ヤマセ時の気象庁メソモデルの日射量予測と 太陽光発電への応用 ~東北地方編~

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ヤマセ海域の SST 変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー 理工学部 地球環境学科 気象学研究室 4 年 08 S 4025 佐々木 実紀.
1 地理情報システムを活用した地域エネルギー 消費構造の評価に関する研究. 2 本研究の目的・位置づけ 地域エネルギーを推計する研究報告の中で、地理情報システム( GIS )を 活用した研究事例が 1 、 2 例と少ないのが現状で、東北地方においては皆無 である。 東北地方は暖房を中心とするエネルギー消費量の削減が重要な課題とされ.
謝辞: 沢田雅洋氏(東大AORI)のサポートを受け、本課題を行いました
エネルギー変換技術の評価例:発電技術 立場 (ステークホルダー) 評価項目 評価細目 利用(適用)技術 放射性廃棄物処分費用?
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本時の目標 エネルギーを有効に活用するにはエネルギー変換効率を髙める必要があることを知る。
自然エネルギーの限度 2011年9月21日 小野章昌.
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2016.3/10 ヤマセ研究会 2013年5月13日の仙台山形の 気温差について 東北大学流体地球物理学講座 修士1年 岩場遊.
2013年7月のヤマセについて 仙台管区気象台 須田卓夫 昨年のまとめ(赤字は研究会後の調査)
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ヤマセ時の気象庁メソモデルの日射量予測と 太陽光発電への応用 ~東北地方編~ ヤマセ時の気象庁メソモデルの日射量予測と 太陽光発電への応用 ~東北地方編~ 大竹 秀明* Joao Gari da Silva Fonseca Jr. 高島 工 大関 崇  ((独) 産業技術総合研究所)  山田 芳則 (気象庁気象研) 持ち時間20分(発表15+質疑5分) 。。14枚程度 第9回ヤマセ研究会 平成26年3月11日(火) 第2日目午前 第2部 11:10 – 12:10 

● 東北・北海道電力管内でも太陽光発電設備の導入が加速 太陽光発電システム(メガソーラー)の導入状況 ● 東北・北海道電力管内でも太陽光発電設備の導入が加速 マップ 出典:エレクトリカル・ジャパン(Electrical Japan) http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/type/8.html.ja

→お天気まかせ、時間・空間的な変動が大きい (安定した電力の供給が困難)   ○ 太陽光・風力発電の問題点の一つ   →お天気まかせ、時間・空間的な変動が大きい     (安定した電力の供給が困難) ● 太陽光による発電量が少ない場合   → 火力発電機を起動し、少ない分を補充 この火力の燃料費がコスト増(電気代の上昇) ● 太陽光による発電量が多い場合   → 火力発電機の停止 太陽光発電量の予測→火力発電機の起動・停止計画(前日の夕方)に利用 気象モデルの日射量予測 気象モデルの日射量予測 をベースに発電量予測の 研究が必要

○ MSMの太陽光発電への利用イメージ 気象庁メソモデル(MSM;現在は39時間予報) 前日に翌日の日射予測 及び発電量予測 -大型の火力機   前日に翌日の日射予測 及び発電量予測     -大型の火力機 気象庁局地予報モデル(LFM;9時間予測)    当日の日射予測及び発電量予測   ⇒運転計画の当日修正    -小型の火力機

予測された日射量について過去の予測実績からみた信頼性区間の推定 (単地点予測、電力管内エリアでの予測のニーズ) 研究目的 日射量の予測 今後、太陽光発電(PV)システムを大量に導入することを想定と太陽光発電電力の推定や他の発電システムと連帯した電力系統の安定化を図るために必要 メソ数値予報モデル(MSM) 現業の気象モデル, 防災気象情報   ☑ 物理モデルであり、直接日射量の予測が可   ☑ 翌日の発電量予測へ利用   ☑ しかし、予測値には必ず予測誤差が含まれている(季節性・地域性)                                     Ohtake et al. 2013 (Solar Energy)   予測値 + 予測誤差(信頼区間) → 電力運用計画において重要   ※発電量:工学モデルを利用       (火力、水力、揚水発電など) 目的 予測された日射量について過去の予測実績からみた信頼性区間の推定 (単地点予測、電力管内エリアでの予測のニーズ) (※ NEDO「発電量予測技術の研究開発」 気象研・産総研の共同研究) 

