ATLAS前後方ミューオントリガー Small Wheelの総合試験

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ATLAS前後方ミューオントリガー Small Wheelの総合試験 平山 翔 (東京大学 ICEPP) 金賀史彦,結束晃平,鈴木友A,石野雅也,川本辰男,久保田隆至,坂本宏,佐々木修A,池野正弘A,岩崎博行A,田中秀治A,戸本誠B,杉本拓也B,高橋悠太B,奥村恭幸B,長谷川慧B,蔵重久弥C,越智敦彦C,松下崇C,門坂拓哉C,丹羽正C,早川俊C,中塚洋輝C,菅谷頼仁D,福永力E,竹下徹F,他ATLAS 日本TGC グループ 東大ICEPP,KEKA,名大理B,神大自然C,阪大理D,首都大理工E ,信大理F Atlas前後方ミューオントリガー、small wheelの総合試験という題目で 発表させて頂きます、平山翔です、よろしくお願いします。

ATLASの全体像 目的:7TeV+7TeVの陽子・陽子衝突現象を測定し、ヒッグス粒子、SUSY粒子等を発見 EI/FI( Small Wheel ) TGC Big Wheel RPC Weight = 7000t 7TeV 40MHz 22m 7TeV まずは、ATLAS及び、TGCの概要から述べさせていただきます。 ATLASはLHCの周上に置かれる汎用検出器です。 7TeVの陽子同士の衝突を観測することで ヒッグス粒子やSUSY粒子の発見が期待されています。 ATLASは図のように、巨大な円筒形の検出器ですが TGCは円筒の蓋に当たる部分に位置するガスChamberを中心としたシステムです。 A-side 44m C-side

Small Wheel とは? Small Wheel Big Wheel 24sector 21sector 24sector EI( Endcap Inner) FI( Forward Inner) これは他の検出器を取り除いた図ですが TGCはBig WheelとEI/FIと呼ばれる部分からなります。 Small Wheel と言うのは、EI/FIのうちFI、 Forward Inner Stationと呼ばれる部分を指し 24枚のChamberからなっています。 Bld.191で検査中のSmall Wheel Big Wheel

TGC ( Thin Gap Chamber ) とは? 役割 : 高エネルギーミューオンを含むイベントに対して       Level1 トリガー信号を発行する ATLASではデータを保存するまでに、3段階のトリガーでイベントのrateを下げる。 Rate 許容されるlatency Level1 40MHz→75kHz 2.5μs Level2 100kHz→3.5kHz 40ms Event Filter(Level3) 3.5kHz→200Hz 4s 電子回路による高速トリガー TGCの主要な役割は、ATLAS全体にトリガー信号を発行することです。 LHCでは40MHzという高いイベントレートを 3段階のトリガーを用いて表のように減らしています。 許容される、latencyは2.5μsと非常に短く コンピュータによる計算を行う時間はないので chamberからの信号を電子回路のみで処理する事で 高速トリガーを実現しています。 TGCの構成はスライド下段のようになっていて TGC1,2,3を合わせてBig Wheelと呼びます。 各Chamberは、r方向の位置を測るwireと、φ方向を図るstripからなっていて TGC1のみwire3レイヤー、strip2レイヤー、他は全て2レイヤーずつです。 wire ・・・ η(r)方向 strip ・・・ φ方向 構成 : TGC1      ・・・ wire3層、strip2層       TGC2,3,EI/FI ・・・ wire2層、strip2層       1.05<η<2.40 のATLAS前後方部をカバー

EI/FIの役割 Big Wheel High pT ??? ・Trackingのために、Inner Stationでのφ座標情報を得ること ・IP由来でない荷電粒子によるHitを排除すること Big Wheel η=1.05 High pT ??? μ ν レベル1トリガーは大きな運動量を持つミューオンを捉えることで 発行していますが、TGCはこのうちηが1.05~2.4の前後方部分をカバーしています。 運動量の大きいミューオンを識別する仕組みは トロイドによる軌道の曲がり具合をTGC1,2,3で測ることで実現します。 具体的には一番外側のTGC3でのhit位置と 衝突点を直線で結んだものを仮想の無限運動量粒子のトラックとし 実際のTGC1,2でのHITとのずれを測ることで識別しています。 EI/FIの役割は ミューオンのトラッキングのために、内側でのφ座標情報を得ること Big WheelでのHITのうち、cavernバックグラウンド等 衝突点に由来しないものを排除することの2つです。 Toroidal Magnet IP η=2.40

