灌漑強度の違いに着目した 被覆灌漑の有効性の検討

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灌漑強度の違いに着目した 被覆灌漑の有効性の検討 生産環境整備学講座 灌漑排水学研究室 4年  井上智恵

1.目的

1.目的 背景 ・多量施肥 ・施設栽培により生じる施設内環境の特殊性 土壌   塩類は農作物に多大な被害をもたらす 塩類集積

灌漑強度に着目した除塩効果の違いを検討する 1.目的      ・水で洗い流す(リーチング)によって除塩を行う      ・一般的には湛水灌漑を行う      ・水みち侵入による除塩ムラ      ・土壌への浸透速度が速いため十分に       除塩することが困難 対処 灌漑強度に着目した除塩効果の違いを検討する 問題

リーチング用水量を増加しリーチングを行うことで 1.目的 北牧の研究(2002年)より         散水灌漑>被覆灌漑>湛水灌漑 結論 リーチング用水量:200mm リーチング用水量を増加しリーチングを行うことで  被覆灌漑が有効であるか検討する 圃場 灌水方法 リーチングに要した時間 灌漑強度 (mm/h) 湛水 28分40秒 418.5 散水 散水灌漑 20時間20分   9.8 被覆 被覆灌漑 湛水灌漑 6時間5分 32.8 被覆・散水灌漑:灌漑強度 小 湛水灌漑    :       大

2.実験方法

2.実験方法 大学構内にある枠水田3筆を利用(1筆 2.5×2.0m) 湛水 散水 被覆 2.0m 2.5m

2.実験方法 本研究の流れ 5月 枠水田の代かき、液肥の散布 <乾燥 期間:4ヶ月> 10月 1回目サンプリング(化学実験)   5月    枠水田の代かき、液肥の散布           <乾燥  期間:4ヶ月>  10月    1回目サンプリング(化学実験)  11月    リーチング開始           <乾燥  期間:2週間>  12月    2回目サンプリング(化学実験・土壌物理実験) 市販の液肥使用 液肥:水=1:2 合計10ℓ

2.実験方法 散布直後

2.実験方法 乾燥後(約4ヶ月間乾燥)

2.実験方法 1回目サンプリング(化学分析) 3地点×5層(0cm、5cm、10cm、15cm、20cm) 土壌破壊を最小限にするため 理由           土壌破壊を最小限にするため 理由 0cm 5cm 10cm 15cm 20cm 2.0m 2.5m a b c サンプリングのモデル図

2.実験方法 2回目サンプリング(化学分析・土壌物理学実験) 12地点×5層(0cm、5cm、10cm、15cm、20cm)           リーチング前後の変化を正確に把握するため 理由 化学分析 ・pH   ・EC ・硝酸態窒素 ・カリウム ・リン酸 ・アンモニア態窒素 理由 土壌物理学実験 ・三相分布 ・密度試験 ・粒度試験 ・透水試験 0cm 5cm 10cm 15cm 20cm 2.5m 2.0m a e b f g d c h i j k l サンプリングのモデル図

2.実験方法 リーチング方法 -湛水圃場-  圃場面を常時湛水する   リーチング用水量:300mm

2.実験方法 リーチング方法 -散水圃場-  散水チューブ2本使用  散水量:1.24mm/hに設定し300mm散水 散水チューブ

2.実験方法 リーチング方法 -被覆圃場-  生分解性防草シート(2枚重ねて使用)を被覆する  湛水灌漑同様,常時湛水させる    

3.実験結果

3.実験結果 各灌漑方法の所要時間及び灌漑強度 リーチング用水量:300mm 圃場 灌水方法 灌漑強度 湛水 湛水灌漑 140.6 散水 リーチングに要した時間 灌漑強度 (mm/h) 湛水 湛水灌漑 140.6  散水 散水灌漑 210時間  1.4 被覆 4時間18分 72.2 2時間8分 大 小 被覆灌漑 湛水灌漑   :灌漑強度  大 散水・被覆灌漑 :灌漑強度  小

3.実験結果 各圃場とも上層に近づくにつれ高濃度を示す 同一層内で塩類集積にばらつきが見られる ・毛管上昇が均一に起こらないため  初期条件の特徴     各圃場とも上層に近づくにつれ高濃度を示す     同一層内で塩類集積にばらつきが見られる               ・毛管上昇が均一に起こらないため               ・液肥散布時のムラ     三相分布,密度試験,粒度試験は全ての圃場で同様     透水性は良い部分と悪い部分があり,水みちの存在が     伺える  化学分析 土壌物理学実験

3.実験結果 湛水圃場 硝酸イオン バラツキは各層 大きい 0,5cm層では高濃度の まま残留 濃度の変化なし 10~20cm層では濃度が 湛水圃場   硝酸イオン リーチング前 リーチング後 0,5cm層では高濃度の まま残留 濃度の変化なし バラツキは各層 大きい 10~20cm層では濃度が 高くなっている 上層から洗脱されて蓄積 したため

3.実験結果 湛水圃場 ・バラツキ大 ・高濃度のまま残留 リーチング効果低い ・灌漑強度が大きい ・水みちにリーチング用水が流れ込み 結論 ・バラツキ大 ・高濃度のまま残留 リーチング効果低い 理由 ・灌漑強度が大きい ・水みちにリーチング用水が流れ込み  洗い流される前に降下浸透してしまった

3.実験結果 散水圃場 硝酸イオン バラツキは 0cm層は大きい 5~20cm層は小さい 0cm層で高濃度の まま残留していた 散水圃場   硝酸イオン リーチング前 リーチング後 0cm層で高濃度の まま残留していた バラツキは 0cm層は大きい 5~20cm層は小さい 5~20cm層では低い濃度 を示した

3.実験結果 散水圃場(T-2) ・残留濃度が低い ・バラツキ 小 リーチング効果高い ・灌漑強度が小さい(湛水灌漑の1/140倍) 結論  ・残留濃度が低い  ・バラツキ 小    リーチング効果高い 理由 ・灌漑強度が小さい(湛水灌漑の1/140倍) ・灌漑強度が小さすぎて洗脱効果が弱まった ・散水したリーチング用水が低い地点に集まり  湛水し水みちに流れ込んだ

3.実験結果 被覆圃場 硝酸イオン バラツキは突出した値を とる地点を除いて小さかった 全層全て低い濃度と なった リーチング前 被覆圃場   硝酸イオン リーチング前 リーチング後 全層全て低い濃度と なった バラツキは突出した値を とる地点を除いて小さかった

3.実験結果 被覆圃場(T-3) ・残留濃度が低い リーチング効果高い ・バラツキ 小 ・灌漑強度は小さい(湛水灌漑の1/2倍) 結論  ・残留濃度が低い  ・バラツキ 小    リーチング効果高い (リーチング効果1番高い) 理由 ・灌漑強度は小さい(湛水灌漑の1/2倍) ・表層での水みちへの侵入を防ぐことができた

4.考察

被覆灌漑は有効なリーチング方法の1つである 4.考察 被覆灌漑≧散水灌漑>湛水灌漑 結論 被覆灌漑は有効なリーチング方法の1つである 特長 課題 散水灌漑 ・散水量を調節でき,  灌漑強度を弱められる ・灌漑に時間がかかる ・管理が難しい(散水ムラ) ・灌漑強度が弱く  リーチング効果高い ・表層での水みち浸入を  防ぐ効果が高い ・シートが濡れると強度が  落ちる 被覆灌漑

終わり ご静聴ありがとうございました!

参考資料 分散 

参考資料 平均値