2次元ハバード模型の変分MC計算による 高温超伝導の研究

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2次元ハバード模型の変分MC計算による 高温超伝導の研究 山地 邦彦、 柳澤 孝 産総研・エレクトロニクス研究部門・凝縮物性グループ Introduction - Validity of 2D Hubbard model for cuprates VMC results for the domain of small |t’| and t” VMC results for the domain around t’~-.3 and t”~.2 Reason for breakdown of SDW Summary イントロダクション LSCO型バンドの場合の計算結果 Bi2212型バンドの場合 の計算結果 まとめと今後の課題

高温超伝導体のモデル 2次元ハバード模型に簡単化 CuO2面 酸素 p軌道 Ud 銅 d 軌道

背景と経緯 1) P. W. Andersonが最初に2次元ハバード模型で銅酸化物の高温超伝導が説明できる筈(ミニマル・モデル)と予想した。 U ~ 8t ? 2) U << 8t の弱結合の極限では、 2次元ハバード模型では d 波超伝導が支配的である(近藤淳)。弱結合のFLEX理論などが超伝導出現を示唆。 3) U >> 8t の強結合の極限では、模型は t-J 模型に変換、超伝導出現が導出される。直接的にも導出された。 4) しかし比熱 と臨界磁場から決まる超伝導凝縮エネルギー の実験値、例えば、YBCO の 0.26 meV/Cu 、に比べて2桁程大き過ぎる。 5) U ~ 8t の場合、変分モンテカルロ(VMC)計算によると、d 波超伝導が局所ミニマム・エネルギー状態にはなる。しかし競合する SDW に勝つバンドパラメーター領域が狭い。 5) 中性子線散乱でスピン波を測った実験から、U ~ 6t というモデレートな値の U が示唆された。

背景と経緯 2 6) U ~ 6t の場合、超伝導凝縮エネルギーの計算値は実験値のオーダーになり、超伝導が SDW に勝つパラメーター領域が十分にありそうである。 7) U ~ 6t でも解析的な理論は困難。変分モンテカルロ(VMC)計算では可能で、大きなサイズの格子が取り扱え、バルク極限が検討できる。 8) 超伝導か SDW かはバンドパラメーターに強く依存。 VMC計算で取り扱える。 9) 最適ホールドープ量16%、電子密度 r 、の場合に計算。超伝導凝縮エネルギー Econd(SC) が rの関数としてほぼ最大であり、磁気相の共存などがない簡単な状況である。 10) La214系とBi2212系という大きく異なる2種の典型的なバンドでVMC計算により超伝導出現を示唆する結果が得られた。 11) 現在はBi2212系バンドの場合の格子サイズ依存性からバルク極限の決定を研究中。

Variational Monte Carlo Method 2D Hubbard Model Variational Monte Carlo Method Total energy: Condensation energy:

凝縮エネルギー Econdの決め方

フェルミ面の2典型 LSCO t’/t = -0.12 t”/t = 0.08 Bi2212 (および NCCO) t’/t = -0.34 T. Tohyama and S. Maekawa, Supercond. Sci. Technol. 13, R17 (2000) (Broken curve for half-filling; solid curve for 30 % hole doping) T. Tanamoto et al., J. Phys. Soc. Jpn. 61, 1886 (1992)

LSCO型バンドの場合の計算結果 t’~-.10 t” =0   T. Tohyama and S. Maekawa, Supercond. Sci. Technol. 13, R17 (2000) (Broken curve for half-filling; solid curve for 30 % hole doping)

SC & SDW Econd vs t’ t”=0, r.84, U=6, 10, p. & antip. b.c.  の狭い領域で一様な超伝導 -.45 < t’< -.1 の時 (p, 0) と (0, p) ( van Hove特異点の間の「ネスティング」によるSDWが支配的 t’>0 の時、 (p /2, p /2) 及び(-p /2, -p /2) 周辺のフェルミ面のネスティングなどによる SDW が支配的

U=5、r=.84の場合の 超伝導・SDW凝縮エネルギー (2)

1電子準位の分布 1電子準位の分布が特異的 クラスターのサイズ、形、境界条件の影響 まだサイズ効果が残る サイズ効果克服は今後の課題

Bi2212型バンドの場合の計算結果 Bi2212, YBCO, NCCO t’/t ~ -0.34 t”/t ~ 0.23 T. Tohyama and S. Maekawa, Supercond. Sci. Technol. 13, R17 (2000) (Broken curve for half-filling; solid curve for 30 % hole doping)

Jastrow型の再近接サイト間の相関因子 i, jサイトは再近接サイト h は変分パラメター 全系のエネルギーは大きく改善 (~0.02/site)。 SC Econd は増大し、SDW Econd は減少する。 U ~ 6 の時、数割の改善。 U ~ 12の時は定性的変化。

