プログラミング言語論 第13回 オブジェクト指向 情報工学科 篠埜 功.

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ソフトウェア工学 知能情報学部 新田直也. オブジェクト指向パラダイムと は  オブジェクト指向言語の発展に伴って形成され てきたソフトウェア開発上の概念.オブジェク ト指向分析,オブジェクト指向設計など,プロ グラミング以外の工程でも用いられる.  ソフトウェアを処理や関数ではなくオブジェク.
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プログラミング言語論 第13回 オブジェクト指向 情報工学科 篠埜 功

プログラムの分割 大きなプログラムは、分割して開発するのがよい。 手続きは分割の最も基本的なものである。 Module(モジュール)は、関連する変数、手続き、型を一つにまとめるものである。 手続きが処理するデータの型を一つのモジュール内に入れ、データ型の実装を隠す。

(参考)Opaque type Modula-2では、モジュールから型をexportするとき、 type stack; これをopaque exportといい、exportされた型をopaque typeという。 Importした側では、stack型の変数を var s, t: stack のように宣言できる。 Modula-2はopaque型について、代入、等しさのチェックをサポートする。ただし、opaque型はポインタに限られ、等しさの判定はポインタの等しさで判定される。

C++におけるクラス C++におけるクラスは、レコード(Cでは構造体と呼ばれる)を一般化したもの。 クラスを宣言した後はクラス名を型名として使用でき、その型の変数を宣言したり、オブジェクトを生成したりできる。 class Stack { public: int top; char elements [101]; char pop(); void push (char); Stack(); }; (例) struct Stack { int top; char elements [101]; char pop(); void push (char); Stack(); };

C++でのクラス宣言 struct X { <declarations> }; は、 class X { public : <declarations> } と同じであり、 class X { <declarations> }; struct X { private : <declarations> }; と同じである。

クラス宣言の例 class Stack { int top; int size; char *elements; public: Stack (int n) {size=n; elements = new char[size]; top=0;} ~Stack() { delete elements; } void push (char a) {top++; elements[top] = a; char pop() {top--; return elements[top+1]; }; (注意)配列を使ってスタックを実装しているが、これはクラス宣言の説明のための例で、スタックをこのように実装すればよいということではない)

オブジェクトの生成、破棄 C++ではオブジェクトはnewで生成し、deleteで破棄する。任意の型Tについて、 new T delete p によって、pが指しているオブジェクトが破棄される。 (例) 前ページの例の、elements = new char [size] によって、char型を要素とする長さsizeの配列が生成される。elements[0], elements[1], …, elements[size-1]によって配列の各要素が得られる。また、delete elementsによって配列オブジェクトが破棄される。

例: 後ろからも要素を追加可能なリスト class List { Cell * rear; public: void put (int); void push (int); int pop(); int empty() { return rear == rear->next; } List() { rear = new Cell (0); } ~List() { while(!empty()) pop(); } }; class Cell { int info; Cell * next; Cell (int i) { info = i; next = this; } Cell (int i, Cell *n) {info = i; next = n; } friend class List; }; List中の関数はCellのprivateなメンバーにアクセスできる。

例(続き) void List::push (int x) { rear->next = new Cell (x, rear->next); } void List::put (int x) { rear->info = x; rear = rear->next = new Cell (0, rear->next); int List::pop() { if (empty()) return 0; Cell * front = rear->next; rear->next = front->next; int x = front->info; delete front; return x;

テンプレート(例) template <class T> class Stack { int top; int size; T * elements; public: Stack (int n) {size=n; elements = new T[size]; top=0;} ~Stack() { delete elements; } void push (T a) { top++; elements[top]=a; } T pop() { top--; return elements[top+1]; } }; Stack型の変数を宣言したりオブジェクトを生成したりするとき、Stack<int> s(99); のように型を<>内に引数として与える。

CとC++ C++は1983年、Bjarne Stroustrupによって設計、開発された。Cの拡張として設計されており、ほとんどのC言語のプログラムはC++のプログラムであり、意味も同じである。ただし、CとC++で意味が違うプログラムがある。 コメントは、Cでは /* … */だが、C++では // … (C99では// もコメントとして使えるが) (例) int f (int a, int b) { return a //* */ b ; } returnの右に書かれている式は、C89ではa/b, C++およびC99ではaとなる。

CとC++(続き) C++では、構造体型を名前付きで宣言する構文で宣言した場合、その名前のみで構造体型を表せる。 (例1) struct test {int a;} test x; のように書いてよい。Cでは、struct test x;と書く必要がある。(C++でstruct test x; と書いてもよいが。) (例2) int x[99]; void f() { struct x {int a;}; sizeof (x); } sizeof(x)は、Cでは配列xのサイズ、C++では構造体xのサイズ。Cでは、構造体xのサイズはsizeof(struct x) と書かなければならない。