解析データ ● 日射量観測データ 気象庁各気象官署の全天日射量データ (熱電堆式全天日射計;時別値) 東北地方(東北電力管内;7地点) ● 日射量観測データ 気象庁各気象官署の全天日射量データ (熱電堆式全天日射計;時別値)   東北地方(東北電力管内;7地点) ● メソモデル(MSM)  ● 解析期間: 2008年-2012年(5年間)          観測データ 全国で52→48地点    東北電力管内 青森 盛岡 秋田 日本周辺  水平解像度5km 水平721x577格子 鉛直50層 1日8回 15時間予報 (初期時刻:3,9,15,21時) 33時間予報 (初期時刻:0,6,12,18時) 計算領域 JMA-NHM(気象庁非静力学モデル)の現業版 山形 新潟 仙台 福島 予測誤差評価 電力分野では前日夕方に 火力機の起動停止計画 を作成

● 日射量予測値の検証:観測値との比較 (時別値、仙台) ● 予測誤差は晴天指数(天候)と関係: 薄曇り→予測過大、曇天→予測過小 ● 日射量予測値の検証:観測値との比較                         (時別値、仙台) (W/m2) (W/m2) 予測値 予測誤差(MSM-OBS) (W/m2) 晴れ 曇天 曇り・薄曇り 晴 観測値 予測された晴天指数 ● 予測誤差は晴天指数(天候)と関係:    薄曇り→予測過大、曇天→予測過小

● 日射量予測値の信頼区間の推定方法 ● 予測誤差は晴天指数(天候)と関係→箱ひげ図作成 ● 日射量予測値の信頼区間の推定方法 大気外 日射 予測誤差(MSM-OBS) 予測値 観測値    予測された晴天指数 ● 予測誤差は晴天指数(天候)と関係→箱ひげ図作成   晴天指数をもとに時別値毎に予測値の信頼区間を推定(幅は狭いほどよい)

ヤマセ事例1 東北地方 ヤマセ事例1 時系列 2011.7.31 出典:弘前大学 児玉先生発表資料(第8回ヤマセ研究会)

● 衛星画像に見られる太平洋側の雲域はMSMで概ね再現 ● しかし、その広がりや雲の厚み(光学的厚さ)については? (鉛直積算の水物質の量) 日射量(下向き短波放射量) 可視画像 ● 衛星画像に見られる太平洋側の雲域はMSMで概ね再現 ● しかし、その広がりや雲の厚み(光学的厚さ)については?

03UTC 初期値(前日12時)の日射予測 (単地点予測) 前日予測 盛岡 青森 大きな時間 変動は予測 できず ■快晴の日射予測は良 山形 03UTC 福島 仙台 過大予測 (モデルの 雲が光学的 に薄い?) 予測値 過大予測 観測値 大きな時間変動は予測できず

● 初期値の更新→より実況に近い大気状態をモデルへ→信頼区間の幅:小 21UTC 初期値(当日朝6時)の日射予測 (単地点予測) 当日予測 ■当日予測は信頼区間 の幅も小さくなる傾向 盛岡 青森 山形 21UTC 福島 仙台 ● 初期値の更新→より実況に近い大気状態をモデルへ→信頼区間の幅:小

MSMの放射計算で利用した雲 ● 下層(水雲)だけでなく、中・上層の雲(氷雲)の予測も重要 ● 各層の雲がどれだけ予測できているか? 全雲量 RAD  放射計算で利用した雲 全雲量 下層雲 中層雲 上層雲 ● 下層(水雲)だけでなく、中・上層の雲(氷雲)の予測も重要 ● 各層の雲がどれだけ予測できているか?

まとめ   ● 気象モデル→日射量予測→発電量予測→火力機の運転計画への応用 ● 予測誤差と晴天指数(天候)との関係→信頼区間の推定 ● 単地点の時別値の予測は難しいが、予測値の信頼区間を付けて利用 ● リードタイム(前日予測(03UTC)よりも当日予測(21UTC)の予測) → 誤差が小さくなることも確認(小さくならない場合もある) 今後課題 ・その他のヤマセ事例 ・広域エリアで予測した場合の予測誤差の把握(電力は送電線でつながっている) ・局地モデル(LFM)とのヤマセ事例の比較