, 40 外φ70 h 60 はめ込み φd +α 内φ d 内φ d: 20, 30, 40 はめ込み 軸の公差 α: 50, 70 機械損失のモデル : 歪みエネルギー : 損失 アルミニウムの例 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

2.2.Q値の測定方法 Q値の測定方法 マイケルソン干渉計 PZTを用いて鏡の共振を励起する 励起された試料の振動を読み取る 腕の長さの変化を 振動の減衰からQ値を測定する 光検出器の電流の変化として検出する 減衰振動の信号の大きさは PD1,2に流れる電流の差 に比例するのでフィッティングしてQ値を求める 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

2.3.実験装置 マイケルソン干渉計(沼田氏) LASER PD BS 参照鏡 試料支持系 支持による損失を少なくするための節点支持 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

3.1.Q値の測定結果 アルミニウム(A5056) 真鍮(C3604) アルミニウムと真鍮それぞれについて が減少する様子が確認できた 熱はめによるQ値の低下が見られない 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

3.2.弾性エネルギーとQ値の関係 n>2 の振動モードにおいて n=0,1は中心に変位がある 振動モードなので除外 相関係数 rAl = -0.93 rBrass = -0.15 内外共にアルミニウム アルミニウム: Q値と弾性エネルギーとの間に 相関があるように見える 内外共に真鍮 真鍮: 単体のときでも104とQ値が低い 弾性エネルギーとの関係が 見えない 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

3.3.接合面における機械損失 << 接合面の機械損失の計算 K. Numata et al. (2001) A.M.Gretarsson and G.M.Harry, Rev.Sci.Instr.70(1999)4081. 接合面の機械損失の計算 K. Numata et al. (2001) 表面のダメージによる損失を測ったもの Sapphireでの結果が参考になるかは分からないが << アルミニウムの機械損失 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

3.4.接合面における機械損失(2) 熱はめによる機械損失 最小二乗法でフィッティング 傾きから を求める h = 300μm として 内外共にアルミニウム 傾きから計算した結果 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

3.5.まとめと今後の課題 まとめ 今後の課題 ・単体と熱はめしたときの アルミニウムと真鍮のQ値を測定した 相関があることが分かった ・接合面付近に損失があるモデルを採用したとき 接合面を持つような鏡の Q値を計算にて推測が可能? 今後の課題 ・他の熱はめ試料を用いて、測定Q値と推定Q値を比較 ・他の接合方法ではどうなのか 2007年11月17日(土) 「高エネルギー天体現象と重力波」 研究会

終わり