RHIC PHENIX実験における 陽子スピン構造の探求

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RHIC PHENIX実験における 陽子スピン構造の探求 2011/02/23 Kyoto Univ. / RIKEN 唐津 謙一

RHIC Spin Program 「陽子スピンの起源」に答えるための実験の1つ。 陽子=クォーク3つ?? 背景:陽子中のクォークの偏極を測る実験  → レプトン Deep Inelastic Scattering

レプトンDISの結果 RHIC Spin 実験 クォークのスピンは陽子のスピンの20~30%ぐらいしか担っていない → spin crisis/puzzle 残りは何? グルーオン? クォークが軌道角運動量を持っている? RHIC Spin 実験

DISでは(なかなか)わからないこと Photonを媒介 → 直接見ているのは電荷だけ u : d : s : g = 4 : 1 : 1 : 0 特にグルーオンは見えない ( Q2 evolution, photon-gluon fusion; PGF) gluonを直接見る→ハドロン同士の衝突が必要       陽子・陽子コライダーへ

グルーオン偏極測定の原理 偏極陽子衝突で ALL を測る。 = (parton pol.)2× (aLL in parton reaction)

グルーオン偏極測定の原理 Parton level の代表的な3プロセス(LO) 実際にはパートンfragmented hadronを観測 channel ごとに違う割合で混ざる パートンの情報(Bjorken x など)は不明瞭

測定チャンネルの例  golden channel Direct photon: g + q  g + q フラグメンテーションの影響を受けない。 他のプロセス (e.g.`qq  gg)の混入が少ない     golden channel Jet, high-pT ハドロン生成 3つのプロセスが全て混ざる 全てLOなので、統計が一番多い。     比較的少ない Luminosity で情報が得られる。 重いクォーク(チャーム、ボトム) RHICでは gg→`qq がメイン W: quark の flavor分解 例えば W+ なら`du

The Relativistic Heavy Ion Collider accelerator complex at Brookhaven National Laboratory PHENIX STAR Brhams pp2pp RHIC @ BNL 偏極陽子陽子コライダー (重イオン衝突もある) sqrt(s) = 62, 200, 500 GeV # of bunches: 120 crossing interval: 106 ns L = 2x1032 cm-2s-1 (design value)

PHENIX実験 Pioneering High Energy Nuclear Interaction EXperiment

The PHENIX Detector Philosophy Central Arms Muon Arms 高分解能・高レート。ただしAcceptanceは小さい。 高いPID能力 Central Arms |h| < 0.35, Df = p/2 * 2 g, p0, e, p+-, ... – Identified 運動量、エネルギー測定 Muon Arms 1.2 < |h| < 2.4 運動量測定

ALL 測定 PHENIX p0 central arm (y~0)

DGは? 欲しいもの:Dg(x) データ点はいろいろなxのクォーク、グルーオンが重なったもの  Deconvolution が必要。 実用的な解析は、 Dg(x)の関数系を仮定 例: Dg(x)=Cg(x)xa(1-x)b 実験データ(DISを含む)をフィットして、最適なパラメータを探す(Q2発展も考慮) 例1: GRSV(M. Gluck et al., PRD 63 (2001) 094005.) DGを仮定して、それ以外のパラメータはDISを使って決める DGによっていくつかのバージョン(GRSV-std, max, min, ...) 例2:DSSV(de Florian et al., PRL101 (2008) 072001) GRSV std: flavor symmetric light sea distributions (Δu-bar = Δd-bar = Δs-bar) GRSV val: flavor asymmetric light sea distributions (Δu-bar ≠ Δd-bar ≠ Δs-bar)

最近のGlobal Analysisの例 de Florian et al., PRL101 (2008) 072001 Unpol.: 約26000points Pol.: 約500points

PHENIX h ALL

jet@PHENIX

Charged pion qg sub-process also dominates for mid-rapidity pion production at about pT>5 GeV/c, leading to an approximately linear dependence of the asymmetries on g(x). The preferred fragmentation of pi+ from u quark and pi- from d quark and the fact that u and d are known from the polarized-DIS measurements to have opposite signs, lead to an ordering of the pion asymmetries that depends on the sign of g(x). pi± ALL measurements at high pT will provide enhanced sensitivity to the sign of g, compared to pi0 alone.