Small Wheelの地上動作試験 動機:地下実験場へ運ぶ前に地上にて、動作試験を行い、問題点の発見・修復を行う 検査範囲 同上 CAT6cable ASD SLB FI PP SSW ROD pipeline buffer TTC Muon 1/2 coincidence = 「OR」 SL MUCTP EI PP Optical fiber SLB 同上 赤:Trigger 青:Readout(データ) 我々のグループでは、秋の学会にてBig wheelの地上動作試験の報告をしました。 今回はそれに続いてSmall wheelの地上動作試験を完了したので、その報告を行います。 まず、地上動作試験のモチベーションは、地下実験ホールへインストールする前に、 アクセスの容易な地上にて、問題点の発見と修復を行い トリガークオリティを高く保つことにあります。 今回の検査でカバーした範囲は図に示したピンク色の部分です。 Chamberから出たHIT情報は図のようなエレクトロニクス系を通して処理されます。 SLBの内部で、データはトリガー系とReadout系に別れ、以後の処理も別々に行われます。 トリガー系は、最終的にSector logicと呼ばれるモジュールで処理され MUCTPを通してATLAS全体に配信されます。 Readout系では、データは一旦、pipeline bufferに保持され MUCTPから配信されるトリガー信号を受け取った際に 初めてスタースウィッチ以下に流れることになります。 PS Board チャンネル数 A-side wire A-side strip C-side wire C-side strip Total EI 440 672 2224 FI 768 3072 1208 1440 5296

検査の流れ PS Board動作試験 Chamber統合動作試験 検査項目 エレクトロニクスの動作確認 - 入力経路  - 入力経路  - 出力経路(Trigger、Readout)  - トリガーロジックの確認 ケーブルの接続確認  - ASD~PSB間  - ChamberへのHigh Voltage供給線 Chamberの動作確認  - 不良チャンネル(欠け、発振)  - High Voltage、ガス供給 PS Board動作試験 @bld.188 2007年8月 ①SLB Test Pulse試験 ②ASD Test Pulse試験 Chamber統合動作試験 @bld.191 2007年9月~11月 大まかな検査の流れとしては PS Board単体で動作試験を行い、次いで Chamberとエレクトロニクス系を接続した状態で検査を行いました。 用いた検査方法は SLBテストパルスとASDテストパルスの2種類のテストパルス試験 それに加えて、宇宙線によるChamberのHIT信号を用いた検査を行いました。 検査を通して確認したい項目は、右の囲みに示した通り エレクトロニクスの動作、 モジュールやchamber間のケーブル接続 Chamberの動作 の3種類に大別されます。 ①SLB Test Pulse試験 ②ASD Test Pulse試験 ③宇宙線試験   -1:HV供給線swap検査   -2:不良チャンネル検査

テストパルス試験 ①SLBTP試験 ②ASDTP試験 Setup - Readout系の動作 - PSB-SSW間の接続 適当なtrigger信号(10kHz) CAT6cable Setup ASD SLB SLBTP PP pipeline buffer SSW ASDTP 1/2 coincidence = 「OR」 PS Board Optical fiber Hit layer1 kayer2 ①SLBTP試験  - Readout系の動作  - PSB-SSW間の接続 Channel 次に詳細を述べます。 PSBには2つのテストパルス機能が実装されており まずSLBテストパルスでは、 SLB以降のreadout系の動作及び、PSB-SSW間の接続をチェックします。 次に、ASDテストパルスですが、 Chamberからの信号を擬似的に再現したもので トリガー系の動作、ASD-PSB間の接続 各モジュール上の回路やチップに故障など ASD以降の全てのモジュールやケーブルのチェックが可能です。 セットアップは図の通りで、 トリガー信号として、10khz程度の周期パルスを入力しました。 図に示した緑と紫の矢印はそれぞれのテストパルスにおける信号の流れです。 PSB単体でこれらのテストパルス検査を行った後に、 bld191に移動しchamberと繋いだ上で再びテストパルスから検査を行いました。 ASDTPの結果の例として 特に欠けや故障がなければ、上段のように全チャンネルが同じ回数だけ鳴ります。 もしASDとPSBを繋ぐcableが抜けていたり、ASDが機能していなかったりすると、 左下のように一つのASDに対応する16ch分がまるごと欠けることになります。 右下は単体のチャンネル欠けの例です、原因としてはケーブル内での断線等が考えられます。 ASDTPの例 : 正常な場合(C_phi12_strip) ②ASDTP試験  - Trigger系の動作  - ASD-PSB間の接続  - PSB内での接続不良 欠け! 16ch欠け! ASD単位の欠け(C_phi11_wire) 欠けchannel(A_phi9_wire)

