AspectScope による アスペクト指向プログラ ミングの支援

Slides:



Advertisements
Similar presentations
オブジェクト指向 言語 論 第八回 知能情報学部 新田直也. 多相性(最も単純な例) class A { void m() { System.out.println( “ this is class A ” ); } } class A1 extends A { void m() { System.out.println(
Advertisements

ソフトウェア工学 知能情報学部 新田直也. オブジェクト指向パラダイムと は  オブジェクト指向言語の発展に伴って形成され てきたソフトウェア開発上の概念.オブジェク ト指向分析,オブジェクト指向設計など,プロ グラミング以外の工程でも用いられる.  ソフトウェアを処理や関数ではなくオブジェク.
関心事指向アーキテクチャモデリング環 境 Concern-oriented Architecture Modeling Environment 九州工業大学大学院情報工学府 情報科学専攻 鵜林研究室 M1 佐藤 友紀 1.
Web アプリをユーザー毎に カスタマイズ可能にする AOP フレームワーク
アスペクト指向プログラミングに 関する十の神話
Myoungkyu Song and Eli Tilevich 発表者: 石尾 隆(大阪大学)
情報伝播によるオブジェクト指向プログラム理解支援の提案
第2章 Eclipseと簡単なオブジェクト 指向プログラミング
AspectScope によるアスペクトとクラスのつながりの視覚化
リファクタリングのための 変更波及解析を利用した テスト支援ツールの提案
同期的にアドバイスを活性化できる分散動的アスペクト指向システム
第20章 Flyweight ~同じものを共有して無駄をなくす~
メソッド名とその周辺の識別子の 相関ルールに基づくメソッド名変更支援手法
アスペクト指向プログラミングと Dependency Injection の融合
遠隔ポイントカット - 分散アスペクト指向プログラミング のための言語機構
AOP言語への 織り込みインターフェイスの導入 A Weaving-Interface for AOP Languages
契約に基づいたアスペクト指向リファクタリングの検証
細かい粒度でコードの再利用を可能とするメソッド内メソッドのJava言語への導入
オブジェクト指向 プログラミング 第十四回 知能情報学部 新田直也.
ソフトウェア工学 知能情報学部 新田直也.
アルゴリズムとプログラミング (Algorithms and Programming)
細かい粒度で コードの再利用を可能とする メソッド内メソッドと その効率の良い実装方法の提案
オブジェクト指向 プログラミング 第十三回 知能情報学部 新田直也.
暗黙的に型付けされる構造体の Java言語への導入
関心事ごとに視点を切り替えて プログラムを編集できる 統合開発環境の提案と実装
理学部 情報科学科 指導教官 千葉 滋 助教授 学籍番号 03_03686 内河 綾
統合開発環境のための アスペクト指向システム
オブジェクト指向 プログラミング 第十四回 知能情報学部 新田直也.
ユーザ毎にカスタマイズ可能な Webアプリケーションの 効率の良い実装方法
11 ソフトウェア工学 Software Engineering デザインパターン DESIGN PATTERNS.
Javaプログラムの変更を支援する 影響波及解析システム
横断的関心事に対応したオブジェクト指向言語GluonJとその織り込み関係の可視化ツール
既存Javaプログラム向け 分散化支援システムの開発
豊富な情報を基にした pointcut を記述できるアスペクト指向言語
オブジェクト指向言語論 第十一回 知能情報学部 新田直也.
オブジェクト指向言語論 第八回 知能情報学部 新田直也.
クラスのインターフェース やその振る舞いに及ぼすアスペクトの影響の解析と可視化
アスペクト指向言語のための 独立性の高いパッケージシステム
アスペクト指向言語のための 独立性の高いパッケージシステム
オブジェクト指向 プログラミング 第六回 知能情報学部 新田直也.
pointcut に関して高い記述力を持つ アスペクト指向言語 Josh
オブジェクト指向言語論 第十一回 知能情報学部 新田直也.
Java における 先進的リフレクション技術
契約による クラスとアスペクト間の 影響解析
コードクローン分類の詳細化に基づく 集約パターンの提案と評価
プログラムの織り込み関係を可視化するアウトラインビューの提案と実装
アルゴリズムとプログラミング (Algorithms and Programming)
プログラミング言語論 第十三回 理工学部 情報システム工学科 新田直也.
ソフトウェア工学 知能情報学部 新田直也.
オブジェクト指向言語論 第十二回 知能情報学部 新田直也.
分散 Java プログラムのための アスペクト指向言語
オブジェクト指向 プログラミング 第六回 知能情報学部 新田直也.
統合開発環境によって表現された 言語機構によるコードのモジュール化
IDE を活用した言語機構に頼らないコード再利用のためのモジュール化
同期処理のモジュール化を 可能にする アスペクト指向言語
様々なAOPメカニズムをモデル化する パラメータ化インタプリタ
アスペクト指向言語のための視点に応じた編集を可能にするツール
プログラムの差分記述を 容易に行うための レイヤー機構付きIDEの提案
オープンソースソフトウェアに対する コーディングパターン分析の適用
状況に応じて適切な 例外処理が行なえる アスペクト指向分散環境実験の 支援ツール
ロールを基にした構造進化の表現 Role based Evolution Dependency Structure Matrix
統合開発環境のための プログラミング言語拡張 フレームワーク
開発者との対話を活かした 横断的構造の表現
クラスの追加 メソッドの追加 TestCaseの追加 Test Methodの追加.
オブジェクト指向言語論 第七回 知能情報学部 新田直也.
オブジェクト指向 プログラミング 第六回 知能情報学部 新田直也.
プログラム理解のための 付加注釈 DocumentTag の提案
GluonJ を用いたビジネスロジックからのデータベースアクセスの分離
オブジェクト指向言語論 第十回 知能情報学部 新田直也.
Josh : バイトコードレベルでのJava用 Aspect Weaver
Presentation transcript:

