外傷性腸管膜損傷・腸管穿孔後にTrichosporon asahiiによる後腹膜膿瘍を合併した重症多発外傷の1例

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初心者を対象とした 形態グループミーティング
横隔膜浸潤と胸水貯留から呼吸苦を訴えた9500gの 超巨大GISTの1例
大量free airにて 消化管穿孔を疑い緊急開腹術を施行 高気圧酸素療法が著効した 腸管嚢状気腫症の1例
透析患者に対する 大動脈弁置換術後遠隔期の出血性合併症
第17回日本検査血液学会学術集会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本呼吸器学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
慢性閉塞性肺疾患(COPD) 4年 加藤彩香.
第24回 呼吸運動療法症例検討会 「気管支拡張症」
日本呼吸器学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本臨床微生物学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本てんかん 学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
第52回日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
様式1-A 申告すべきCOI状態がない時 演題名: 所属: 名前: 筆頭発表者のCO I 開示 筆頭発表者:○○○○
日本神経 学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○ 所属(機関(企業含む)・教室/診療科)・職名:〇〇〇〇
日本臨床精神神経薬理学会 筆頭著者のCO I 開示
○○○学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
第45回日本集中治療医学会学術集会 COI状態の開示
すべてのセッションの演者は、発表演題に関する利益相反 (Conflict of Interest:COI)の開示にご協力ください。 医療系職種従事者の公正な科学的立場を示す意味で、学術発表時にスライドの冒頭で利益相反(Conflict of Interest:COI)表示を原則としてお願いいたします。
日本集中治療医学会第1回関西支部学術集会 COI開示
Lカルニチン治療の血液透析患者の腎性貧血への効果
第28回日本臨床精神神経薬理学会・第48回日本神経精神薬理学会 合同年会筆頭発表者のCOI開示
●●●●により救命できた ●●●●を呈した ●●●●の一例
医療法人社団 高山泌尿器科 臨床工学部門 斎藤 寿 友西 寛 工藤 和歌子 佐藤 友紀
日本感染症学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
第38回日本生物学的精神医学会・第59回日本神経化学会大会 合同年会
日本心血管インターベンション治療学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本HTLV-1学会 COI 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
利益相反提示方法 口演発表は演題名の次のスライドで開示 ポスター発表はポスターの最下部に開示.
第53回 日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本HTLV-1学会 COI 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○ 責任発表者名: △△ △△
筆頭演者のCOI開示 ポスター発表におけるCOI状態の開示 ポスターの末尾に以下の様に開示する 開示する内容がない場合
小腸カプセル内視鏡により 診断しえた小腸出血の一例
日本血液学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
利益相反提示方法 口演発表は演題名の次のスライドで開示 ポスター発表はポスターの最下部に開示.
日本アフェレシス学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本小児血液・がん学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本動脈硬化学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本内視鏡外科学会 利益相反の開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本ミトコンドリア学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
第14回医療の質・安全学会学術集会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
第46回日本集中治療医学会学術集会 COI 状態の開示
日本感染症学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本小児血液・がん学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
第29回日本サイトメトリー学会学術集会 CO I 開示
透析周辺機器の入れ替えに伴う透析液水質と患者臨床データの変化
日本小児血液・がん学会 COI 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本小児がん看護学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
CO I 開示 発表者名: 東京一郎、京都次郎、大阪三郎、◎福岡史郎(◎代表者)
第12回医療の質・安全学会学術集会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本神経 学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
第13回医療の質・安全学会学術集会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本アフェレシス学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本呼吸器学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
日本臨床工学会 CO I 開示 筆頭発表者名:〇〇〇〇
日本アフェレシス学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
NP学会病院(施設名) 国際 太郎(氏名) 本演題の発表に際して筆頭著者に開示すべきCOIはありません.
日本神経 学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○ 所属(機関(企業含む)・教室/診療科)・職名:〇〇〇〇
第54回 日本高気圧環境・潜水医学会学術総会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
学術講演会口頭/ポスター発表時、申告すべきCOI状態(過去3年間)がないとき、
日本HTLV-1学会 COI 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○ 責任発表者名: △△ △△
日本てんかん 学会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
大阪透析研究会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
学術講演会口頭/ポスター発表時、申告すべきCOI状態(過去3年間)がないとき、
演題名:□□□□□□□□□□□□□□□□ ○筆頭著者 共著者名 所属名
福岡県臨床工学会 CO I 開示 筆頭発表者名:〇〇〇〇
日本生命倫理学会第31回年次大会 CO I 開示 筆頭発表者名: ○○ ○○
Presentation transcript:

