微小変位を観測する反射鏡の防振システム 高橋竜太郎 (東京大学宇宙線研究所) 防振の基礎 KAGRAで求められる防振性能

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微小変位を観測する反射鏡の防振システム 高橋竜太郎 (東京大学宇宙線研究所) 防振の基礎 KAGRAで求められる防振性能 シミュレーション 設計と試験 まとめ 第59回 応用物理学関係連合講演会 日本真空協会企画シンポジウム 「重力波観測用巨大干渉計の設計と建設」 2012.3.14 早稲田大学

1. 防振の基礎

防振の基礎 単振り子の応答 運動方程式 フーリエ変換

防振の基礎 単振り子の応答 周波数領域における解 伝達関数 共振周波数 伝達関数の特徴 低周波では減衰なし、位相遅れなし 共振周波数では増幅、-90°の位相遅れ 高周波では減衰、-180 °の位相遅れ

防振の基礎 長周期振り子 共振周波数0.1Hzの振り子の長さ 共振周波数0.1Hzの振動子のばねの伸び いかにコンパクトな長周期振り子を作るかがポイント Δx

水平低周波振り子 Inverted Pendulum (IP) Elastic spring + Gravitational anti-spring keff = kE - kG

垂直低周波振り子 Geometric Anti-Spring Filter (GAS filter) Elastic spring + Buckling anti-spring keff = kE - kB kE /kB

2. 求められる防振性能

求められる防振性能 (1)観測帯域(>10Hz)における地面振動雑音の低減 防振比>109@100Hz 地面振動の影響が重力波による微小変位(10-20m/Hz1/2 @100Hz)より大きくなってはならない。 防振比>109@100Hz (2)低周波(<10Hz)における鏡のRMS変位/速度の低減 鏡のアクチュエータ雑音や低周波で鏡に大きな信号を返すことにより観測帯域での雑音が増える非線形な雑音を避ける。 RMS変位<0.1μm RMS速度<0.1μm/s

Seismic Attenuation System (SAS) KAGRAではIPとGAS filterから構成されるSeismic Attenuation System (SAS) が採用されている。 (1)観測帯域(>10Hz)における防振 Standard filters & Mirror suspension (2)RMS変位/速度の低減 Pre-isolator (IP + Top filter) SASは国立天文台に設置されている300mレーザー干渉計重力波検出器TAMA300において開発、実証された。 TAMA-SAS

3. KAGRA用防振システムの構成

KAGRAにおける防振システムの配置 Type-A IP + GASF (5 stage) + Payload (23kg, cryogenic) Type-B IP + GASF (3 stage) + Payload (10kg/20kg) Type-C Stack + Single/Double-pendulum (~1kg)

KAGRA-SAS の構成 Top filter [Filter0] Pre-isolator Inverted Pendulum (IP) Filter chain Filter1 (Filter1~3 in Type-A) Bottom Filter (BF) Intermediate Mass (IM) Intermediate Recoil Mass (IRM) Payload Test Mass (TM) Recoil Mass (RM) Optical Bench [Breadboard]

Type-A (2層トンネル) 上部トンネル 接続ボアホール 下部トンネル pre-isolator standard filter chain 下部トンネル cryostat & payload

Type-B Type-C Inverted Top filter pendulum 2-stage GASF Stack Mirror

4. シミュレーション モデルベース・デザイン モデル計算と設計作業を平行して行う 質点モデルを用いた並進1次元のシミュレーション (R. Takahashi) 剛体モデルを用いた6自由度のシミュレーション (T. Sekiguchi & E. Majorana)

質点モデルによる鏡の変位 (Type-A) 2Hz以上の防振比は鏡を冷やすためのヒートリンクによって制限されている。 垂直方向からの影響は1%のカップリングを 仮定すると水平方向の変位とほぼ同じ。 予測される変位は5Hz以上でKAGRAの要求値を満たす。

要求と予測 → 3 x 10-17 4 x 10-20 3.1 0.1 0.08 2.2 0.05 iKAGRA bKAGRA Target Calculation Requirement Displacement @10Hz [m/rHz] → 3 x 10-17 4 x 10-20 RMS (velocity) [μm/s] 3.1 0.1 0.08 RMS (displace.) [μm] 2.2 0.05

剛体モデル それぞれのボディは6自由度を持つ(X, Y, Z, θx, θy, θz)。 ワイヤーのポテンシャルを引っ張りとね じれに分配。 Type-B それぞれのボディは6自由度を持つ(X, Y, Z, θx, θy, θz)。 ワイヤーのポテンシャルを引っ張りとね じれに分配。 GASは1次元のばねとして扱う。 ボディの変形やワイヤーのバイオリン モードは考えない。

Torsion(.012Hz) Torsion(.020Hz) IP Trans.(.030Hz) IP Long.(.030Hz) Torsion(.032Hz) IP Yaw(.051Hz) Vertical(.239Hz) Roll(.403Hz)

剛体モデルによる鏡の変位 (Type-B)

5. 設計と試験

設計と試験 a. Pre-isolator Assembling at G&M (May, 2011) GAS blades (A), Horizontal accelerometers (B), Central keystone (C), Motor controlled rotation mechanism (D), Platform for vertical accelerometer (E), Coaxial LVDT and voice coil actuator (F), Motor driven vertical springs (G), Sliding clamps (H), Special tool tuning filter resonant frequency (I), Counterweights for GASF (J), Inverted pendulum legs (K), Magnetic dampers (L), Counterweights for inverted pendulum (M), Motor driven horizontal springs (N), Horizontal LVDT (O), Horizontal voice coil actuators (P), and Hooking points of magnetic damper (Q)

IPの制御 (TAMAの例) Global control of cavity Length after cavity lock ACC, LVDT IPの制御 (TAMAの例) q ACC Y PS Actuator q LVDT X Length X Global control of cavity Length after cavity lock Damping of excited torsion mode using Position Sensor Signals of 3 ACC and 3 LVDT are diagonalized by these matrix respectively. Filtered signals are fed back to coil-magnet actuators through matrix again. After the cavity was locked, cavity length is controlled using global signal at low frequency. Filter0 is suspended single wire. This torsion mode was damped by a servo loop using photo sensor. On this, please see poster by Arase. 24

設計と試験 b. Standard GAS Filter Magic wand LVDT Measured transfer function at NIKHEF (Feb, 2011) Actuator

設計と試験 c. Payload

試験と製造 Standard GAS filter Prototype test: 2011.2- (@NIKHEF) 19 units order: 2011FY Pre-isolator Prototype test: 2011.8- (@ICRR) 11 units order: 2012FY Type-B payload Prototype test: 2012.6- (@ICRR) 11 units order: 2013FY Type-B full-system Test in TAMA: 2013.1- (@NAOJ) Pre-isolator prototype at ICRR

6. まとめ 大きな防振比を得るには低周波振り子が必要である。いかにコンパクトな低周波振り子を作るかがポイントとなる。 KAGRAではInverted Pendulum (IP)とGeometric Anti-Spring Filter (GAF Filter)からなるSeismic Attenuation System (SAS)が用いられる。 要求される性能に応じた3つのタイプの防振システムが使用される。 モデル計算と設計作業を平行して行っている(モデルベース・デザイン)。現在設計と試験が進行中である。