アルミ超伝導トンネル接合素子(AL-STJ) を用いたCMB偏光カメラの開発 -エネルギーギャップとアルミの 厚さの相関、最適化- 総研大、高エ研A、岡山大B、理研C 渡辺広記○、羽澄昌史A、住澤一高A、樋口岳雄A、吉田光宏A、田島治A、佐藤伸明A、美馬覚B、石野宏和B、樹林敦子B、佐藤広海C、有吉誠一郎C、大谷知行C、 他KEK測定器開発室:超伝導ミリ波カメラ開発グループ 美馬に続いて、総研大の渡辺がAl-STJの開発、エネルギイーギャップとアルミの厚さの相関、最適化とういう題で発表します。
目次 研究背景 STJのデザイン Alに対するNbの近接効果 STJの作成 STJの測定方法(IV測定) まとめ、今後の予定 目次です。まず、研究背景、そしてSTJのデザイン、今回の発表の中心となるAlに対するNbの近接効果について話します。そして作成した素子の測定、結果、今後の予定について離していきます
研究背景 現在我々はB-modeの精密 測定を目的とした小型衛星 LiteBIRDを計画している LiteBIRDでは60~ 250GHz(Energy Gap 2Δ≦120GHz)の検出器を 搭載予定。この範囲をカ バーする検出器が要求され る 波長10mm 波長 1mm 現在我々のGroupはこの精密測定を目的とした小型衛星LiteBIRDを計画しています。LIteBIRDでは60~250GHzエネルギーギャップ2Δが120GHz以下の検出器を搭載予定です。なので、この範囲をカバーする検出器が要求されます。
超伝導体の選択 2Δ(0K)=3.528kTc Alのフォトン検出とビデオ検出で、40GHz以上のほぼ全域をカバーできる可能性あり。
AL-STJのデザイン デザイン 素材 ログペリアンテナ Parallel connected twin junctions ■基盤:サファイア、Si ■アンテナ・伝送線:Nb ■ STJ:Al/AlOx/Al ■層間絶縁膜:SiO2 ■バッファー:Al2O3 アンテナ(Nb) λ/4 L w1 配線 続いて、Al-STJのデザインです。現在私たちが作成しているSTJのデザインはログペリアンテナという偏光を受けられるデザインをしており、その上にAl-STJとなるJunctionが2つ並んでいて共振回路を作るようになっています。我々のデザインではNbアンテナの上にAlのSTJがあるという構造をしています。この構造により、次に話すNbよる近接効果が表れます。 5
Alに対するNbの近接効果 現在のデザインではJunction周辺の構造は Nb/Al/AlOx/Al/Nbとなっている。 D Alに対するNbの近接効果について説明していきたいと思います。 現在我々が作成しているデザインでは先ほど説明したとおり、Nb/Al/AlOx/Al/Nという構造になっています。 このような構造をしているときAlの膜厚が薄いとNbによる近接効果で2ΔがAlのものより大きくなります。 このグラフは縦軸にNormalized GapこれはNbのエネルギーギャップを1とたものです。また、横軸にアルミの厚さを撮ったグラフです。見てもらえるとわかるとおり、アルミの膜厚が薄くなるにつれてギャップがNbの超伝導ギャップに近くなることが分かります。 Nb 6 D A.Zehnder, Ph. Lerch, S.P. Zhao, Th.Nussbaumer,E. Kirk and H.R.Ott:Phys. Rev. B 59, 8875, (1999)
作成したSTJ デザイン 素子のサイズ アルミの膜厚 50GHz,150GHz,400GHz 5×5mm 5,15,30nmの3種類 7 150GHz×4
STJの測定 ~I-V測定~ 8
0.3K冷凍機への素子のセッティング 超伝導コイル STJ はんだ付け&基盤をセット 0.3Kステージ 4Kステージ 0.3K冷凍機