外傷性腸管膜損傷・腸管穿孔後にTrichosporon asahiiによる後腹膜膿瘍を合併した重症多発外傷の1例 伊藤次郎1、瀬尾龍太郎2、蓮池俊和3、浅香葉子2 、 柳井真知2 、土井朝子3 、有吉孝一2 1神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科、2救命救急センター、3感染症科 Title: a case report Kobe City Medical Center General Hospital

日本集中治療医学会第2回関西支部学術集会 COI開示 発表者名: 伊藤 次郎 ① 役員・顧問職 無 ② 株保有 無 ③ 特許権使用料など 無    日本集中治療医学会第2回関西支部学術集会 COI開示 発表者名: 伊藤 次郎   ① 役員・顧問職          無   ② 株保有             無   ③ 特許権使用料など        無   ④ 講演料など           無   ⑤ 原稿料など           無   ⑥ 研究費             無   ⑦ 奨学寄付金(奨励寄付金)    無   ⑧ 寄附講座所属          無   ⑨ その他報酬           無   Kobe City Medical Center General Hospital

諸言 Trichosporon asahiiは,土壌中に普遍的に存在する真菌で,健常人の皮膚, 便, 尿, 喀痰からも検出されることがあるが, 病原性は弱く通常はヒトに対して無害である. Walsh et al. Curr Top Med Mycol 1993;5:79–113. T. asahiiは表在性皮膚感染症, 深在性感染症の原因菌となり, 本国に多いと されている夏型過敏性肺炎のアレルゲンでもある. Colombo et al. Clin Microbiol Rev 2011;24:682–700 T. asahiiによる深在性感染症の報告は, ほとんどが免疫不全患者であり, 免疫正常患者での報告例は稀である. 左腎動脈断裂、短腸症候群、外傷性肝損傷、脊髄損傷、穿孔性腹膜炎 Kobe City Medical Center General Hospital

症例: 45歳 男性 【現病歴】 【既往歴/内服歴/生活歴】 職場でクレーンのメンテナンス作業中に, アームと土台との間に胸腹部をはさまれた状態で受傷し, 10分後に救出された. 同僚からの救急要請により, ドクターカーが出動し, 当院へ搬送した. 【既往歴/内服歴/生活歴】 特記すべき既往歴なし 常用薬なし 喫煙・飲酒歴なし Kobe City Medical Center General Hospital

ER搬送時 【現症】 【理学所見】 身長 170cm, 体重 76.1kg GCS E3V5M6, HR 137bpm, BP 52/38mmHg, RR> 30bpm, SpO2 測定不能 【理学所見】 体表に明らかな外傷なし 乳頭〜骨盤の高さの腹背部に皮下出血 末梢冷感著明 両下肢の運動感覚麻痺 Kobe City Medical Center General Hospital

血液検査所見 【CBC】 【Biochemistry】 【ABG】 【Serology】 WBC 18.7 103/μL Neut 83.0 % Lym 12.0 Mono 2.0 Eos 1.0 Baso 0.0 Hb 11.0 g/dL Ht 32.0 PLT 23.8 104/μL 【Biochemistry】 TP 4.4 g/dL Alb 2.4 T-Bil 0.3 mg/dL AST 91 IU/L ALT 77 BUN 14.1 Cr 1.16 Na 138 mEq/L K 4.3 CRP 0.05 【ABG】 PH 7.201 PaCO2 43.6 mmHg PaO2 100.8 HCO3 16.4 mmol/L Lac 9.0 AG 11.0 Glc 374 mg/dL *AG: anion gap 【Serology】 HIV – Kobe City Medical Center General Hospital

緊急開腹手術:左腎動脈結紮, 小腸亜全摘, 回盲部切除, 右半結腸切除 胸腹部造影CT free air 小腸造影不良 左腎動脈断裂 左腎動脈断裂、SMA断裂、広範囲腸管虚血、腸管穿孔、肝損傷、脾損傷、胸腰椎骨折、左下位肋骨骨折、右腸骨骨折、脊髄損傷 緊急開腹手術:左腎動脈結紮, 小腸亜全摘, 回盲部切除, 右半結腸切除 Kobe City Medical Center General Hospital