CとC++(続き) Cでは、sizeof(‘a’)はsizeof(int)と同じである。 C++では、sizeof(‘a’)はsizeof(char)と同じである。 Cでは、列挙型のサイズはsizeof(int)である。 C++では、列挙型のサイズは、処理系依存である。 (列挙型の例) enum color {RED, BLUE, YELLOW}; のように列挙型colorを宣言すると、Cではsizeof(enum color)はsizeof(int)と同じ、C++では処理系依存。

オブジェクト指向 オブジェクト指向はシミュレーションを記述することを意図して考え出された。シミュレーションの中の要素がオブジェクトである。 (例) Simula(Simulation language, 1967) Ole-Johan Dahl, Kristen Nygaardが開発 最初のオブジェクト指向言語(オブジェクト指向という言葉はまだなかったが、オブジェクト指向における種々の概念が含まれていた) ALGOLの拡張として設計された 空港のシステムの記述が重要な例となっていた

オブジェクト指向 [オブジェクトの例] 乗客、航空会社のカウンター、行列、チケット、… (外側からの見た場合) [オブジェクトの例] 乗客、航空会社のカウンター、行列、チケット、… (外側からの見た場合) オブジェクト間でメッセージをやりとりすることにより計算が進んでいく。 (内側から見た場合) メッセージを受け取ったら、それに対応する手続きを実行する。この手続きのことを、メソッド(method)あるいはメンバ関数(member function)という。

クラスの階層構造 Shape Box Ellipse Line Text Circle Shape Box Ellipse Line

継承(inheritance) 子クラスは親クラスのメソッド、変数を継承する(親クラスのメソッド、変数が子クラスのメソッド、変数になる)。 子クラスでは、追加でメソッドや変数を定義できる。同じ名前の場合には上書き(override)される。 (注意)overloadはoverrideとは全く別の概念。Overloadは、引数の数や型が違うメソッドに同じ名前をつけること。

C++の例 C++では、継承は以下のように記述する。 class Box : public Shape { … } すべてのメンバーをvisibilityを保って継承する。 class Box : private Shape { … } 継承されたメンバーはdefaultでprivateメンバーになる。 C++では親クラスを基底クラス(base class)、子クラスを派生クラス(derived class)という。

仮想関数(virtual function) class D : public B { public: char f () { return ‘D’; } char g() { return ‘D’; } }; #include <iostream> int main (void) { D d; std::cout << d.testF() << d.testG() << "\n"; return 0; } class B { public: virtual char f () { return ‘B’; } char g() { return ‘B’; } char testF() {return f(); } char testG() { return g(); } }; d.testF()は’D’を返し、d.testG()は’B’を返す。

補足 メソッドは、(C++コンパイラ内で)引数を1つ追加した関数へコンパイルすればよい。 char testF() { return f(); } char testF (B * this) { return this->f(); } d.testF()をtestF(d)にコンパイルすれば、(クラスBにおいてfはvirtualなので)testFの本体でdに対してメッセージfが送られることになり、’D’が返される。

C++の特徴 Cとのbackward compatibilityをできる限り保ちつつオブジェクト指向をサポートするように設計された。 オブジェクトをCの構造体の拡張とした。つまり、オブジェクトは関数のactivation recordやlocal block内にallocateされ得る。(もちろんヒープにもallocateできるが。) オブジェクト指向ではないプログラミング(命令型のプログラミング)もできる。(プログラミングのスタイルをプログラマに強要しない。) Multiple inheritanceをサポートする。(授業範囲外とする)

オブジェクト指向言語のまとめ オブジェクト指向言語(object-oriented language)は、オブジェクトを持ち、以下の4つの特徴を持つ。 Dynamic lookup(メッセージを受け取ったときに実行されるメソッドは実行時に決まる) Abstraction(public関数がインターフェースとなり、データや実装は他の部分から見えない) Subtyping(派生クラス型の式は基底クラス型の式と置き換えてもよい(publicで継承している場合)) Inheritance(継承。コード量が削減され、コードを修正しやすくなる。)

注意 Subtypingとinheritanceは異なる概念である。 (例) Queue --- first-in, first-out Stack --- last-in, first-out Dequeue --- 両端から出し入れ可能なqueue Dequeueの派生クラスとしてQueueクラスとStackクラスを実装することができる(privateな継承を使って必要なメソッドのみpublicにすれば)。 しかし、Queue, StackはDequeueのsubtypeではない。

(参考)Data invariant 制御がオブジェクト内にないときに常に成り立つ性質 (例) bounded buffer(長さ制限付きqueue) put(x), get()の2つのメソッドからなる。 配列に要素を格納し、frontとrearで範囲を示す。配列の最後の要素の次は最初の要素とする。 バッファーはfrontとrearが等しいとき空 Rearの次の要素がfrontのときバッファーは一杯 Frontとrearの間に、入力された順に要素が並んでいる。 オブジェクトは、data invariantを考慮しつつ設計する