Econd(SC)とEcond(SDW)の格子サイズ依存性 Bi2212型のバンドの場合、Econd(SC) と Econd(SDW) が 格子サイズ LLに敏感 -0.22  t’  0ではPavariniらに倣って t’= -2t”を仮定 -0.45 < t’  -.22では t’+0.34= -1.5(t” -0.23) L=10 ~ 20の格子のEcond(SC) と Econd(SDW) を計算

Econd(SDW) の強い格子サイズ依存性

Econd(SC) & Econd(SDW) versus t’ at r〜0.84   Econd(SDW) は L = 16 以上でほぼ収束。 L=20 の結果はバルク極限と見なせる。   -.18 < t’ < -6 で Econd(SDW)が有限で、 Econd(SC) より圧倒的に大きい。。

Bi2212-type band 2 (vertical scale expanded)   Bi2212型のバンドでは t’= - 0.34, t”=0.23  SC Econd は t’ ~ -.30 の時YBCO の実験値に近い。

Econd(SC, t’=-.34, t”=.23 r, U=6) vs 1/L2 Jastrow型の試行関数の与える Econd はL~20では L 増大と共に 増大する傾向を見せるので、有限なバルク極限を与えると予想される。

Econd(SC, t’=-.31, t”=.21, r, U=6)   両方向とも周期境界条件の場合のSC Econd はL~20において強いL 依存性を示している。   両方向とも周期境界条件(赤●)と両方向とも反周期境界条件(青■)のSC Econdの平均値(緑◆)のL 依存性ははるかに緩やかで、 ~0.0007 のバルク極限の存在を示唆する。その値はYBCOの実験値に近い。

強いL依存性の原因: (0, p) 近傍の Ek のグループ化 Ek in k-space (periodic & periodic b.c.’s )

EcondのL依存性(pbc & pbcの場合)

EcondのL依存性(apbc & apbcの場合)

アンダードープ領域ではどんな現象が起こっているのか? 広い範囲で、磁性現象(帯磁率の増大) ==> 超伝導

まとめと今後の課題 変分モンテカルロ法でモデレートな U=6t の2次元ハバードの超伝導凝縮エネルギーEcondを計算して、LSCO型とBi2212型のバンドの場合に実験値に近い値を得た。 格子の辺Lが20位の大きな格子でもEcondは強いL依存性を示した。 L依存性が裸のバンド・エネルギーのサイズ依存性(グループ化)に起因し、L依存性を除いてバルク極限が推測できそうである。 このために計算時間とメモリーの制約を克服して L〜28位まで計算したい。 Bi2212型バンドの場合、2 GFLOPSのCPU〜24個(Blue Gene 12 nodes, or SR11000 2 nodes)を1〜2日位走らせる必要がある。           (SC, normal)×(pbc, apbc)×(L=24, 26, 28) ==> 20 days 同様にして、LSCO型バンドと電子ドープ系の場合のEcondのバルク極限を研究したい。 将来的には、アンダードープ領域のストライプ状態と擬ギャプ状態を取り扱い、光電子分光の実験の解明に寄与できる。

U ~ 6t in undoped La2CuO4? (1) Neutron diffraction experiment revealed that the spin wave energy at (p, 0) of La2CuO4 is larger that that at (p /2, p /2). The order of the spin wave energies were well reproduced by the 2D Hubbard model with U ~ 6 (energy unit in t ) but not by the t-J, or Heisenberg, model.    R. Coldea et al., Phys. Rev. Lett. 86, 5377 (2001) P. Sengupta et al., Phys. Rev. B 66, 144420 (2002)   N. M. Peres et al., Phys. Rev. B 65, 132404 (2002) (2) U ~ 4.5 gives a good fitting to ARPES data of SrCuO2. N. Tomita et al., private commun; M. Yamazaki et al., J. Phys. Soc. Jpn. 72, 611 (2003) (3) Metallicity in non-doped T’-La2-xRExCuO4 suggests moderate U. Figure of spin wave energy

Nearest-neighbor correlation factor (Jastrow-type trial wave function) Sites i, j are nearest neighbor h is a variational parameter Total energies are much improved (~0.02/site); SDW Econd decreases and SC Econd is improved slightly when U ~ 6 and largely when U ~ 12. Yamaji, Yanagisawa & Koike: J. Phys. Chem. Sol. 62 (’01) 237 H. Yokoyama et al.: similar trial wave function Q JPSJ 73 (’04)1119 More detailed correlation factors up to third neighbor were examined but did not much improve the SC Econd. Jastrow-type gives a slightly better SC Econd among all so we use it here.

Lattice Size Dependence (t’=-2t’=-0.05)

比較:Gutzwiller vs Jastrow (No. 2)

Breakdown of spin density wave (SDW) When SDW is formed with (p, p) and gap parameter M0 Breakdown of spin density wave (SDW) upper band 4t” lower band 4(t’-t”) criterion for vanishing of SDW

When t’ is taken into acount, t’-2t” gives the degree of breakdown of Fermi surface nesting

D(SC, av, t’=-.31, t”=.21 r, U=6)