入院後経過 POD 13 Trichosporon asahii 左腎動脈断裂、短腸症候群、外傷性肝損傷、脊髄損傷、穿孔性腹膜炎 PIPC/TAZ VCM Kobe City Medical Center General Hospital

入院後経過 CTガイド下ドレナージ POD 13 POD 85 F-FLCZ VRCZ PIPC/TAZ ABPC/SBT VCM Daptomycin POD 13 POD 85 左腎動脈断裂、短腸症候群、外傷性肝損傷、脊髄損傷、穿孔性腹膜炎 Kobe City Medical Center General Hospital

免疫正常患者の深在性 Trichosporon asahii (Trichosporon beigelii) 感染症 文献レビュー 免疫正常患者の深在性 Trichosporon asahii (Trichosporon beigelii) 感染症 報告年, 筆頭著者 感染臓器 臨床経過 抗真菌薬 転帰 2018, Mada 血栓性静脈炎 末梢血管疾患, 下肢切断 VRCZ 改善 2015, Lomas 皮膚粘膜病変 熱傷 2015, Zuo 人工物感染 DM, 人工膝関節置換 AMPH-B, VRCZ 2012, Paradzik UTI, 真菌血症 多発外傷 FLCZ 2011, Heslop 髄膜炎, 脳膿瘍 DM, 熱傷 None 死亡 2010, Baraboutis 胸骨骨髄炎 DM, CABG 2008, Kim 脊椎椎間板炎 椎体形成術 2007, Rastogi 髄膜炎 既往歴なし 2004, Ramos AMPH-B, FLCZ 2001, Wolf 腹膜炎 DM, 肺炎, 腹膜透析 AMPH-B DM, 多発外傷 2000, Chan 子宮内膜炎 動脈硬化性疾患 2000, Cawley 皮膚粘膜 報告年: 2000-2018年 報告国: 米国, カナダ, クロアチア, スペイン, ギリシャ, インド, 中国 症例数: 13例 年齢: 18 – 84歳 (不明 4例) 性別: 男性 4例, 女性 5例 (不明 4例) 原疾患: 外科手術後 4例, 熱傷 4例, 多発外傷 2例, 腹膜透析 1例, 不明 2例 糖尿病合併例: 5例 感染臓器: SSI 4例, 皮膚粘膜 4例, 髄膜炎 2例, 腹膜炎 1例, 尿路感染 1例, 子宮内膜炎 1例 治療薬: AMPH-B 3例, FLCZ 3例, VRCZ 2例, AMPH-B+VRCZ 2例, AMPH-B+FLCZ 2例 左腎動脈断裂、短腸症候群、外傷性肝損傷、脊髄損傷、穿孔性腹膜炎 Kobe City Medical Center General Hospital

治療薬の選択 T. asahiiはキャンディン系抗菌薬には自然耐性を示す. Tawara et al. Antimicrob Agents Chemother. 2000;44(1):57-62. 各種抗真菌薬に対するブレイクポイン トは設定されていないが, 治療成功例の症例報告では,アゾール系薬,特にボリコ ナゾールに対する感受性が良好であった. Foumier et al. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2002;21(12):892-6. アムホテリシンBは常用量では治療効果が期待できない. Walsh et al. J Clin Microbiol. 1990;28(7):1616-22. Toriumi et al. Microbiol Immunol. 2002;46(2):89-93. 左腎動脈断裂、短腸症候群、外傷性肝損傷、脊髄損傷、穿孔性腹膜炎 Kobe City Medical Center General Hospital

結語 免疫正常患者で, 重症多発外傷後にTrichosporon asahiiによる後腹膜膿瘍を合併した1例を経験した. T. asahiiのヒトへの病原性は弱く, 免疫正常患者で深在性感染症の発症は極めて稀であるが, 重症外傷に伴う機械的バリアの破綻を契機として深在性感染症を生じる例があると考えられる. 左腎動脈断裂、短腸症候群、外傷性肝損傷、脊髄損傷、穿孔性腹膜炎 Kobe City Medical Center General Hospital

Trichosporon asahii infection in a immunocompetent patient with polytrauma: A case report and mini review Jiro Ito1、Ryutaro Seo2、Toshikazu Hasuike3、Yoko Asaka2、 Machi Yanai2 、Asako Doi3 、Koichi Ariyoshi2 1Kobe City Medical Center General Hospital, Department of Anesthesia and Critical Care, 2Department of Emergency Medicine, 3Department of Infectious Disease, Kobe, Japan Title: a case report Kobe City Medical Center General Hospital