エレクトロニクスII 第7回トランジスタの動作点 付:実用エレクトロニクス(3)CRT

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エレクトロニクスII 第7回トランジスタの動作点 付:実用エレクトロニクス(3)CRT 2003.11.21 佐藤勝昭

前回の問題(1) ΔIb=20μAに対してΔIc=4mA 従ってhFE=4000/20=200 図のような特性をもつトランジスタにおいて、ベース電流IBを40Aに設定した。VCE=4Vとする このとき、IBを20A増やすとICは何mA増えるか これより、このトランジスタの電流増幅率hFEを求めよ。 IC(mA) ΔIb=20μAに対してΔIc=4mA 従ってhFE=4000/20=200

前回の問題(2) カラーテレビ放送では、R,G,B3つの映像を送る必要があるが、独立に送ると3つのチャンネルが必要になる。1つのチャンネルで伝送するためにどのような工夫がされているか。 R,G,B信号から輝度信号Yと、色差信号R-Y, B-Y信号を作成し、 Y信号に、色差信号で変調した副搬送波信号を重畳して伝送、 受信機側で、再構成して、R,G,Bに戻す方法がとられている。

実用エレクトロニクスコーナー第3回 TVシステムとディスプレイ(3) 受像器の仕組み テレビジョン受像機では、伝送されてきた信号から音声信号(音声多重信号)と映像コンポジット信号を分離、次にコンポジット信号からから、同期分離回路で水平同期信号HD、垂直同期信号VDを、カラー分離回路でカラー信号I, Qと輝度信号を分離する。I, Q信号とY信号からマトリクス回路でR,G,B信号が復元される。 I信号の帯域は1.5MHz, Q信号の帯域は0.5MHzなので、細かいところには色が付かない。

実用エレクトロニクスコーナー第3回 カラーTVブロックダイアグラム(b) 佐々木・宮崎「テレビジョン」 コロナ社 による

実用エレクトロニクスコーナー第3回 TVシステムとディスプレイ(3) さまざまなディスプレイ 走査線にそって送られてきたR,G,Bの映像信号によって各画素のR,G,B成分の光量を変化させ画像として表示する。 ディスプレイには、ブラウン管(CRT),液晶ディスプレイ(LCD),プラズマディスプレイ(PDP),エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD), 電界放出ディスプレイ(FED) などがある。このうちLCDは光源光量を制御する 今回は、CRTについて述べる。

実用エレクトロニクスコーナー第3回 TVシステムとディスプレイ(3) CRTの原理 電子銃からの電子ビームを20-30kVの高電圧で加速、シャドウマスクを通して、蛍光スクリーンの蛍光体を励起 CL(カソードルミネセンス)を利用 http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/pdp/3.htm

実用エレクトロニクスコーナー第3回 TVシステムとディスプレイ(3) CRTの構造 電子銃、偏向板(オシロスコープ)または偏向ヨーク(ブラウン管)、シャドウマスク、蛍光スクリーンから構成される。 小林洋志「発光の物理」(朝倉書店)より

実用エレクトロニクスコーナー第3回 TVシステムとディスプレイ(3) カラーCRTの原理 赤、緑、青の微小な領域に蛍光体が塗り分けられており、各発光色に対応して、3本の電子銃が用いられ、別々に電子ビーム強度が制御される。 小林洋志「発光の物理」(朝倉書店)より

実用エレクトロニクスコーナー第3回 TVシステムとディスプレイ(3) アパーチャグリル方式CRT FDトリニトロン管を含むトリニトロンブラウン管は、R、G、Bの三原色からなるカラー画像を正しく再現するために、色選別機構(管面の蛍光体を発色させるため、R、G、Bの電子ビームを選別する小さな孔の開いたフィルター)に縦ストライプ状のアパチャーグリルを使用しています。画面の上下方向に電子ビームを遮るものがありませんので、ピッチを狭めても明るく輝度の高い画像を得られるという特長があります。また、グリルは上下方向にテンション(張力)を持たせていますので、ビーム照射による熱膨張を吸収し、色ズレや色ムラを起こしにくく、長時間安定した画質を維持することができます。 ソニーのホームページよりwww.sony.jp/.../Display/CRT/technology/ Images/tech_3_1.gif

実用エレクトロニクスコーナー第3回 TVシステムとディスプレイ(3) カラーCRTの蛍光体 赤:Y2O2S:Eu 緑:ZnS:Cu,Al 青:ZnS:Ag 緑 青 赤 発光強度 400 500 600 800 波長[nm] 小林洋志「発光の物理」(朝倉書店)より

復習コーナー:トランジスタの特性 (1)VBE-IB特性 VCEを一定にしてVBEを変化させるとVth=0.6V付近から急激にベース電流が増加する。(ダイオードの順方向特性と同じ) IB(A) B C E VCE=6V VBE IB

復習コーナー:トランジスタの特性 (2)VCE-IC特性 IBをパラメータとしてVCEを変化させるとコレクタ電流ICが増加し、VCEが大きくなるにつれ飽和する。飽和電流値はIBの関数である。 B C E VCE VBE IB IC IC(mA)