宇宙線試験 ③-1:HV供給線のswap検査 Setup self trigger HVを2層のうち1層だけon FI CAT6cable Chamberの状態 ガス:CO2 HV:2700V Threshold:140mV ASD SLB pipeline buffer PP SSW 1/2 coincidence = 「OR」 SL 宇宙線Muon PS Board Optical fiber ③-1:HV供給線のswap検査 layer2 layer1 続いて、chamberを用いた宇宙線試験ですが セットアップは図の通りで、PSBに入れるトリガー信号は、 PSB自身が出すトリガーをSLを通して自身に再入力するセルフトリガーとしました。 はじめに、高電圧の供給線のswapが無いかを確認するために 2レイヤーのうち片方だけに高電圧をかけてデータを取りました。 例えばレイヤー2のみをオンにすれば図のようなヒストグラムが得られますが 仮にswapしていればレイヤー1と2が入れ替わったヒストグラムが現れることになります。 HVを2層のうち1層だけon →onにした層だけ鳴っているか確認 layer2のみHVをかけた場合 (C_phi12_wire)

宇宙線試験 ③-2:不良チャンネルの発見 SLBのCoincidence matrix を 2/2 coincidenceに変更してデータ取得 layer1 layer2 layer1 layer2 正常な場合(C_phi19_wire) 正常な場合(A_phi6_strip) 次に、chamberの不良チャンネルを発見するために 2層とも高電圧をかけ、データを取得しました。 正常ならば、wire、stripでそれぞれ図の上段のようなヒストグラムが得られます。 下段左がノイジーなチャンネルの例で、2つのチャンネルが8000近く鳴っています。 下段右は欠けチャンネルの例で、このチャンネルはASDTPの時にも欠けていましたが ASD-PSB間に断線があるとすれば、これはchamberの状態に関わらず当然の結果です。 layer1 layer2 ASDTPでも欠けていたchannel →ASD、又はPSBまでのCAT6cableの欠損 8000 発振channelの例(A_phi1_strip) 欠けchannelの例(A_phi9_wire)

宇宙線試験 続③-2:不良チャンネルの発見 C_phi11_wire_layer2 ASDTPでは16ch全部欠けるが ・・・ 宇宙線では一部が見える!? c-side ファイ11、ワイヤーレイヤー2では奇妙な結果が得られました。 ASDTPでは上段のように丸ごと1ASD分欠けていましたが、 宇宙線では下段の通り、反応がありました。 原因はASDの不具合と思われますが 左端の2chを除いてchamberからの信号に関しては正常にPSBに 送られることがわかったので、使用することは可能です。 しかし、今後怪しい動作をする可能性はあるので、気に留めておく必要がある。 右端2chも欠けているが、これは一部のchamberは仕様上そうなっており 問題ありません。 →TPを返す経路が故障していると思われる    左端2ch以外は実用上は問題無し    しかし、今後怪しい動作をするようで    あればmaskをかけるなどで対処 宇宙線

結果 PS Board動作試験 Chamber統合動作試験 はんだ不良、半導体不良等、 6枚の不良品を発見 → 全て修理 6枚の不良品を発見 → 全て修理 Chamber統合動作試験 ■A-side  ・・・ 全1536ch    ・欠け ・・・ 1ch    ・発振 ・・・ 2ch ■C-side  ・・・ 全1536ch    ・欠け ・・・ 2ch    ・発振 ・・・ 2ch 検査の結果 6枚不良PSBを発見し、全て修理をしました。 Chamberに関しては、スライドの通りいくつかの不良チャンネルを発見しました。 加えて、Chamber-PSB間のケーブリングが全て正しいことを確認しました。 今回、不良チャンネルの修理は行いませんでした。 地下ホールへの搬入期限が迫っていた為ですが 問題箇所は把握しているので、マスク等で対処が可能となり 検査の成果は充分にあったと言えます。 ■Chamber-PSB間の接続OK! 不良チャンネルの対処に関して ・・・  地下実験場への搬入期限の関係で修理はせずに用いることにした。 問題箇所を把握しているのでmaskをかけるなどの手段で対処可能!

地下ホールへのインストール 晴天の下 Bld.191を出発する 我等がSW クレーンで 地下ホールへ 地下100m 無事到着 へ向かう Big Wheel 検査終了後、SWはbld.191からアトラス地下ホールへ運搬され 無事地下にインストールされました。その様子がこちらの写真です。

まとめ & 今後の予定 ■EI/FI用のPS Board 全54枚の検査完了 まとめ & 今後の予定 ■EI/FI用のPS Board 全54枚の検査完了 ■FI station (Small Wheel)の地上検査完了         →地下ホールへインストール済(2008年2月) ★地下ホールにてEI/FI 、及びBig Wheelの  統合動作試験準備中(2008年4月に開始予定) 最後にまとめると EI/FI用のPSBoard54枚の検査を完了。 FI chamberの地上動作試験が完了し、2008年の2月に地下ホールへインストールされた。 今後は、地下ホールにてEI/FI 及びbig wheelとの統合動作試験を4月に予定している。  ・・・ Thanks!

お わ り