AspectScope による アスペクト指向プログラ ミングの支援 数理・計算科学専攻 千葉研究室 堀江 倫大 指導教員: 千葉 滋

モジュラープログラミング 全体をモジュールに分割 モジュール(=クラス)の (インタフェースの)仕様を確定 仕様だけを見てプログラミング モジュール(=クラス)の (インタフェースの)仕様を確定 仕様だけを見てプログラミング クラスの仕様: シグネチャ + メソッドの振る舞い 仕様は変えない 情報隠蔽 内部実装は仕様を満たしていれば自由に変えてよい

AOP は モジュラープログラミングができない よくある批判 アスペクトが仕様と実装の一貫性を壊す可能性がある 他のモジュールの実装を、仕様を無視して変更できてしまう AOP の obliviousness の負の側面 元のクラスの実装は改変されない 仕様だけを見てプログラミングできない あちこちの実装を見る必要がある モジュール内部の実装 そのモジュールに影響をおよぼしていそうなアスペクトの実装

例:リファクタリング 契約のためのアスペクトを定義 × Point クラスの setX、setY メソッドの振る舞いを変更 事前条件により、図形エディタのウィンドウ サイズ (0 < x < 100、 0 < y < 50) 内に図 形は描画されなければならない 50 100 × aspect Contract { before(int x) : call(void Point.setX(int)) && args(x) && within(Shape+) { if (x < 0 || 100 < x) throw new IllegalArgumentException(); } before(int y) : call(void Point.setY(int)) && args(y) && within(Shape+) { if (y < 0 || 50 < y) throw new IllegalArgumentException(); }}

アスペクトにより仕様と実装が食い違う コールグラフ中のメソッド全体に食い違いの影響が及ぶ ポイントカットが指定したメソッドだけではない + x 軸方向に dx, y 軸方向に dyだけ 直線を移動させる 点の x 座標を設定する x 軸方向に dx、y 軸方向にdy だけ多重線を移動する 直線の両端の x 座標は 0 以上 100 以下、 y 座標は 0 以上 50 以下に制限される + 多重線の x 座標は 0 以上 100 以下 の範囲内に制限される + Shape のサブクラスから呼び出されたとき のみ、 0 < x < 100 に制限される + class MultiLines extends Shape{ private List lines; : void moveBy(int dx, int dy) { for (Iterator it = lines.iterator(); it.hasNext();) ((Line) it).moveBy(dx, dy); }} class Line extends Shape { private Point p1, p2; : void moveBy(int dx, int dy) { p1.setX(p1.getX() + dx); }} class Point extends .. { private int x, y; : void setX(int nx) { x = nx; }} call(void Point.setX(int)) && within(Shape+)

開発ツール: AspectScope AOPでのモジュラープログラミングを支援する ツールが更新後の仕様を表示 アスペクトの中に、実装の変更だけでなく、それに合わせた仕様の更新も記述させる 変更部分を説明した追加 javadoc コメント メソッドごとに、それぞれの抽象化に合わせ異なるコメントを記述可能 ツールが更新後の仕様を表示 元の javadoc コメント アスペクトが追加した javadoc コメント 変更点を知らせるテキストエディタのマーカー、アウトラインビュー

Eclipse プラグインとして開発 エディタ、ビューを拡張

更新後の仕様の表示 AspectScope のテキストエディタ マーカー: 仕様が変わっている箇所を示す javadoc コメント: 更新後のメソッドの振る舞い アスペクトが追加した javadoc

outline ビュー クラスの中で定義されたメソッドとフィールドの列挙 ソースコードを見る必要はない アスペクトによって変更されていたらアイコン(  )を表示する ソースコードを見る必要はない UndoCmdAspect によって拡張

メソッドの抽象化に沿ったコメントの追加 The horizontal position of this line should be no fewer than 0, nor more than 100 The horizontal position of both the starting point and the end point should be no fewer than 0, nor more than 100 The set value x should be no fewer than 0, nor more than 100, only if the caller is the subclasses of Shape class MultiLines { private List lines; : void moveBy(int dx, int dy) { for (Iterator it = lines.iterator(); it.hasNext();) ((Line) it).moveBy(dx, dy); }} class Line { private Point p1, p2; : void moveBy(int dx, int dy) { p1.setX(p1.getX() + dx); }} class Point { private int x, y; : void setX(int nx) { x = nx; }} call(void Poin.setX(int)) && within(Line)