復習コーナー:トランジスタの特性 (3)IB-IC特性 E VCE IB IC VCEを一定にしてIBを変化させるとコレクタ電流ICが直線的に増加する。これを電流伝達特性という。 ICとIBの比を電流増幅率hFEという。エミッタ接地の場合はと表される。 [mA] [A]

復習コーナー:トランジスタの特性 トランジスタの最大定格 VCB, VCE, VEB, IC, IBの最大値の他、コレクタ損失Pc=VCE×ICの最大値(許容コレクタ損失)が重要である。VCEやICが定格内でもPCが許容コレクタ損失を超えると、発熱のため暴走し破壊に到る。 また、接合の温度TJにも最大許容値があり、これを超えると破壊される。

トランジスタ回路 3つの接地方式 エミッタ接地、ベース接地、コレクタ接地 エミッタ接地:最も普通の増幅回路 ベース接地:低い入力インピーダンス、高い出力インピーダンス コレクタ接地:高い入力インピーダンス、低い出力インピーダンス

エミッタ接地回路 最もよく用いられる回路:トランジスタ回路の基本 信号の入力:ベース・エミッタ間 信号の出力:コレクタ抵抗の両端 (交流信号に対しては、コレクタ・エミッタ間) VCC 特徴:入力インピーダンスは中程度(数k)、出力インピーダンスは十分高いので負荷抵抗R2で決まる。 電圧増幅率は300倍程度とれる (教科書p47参照) R1 R2 コレクタ回路 B C E 出力信号 入力信号 ベース回路 E

トランジスタ回路 エミッタ接地の動作点を決める(教科書p.28) VBE-IB特性とベース回路の負荷曲線からグラフを利用して、ベース回路の動作点を決める。 VCE-IC特性とコレクタ回路の負荷曲線からグラフを利用して、コレクタ回路の動作点を決める。

トランジスタと抵抗の回路 エミッタ接地回路の動作点 C E B エミッタ特性 コレクタ特性 上図のような特性のトランジスタで左図のような基本回路を組む。動作させるには、BE間に順方向、CB間に逆方向の電圧を加える。 注:ここでは説明のために、E2とE1 という2つの電源を使っているが、 普通は、電源は1つしか使わない。

動作点の決め方(1)ベース回路 E1→R1(ベース抵抗)→B→Eを一巡する経路にキルヒホッフの法則を適用。 E1=R1IB+VBE  これよりIB=E1/R1-VBE/R1 E1=1.5V, R1=22k代入 IB=68-45VBE [A] 一方トランジスタのVBEとIBの間には図のエミッタ特性が成立する。 負荷線とエミッタ特性の交点が動作点K。 IB=40 [A], VBE=0.65[V] が得られる。

動作点の決め方(2)コレクタ回路 ベース電流40 Aに対するコレクタ特性と、負荷線の交点から、IC=8[mA], VCE=3.3Vを得る E1→R2(コレクタ抵抗)→C→Eを一巡する経路にキルヒホッフの法則を適用。 E2=R2IC+VCE  これよりIC=E2/R2-VCE/R2 E2=6V, R2=0.33k代入 IC=18-3VBE [mA] 一方トランジスタのVBEとIBの間には図のコレクタ特性が成立する。ベース回路よりIB=40[A]である。

実用回路でまなぶ 2石トランジスタラジオ (1)配線図 実用回路でまなぶ 2石トランジスタラジオ (1)配線図 Tr1,Tr2: 2SC1815 R2=560 ダイオード R4=82k R1=82k R5=470 トランジスタ技術編集部編「実験と工作で学ぶ初めてのエレクトロニクス」 CQ出版社2001年より

実用回路で学ぶ 2石ラジオのブロックダイアグラム フェライトバー アンテナ+ 同調回路 (並列共振回路) コイルとバリコン 高周波 増幅回路 Tr1 (トランジスタ エミッタ接地) AM復調(検波) 回路 ダイオード D1, D2 平滑 C3,R3 低周波 増幅回路 Tr2 (トランジスタ エミッタ接地) イヤホン 高周波信号を増幅 低周波信号を増幅 検波 固定バイアス イヤホン カップリング コンデンサ バリコン カップリングコンデンサ フェライトバー

練習問題 動作点を決めよう 図(a)に示すベース特性、図(b)に示すコレクタ特性をもつトランジスタの動作点を決めたい。電源電圧VCC=10Vとする。 1. いま、R1=0.25Mとして、ベース電流Ib[A]とベース・エミッタ間電圧VBE[V]の間になりたつ関係式を書け。 2. 図(a)に負荷線を書き込み、動作点VBE[V]、Ib [A]を決めよ。 3. いま、R2=0.5kとして、コレクタ電流Ic[mA]とコレクタ・エミッタ間電圧VCE[V]の間になりたつ関係式を書け。 4. 図(b)に負荷線を書き込み、動作点VCE[V]、IC[mA]を決めよ。 Ib Ic C 3 4 1 R1 R2 2 Vcc VBE VCE 図3(a) VBE-IB 図3(b) VCE-IC