-トランス・トランスレーションの分子メカニズムの解明-

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ウイロイド (Viroid) は塩基数が 200 ~ 400 程度と短い環状の一本鎖 RNA のみで構成 され、維管束植物に対して感染性を持つもの。分子内で塩基対を形成し、多くは 生体内で棒状の構造をとると考えられる。 ウイルスは蛋白質でできた殻で覆われているがウイロイドにはそれがなく、また プラスミドのようにそのゲノム上にタンパク質をコードすることもない。複製は.
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セントラルドグマ 遺伝情報の流れ DNA→RNA→蛋白質→代謝などの生命活動 DNA→遺伝情報を記録した「設計図」 全部の「設計図」→ゲノム
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翻訳 5’ → 3’ の方向 リボソーム上で行われる リボソームは蛋白質とrRNAの複合体 遺伝情報=アミノ酸配列
* 研究テーマ 1.(抗)甲状腺ホルモン様作用を評価するバイオアッセイ系の確立 2.各種化学物質による(抗)甲状腺ホルモン様作用の検討
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-トランス・トランスレーションの分子メカニズムの解明- RNAを分子擬態するタンパク質 -トランス・トランスレーションの分子メカニズムの解明- 農学生命科学部 栗田大輔

DNA mRNA タンパク質 RNA tRNA rRNA P A E Vila-Sanjurjo et al., 2003 PNAS, PDB ID:1PNU, 1PNS P A E Korostelev et al., 2008 Curr Opin Chem Biol

tmRNA = tRNA + mRNA ・バクテリアに広く保存される低分子RNA ・2分子のRNAから1分子のペプチドを作る変則的翻訳を担う Kurita et al., 2011 Journal of Nucleic Acids Molecular Biology of the Cell, 5th edition ・バクテリアに広く保存される低分子RNA ・2分子のRNAから1分子のペプチドを作る変則的翻訳を担う ・翻訳が滞ったリボソームを解消し、出来かけのペプチドの分解を促進

SmpB : tmRNA結合タンパク質 tmRNAが機能する上で必須のタンパク質 tmRNA A P E SmpB 1 133 160 Unstructured Dong et al., (2002) EMBO journal

トランス・トランスレーションの分子メカニズム tmRNA/SmpB トランス・トランスレーションの分子メカニズム →構造解析 機能解析

SmpB/リボソーム複合体構造解析 ・117種類のSmpB変異体を用意し マッピングを行った ・変異体の活性をin vitroで測定した Directed hydroxyl radical probing Primer extension Sites of cleavages from C-tail ・117種類のSmpB変異体を用意し           マッピングを行った ・変異体の活性をin vitroで測定した Kurita et al., 2007 Nucleic Acids Res.

SmpBのN末端はtRNAを分子擬態している A-site SmpB P-site SmpB Kurita et al., 2007 Nucleic Acids Res.

分子擬態とは リボソーム上で働くタンパク質の立体構造が tRNAに非常によく似ていることから提唱された概念 tRNA tRNA/EF-Tu/GTP EF-G EF-P リボソーム上で働くタンパク質の立体構造が tRNAに非常によく似ていることから提唱された概念 tmRNA/SmpB (部分構造)

SmpBのC末端はmRNAを分子擬態している Kurita et al., 2007 Nucleic Acids Res.

tmRNA/SmpB トランス・トランスレーション 構造解析 →機能解析

In vitro(生体外)トランス・トランスレーション反応 SmpB EF-Tu 翻訳因子 アミノアシルtRNA合成酵素 リボソーム EF-G 翻訳因子 tmRNA mRNA tRNA Asano et al., 2005 Nucleic Acids Res.

SmpBのC末端の役割 KKQHDKRS DIKEREWQVD KARIMKNAHR KKQHDKRS DIKER 1 133 160 Full length KKQHDKRS DIKEREWQVD KARIMKNAHR 1-132 KKQHDKRS DIKER 1-145 1-153 KKQHDKRS DIKEREWQVD KAR Konno et al., 2007 RNA Kurita et al., 2010 RNA

SmpBのC末端の役割 KKQHDKRS DIKEREWQVD KARIMKNAHR 1 133 160 Full length Kurita et al., 2010 RNA

SmpBのC末端の役割 KKQHDKRS DIKEREWQVD KARIMKNAHR 133 160 Kurita et al., 2010 RNA

トランス・トランスレーションの初期段階 ・tmRNAだけでなく、SmpBもtRNAとmRNA両方の機能を持つ ・タンパク質は遺伝情報をコードしない、という常識を覆すものである