グル―オン偏極まとめ ALLの全結果は0とコンシステント GRSV-std (DG~0.4)とDG=0はそろそろ区別できそう 今のところDG=0の方がfavored 核子スピンの謎は深まる方向。 DSSVは(インプットに使ったデータのみならず) 全てのデータと良く合っている。 Dg(x)=0も同じくらい良い。 500 GeVのデータがまだ出ていない。 →小さいxでの動向を見る上で重要   Dg(x)~0? ノードがある?

Wの測定@√s=500 GeV 偏極陽子陽子衝突におけるW粒子の Single Spin Asymmetry (AL)は反クォークの偏極度に敏感 反応に参加する粒子のフレーバーとヘリシティが固定 パリティを破るのでALは0ではない x1 – x2 の大きいところでは 最初の項のみが主に効く (flavorを分ける) 今回は W→e 崩壊チャンネル ye~0 (x1 ~ x2)のデータのみ

Raw signal

Cross section World data, 理論計算 (NLO)との比較 理論計算とconsistent pp collisionでは初のW->e 測定 これまでで最も低い√s での測定

+ - Asymmetry consistent with predictions (+: 5-14%, -: 19-36%) Theory curves: Including W and Z with NLO accuracy + - consistent with predictions (+: 5-14%, -: 19-36%) 統計が少ないため、モデルを分けることはできないが、今後のW測定に向けて大きなstepである

今後の予定 まとめ 2011年はRun11をセットアップ中 500GeVのRun 他に200GeV, 62GeVでの横偏極のRunを予定。 500 GeV ppのデータを取得 10週間程度で、PHENIXで50pb-1を取得予定。 500GeVのRun W: sea quarkの偏極度をflavorごとに測定 ハドロン、photonの測定では、より小さなx領域に感度 2014までに合計300pb-1(@PHENIX)のデータを収集予定。 他に200GeV, 62GeVでの横偏極のRunを予定。 まとめ グルーオンの偏極度(DG) 0.02 < x < 0.3 この範囲ではgluon偏極は小さい。0コンシステント。 √sが上がれば、小さなxに行けるが、500 GeVの結果はまだ。 フレーバーを分けた偏極度の測定はまだまだこれから

Back up

RHIC p+p accelerator complex The polarimeters are experimental devices RHIC pC “CNI” polarimeters absolute pH polarimeter BRAHMS & PP2PP PHOBOS RHIC Siberian Snakes PHENIX STAR Siberian Snakes Spin Rotators 5% Snake LINAC BOOSTER AGS pC “CNI” polarimeter Pol. Proton Source AGS Coulomb-Nuclear Interference 200 MeV polarimeter Rf Dipoles 20% Snake

陽子のスピンの起源 陽子のスピンはクォークのスピンで説明できると期待 従来の実験では光子交換を用いていたため、海クォークを区別できなかった 電子・ミューオンと陽子の散乱から20-30%程度しか説明できない: SU(3)仮定を含んだ分割 アップ 約80% ダウン 約-50% 海クォーク 約-10% 海クォークが反対に偏極して寄与を下げているように見える 従来の実験では光子交換を用いていたため、海クォークを区別できなかった Deep Inelastic Scattering k k’ q p p’ P xP= Elastic

Parton polarization function ~海クォーク偏極度の測定へ向けて~ フレーバーを分けた測定が必要 Semi-Inclusive DIS(SIDIS: 終状態のハドロンから推測) →fragmentation function からくる不確定性が大きい 弱い相互作用を使う Neutrino 散乱 … W 生成 DSSV Global Fit (2008) (DIS+SIDIS+pp) DNS Global Fit (2005)

Future Prospects Without RHIC data: uncertaintyはSIDISの解析に使われるfragmentation functionによって決まっている With 800pb-1 of RHIC data (P=60%): Central region と forward region両方でWを測定したとき 0.05<x<0.4の範囲でΔu-bar, Δd-barを精度よく決定することができる Includes both STAR and PHENIX data