I-V測定=SIS構造がうまく出来ていることのチェック R Vin = V + IR B Vin V I I I V V 続いてIV測定について説明します。IV測定とはSIS構造がうまくできているかのチェック、そしてギャップエネルギーの測定ための測定です。今回はSTJの感度にSTJにバイアスをかけると、磁場がないときはトンネルバリアをクーパー対が通り抜けられるという直流ジョセフソン効果によりお0点でカレントが測定されます。しかし、磁場をかけることによってInsulatorに磁力線が入り込むためクーパー対が通れないという現象が起こります。この測定によりSIS構造がしっかりできているかを判断することが出来ます。また、磁場を流した状態でこの部分の電流値を測ることにより、STJのリーク電流を 2D 磁場有 トンネルバリアに磁力線が 入り込むためクーパー対が 通れない 磁場無 トンネルバリアをクーパー対が 抜けられる(直流ジョセフソン効果)
IVカーブの例 デザインLA03 Al膜厚~5nm 磁場有り 磁場無し ギャップ 2Δ=1.1mV ~2.2mV IVカーブの測定例です。このIVカーブはAlの厚さが5nmのものです。磁場をかけることによりジョセフソン効果が消えることがみられるため、この素子はSIS構造がうまくできているといえます。また、超伝導ギャップは現在のデザインではSTJが直列に2つ並んでいるため二倍に見えています。なので実際の2Δは1.1mVとなっています またこの部分を拡大してみることによって ギャップ 2Δ=1.1mV ~2.2mV
リーク電流の評価(0.32, 0.47, 0.52K) ←この式と比較 単位面積(1mm2)あたりのリーク電流@0.1mV 102 1 10-2 リーク電流 [nA/mm2] この素子をさらに低温に冷却し、どこまで下がるか調べる 計算に乗ると、~pA@0.1K リーク電流による評価です。この式がこの赤い線です 10-4 10-6 12 10-8 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 温度 [K]
測定結果 2Δ=500μV 120GHz相当 アルミの膜厚 2Δ(mV) 対応周波数(GHz) 5 1.1 266 15 0.95 230 測定結果です。下のグラフがアルミの厚さとエネルギーギャップの相関のグラフです。 縦軸にエネルギーギャップ2Δ横軸にアルミの膜厚をとっていて、青い値が先ほど見せた文献の値、オレンジ色の点が今回私たちが作成した素子の値です。この結果から、アルミの膜厚がにより、Nbによる近接効果の影響がみてとれあす。 アルミの膜厚 2Δ(mV) 対応周波数(GHz) 5 1.1 266 15 0.95 230 30 0.8 193 13
まとめ、今後の予定 まとめ 今後の予定 リークカレントについては飽和の兆しがあるので、0.3Kよりさらに低温での測定が必要である 作成したAl-STJのエネルギーギャップ2ΔについてはNbによる近接効果による影響がみられた 今後の予定 エネルギーギャップの測定値と文献値に開きがある原因を明らかにする Alの膜厚が厚い(~80nmなど)素子を作成し測定 →2Δ≦120GHzを目指す Nbによる近接効果をなくすために新しいデザインの検討 14
BACK UP 15
ビデオ検出器の原理と性能 検出器の性能は、感度(S)、雑音(N)、NEP( Noise Equivalent Power)で表される。 S = η・e/hν [A/W] N = √2eI0 [A/√Hz] NEP=N/S [W/√Hz] η :量子効率 I0:リーク電流
STJ(Superconducting Tunnel Junction) ジョセフソン素子 超伝導体(S)-絶縁体(I)-超伝導体(S)(SIS素子) 超伝導体(S) 薄い絶縁体(I)~1.5nm
STJアレイ検出器 ・量子力学的トンネル効果 ・NEP≈(2-4)x10-19 W/√Hz ・大ダイナミックレンジ(>70dB) ・温度変化に対して安定
全体のデザイン C1 デザイン 素材 ログペリアンテナ Parallel connected twin junctions STJ STJ デザイン ログペリアンテナ Parallel connected twin junctions STJを二つ以上並べて共振回路を作る 素材 ■基盤:サファイア、Si ■アンテナ・伝送線:Nb ■ STJ:Al/AlOx/Al ■層間絶縁膜:SiO2 伝送線 C1 アンテナ(Nb) λ/4 L t2 t1 w2 w1 h 配線
共振周波数にあう LのL1とC1を求める C1 反射の無いように インピーダンスマッチ を行ったデザインをしている 伝送線 Zstj=(1/R2+(ωC)2)1/2 C1 アンテナ(Nb) λ/4 L t2 t1 w2 w1 h 配線 反射の無いように インピーダンスマッチ を行ったデザインをしている