・病原菌(ピロリ菌、ペスト菌)の増殖抑制 ・3Dプリンタを用いた分子模型

平成21-22年度 科学研究費補助金 スタートアップ 平成23-26年度 科学研究費補助金 若手B 競争的研究資金   平成21-22年度 科学研究費補助金 スタートアップ   平成23-26年度 科学研究費補助金 若手B 学術雑誌等 1. Kurita D, Muto A, Himeno H. tRNA/mRNA mimicry by tmRNA and SmpB in trans-translation. Journal of Nucleic Acids, 2011 2. Himeno H, Kurita D, Muto, A.: Trans-translation by tmRNA and SmpB: a bacterial quality control system of translation.   Advances in Genetics Research, Nova Science Publishers Inc., 2010 3. 姫野俵太、栗田大輔、武藤昱 2つのtRNA/mRNAハイブリッド –トランス・トランスレーション- mRNAプログラム 多様性と   非対称性の獲得戦略(稲田利文、大野睦人編)、共立出版、2201-2206. 2010 4. Kurita D, Muto A, Himeno H. Role of the C-terminal tail of SmpB in the early stage of trans-translation. RNA. 5, 980-990. 2010 5. Une M, Kurita D, Muto A, Himeno H. Trans-translation by tmRNA and SmpB. Nucleic Acids Symp Ser. 53, 305-306. 2009 6. 姫野俵太、栗田大輔、武藤昱 2つのtRNA/mRNAハイブリッド –トランス・トランスレーション- 蛋白質核酸酵素、   共立出版、2201-2206. 2009 学会発表 1. Kurita D, Une M, Muto A, Himeno H. Molecular mechanism of the early stage of trans-translation. 7th International Symposium on Nucleic Acids Chemistry,   Yokohama, Japan, Nov. 2010 2. Kurita D, Muto A, Himeno H. Trans-translation by tmRNA/SmpB. The 3rd International Symposium on Protein Community, Nara, Japan, Sep. 2010 3. Kurita D, Une M, Muto A, Himeno H. Molecular mimicry by tmRNA/SmpB during trans-translation. Ribosomes 2010 meeting, Orvieto, Italy, May, 2010 4. Takemoto C, Connell SR, Hase Y, Naoe C, Wang H, Kaminishi T, Kikuchi T, Hirata Y, Kurita D, Muto A, Muto Y, Yokoyama S, Himeno H. Structural studies   for RsgA/YjeQ, a ribosome maturation factor. Ribosomes 2010 meeting, Orvieto, Italy, May, 2010 5. Kurita D, Une M, Muto A, Himeno H. Molecular mimicry of tRNA/mRNA during trans-translation. ASBMB 2010 Annual meeting, Anaheim, USA. Apr. 2010 6. Kurita D, Une M, Muto A, Himeno H. Role of the C-terminal tail of SmpB during trans-translation. 23rd tRNA workshop, Aveiro, Portugal, Jan. 2010 7. Une M, Kurita D, Muto A, Himeno H. Trans-translation by tmRNA and SmpB. 6th International Symposium on Nucleic Acids Chemistry, Takayama, Gifu,   Japan, Sep. 2009 1. 姫野俵太、栗田大輔、宇根理高、武藤昱 tRNA/mRNAハイブリッドとtRNA/mRNA擬態タンパク質によるtrans-translation. 日本分子生物学会、神戸、2010年12月 2. 栗田大輔、武藤昱、姫野俵太 無細胞トランス・トランスレーション系におけるSmpBのC末端tailの働き 第5回無細胞生命科学研究会、岡山、2010年9月 3. 栗田大輔、宇根理高、武藤昱、姫野俵太 トランス・トランスレーションの初期過程におけるSmpB C末端tailの働き 第12回RNAミーティング、東京、2010年7月 4. 竹本千重、Sean R. Connell、長谷要一、直枝智恵子、王宏飛、上西達也、菊池岳志、平田侑也、栗田大輔、武藤昱、武藤裕、横山茂之、Paola Fucini、姫野俵太   リボソーム成熟因子RsgA/YjeQの構造機能解析 第12回RNAミーティング、東京、2010年7月 5. 菊地岳志、平田侑也、栗田大輔、長谷要一、木村天胤、武藤昱、姫野俵太 部位特異的ヒドロキシラジカルプロービングを用いたRsgA とリボソームの相互作用の   解析 第11回RNAミーティング、新潟、2009年7月