アスペクトによる仕様の更新の記述 comment アノテーション 変更部分を説明する追加コメントの定義 アドバイスを定義するときに一緒に記述 * The set value x should be no fewer than 0, nor more than 100 * * @comment (execution(void Line.moveBy(int, int))) * The horizontal position of both the starting point and the end * point should be no fewer than 0, nor more than 100 * @comment (execution(void MultiLines.moveBy(int, int))) * The horizontal position of this line should be no fewer than 0, * nor more than 100 */ before(int x) : call(void Point.setX(int)) && args(x) && within(Line) { … }

コメントを追加するメソッドの範囲指定 メソッドによって追加するコメントを変える 条件文なし execution( method pattern ) 特定のメソッド within( class pattern ) 特定のクラス内、パッケージ内のメソッド (例) within(* csg.figures.*) caller( int ) n 段前の呼び出し階層 同様の処理を行うメソッド Line moveBy csg.figures Point Line Arrow Rectangle … Rectangle moveBy Point setX Triangle moveBy Contract

comment アドバイス AspectScope 独自のアドバイス execution ポイントカットのみ指定可能 不要になったら unweave 可能 (例) Line.getDistance メソッドへのコメントの織り込み class Line { int getDistance(Point p) { : } /** Returns the distance from this line */ comment() : execution(int Line.getDistance(Point)) {}

実アプリケーションでの調査 目的 対象アプリケーション アスペクトの織り込みにより、仕様と実装の一貫性が本当にくずれているか 対象メソッドごとに異なる追加コメントを必要としているか 対象アプリケーション Web アプリケーション Health Watcher (HW) [A. Rashid ら ‘07] クラス数 692 (LOC: 9,591)、アスペクト数 25 (LOC: 1,989) アスペクトの使用方法は5通り デザインパターン、例外処理、永続化、トランザクション、ロギング

AspectScope の適用結果 記述したコメントの種類と追加された箇所の数 Observer パターンにおける追加コメントの例 setPassword: “Calls <code>updateObserver</code> after setting the new password of the employee to update the Observer.” executeCommand: “Updates the information of the employees by calling <code>updateObserver</code>.” パターン 拡張したメソッド数 呼ばれる側 呼び出し1階層上 呼び出し 2階層上 3階層上 6階層上 9階層上 Observer Command Factory State  17 3 15 17 NA 14   0 13 10 5 2

ロギングアスペクト 呼び出し側に仕様変更を反映させる必要は必ずしもない ロギングはプログラムのセマンティクスを変更しない アスペクト名 拡張したメソッド数 呼ばれる側 呼び出し 1階層上 呼び出し2階層上 HWLogging 2 1 (2) (1) public synchronized static HealthWatcherFacade getInstance() { if (singleton == null) singleton = new HealthWatcherFacade(); return singleton; }

関連研究: Aspect-Aware Interface (AAI) AspectScope が基本とする考え方を最初に提案 アイデアを提示した論文 [G. Kiczales ら ‘05] AOP には OOP とは異なる新しいインターフェースAAI が存在する 変更後の仕様の表現方法が異なる call、get、set ポイントカットの表現について具体的な言及はない メソッドの振る舞いの表現は扱っていない AspectScope は、javadoc コメントを使って表現

関連研究: AJDT ポイントカットによって選択されたジョインポイントに マークを表示するのみ 局所的な表示 広範囲に広がるアスペクトの影響は表現できない 局所的な表示 (例) call ポイントカットの場合 caller にしか表示されない callee には表示なし caller callee

関連研究: Open Module AOP の能力を制限して、モジュラープログラミングを可能にしている クラス側からは、どこが拡張されるかが分かる Open Module に公開されたポイントカットしか、アスペクトは拡張できない 将来の機能拡張に備えて ポイントカットを予め公開して おくのは難しい AOP の利点を損なう module FigureModule { class Line; expose call(void Point.setX(int)) || call(void Point.setY(int)); }

まとめ AspectScope: AspectJ におけるモジュラープログラミングを支援 アスペクトの中に、実装の変更だけでなく、それに合わせた仕様の更新も記述させる comment アノテーションによる仕様の追加 comment アドバイス ツールが更新後の仕様を表示 テキストエディタにおける javadoc コメントの表示 エディタのマーカー、アウトラインビューが更新点を知らせる Eclipse プラグインとして開発 M. Horie, S. Chiba. “AspectScope: An OutlineView for AspectJ Programs”, Journal of Object Technology

今後の課題 コールグラフごとのコメントのモジュール化 現在は、ひとつのアドバイスに複数のコメントを羅列している プログラムの改変に弱い構造 インターフェースに現れる冗長なコメントの集約 (例) setX、setY メソッドは moveBy メソッド内でそれぞれ2回ずつ呼び出される 同じコメントが2回ずつ表示されてしまう comment アドバイスを利用することを検討