動作原理 エネルギー準位 クーパー対 エネルギーギャップ エネルギーEγ 光子 フォトン・アシスト・トンネル効果 超伝導体(S) 薄い絶縁体~1.5nm エネルギーEγ 光子 フォトン・アシスト・トンネル効果
動作原理 ①Eγ>2Δの光子を検出できるクーパー対解離 ②Eγ<2Δの光子も検出できるビデオ検出 エネルギー準位 エネルギーEγ クーパー対 ①クーパー対解離 エネルギーギャップ 超伝導体(S) 薄い絶縁体~1.5nm 光子 ②フォトン・アシスト・トンネル効果 ①Eγ>2Δの光子を検出できるクーパー対解離 ②Eγ<2Δの光子も検出できるビデオ検出
STJ 研究背景 40~260GHzを単一技術で検出できるセンサーがほしい Foreground(雑音)を理解 したい 90GHz付近でBモードに対 するS/Nが最小になる。この 部分を精密に測定したい 波長10mm 波長 1mm 40~260GHzを単一技術で検出できるセンサーがほしい STJ
研究背景 現在KEK CMB Groupでは CMBのB-modeの精密測定を 目的とした小型衛星Lite BIRDを計画している Lite BIRDでは60~250GHz をカバーする検出器が要求さ れる Al-STJ
AL-STJのデザイン デザイン 素材 ログペリアンテナ Parallel connected twin junctions ■基盤:サファイア、Si ■アンテナ・伝送線:Nb ■ STJ:Al/AlOx/Al ■層間絶縁膜:SiO2 ■バッファー:Al2O3 アンテナ(Nb) λ/4 L w1 配線 続いて、Al-STJのデザインです。現在私たちが作成しているSTJのデザインはログペリアンテナという偏光を受けられるデザインをしており、その上にAl-STJとなるJunctionが2つ並んでいて共振回路を作るようになっています。 25
Alに対するNbの近接効果 Al膜厚が薄いとNbによる影響で2Δが大きくなる(近接効果) 現在のデザインではJunction周辺の構造は Nb/Al/AlOx/Al/Nbとなっている。 4μm AlOx Nb Nb Al Al AlOx Alに対するNbの近接効果について説明していきたいと思います。 現在我々が作成しているデザインでは先ほど説明したとおり、Nb/Al/AlOx/Al/Nという構造になっています。 このような構造をしているときAlの膜厚が薄いとNbによる近接効果で2ΔがAlのものより大きくなります。 このグラフは縦軸にNormalized GapこれはNbのエネルギーギャップを1とたものです。また、横軸にアルミの厚さを撮ったグラフです。見てもらえるとわかるとおり、アルミの膜厚が薄くなるにつれてギャップがNbの超伝導ギャップに近くなることが分かります。 Nb Nb 26 7μm 実際の構造 A.Zehnder, Ph. Lerch, S.P. Zhao, Th.Nussbaumer,E. Kirk and H.R.Ott:Phys. Rev. B 59, 8875, (1999)
アルミの厚さ30nm 2Δ=950μV アルミの厚さ10nm 2Δ=1.1mV アルミの厚さ60nm 2Δ=800μV
研究背景 我々 CMB Groupでは CMBのB-mode偏光測定を 通した原始重力波の発見を 目的としている Foreground(雑音)を理解 したい 90GHz付近でBモードに対 するS/Nが最小になる。この 部分を精密に測定したい 研究背景です。先ほど美馬のほうから説明がありましたので、省略しながらすすめます。我々CMB GroupではCMBのB-mode偏光測定を通した原子重力波の発見を目的としています。どのように観測を行うかというと、左の図をご覧ください。この図は縦軸が温度、横軸が周波数になっています。見てわかるとおりはB-modeよりForegrooundと呼ばれる雑音成分のほうがはるかに大きく、そして誤差を含んでいます。なので、B-modeを受けるためにはまずこのForegroundを理解しなければいけません。そのうえで、B-modeに対してForeground成分の最も低い90GHz付近を精密に観測おこなうという方法が取られます。 CMBのB-mode偏光